「あー、暇だ。」
『オオォォン』
意訳:迷惑を掛けないためだ。我慢しろ。
現在俺は、草薙さんのフードトラックの中のベッドで寝ている。ホント、何でこうなったのやら・・・。
「まさか有馬が風邪をひくとはなぁ?」
「遊作のブルーエンジェル探し見たかったなぁ~・・・。(あ、赤き竜に乗っていけば上空からワンチャン・・・?)」
『オオォォォォン!』
意訳:無い、絶対に無い!
(えぇ?だってお前ライダーだろ?ほら、アサシンはいないからさ?)
『オオオオォォンン?』
意訳:それ以上言うと決闘竜でリアルダイレクトアタックするからな?
ア、ハイ、サーセン。今分かったが、こう、体調が悪い時にテレパシーって辛いもんがあるな。何か包丁で自分の手を切りそうになった時感じるあの変な感じが繰り返されるって感じ。
つまり心臓に悪い。
「草薙さん?何か飲み物が欲しいんだけど・・・何か貰える?」
「あぁ、ちょっと待ってろ~」
草薙さんは棚からゴソゴソと何かを探している。
その様子を見ていた有馬は遊作に渡したカードの事を考えていた。
GO鬼塚との決闘の後、遊作はこのフードトラックに来た。その際に楽しい決闘を見せて貰ったお礼という事でカードを渡したのだ。遊作はいらないと言ったりして遠慮していたが強引に押し付けた。というのも、アニメの世界なのだからレギュラー陣との決闘は必ずあると考え、GO鬼塚との決闘が終わった今、リボルバーは直ぐには出てこないとして、決闘しそうなのは財前葵ことブルーエンジェル。ライフ4000のスピード決闘があり、カードはOCG効果のこの世界であの効果がスピード決闘で出てくるとしたらデッキアウトにバーンと、焼け死ぬ可能性が出てくる。
だからこそ、強引にでも遊作に対策カードを持たせたかったのである。
しばらくその様な事を考えていると、草薙さんが自分で淹れたと思われるお茶を持って来てくれた。そのお茶はドリンクメニューにあった――
「えぇっと?ドーピング・・・ティー・・・?」
「あぁ、飲んだ人がな、これを飲んだら力が湧いてきたって言っててな。きっと良くなると思って淹れてみた。」
出てきたのはドス黒いお茶。決して珈琲では無いらしい。周りに危険なオーラを纏っているのを見る限り、飲み物と言えるのかも怪しい。
いや、それ絶対ヤバいヤツだからね?
てか何でドーピングティー?もっと良い名前あっただろ!?
『・・・・・・ォオオォォン』
意訳:・・・これも試練だ・・・
テレパシー切ったから何言ってるのか分からないが、凄く怯んでいるのは良く分かった。
もはや赤き竜まで怯ませるとか・・・これアレだ。絶対この世にあっちゃいけないヤツだ。攻撃力が一瞬上がるけど後からどんどん下がって行くヤツより絶対ヤバい。
「くっ!、だけど善意で貰った物を断る訳には・・・!」
そう言って有馬は震える手で
「有馬?どうした?何だか目が死んでるが・・・?」
「・・・・・・・・・・・・・・・イエ、オイシカッタデスヨ?」
「そうか、ならもっと作るか。」
以降、このお茶の名前は禁じられた聖杯となったという。
時は少し遡り、遊作は有馬から押し付けられたカードを手にアイと相談をしていた。
「・・・・・・有馬から貰った3種のカード、デッキに入れるべきか・・・?」
『んー、どうだろうな?スピード決闘は高火力、即展開が勝負を決める場合が多いし・・・まぁ、せっかくだから入れたらどうだ?』
そう言われて遊作はスピード決闘用のデッキにカードを入れる。その時、ブルーエンジェルである財前葵をアイが見つけた。
『おい居たぞ!ふむふむ・・・これは美人の部類だな。』
「下らない事言ってないで行くぞ。」
