「お酒くれへんと、骨、抜きおるで旦那はん?」 作:オートスコアラー
ベート・ローガ 対煽り E
若干ベート君が悪者っぽくなっちゃってるんでごめんなさい。
「旦那はん?そんで行く言うはってたんはどの店なん?」
「えっと、豊穣の女主人でしたっけ?」
「うちに聞かれても答えられないわ」
それもそうか。あの時シルさんにあったのは僕だけなんだし。
と、そんなことを話してたらいつの間にか店の前に着いていた。
「あ、ベルさんいらっしゃい……ませ……」
「……ん、どうしたんですか?シルさん」
「えっ!?い、いや。そちらの方は……」
そう言って酒呑さんを指差すシルさん。
「あの、その格好は流石に……あぁでも!私はそんなベルさんでも嫌いじゃないですよ!」
「いや待ってシルさん誤解だから。この人元から」
「そないな事言われたら悲しいわぁ、旦那はんいけずやなぁ」
「ほらぁ!そこの人も否定してないですし。ベルさんってもしかして……」
「いやほんと誤解ですから、酒呑さんも変なこと言わないでくださいよ」
酒呑さんは相変わらずカラカラと笑っていた。シルさんも疑いの目はやめてないけどとりあえず納得はしてくれた……はず。
「まあいいです。その辺はじっくり聞かせていただきましょうか」
とまあシルさんに連れられ入った「豊穣の女主人」だったが、普通に食事は美味しかった。ただ何をどう曲解されたのか僕と酒呑さんがとてつもない大食らい認定されてた。
僕はともかく、酒呑さんは大酒豪でいいと思う。今も空のジョッキ片手に盃で酒を呷っているし。
と、酒場内が騒がしくなった。どうやら団体客が来たみたいだ。
ていうか、あのアイズさんのいるロキ=ファミリアらしい。
全員見るからに高そうな装備に身を固めて、今日の遠征について話してるらしかった。けど、そのまま耳を傾けてたのがいけなかった。
「雑魚じゃあ、アイズ・ヴァレンシュタインには釣り合わねえ」
悔しかった。否定したかった。そう思って喉まで出かかって居た言葉は結局出てくることは叶わなかった。
悔しさの余り、酒場から飛び出し当てもなく走り出す。目的なんてないし、今は頭の中に渦巻いてる衝動に身を任せたかった。
そうして駆け出していって、辿り着いたのはダンジョンの入り口。ポッカリと口を開けるその中に半ば自暴自棄気味に突入した。
☆
「食い逃げか?」
「うっわぁ……ミア母ちゃんの店で食い逃げするなんて、命知らずなやっちゃなぁ」
「……」
「あの、私ベルさんのこと」
「いや、旦那はんならうちが後で探すさかい問題あらしませんで。それよりも」
そういって酒呑童子がふらりと立ち上がり、先程から盛り上がって居たロキ=ファミリアのテーブルに向かった。
「ん?なんや姉ちゃんめっちゃ色っぽい服してんなぁ!どや、うちのファミリア入らんか?」
「遠慮しときます、うちはもう他のファミリアにいることやし、又掛けるのも駄目やろ?」
「あちゃー、もう取られてんのか!残念残念」
「それよりさっきの話、もうすこし聞かせとくれん?」
「なんやなんや、ベートの話に興味持つとか!ベート女引っかける才能あるんちゃうか!」
「うるっせぇよ!てかあんな雑魚のことなんざ何度も話す必要ねえだろ」
「あらあら、うちは気になりますわなぁ。なんせ
空気が凍った。と言うよりは酒呑童子が垂れ流す殺気とベートの漏れ出した殺気がぶつかり、酒場内の会話が一斉に止まった。
「……てめぇあの雑魚の仲間か?仲間のこと言われて腹立ててんのかよ」
「嫌やわぁ。目ぇ節穴かと思いはったらなぁんも知らへん畜生なん?うちが腹立ててる顔に見えると本気で思い?」
