【完結】ハーマイオニーと天才の魔法式   作:藍多

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今回はレオもハーマイオニーも出てこないちょっとした幕間の話です。
時期は4年生前の夏休み直前ぐらいですかね。

それではどうぞ。


幕間. シリウス・ブラックの就職

最悪の大量殺人犯。裏切り者。アズカバンの脱獄者。

そんな風に言われていたシリウス・ブラックも今や自由の身。

現在はロンドン市のグリモールド・プレイス十二番地にあるブラック家の屋敷で屋敷しもべ妖精のクリーチャーと一緒に住んでいる。

と言ってもクリーチャーは嫌々シリウスに従っているのは誰の目にも明らかだった。

シリウスもこのしもべ妖精のことは昔から嫌いだ。純血主義に染まったブラック家に心から従っているこいつを見るだけでだけで吐き気がする。

しかしシリウスを除いてブラック家の血は絶えてしまっているし、この広い屋敷ではしもべ妖精の一匹でもいないとやっていけない。

本当はこんな家には戻りたくもなかったが、他に行く場所もない。

ダンブルドアが禁じなければ今すぐにでも親友の忘れ形見のハリー・ポッターを名付け親として引き取ってどこかで暮らしていきたいと思っている。

 

だが、今はそんな叶わない願いよりも現実を見なければと考えていた。

シリウス・ブラックは現在魔法省の受付前にいた。

目的は就職活動だ。

冤罪による投獄に対する補償金とブラック家の無駄に蓄えている財産を考えれば一生遊んで暮らすだけの資産は余裕である。だからと言って何もせずに遊んで時間を費やすことなどはしない。

別に大人だから仕事をしなくては、なんて考えではない。

目的はアズカバンを脱獄した時から何も変わっていない。

裏切り者のピーター・ペティグリューへの復讐だ。

親友を裏切り、自分を貶めた憎きピーター。あいつのことを考えると今でも憎しみで暴れだしたくなってしまう。

だが、奴が今どこにいるかは分からない。だからこそ闇の魔法使いどもの情報が集まりそうな闇祓いに就職することにしたのだ。

ダンブルドアはいつか闇の帝王が復活すると確信していた。ピーターもおそらくそちら側につくだろう。もしかしたらどこかにいる闇の帝王を探しているかもしれない。

今度は失敗しない。闇祓いの情報と権利を使って必ずあいつに罪の重さを教えてやる。そしてジェームズとリリーにいい知らせを持っていってやるんだ。

 

闇祓いの試験は筆記と実技の二種類だった。必要な知識と能力をみるものらしいが、シリウスにとっては簡単なものだった。どちらも即戦力になるほどの出来栄えで試験官も驚いていた。試験後即座に合格が言い渡された。

 

 

「合格おめでとう。それにしても数カ月前はまさか君とこうして同じ職場で働くことになるとは夢にも思っていなかったぞ。」

 

白髪交じりだがライオンのような印象を受ける闇祓い局局長のルーファス・スクリムジョールが言う。

シリウスもまさかこのようなことになるとは考えられなかった。人生何があるか分からないものだ。

 

「確かにな。前にあったのはアズカバンにぶち込まれる時だったけかな? これからよろしくお願いしますよ。ルーファス・スクリムジョール局長。」

 

「ああ。さて、合格してすぐなんだがもう一つテストを受けてもらおう。なに、君の実力を見極めるものだ。私の部下の一人と決闘をしてもらうだけだ。」

 

「いいだろう。受けて立ってやる。」

 

二人は闇祓い局にある決闘場まで行く。扉を開けながらシリウスはスクリムジョールに尋ねる。

 

「相手は誰なんだ? 言っておくが私はそこそこ強いぞ? 相手が泣いちゃうかもな。」

 

「そうか。なら手加減はしないぞ。」

 

決闘場の中には一人の男が待っていた。

その男を視界に収めたシリウス・ブラックは決闘にどうやって勝つことより逃げる方法、もしくはどうにかして怪我を少なくすることに考えが変わった。

 

「おいおい……。マジかよ。まさか相手って……。」

 

「そうだ。闇祓い最強の男。副局長のアースキン・テイラーだ。まぁ、なんだ。頑張れ。」

 

そう言って足早に決闘場を去るスクリムジョール。

シリウスも一緒に出ていこうとするが扉が固く閉ざされてしまった。

 

「逃げるのは無しだ。さぁ、さっさと決闘始めようか。」

 

「いやいや、待て待て! なんであんたなんだよ!」

 