そう言って遊作は廊下へと気付かれないように付いていく。ここに有馬が居れば、きっとストーカーなどと思っていたことだろう。
そうして気付かれないように付いていくと、途中にあった教室へと財前葵は入って行く。入った後扉を閉めたのを確認すると、遊作はその部屋の前まで移動する。
「決闘部・・・?」
扉に掛かっていた看板には、DUEL CLABと書かれていた。どうやら財前葵は決闘部に入っているらしい。
そんな事を確認している内に、ギィっと音がし、目の前の扉が開かれる。そこから出てきたのは――
「あれ?遊作じゃねぇか?」
やはりというか何というか、遊作のいるところに必ずいると言っても過言では無い島の姿があった。
「草薙さん・・・これ、現実ですか・・・?」
「あぁ、良かったな。確かまだ朝の部活動の時間帯だ。お前は帰宅部だからまだ電話もしてないだろう?行けるがどうする?」
結論から言おう。治っちゃったぜ!いやホントに疑ったけど。草薙さんの言うとおり帰宅部の為、俺は高校に伝えてはいない。このまま行けば遊作のスト・・・尾行が見れるのか・・・
「それじゃあ遊作見てきます。アイツが上手くいってるか心配なんで。」
「あぁ、頼んだ。後でどうだったか教えてくれ。」
分かりましたと答えてフードトラックを出る。その姿を見た赤き竜は、本当に心配だからなのか?と言われたが、そうだ。決して愉悦の為じゃない。心配だからだ。
「はぁ・・・」
「おいどうしたんだ?」
島が俺の溜め息に気づき近づいて来た。どうやら新しく入って来た遊作とかいう奴への自己紹介じみたものをしている途中だったらしく、その中で溜め息をついた俺に少し不機嫌な顔をしていた。
「いや、この頃つまんないな~と思って。」
「どうしてだ?」
「何かさぁ~、楽しくなれないんだよこの頃。決闘しても勝ったり負けたり程度で・・・」
ワクワクするような物が足りない。カリスマ決闘者のGO鬼塚とplaymakerの決闘を見て心の底から決闘したくなり、俺は
「ふ~ん。ま、その内楽しくなんだろ!」
「島君の言うとおりです。その内また決闘を楽しくできます。」
部長も島と同じで、その内どうにかなると言うが、それはつまりしばらくは我慢しなければならないということだ。決闘が好きな身としては、それは少し困る。
そんな事を考えている時だった。扉が開いて、身に覚えの無い人物が現れた。
「あ、え~っと、ここ決闘部・・・ですよね?」
「!有馬、治ったのか?」
「あぁ、草薙さんのおかげだよ。それより、決闘部に入りたいのですが、宜しいでしょうか。」
有馬という奴は、遊作の知り合いらしく、決闘部に入る為にここに来たようだ。細田は歓迎するって言ってるが・・・・・・ちょうどいい。
「おい、決闘しろよ。俺に勝ったら入部させてやるよ。」
この言葉に周りの奴らは一斉にコチラを向く。財前と細田は反対らしいが知るか。他の奴らは乗り気だ。
「コレは受けた方が良いのかな・・・?」
そう言う奴の顔は苦笑いしている。少し強引過ぎたか?イヤ、部長と財前がやる必要は無いと言ってるからか。
迷いながらもデッキを出すのを見て、俺も自分のデッキを出す。それを机の上に乗せ、お互いのデッキをシャッフルしたら準備完了。EXデッキの枚数も確認する。
「久し振りに机で、しかも相手がいるとなると、全力を出したくなるな。」
「そうかい。俺は
自己紹介は終わった。後のことは決闘で語る。
「「決闘」」
さぁ、俺を満足させてくれよ?
さて、決闘の前に言っておきますが、満足さんの口癖だからって、デッキも同じだなんて事は無い。以上。
因みに、フードトラックから高校の距離は割と近いです。