今回はいつもよりは長いです。
い つ も よ り は
決闘の映像を見ていた有馬は、不思議な気持ちでいた。
遊作が負けないか心配していると同時に、主人公がモブとの戦いでそう負けることは無いだろうという安心。
とてもこの場で、草薙さんが心配していて遊作が頑張っている中で、そんな気持ちでいるのに何も思わない訳は無い。
最悪だな、俺。
そう思っていた。
しかし、それでもどこか安心したままだ。
どうせ決闘をすれば話が進む。
俺はただ楽しめれば良い。
遊作がどうにかするだろう。
負けたって誰かが補うだろ。
心の奥では、正直な所そう思っている。
決闘者として、このアニメの世界というのは、正に夢の世界だろう。行きたいと思う人もいるだろう。
けど、実際はどうだろうか?
原作を知っていて面白そうだから、またはただ面白そうだから。もしかしたらアニメの中でやりたい事があるから。
そんな理由では無いだろうか?
そんな俺はというと、かなり楽しんでいると言えるだろう。
「私はスキルを使わせてもらう。」
「何!?スキルだとっ!?」
どういうことだ?
そう思いつつ、目の形をしたAIを睨みつける。
『あぁ、手短にと言われたから割愛した。』
「お前・・・、自分の命について真面目に考えたらどうなんだ・・・!」
コイツは本当に現状を理解しているのだろうか?
負ければ自分はハノイの手に渡るというのに。
『一応は考えてる。スキルっていうのは決闘中1度だけ使える物だ。例えばドロー、攻撃力の変動、ライフを増やしたり減らしたり・・・様々な種類がある。』
つまりは手札になくとも使える変わった速攻魔法のような物だろうか?
「話は終わったか?それではスキル、ダブルドローにより、カードを2枚ドローする。」
・・・なっ!?
「何だその効果は!?」
『インチキ効果もいい加減にしろっ!』
スピード決闘を知っていた
というかそうであって欲しくない物だ。
「ふっ!勝てば良いのだよ勝てば!」
・・・・・・・・・・・・・・・(殺意レベル推定60)
『おうおう。playmaker様がお怒りだねぇ?』
「黙っていろ、消されたくなければな?」
次煽ったらホントに消すからな?
そう遊作は目で警告した。
「ふん、今更消えゆく者にどう思われようが構わん。」
「消える・・・?」
『言い忘れてたが、こちらで大きなダメージを受けたりすれば、現実の体に戻った時フラッシュバックが起きて、精神的ダメージが襲う可能性がある。』
そういう事は割と早く言って欲しかったが、まぁ良いだろう。
「今のドローで、私は最高の手札を得た。そして波動キャノンは自分のスタンバイフェイズにカウンターが乗る。ククク、コイツで沈ませてやる。私は波動キャノンの効果発動!」
ハノイの声に反応して、波動キャノンはコチラに標的を定める。
「この一撃で消えるが良い!波動キャノン発射!」
波動キャノンの砲台に、青白い光が溜まって行く。
ハノイと俺の距離はそこまで遠くない為、これを避けるのは難しいと思えた。
そして、光は放たれ、俺に向かって一直線で飛んで来る。
playmaker
LP3200ー1000
=2200
「あぁ!playmakerが!?」
「!?」
俺の目には波動キャノンの効果でダメージを受けた遊作が、コースから落ちたように見えた。
見間違えか?
そう思ったが、映像越しのハノイの顔がにやけているのを見て、見間違えでは無いと把握した。
マズい。あの高さから落ちても大丈夫なのだろうか?
いくらVRといえども、心配してしまう。
最悪コースに戻れず、遊作の負けともなりかねない。
「あっ!ブルーエンジェルだ!」
その声を聞いて、有馬は思考の海から帰還する。
忘れていたが、そういえばあそこにはカリスマ決闘者の鬼塚と財前がいた・・・。このタイミングで現れたということは・・・
ブルーエンジェルは落ちているplaymakerを見て、手の平から青い色をした鞭を出す。
そしてplaymakerの乗っていたDボードを鞭で強く叩く。
すると、持ち主から離れていたDボードが軌道を遊作の方へ変更し、そのまま凄い勢いで移動する。
「!」
近づいて来たDボードを手に取り、遊作はさっきまでいたコースとは違うコースに移った。
どうやらどのコースもさっきまでいたコースに戻れるように出来ていたようで、遊作は何とかコースに戻ることが出来た。
「ちっ!余計な真似を・・・だがお前のライフもクラッキング・ドラゴンによってやがては0になる・・・」
ハノイはブルーエンジェルを睨むが、直ぐに遊作との決闘へと意識を切り替える。
「カードを1枚伏せ、装備魔法、エアークラック・ストームをクラッキング・ドラゴンに装備!このカードを装備したモンスターが相手モンスターを戦闘破壊した場合、このカードの装備モンスターはもう1度攻撃出来る。行け!クラッキング・ドラゴンで、サイバース・ウィザードを攻撃!」
「罠発動、スリーストライク・バリア!その効果で俺はこのターン、戦闘破壊を無効にする。」
「だがダメージは受けてもらう!」
3つの効果から俺が選んだのは戦闘破壊の無効。
しかしながらダメージの発生までは無効に出来ず、エアークラック・ストームから発せられた攻撃は、俺の体全体に突風を浴びせる。
playmaker
LP2200ー1200
=1000
playmaker
LP1000
手札3
場 サイバース・ウィザード
ハノイの騎士
LP2200
手札0
場 クラッキング・ドラゴン(エアークラック・ストーム)
突風を受けた俺はまたも落ちそうになるが、AIの指示により、仕方無く右に移動してやった。
また俺を落として決闘に勝とうとしたのだろう。
しかし、ハノイはニヤリと笑っている。慢心しているのだろうか?
