上海可愛い
「このルーミアさんですが、地上に送り届けに行きたいと思います。」
そんな衣玖さんの一言から始まる一日です。
私は白米を食べながら衣玖さんを見る。人形なので食べる必要はないのだがな。
横では天子が味噌汁を飲んでいる。
そんな天子だが目を輝かせている。地上という言葉に反応しているようだ。
「衣玖!!私が連れていく!!」
「ダメです。」
「なぜにッ!!」
即答だった。
まぁ色々と危険もあるからな。
私は空になった茶碗を机に置き、その詳細を聞くことにした。
「誰が連れていくんだ?」
「とりあえずルーミアさん本人と、地上と天界を行き来出来る私、ついでに上海さんも護衛として「何で私はダメなの!?」.....護衛として連れていきましょう」
綺麗なスルーだ。点数を付けるなら85点は妥当だろう。
すると天子が私を掴み上下に振り始めた。
「何で私はダメなのよ!!謎よ!!こんな小人は連れていくのに私は留守番なのよ!!」
「分かりましたから総領娘様、とりあえず上海さんを下ろしてあげてください。さっき食べた白米が出てきそうです。」
「え?あ、ごめん...」
私は天子の手から離れ地面を転がる。目の前の景色は水車のように回っていた。
~~人形休憩中~~
「.......ふぅ.....」
「ごめんなさい...」
天子が床に頭を付けて謝ってくる。
別にそこまで怒ってはないんだが...
するとそれを見ていたルーミアが口を開いた。
「.....それよりもどうやって地上に行くの?.....」
「飛べば何とか行けるじゃん」
「.....地上の妖怪に撃ち落とされる.....」
「.......衣玖さん何か策を...」
そう言いながら衣玖さんを見る。
すると衣玖さんは身につけていた羽衣を外し、私たちの前に差し出す。
私はそれを受け取る。その羽衣はずしりと重く、鋼のように硬かった。
「これを盾にして行けば、雑魚の攻撃など毛ほどの痛みもありません。」
「衣玖さん...これ付けて生活してて重くないの?」
「もう慣れましたよ」
「あっそうですか。」
私は衣玖さんに羽衣も返す。衣玖さんが触れた瞬間重さを失ったかのように軽くなった。
「それでは私は下に降りる準備をしてきますので、お二人共も準備をどうぞ」
「.....私は大丈夫.....」
「私も大丈夫かな」
すると天子が床を這いずって近づいてくる。
「私は.....何故行けないんだ.....」
「えっと.....そういうのは.....あれだ。強い人が家を守るべきだろ?.....そういうものだろ?」
苦し紛れの言い訳だった。
だがそんな話でも天子は信じてくれたようで、ゆっくりと立ち上がりシャドーボクシングを始める。
「そうね!!私のような強い人が家を守らなきゃ!!安心して行ってきなさい!!私の強さにかかれば侵入者なんて秒で死ぬわよ!!」
「まぁ、頑張ってくれ。」
という訳で天子の説得に成功した私は、ルーミアを連れて外に出す。
外では衣玖さんが地面に羽衣を敷き、その上から手を当てていた。
こちらに気づいた衣玖さんは手招きをしながら羽衣の裾を掴むように促した。
「上海さんこれ掴んでください。ルーミアさんは私が担ぎましょう。」
「にしてもこんなもので地上に行けるのか?」
「まぁ、見ておいてくださいよ」
そう言いながら衣玖さんは拳を振り上げ、電気を纏わせる。
そしてその拳を落雷のように素早く羽衣の上に落とす。
すると羽衣はドリルのような形になり、地面を貫通する。その羽衣ドリルと一緒に衣玖さんも落ちていき、羽衣ドリルを掴んでいた私も落ちた。
そして私たちは地上へと落ちていった。後に英雄の集まる日と呼ばれる日に。
[やっと地上に行けますね.....懐かしの...あれ?私、幻想郷の地上に行ったことあったっけ?]