「よし、これで避難は終わったか・・・」
「お兄ちゃんありがとう!」
俺は会場の近くにあったビル付近で、まだ会場に人が残っていないかの確認をしていた。
草薙さんも誘導を終えて、俺の近くにあったベンチでぐったりとしている。
「全く・・・肉体労働はハッカーのやることじゃ無いんだがねぇ・・・」
言葉だけ聞くと嫌々やっていた用に聞こえるが、その顔には、避難し終えた人達を見て安心したような表情が見える。
「ははっ・・・、僕も疲れました・・・」
「だろうな。良く頑張ったよ君は。」
そう言われると嬉しい。
が、喜んでばかりじゃいられない。
「・・・遊作は大丈夫でしょうか・・・」
「・・・・・・」
流れる沈黙。
沈黙が嫌な予感をより大きな物にした。
しかし、そんな沈黙を壊すかの用に、ビルにいた人達が大きな声で騒ぎ始めた。
「おいコレ!本当にplaymakerなのか!?」
「ハノイの邪魔をしてる決闘者・・・まさか本当に・・・!?」
良く見れば、ビルに避難した人達は、自分、または他人の決闘盤から出ている映像を見ていた。
ハノイの騎士、playmaker、戦っている
有馬と草薙はこの3つの言葉を聞いて、透かさず近くの人の決闘盤を見る。
そして、その映像には風のような波に乗って決闘しているplaymakerとハノイの騎士の姿が見えた。
「!?これはデータストーム!?」
「それって噂の・・・、ということは、これは・・・」
「あぁ・・・スピード決闘だ。」
俺は今、突如発生した青紫の色をした風、データストームに乗り、スピード決闘をしている。
ルールは俺の決闘盤に寄生した人質に聞いた為、ある程度の理解は出来た。
その際、俺はこのスピード決闘を知っていたと気づいた。失った記憶の中に、スピード決闘に関する何かがあった気がした。
周りには黒い色をした建物が多く見え、とてもさっきまで陽気に決闘をしていたとは思えなかった。
相手はさっきまで破壊活動をしていたハノイの騎士。
その姿は相変わらず白い服に機械的なマスクをしていた。
『どうやら奴はスピード決闘を知っている用だな。何なら俺がサポートしてやろうか?』
「必要ない。黙っていろ!、集中する。」
コイツの助けなんて無くとも、俺はハノイに勝つ。勝たなければならないんだ。
やがて、Dボードという物に乗ったハノイと俺は近づき、やがてコースにて交わった。
「「スピード決闘!!」」
playmaker
LP4000
手札4
ハノイの騎士
LP4000
手札4
「先行は私からだ。私のターン!」
そういってハノイは虚空に手を出す。
するとそこから、データ化された手札が出てきた。
「完璧な手札だ。これなら最初から全力で行ける・・・。相手フィールドにモンスターが居ない時、私は手札からハック・ワームを特殊召喚できる。更にもう一体も特殊召喚する。」
「攻撃力400・・・それが2体。上級モンスターを呼び出す気か」
「その通りだ。これこそリボルバー様から渡された最強のカード・・・!」
リボルバーというのがハノイの指揮官なのか?
『playmaker様?考えてる所悪いが、奴のエースモンスターが来るぜ?』
「来い!クラッキング・ドラゴン!!」
現れたのは、俺とこのハノイの騎士が出会った際にハノイの乗っていた黒い体を持つ機械の竜。その体には、幾つもの緑色をしたオーブのような物が付いていた。
「1ターン目から攻撃力3000か・・・!」
「更に手札から波動キャノンを発動し、ターンエンドだ」
ハノイの騎士
手札0
LP4000
playmaker
手札4
LP4000
相手のフィールドには攻撃力3000のモンスター・・・おまけにスピード決闘ではLP4000・・・1度でもダイレクトに食らったらほぼ負けだ・・・。この局面を切り開くカードをここで引ければ・・・
「俺のターン、ドロー!」
『気をつけな。あのモンスター、強いよ。』
「そんなことは分かっている!俺は手札からサイバース・ウィザードを召喚する。」
現れたのは青い色をした魔法使い。
その手には自分と同じ位の大きさをした杖がある。
「クラッキング・ドラゴンの効果発動!相手がモンスターを召喚、特殊召喚した場合、そのモンスターのレベル×200、攻撃力をダウンさせる。更に、この効果で下がった攻撃力の分、お前はダメージを受ける!」
「ぐぅ・・・」
playmaker
LP4000ー200×4
=3200
「クハハハハハハ!これこそがリボルバー様が私に授けてくれた最強のカードの力だぁ!」
何が最強だ。どんなカードにだって弱点はあるというのに。
「サイバース・ウィザードの効果発動。1ターンに1度、相手フィールドの攻撃表示モンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターを守備表示にする!サイバースアルゴリズム!」
サイバース・ウィザードがクラッキング・ドラゴンへ持っていた杖を向けると、クラッキング・ドラゴンはいきなり弱り始めた。
「サイバース・ウィザードの効果で守備表示になったモンスターをサイバース族が攻撃する場合、そのターンの終了時まで、貫通ダメージを与える!」
「ほう?」
クラッキング・ドラゴンは高い攻撃力の代わりに守備力は0。だというのにハノイは全く動じていない。何かあると見て間違いないだろう。
「カードを1枚伏せ、バトル。サイバース・ウィザードでクラッキング・ドラゴンを攻撃!イリュージョンスパイク!」
ハノイの騎士
LP4000ー1000
=3000
「残念だがクラッキング・ドラゴンは自身のレベル以下のモンスターとの戦闘では破壊されない・・・」
「・・・ターンエンドだ。」
playmaker
手札4
LP3200
ハノイの騎士
手札1
LP3000
『まさか戦闘破壊に対する効果まであるとはな。それにしてもplaymaker様は意外と驚いていないみたいだな?』
「アイツはモンスターが守備表示にされても表情を曇らせなかった。何かあるとは思っていた。」
『相手の僅かな動作も見逃さないか・・・流石はplaymaker様だ。』
見逃さなかったのは確かだ。だがこのスピード決闘では、常に注意していなければならない為、普段やっている決闘よりも、相手の表情が読みにくい。
「これが・・・スピード決闘・・・!」
やる前の説明では簡単な物だ予想していたが、どうやらそんな簡単な物では無かったらしい。
遊作は一人、自分の考えを目の前の状況を見て、間違っていたと訂正していた。
未OCGカードの穴を補うのって大変なんだと気付きました・・・