「これで貴様は終わりだ。」
ニヤニヤと笑いながら、ハノイは俺の敗北と言った。
まだライフが残っているのにも関わらず。
確かにクラッキング・ドラゴンの効果は俺のライフをあっという間に削れるだろうが、効果での破壊が出来れば、俺のライフは減らず、アイツのモンスターは0となり、充分逆転の余地はある。
それとも、あの伏せカードが何かあるのだろうか?
「まだ気付いて無いようだな?自分の置かれた状況が・・・」
「何・・・?あれは・・・!」
ハノイの視線の先を見ると、そこには建物を次々と破壊していくハリケーンの姿があった。
目の前のコースに進路変更の道は無い。
「ぐぅ・・・うわぁぁぁ!」
迫って来た暴力的な風に、遊作は抗うも、遂には飲み込まれてしまった。
「おい!お前わざとこのコースに誘導したな!?」
『あぁ、そうだ!このデータストームの中に、お前が勝つ為に必要なカード、未知のモンスターがいる!』
「未知のモンスター・・・」
さっきまでとは気迫が違うAIの言葉を、俺は素直に受け止めた。
『今こそスキル・・・ストームアクセスを使う時だ!ライフが1000ポイント以下の場合、データストーム内からランダムに、カード1枚にアクセス出来る!』
遊作のアバター、playmakerの黄色のラインに光が走る。
光が強くなるに連れて、風の勢いも徐々に強くなる。
「ぐ・・・俺には・・・勝たなければいけない理由が3つある・・・!1つは、失われた過去を取り戻す為!2つ目は、草薙さんの弟を助け出す為!そして3つ目は・・・!」
誰かわからない。
どんな人だったかも。
それでも覚えている。
俺に・・・
「俺に勇気をくれた!アイツに会うため!」
手に光が集まる。
暖かい光。
絶望を切り開く希望の光が。
『今だ!』
「ストームアクセスッ!!」
「データストームに呑まれたか・・・これでイグニスを回収出来れば・・・!?」
データストームから1人。帰って来ると微塵も思っていなかった人物が自分の目の前に降りてきた。
あのデータストームから出てきただと・・・!?
「くっ!だがライフは高々1000。クラッキング・ドラゴンの効果で直ぐに消し去ってやる・・・!」
「俺はサイバース・ウィザードの効果発動!サイバースアルゴリズム!」
再び青い魔法使いは黒き機械竜に杖を向け、呪文をぶつける。機械竜は突然の事に動揺する。
「そして、サイバース族が自分の場にいる時、俺は手札からバックアップ・セキュレタリーを特殊召喚出来る!」
「レベル3のモンスターの登場で、攻撃力を600下げ、貴様に600のダメージを与える!」
playmaker
LP1000ー600
=400
「更に手札からスタック・リバイバーを召喚。」
小さな箱のような機械が現れる。
「ふん馬鹿め!、クラッキング・ドラゴンの効果発動!レベル2のモンスターを召喚したため、攻撃力を400ダウンさせ、貴様のライフに400のダメージを与える!これで終わりだ!!」
playmaker
LP400ー100
=300
「何!?たったの100だと!?」
有り得ない。機械が壊れたのかと疑うが、その答えを遊作は当たり前の用に説明する。
「ソイツの効果はダウンした数値分のダメージを与える効果だ。よって、元から攻撃力100のスタック・リバイバーは400下げる事が出来ず、俺へのダメージは、下げられた100となる。どうした?お前、自分の使っていたカードの効果も理解出来ずに使っていたのか?」
「くっ!黙れっ!貴様のライフは300に対し、私のライフは2200。その様な雑魚で貴様が私に勝てる筈が・・・!」
「それはどうかな?俺はまだ、エースモンスターを出していない!現れよ!未来を導くサーキット!」
Linkvrainsの偽りの空にゲートが開き、そこへ遊作とモンスター達は進んで行く。
通り抜けた先には、神秘的な空間が広がっていた。
遊作は、ゲートに付いている矢印、アローヘッドを確認する。
「アローヘッドを確認!召喚条件は、効果モンスター2体以上!俺はスタック・リバイバー、サイバース・ウィザード、バックアップ・セキュレタリーの3体をリンクマーカーにセット!」
それぞれのモンスターが、上、左下、右下の灰色のマーカーの中へ、光となって移動する。
「サーキットコンバイン!リンク召喚!現れよ!リンク3デコード・トーカー!!」
主の声に反応し、剣士は
「馬鹿な!?お前のエースモンスターがリンクモンスターだとぉっ!?」
「リンクモンスターはレベルを持たない!よって、クラッキング・ドラゴンの効果は発動しない!そして、墓地に送られたスタック・リバイバーの効果発動!これによ、サイバース・ウィザードを墓地からデコード・トーカーの左下へ守備表示で特殊召喚!デコード・トーカーはクラッキング・ドラゴンとサイバース・ウィザードがリンク先にいる為、効果により1体に尽き攻撃力を500アップさせる。」
デコード・トーカーの持つ剣がプラズマを帯びる。
「バトルだ!デコード・トーカーで、クラッキング・ドラゴンを攻撃!デコード・チェスト!!」
黒い機械竜の装甲を、剣士は力強く断ち切る。
「ぐ・・・おのれぇぇぇ!!」
ハノイの騎士
LP2200ー3300
=0
「・・・お前に、決闘者を名乗る資格など無い!」
ふ~疲れた~。
お気に入りにしてくれた方々、ありがとうございます!