魔法薬を好きなように   作:烏鷺烏鷺

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第31話 漏れるものなのね

親父からでた言葉は

 

「悪い知らせは2つある」

 

「2つ?」

 

「1つ目は、ロマリアの神官からの招待状だ」

 

「って、まさか、異端審問かい?」

 

「そうではなかろう。始祖の降臨祭の初日に風竜にのったとかで、興味をもったらしい」

 

あらら。まさかあの成竜は、使い魔だったのか?

使い魔となった幻獣は話すことがある。けれど、話してこなかったよな。うーん。

 

「そんな日に、お前は何をしていたんだ?」

 

「『アンドバリ』の指輪探し」

 

詳しくは、その場で話したところ

 

「そうか。ワルド元子爵を逃したのが、宮廷にそのまま漏れるとお前の立場はまずいぞ。しかし、ガリア王国がからんでいたのか」

 

「今となっては証拠も無いから、話さなければ大丈夫だと思うけど? それともワルド元隊長だけでもつかまえて、ガリア王の使い魔の護衛を減らしてくればよかったと思うかい?」

 

「ガリア王次第だが、無能なのは魔法だけだからのぉ」

 

「それなら話はもどるけど、ロマリアの神官の招待状は?」

 

「これだ、これ」

 

今、懐から3通とりだして、1通か。

 

「今、あけてもいいかい?」

 

「よかろう」

 

招待状をあけてみると、場所は宮殿で王軍管轄の部署だ。なんで、そんなところに神官がいるんだとも思うが、

 

「神官の名前がジュリオ・チェザーレって、昔のロマリアの有名人と同じなんだけど、本名?」

 

「残念ながらわからん。ただし、お前と同じくらいの年齢で月目だから、見ただけですぐにわかるだろう」

 

「月目は不吉だって、地方では言われることもあるのに、神官ねぇ」

 

「まあ、お前が使い魔である、というところに興味をもったとは言っているので、少々悪いといっても、異端審問ということはないと思うぞ」

 

「はぁ。わかったよ」

 

「それで、2つ目の悪い知らせだが……ティファンヌ・ベレッタは結婚した」

 

「へっ?」

 

「間の抜けた顔面になりおって」

 

「いや、冗談じゃないの?」

 

「11月下旬に結婚した。アルビオンへ戦争をしかけるところだったので、まだ、パーティはおこなわれていないがの」

 

「誰とぉ」

 

「相手はアドリアン・ド・ケルシー男爵。ジュール・ド・モット伯爵の4男だ」

 

名前にドが入っているのは、領地から名前をもらっているということか。

 

「4男なのに、分領してもらえるだけの領地があったんだ」

 

「気にするのは、そっちか?」

 

「まあ、ティファンヌにはふられたってことだろう。最後に手紙の1通ぐらい送っておいてくれればよかったのにとは思うけどさぁ」

 

「実は、預かっておる」

 

そう言って、親父はバツが悪そうにしながら2通の手紙をだしてきた。1通はティファンヌからだったが、もう1通はベレッタ家男爵として家紋の蝋封をした手紙だ。

 

「へー、ティファンヌの父親が正式に手紙を出してくるって、結構な堅物だったんだねぇ」

 

「一面では、そうかもしれないが、結果の責任としては私にあるかもしれないからなぁ」

 

「親父が? なんで?」

 

「実は、ティファンヌ嬢は10月中旬の頃に、血が白くなっていく種類の病にかかったことが判明してな」

 

前世でいう白血病か。正式名称は忘れたが、そんなに早くわかるものかと思い

 

「たしか、最後にティファンヌにあったのが10月初旬だから、よくそんな早くにわかったね」

 

「まあ、そう言うな。お前とティファンヌ嬢の間に夜の営みがなかったか、医師に診てもらった時に、そっちは問題なかったが、血の方になにか問題があるということで発覚したそうだ」

 

「それで?」

 

「何か所かあたったらしいが、つてがなくて私をたよってきてな」

 

「何のつて?」

 

「水の秘薬を入手するつてだ」

 

「そういえば、わずかに入手できている分は、すべて国が買い上げていたみたいだけど、もしかしてそれで水系統の関係ということでモット伯爵との仲介をしたとか?」

 

「結果としてはそうだの。モンモランシ伯爵家とモット伯爵家への紹介状を用意した。結果として普段王宮にいるモット伯爵を頼っていったようだが、ベレッタ男爵がティファンヌ嬢を一緒につれて、水の秘薬を分けてもらえるように頼みに行った時に、そこにたまたまそこの4男がいて、一目ぼれしたとかで、それで水の秘薬を渡すのは結婚を条件とされてしまったそうだ」

 

ティファンヌに一目ぼれね。そこまで美人とか、ものすごく可愛いとかまではいかないと思うんだけど、『蓼食う虫も好き好き』という前世で聞いた言葉を思い出していた。

 

「その手紙は、夕食の後でも読むよ」

 

「お前がそれでよかったらな」

 

「血が白くなっていく種類の病って言ったら、生死がかかっているんだから、仕方がないと俺も思うよ。それよりも普段の夕食の時刻を過ぎているよ。夕食にしない?」

 

そう言って、夕食は親父と戦争中のことをお互いに話しながら過ごしてから、ワインを1本部屋に持ち込んで、まずはティファンヌの方の手紙を見た。書いてあったのはほんのわずか。

 

『ジャックへ

  この手紙を読んでいるころにはケルシー夫人となっていると思います。

  だから、もう会わないようにします。

  さようなら。

    ティファンヌ・ベレッタより』

 

この短い中の文書で『さようなら』か。ティファンヌの性格だから、パーティで会ったとしても、夫を介しての交流までしかもたない気でいるのだろう。

 

それとベレッタ男爵からの手紙では、謝るにしても美辞麗句をならべているのは面倒だとして、手紙をティファンヌがやめたのは、俺が戦地で動揺しないようにとの配慮だということが実質的な情報だった。ティファンヌならそうしそうだから、その通りなのだろう。

 

そういえば、この世界に生まれて付き合うような相手から、ふられたのは実質初めてだったよな。ティファンヌのことを思い出しながら、それをワインのつまみにして、ワインが無くなったところで寝ることにした……

 

 

 

翌朝は、面倒なことはとっとと片づけるということで、ジュリオ・チェザーレとかふざけた名前をつけた神官のところへ行くことにした。実際に会う前に、神官の評判を聞いて歩いたけれど、美男子だが、性格に難があるとか、女性をほめるのがうまいとかいう、ほめられてうれしがっている女性とかもいたりと、人物像はしぼりこめないが、やっかいそうな相手だとわかったことだけでも良しとして、面会に訪れ会うことができた。

 

「ご招待いただきありがとうございます。ジャック・ド・アミアンでございます」

 

「こんなに書類がたまっているところにきてもらって悪いね。僕がジュリオ・チェザーレ

だ。ロマリアの神官だよ」

 

「それは、ロマリアの神官に対してお話すればよろしいといいことですか?」

 

「正確には今は、ロマリアの神官の職は一時的に解かれているが、この場で見聞きしたことはロマリアの神官として、対処することを始祖ブリミルに誓おう」

 

「ならば、ここで、周りの音を遮断する魔法を使わせてもらってもよろしいですか?」

 

「その方が都合がいいかもしれないね。使ってくれるかな」

 

サイレントの魔法をかけながら、これはまた厄介な相手かもしれないと頭が痛くなるだけですめばいいなと思った。

 


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