「お酒くれへんと、骨、抜きおるで旦那はん?」   作:オートスコアラー

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酒呑童子の知識はWikiとガチャ動画と画像頼りのエアプ小説ですが、ゆっくりしていってください。

酒呑ちゃん可愛いからピックアップオナシャス!


一酒

その鬼に隙を見せるな。

 

特に男は注意しろ。

 

隙を見せたその日には、骨ごと喰われるぞ。

 

その鬼の名前は……

 

 

酒呑童子

 

 

 

 

「ほれほれ旦那はん?はよぉ酒持って来へんと、旦那はんの骨抜き取って飲み干しはってしまうからの?」

 

「は、ハイィィ!」

 

町外れにある寂れた教会、その地下の一室で1人の男が1人の女に酒を渡していた。

 

男は白い髪に若い顔つき、対して女は幼いにも関わらず妖艶な笑みを浮かべ酒を喰らう。

 

「ちょいとそこの小鬼くん!君飲みすぎじゃないかい!」

 

「そないなこと言わんといてぇな。うちにはこれがなきゃ生きていけへんのやから」

 

「毎日毎日ガバガバ飲みまくって!ベル君の稼ぎがなくなったらどうするんさ!」

 

「そんときはうちで稼ぎおります。なんにせよ、今の酒は今しか飲めへんのやから、固いことは言わんといてぇな」

 

「あー言えばこー言うのをいい加減やめろぉぉぉ!」

 

そもそもどうしてこうなったんだっけ?とベルは頭をひねった。それは数日前のこと。

 

いつもの様にダンジョンに行こうとしていた矢先、路地裏にさっと引き込まれてしまった。掴みかかった腕は細いのに何の抵抗もできず路地裏に倒れ込んでしまう。

 

「あらら、力、つよおかった?そらすまんことしたわぁ」

 

上からくる言葉に目を開ければ、なんか痴女っぽい女の人がいた。頭から角を生やし、体のほとんど最低限の部分しか隠してない黒い布貼りの様な刺繍らしきもの。前をはだけて隠す気もない着物を着て、盃と瓢箪を掲げた痴女。

 

あっ、これは関わっちゃいけないタイプの人だ。

 

咄嗟に逃げようとしたが、どこにそんな力があるのか押さえつけられてしまった。

 

「逃げへんとくれや、うち嫌われたおもて泣いてしまいたいわ」

 

言葉とは裏腹にずいぶん楽しそうにカラカラ笑っていた。いや、笑うのはいいんですが離してくれませんか?

 

「そやなぁ、うちをふぁみりあに入れてくれたら考えなくもないんやけどなぁ」

 

「入れます入れます!是非うちのファミリアに入団してください!」

 

するとパッと痴女が手を離してくれた。ようやく起き上がることができ、ゆっくりと立ち上がる。この数分でずいぶんと疲れた。

 

「ほんならこれからよろしゅうな。うちは酒呑童子。好きに呼んでな、旦那はん」

 

「だ、旦那さんは勘弁してください!」

 

「ふふっ、顔赤くして可愛らしいなぁ。そないなことされたらうちも火照ってしまうわ」

 

「と、とにかく!一回うちに案内しますから、こっちです!」

 

逃げる様に駆け出してしまったが、許して欲しい。これ以上は精神的に持たないこと間違いなしだ。

 

 

 

 

そんなわけで今に至る。

 

彼女、酒呑童子を最初に神様に紹介したときは正気を疑われた。まあこんなほぼ丸出しの女性連れ帰ってきてファミリアに入団するなんて言ったら誰でも驚くと思う。

 

本人は笑ってたけど神様の尋常じゃない目線に堪忍したのか、ポツリポツリと、自分のことを話し始めた。

 

「うちは酒呑童子。鬼言われる種族やなぁ。酒と珍しいもん集めるのが趣味やから、どうぞよろしゅう」

 

「鬼……てなんですか?」

 

「旦那はんたちとは、ちいと違う種やなぁ。ほれ、こんな風に力持ちでねぇ」

 

そう言って僕のことを軽々と持ち上げる酒呑童子。力持ちなのも頷ける。

 

「そんなことはどうでもいいさ!どうしてベル君の呼び方が旦那さんなんだい!」

 

気にするとかそこなんですか神様。

 

「そら気に入ってしもたもんは仕方あらへんやんか。旦那はんを眺めてると、腹の下がせつのぉなってしもてな」

 

だからと言って上気した顔でお腹の下を撫でるのはやめて欲しい。自分でも自覚してるくらい顔が真っ赤なんだろう。証拠に神様がすっごい睨んできている。

 

「せやから、ここで世話してもらおおもてね。旦那はんにはちゃあんと許しもろてるからなぁ」

 

「それはベル君の許可であって僕の許可じゃなあああい!」

 

そんなこんなでうちに住み着いてしまった1人の鬼?度々からかってきては酒を飲む、たまに気が向いたらフラッと出かける。そんなことが続いた日だった。ついに神様の怒りが爆発したのだった。そして冒頭に戻る。

 

「せや、旦那はん、今日出かける用があったんじゃ?」

 

「えっ?あ、もうこんな時間か!神様、僕今日は外で食事してきますので」

 

「……また他の女の子を引っ掛けてくるのかい?うちはもうギリギリ超えて弾け飛びそうなんだよ?」

 

「誤解です!」

 

そもそも酒呑さん(フルネームで呼んでたら好きに呼んでいいと言われたから短くして酒呑さんにしてる。呼び捨ては無理)のことだって、成り行きで決まったことだし。

 

ファミリアに入団すると言ったけど、神様に恩恵は貰ってないしダンジョンに潜ることもない。酒を飲むか出掛けるか。

 

普段どこで何をしてるのか、全く分からないのが彼女だ。ついでに言えば強いのかも分からない。

 

前に僕を軽々持ち上げて見せたけど、力持ちなだけではダンジョンに潜るのは些か無謀というものだ。

 

まあ酒呑さんなら大丈夫だろう。何故、とは上手く答えられないがなんとなくそんな気がする。まあそもそもがダンジョンに潜ってないのだし危険云々は意味のないことだろう。

 

「そや、旦那はん?うちも旦那はんの後ろ着いてってよろし?」

 

「こらぁぁぁぁぁあ!君は今から説教だ!逃げられると思うなぁ!」

 

これが、ふとした日に拾ってしまった鬼と、神様と、僕の物語。のちに鬼神と呼ばれる彼女との出会いの話。




9/13 酒呑童子の言葉遣いを少し修正

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