シリウスの戦意はすでにゼロだった。学生時代に嫌というほどアレの出鱈目さは味わっている。

悪戯仕掛け人として馬鹿をやっていたがフェリスをターゲットにしたのは最大の失敗だったと言わざるを得ない。それをきっかけにフェリスに吹き飛ばされ、アースキンの人外の力でなぎ倒されたりした。

正直まともじゃないし、勝てる気もしない。アレに勝てる存在なんて二人しか思い浮かばない。

 

「なんで俺かって? そんなん副局長だし。それに局長より強いしな。」

 

「じゃあ何であんたがトップじゃないんだよ!?」

 

「いや、俺に上に立てるようなカリスマ性みたいのないし、局長は仕事が多そうだから家に帰れなさそうだからな。」

 

「家と言えば家族はどうなんだ? やっぱり今でもフェリスとは仲いい感じか?」

 

「おおそうだぞ。今でも、いや今の方が愛してるって言えるね。」

 

(よし! 決闘から意識がそれたぞ。このままうやむやにして逃げよう!)

 

そんなシリウスの計画とも言えないずさんな企みはスクリムジョールの声ですぐに終了する。

 

『聞こえるか二人とも。一応はこれもシリウス・ブラックの実力を測るテストだからな。すぐに始めてくれ。時間は10分間だ。』

 

「おっと。いつまでも話してるのもダメだな。んじゃいくぜ?」

 

戦闘態勢に入ったアースキンを見て覚悟を決めるシリウス。

スクリムジョールから決闘開始の合図が入る。

合図と同時にシリウスは横に走り出しながらプロテゴ(盾の呪文)を展開する。

逃げるシリウスに向かってアースキンは杖を構える。

その瞬間、杖からマグルの機関銃のようにエクスペリアームス(武装解除)ステューピファイ(麻痺せよ)が連続で打ち出される。

 

アースキン・テイラーの保有魔力量は異常だった。テイラー家はそこそこ歴史が長い家系であるが純血主義ではないのでマグルの血も受け入れている一族である。

特段優れた家系であるわけでもないのだが、アースキンの魔力量は常人とは比較にならなかった。研究者が調べた結果は測定不能、推測では常人の数百倍から千倍はあってもおかしくはないとの事であった。

その異常な魔力量から普通に魔法を使っては何もかも効果が高くなりすぎてしまうのでコントロールに非常に苦労している。下手に失神呪文でも誰かに当てたらアバダケダブラと同じ結果になってしまう。

そこでアースキンが編み出した解決策は無言呪文を使うことである。

無言呪文もイメージがしっかりして発動すれば呪文を発言して使うのと同等の効果は発揮できる。

だが、普通は効果が著しく落ちる。そこに目をつけたアースキンは無言呪文を通常呪文として使うことにした。

そして無言であるからこその利点は相手にどんな呪文であるか悟られない、心で呪文を思うだけで発動することである。口に出すより思った方が速い。

結果、膨大な魔力で通常の、いやそれ以上の威力の魔法が無言かつ高速で連続して使うという意味が分からないことになった。

 

「うぉおおおおおおおお!」

 

叫びながら逃げまくるシリウス。呪文が絶えることなく殺到する。魔法による盾などその数に圧倒され粉砕される。こちらの攻撃は無言の盾に阻まれる。

 

(ちくしょう! 学生時代より手が付けられなくなってやがる! あと何分だ!?)

 

アースキンは感心した。正直自分より強い存在はダンブルドアとあの人だけだと思っている。相手が死喰い人だろうとも十数人ならば勝てるだろう。そんな自分と決闘してまだ呪文を当てることさえできていないばかりか反撃までしてくる。

 

(アズカバンにいたというのにその強さは変わってないようだな。あと三分か……。)

 

結局最後までシリウスは逃げ切った。互いに無傷ではあるが一方は息も絶え絶え床に転がっている。もう一方は余裕の表情。勝敗は誰の目にも明らかだろう。

 

「お疲れ。そしてようこそ闇祓い局へ。」

 

「こ、こちらこそ……、よろしく……。」

 

こうして一応は無事に就職することができたシリウス・ブラックであった。

屋敷に戻るなりクリーチャーの嫌みも気づかず泥のように眠る。

その日の夢は学生時代にアースキンとフェリスに叩きのめされるという悪夢であった。




シリウス無事に就職。

シリウスは長い間アズカバンでピーターへの憎悪をもって過ごしていたためちょっと
心が壊れてます。ピーター(ついでにハリー)関係の事柄では暴走してしまいます。それ以外だと優秀なんですけどね。

この物語の主人公のレナード・テイラーはかなりのチートキャラとして書いてますが、
父親のアースキンもまたタイプは違いますがぶっ壊れなキャラです。

次の話から炎のゴブレット編スタートです。
それでは次回お楽しみに。

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