「お酒くれへんと、骨、抜きおるで旦那はん?」   作:オートスコアラー

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三酒

「くそっ……くそ!」

 

当てがあるわけじゃない。でも、今はこの燻るような熱をどうにかしたかった。ただそれだけの為にダンジョンを駆け抜ける。

 

既に何階層なのか、どれほどの時間が経ったのか、そもそも今自分はどこにいるのかすら頭に入ってこない。

 

 

「雑魚じゃあ、アイズ・ヴァレンシュタインには釣り合わねえ」

 

 

「くそ……」

 

頭に響く言葉が何処までも体に侵食する。認めたくない事実に動きが精細を欠き始める。

 

「僕は……」

 

気が付けばモンスターの大群に囲まれていた。そんなことにも気づかないくらい疲弊しきっていた。

 

でも、この位あの人なら片手間に倒せる。あの人なら……

 

血の滴る体に鞭を打ち、頭に無理やり酸素を送り込む。喉が焼けるように熱い。視界も半分ぼやけている。でも

 

「僕は……こんな所で止まりたくない……!」

 

前へと進む。モンスターの群れがなんだっていうんだ。僕の目標はこんな所じゃない。遙か先だ。

 

だから

 

「だから……そこを退け!」

 

 

 

 

辿り着いた時には全てが終わっていた。

 

大量に散らばった魔石の欠片に混じるモンスターのドロップアイテム。その中に佇むベル。

 

いや、正確にいうなら既に意識はない。

 

「立ったまま気絶しはるなんて。器用なんやか不器用なんやか」

 

酒呑童子は笑みを浮かべた。いつもの蠱惑的な、言うならば捕食者のような笑みではなく。まるで自らの子が1つ大人になった瞬間を見たかのような、そんな優しい笑みを。

 

「なんも聞かへんよ、なんも言わん。でも、よう頑張りはったな」

 

気絶したベルを抱き上げ、元来た道を引き返す。その足取りは軽く上気した顔でベルを眺める。

 

「……なんや、前はえらいかわええ顔してはったのに。こない凛々しくなりはって」

 

どうやらベルは答えを出せたようだ。ベルの表情から察した酒呑童子はダンジョンを抜けホームへと帰還した。

 

「あっ!全く何処をほっつき歩いて……ベル君?!」

 

ホームへと帰るなりヘスティアが傷だらけのベルを見つけ看病を始めた。それを眺めつつ今日起きた事をヘスティアに説明する。勿論酒場での喧嘩は伏せて。

 

「……そうか、そんなことがあったんだね」

 

「心配したん?」

 

「心配は……してるけど。ベル君の事は短い僕でもそれなりに分かるよ」

 

ウブですぐ女の子を引っ掛けて何にも知らないみたいな純情だけど、一度決めたら諦めない無鉄砲さも持ってる。正直言って危ういと言うか、見てて心配にならない事はない。でも

 

「でも……ベル君が決めた事だ。僕はそれを応援するし、ベル君を支える」

 

 

「……そか」

 

「君はどうなんだい?」

 

「うちか?」

 

「君は今のベル君を見て、どう思ってるんだい?」

 

そう問われ、ベルを見つめる。あどけない表情で眠りについているベル。

 

「そやなぁ……うちは旦那はんがやりたい言うなら別に口出したりせえへんよ」

 

「……そうかい」

 

「……なぁ」

 

「なんだい?」

 

「うちに恩恵くれへんか?」

 

その申し出に少なからずヘスティアは驚いた。今の今まで酒呑童子がダンジョンに行こうとするそぶりは唯の一度も見たことがなかったから。

 

「急にどうしたんだい?」

 

「なんや、気い変わったわ。旦那はんがこない頑張ってんや、うちも手伝いくらいせな思ってなぁ」

 

「それはいい事だよ、惜しいのは最初からその考えに至って欲しかった」

 

「そら悪うござんしたぁ」

 

「まあいいさ。ほら、恩恵を与えるからさっさとベッド……はベル君がいるし。そこのソファーに寝転がってくれよ」

 

「ほな、よろしやす」

 

ソファーに寝転がり上衣をはだけさせ(元から殆どはだけてるが)背中を露出する。その上に跨り、針を持って恩恵を書き込んでいくヘスティア。

 

「……君は、今まで何をして来たんだい?」

 

「そら、楽しいこと、嫌なこと、いろいろありますがな。そやけど退屈いうはるのは無縁な生活やったわなぁ」

 

「そりゃそうだろうね。普段の君を見てれば分かるよ」

 

「おおきに」

 

「褒めてない」

 

立ち上がり、紙にスラスラと何かを書き込んでいくヘスティア。そして終わったのか、酒呑童子に突きつけて来た。

 

「とりあえず君のステイタスだ。言っとくが誰にも喋らないように、バレたら面倒なことになるからね」

 

「そないな顔で言われたら恐ろしゅうて口開かへんわぁ」

 

 

 

酒呑童子 Lv1

 

力:823 A

 

耐久:769 B

 

器用:670 C

 

敏捷:819 A

 

魔力:895 A

 

《魔法》

 

【宝具 千紫万紅・神便鬼毒(せんしばんこう・しんぺんきどく)

 

・投影魔法

・対象への一時的ステイタス低下付与、対象のステイタスを一時的に自分に付与

・一定量の酒気を帯びる事で使用可能

・詠唱式『魔酒の酔夢、鬼々京狂、死にはったらよろしおす』

 

《スキル》

 

【果実の酒気】

 

・対象への魅了付与

・対象の行動阻害率上昇

・酒気を帯びる毎に効果上昇

 

【鬼種の魔】

 

・ステイタスの一時的上昇

・魔法威力の一時的大幅上昇

・酒気を帯びる毎に効果上昇

 

【戦闘続行】

 

・ステイタスの耐久値の一時的大幅上昇

・酒気の蓄積量により補正率上昇

・酔いを醒ます

 

 

 

「まったく、ステイタスまで飲兵衛なのかい?」

 

「嫌やわぁ、うちの血には酒が混じってはるんよ。そらこうなりますわ」

 

「冗談が言えるくらいには頭も回ってるみたいだね」

 

「おおきに」

 

「だから褒めてないって言ってるだろう!」




酒呑ちゃんステイタス公開
恩恵貰った直後に数値出てるのはご都合主義なんだ、すまない……こんな無理やりですまない……

力、耐久、敏捷、魔力は公式からそのままぶっこぬき
器用はなんとなくそこそこのランク
魔法はそのまんま宝具使用
スキルも公式からぶっこぬき、効果は弄りつつ公式からぶっこぬき

ぶっこぬきばかりやん!俺も酒呑ちゃんでぶっこぬ(ry

9/13 酒呑童子の台詞と一部描写を修正

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