転生?知ったこっちゃない。
上海可愛い
[工房にとり]
工房の中は静まり返っていた...もう動く物は無い。
全ての侵入者をoneshotonekillで眠らせた...しばらくは起きないだろう。
誰かが外の方から走ってくる音が聞こえる。
「......待ち伏せ...するか...」
近くの椅子を倒し、座る面を扉の方に向けその後ろに隠れる。これで気づくやつはいないだろう。
「にとり~?居る~?.....何?この臭い.....血の匂い?」
工房の周りは血の匂いがするだろうがこの中は比較的いい匂いのはずだ。
ゆっくりと椅子から顔を出す。工房の玄関口に立っていたのは、鍵山雛だった。
「なんだ...あんたか...」「その声はこの前の人形さん!?にとりは!?にとりは無事!?」
親の身を心配するかの如く聞いてくる。
「今、地下室にいるよ。」「その通~り!!そして今私は地上に上がってきたのだ!!」
と言いながらにとりさんが地下室から出てくる。それを見て雛さんは安心した様子でこう告げる。
「にとり、しっかり聞いて。山の上はもう駄目。天狗たちの本部も、守矢神社も焼き討ちにあったわ.....率直に言うと幻想郷全体が何者かに襲撃を受けていr」
話が途中で途切れる。何が起こったかと思い雛さんの背後を見ると、雛さんの後ろに1匹の白狼天狗が居た。
そしてその天狗は雛さんをその手に握っている小刀で背中をザックリ刺していたのだ。
赤い血を滴らせながら雛さんがこちらに倒れてくる。それをすぐさま支えると、にとりさんがその白狼天狗に飛びかかっていった。
「にとりさん!!」
呼びかけ虚しくにとりさんはその白狼天狗を押し倒し、殴り掛かる。
「お前っ!!お前ぇぇぇ!!ふざけるなぁぁぁぁ!!殺すっ!!絶対に殺す!!!!」「にとりさん!!」
にとりさんが叫ぶたびに鈍い音が鳴り響き、どんどん白狼天狗の顔が歪んでいく。
血が飛び散り、白狼天狗の意識が無くなろうとも殴り続ける。
にとりさんの拳の皮がめくれ、血が滲んでも殴り続ける。
私は止めることが出来なかった.....
その時掠れた声がにとりさんの耳に届く。
「.....やめ...て」「雛?」「雛さん!!」「にとり...もう、その白狼天狗のライフはゼロよ.....」「雛っ!!」
にとりさんは殴るのをやめ、雛さんを抱き寄せる。私はちょっと横にそれる。
「にとり...あなたの手は...他人を殴るための物じゃない...あなたの...手は...素晴らしい発明品を作るための物でしょう...?」「雛...血が出すぎだ...喋るのをやめてくれ...頼む...!」「あなたが...これを作ってくれた時...すっごい嬉しかった...」
と言い雛さんが手についたシュシュを掲げる。
「にとり...あなたは...こんな素晴らしい物を作れるんだもの.....きっと私がいなくても...いなくても...」
雛さんの声が段々小さくなってくる。
「.....きっと人気者になれる...だから、私の事は良いから.....他の人を救ってあげて...?」「そんな事言うなよ.....生きてくれよ.....」「にとり....あなたは...素晴らしい発明家...なの.....だか.....」「雛?雛!!起きてくれ!!雛ぁ!!」
ぐったりした雛さんの手をにとりさんが握り、雛さんの胸に顔を埋める。その顔は涙と返り血でベトベトになっていた。
「雛ぁ.....雛ぁ.....ひ.......ん?...心臓が...動いている...?」
確かめるように胸に耳をピッタリとつける。
「聞こえる...聞こえるぞ!!上海!!包帯もってこい!!あるだけだ!!」
急ぎ地下室から包帯を持ってくる。にとりさんはそれを受け取ると、、素早く雛さんの体に応急処置を施す。
「上海!!私は雛を永遠亭まで連れていく。一緒に来て欲しいが、凶暴化した奴らから隠れるためのステルススーツは私と雛で一杯一杯なんだ...だから...その...」
悪く言えば、見捨てていくという事か...ならそれっぽい理由を付けて、離脱した方がにとりさんの心に負担はかからないだろう。雛さんもこんな状態だし、無理はさせられない。
「あぁ、私なら大丈夫ですよ。この装備でまだ正気の人を華麗に救出して見せますよ!!しかもそれなら足止めも出来て、一石二鳥ですし!!」「え?...あぁ、そうか...ありがとう!!なら任せるよ!!その装備もプレゼントするよ!!」
こんな無謀な戦い、やれば死ぬのは承知の上。だがこの命、役に立つのなら使ってやるよ。
今思えば色々なことがあった人生だった。
アリス様に作られて...そして動けるようになり...家出をし...人里へ行き...言葉を覚え...紅魔館で働き...香霖堂で吹雪に見舞われ...地底へ行き...地霊殿で働いて...左腕をやられ...ここに来た。
その長いようで短いような人生ももうすぐ終わるのか...
時間稼ぎ程度に使えるのなら、友の為に喜んで死のう...
「それじゃあ私達は先に永遠亭に行くから、絶対来てね!生存者がいたら私達も治療手伝うし!!.....えっと...時間稼ぎも程々にな!!」「分かってますよ。」「それじゃあ私達は先に行くから!!絶対また会おうな!!」「約束です!!」
それを聞き終えると、にとりさんはステルススーツを身につけた。どっちかと言うとマントだが...
そして見えはしないが、足跡を見て山を降りていった事を確認するとため息をついた。
「.......我が人生に.....一遍の悔いなし...か.....よく言ったものだな...」
皮肉のようなものを言い、私は山を登り出す。さぁ、虐殺タイムだ...
PSG装備とランスを身につけた上海は自分の死に場所へ向かう...
戦う必要などない。が、上海の背には友人の命がある。上海は友人のため戦う。例えその身が滅びようとも.....的な?
次回!!上海死す!!
この次回予告前やった気が.......
ていうか今回長ぇ...