「アァ?!殺されてえのかてめぇ!」
「うるさい犬やなぁ。そないな大声出したらお客さん驚くやん」
「表でやがれ!ぶちのめしてやる!」
「ちょっとベート座りなよ!あんた何考えてんのよ!」
「うるせえバカゾネス!てめえは黙ってろ!」
「売り言葉に買い言葉だな、フィン止めなくていいのか?」
事態を静観していたリヴェリアが団長のフィンに聞くが、当人のフィンは酒呑童子をじっと見つめていた。
「せやけど、そろそろ旦那はん迎え行かなあきまへんしここでお暇させてもらいます故」
そう言い扉から出て行こうと酒呑童子が手を掛け
ベートの背後からの蹴りが酒呑童子の背に炸裂した。
「ちょベート!あんた何したか分かってんの!?」
「ベートやり過ぎだ!すこし落ち着け!」
「黙ってろって言ってんだろ!」
激昂するベートを冷ややかに見つつ、蹴られた酒呑童子はゆっくりと起き上がった。
「てめぇ逃げる気か?ここまで煽っておいて逃がすわけねえだろ」
「手負いの獣ほど気をつけ言いはるけど、頭に血の登った獣はもっと野蛮やなぁ」
「ブチのめす!」
空気すら置いて行く勢いで薙ぎ払われたベートの脚撃。一瞬で背後を取り、無防備な酒呑童子の頭にその一撃が入った。
普通ならば
「……なんや、えらいのんびりした脚やなぁ。さっきまでの威勢はどないしたん?」
スッと、当てがわれた華奢な腕一本にベートの蹴りは阻まれていた。間髪入れず逆側から腕が、文字通り必殺の一撃として振るわれるがそれすらも防がれ、腕を引き摺られ地面へと叩きつけられる。
「嫌や嫌や、うちは旦那はん迎え行く言うてはるのに。話聞こえへんなら……多少痛い目見るのも堪忍やね」
地面に倒れ伏すベートの背中を押さえつけるように踏み抜く酒呑童子。抵抗するも、まるで何千の重しを乗せられたかの如く微動だにしなかった。
「テッメェ……!巫山戯てんのか!」
「黙れ犬。うちが手ェ加えてるのは旦那はんのファミリアに迷惑かけへんようにしてるだけ、そんくらいは理解できひんか?」
そういいベートの脇腹目掛けて左脚を振り抜いた。先程までの手加減など微塵もなく、蹴り飛ばされたベートは豊穣の女主人の壁にぶち当たり、それでもなお止まらず壁を突き抜けて元いた席まで飛ばされた。
「うちも少しばかり気ぃ立ってる。頭冷やすのがいいかと思うわぁ。ほな、さいなら」
まるで今までのことなどなかったかのような振る舞いを見せる酒呑童子。誰も声をかけることなく、その姿は夜の街に消えて言った。
「……おい、さっきのなんだったんだ?」
「知らねえよ、でもベートったらロキ=ファミリアのLv5だろ?それをあんな……」
「やめとけ!あんま話してっと俺らも目つけられるぞ」
徐々に騒がしさを取り戻す酒場内は先程のことで持ちきりになっていた。
「なんや、偉いキレ方しよるなぁあの姉ちゃん!あんな殺気垂れ流すの久しぶりに見たわ」
「ちょっとベート!さっさと起きる……て気絶してんじゃん!」
「すまない店主殿。うちの者が壁に穴を開けてしまって」
「いいさ、明日にでもあの子らに払ってもらうよ。食事代も貰ってないしついでさ」
「すまない……フィン、先程からどうした。何も喋らないで」
「……悪かった。すこし気になることがあってね」
別にフィンはリヴェリアの言っていたことを聞いてなかったわけではない。ただそれでも耳に入ってこなかった。
彼女がこちらに来てから執拗に疼く自らの親指をみて思う。
彼女の真意を見極める、と。
よくよく考えたら素足で美少女に踏まれるのってご褒b(ry
9/13 酒呑童子の台詞を修正