私は猫です。というか選択肢が少なすぎな気がする。
では37話どうぞ。
10月の最初の休日。いつものようにレオの研究室に来ていたハーマイオニーは荒れていた。
「まったく! ロンったら話を聞かないんだから!」
「落ち着きなよ、ハーマイオニー。どうしたんだい?」
ハーマイオニーが言うにはクルックシャンクスがロンのペットのネズミのスキャバーズを執拗に狙っているらしく、それが原因で新学期になってから喧嘩が頻繁に起こるらしい。
それだけでなくなぜかレオについての不満や暴言、さらにはハーマイオニーにグリフィンドールなのだからレオに近づくなとまで言っているらしい。
そして今日、とうとうスキャバーズが行方不明になってクルックシャンクスが食べたと断定したロンが魔法を使って攻撃しようとしたため、ハーマイオニーが逆にロンを吹き飛ばして減点されてしまったらしい。
「確かにクルックシャンクスがスキャバーズを狙ってたのは悪いと思ってるのよ。でもこの子は賢いんだから何か理由があるはずよ! それに食べたって決めつけて呪ってくるなんて本当に最低だわ! 減点されてしまったけど後悔はしてないわ!」
「ふむ……。クルックシャンクスが他のネズミを狙ってたことはあったかい?」
「んー……。多分ないと思う。でもどうして?」
「クルックシャンクスはニーズルの血が入ってるからスキャバーズから何かを感じ取ったのかもしれない。それが何であるかは直接視ないことには分からないけどね。」
(それにしても、たかだかネズミや猫一匹に大騒ぎだなぁ。ハーマイオニーにいたっては減点しても後悔無しとまで……。)
「ハーマイオニー、ペットってそんなに良いもの?」
「そうねぇ……。万人全てがそういうわけじゃないだろうけどいると色々と良いわね。愛情を与えれば懐いてくれるし、魔法には無い癒しをくれるのよ。この子の場合は賢いからたまに探してた羽ペンなんかを見つけてくれたりね。いっそレオも何かペットを飼ってみたら?」
「確かに飼ってみなければそういうのは解らないものだね。でもホグワーツで許可されているのはフクロウに猫、ネズミ、蛙……。どれもしっくりこないな。……そうだ。魔法研究という名目で何か創ろう。」
「それ大丈夫なの? 確か新しい魔法生物の創造は法律で禁止されていたと思ったけど。」
「有用な魔法生物という名目で魔法省に許可を取っておくさ。まぁ、許可が得られなかったら諦めるよ。せっかく魔法省とは色々と仲良くやっているしね。というわけでハーマイオニー、血もしくは髪の毛でもいいや、ちょっと貰ってもいい?」
「えっと……。何に使うのかしら?」
「ん? ペットを創るのに人間の一部を使おうかなって。自分の一部を使ってもいいんだけどそれじゃあなんだかペットじゃない気がしてね。ハーマイオニーが嫌なら誰かから適当に貰ってくるよ。」
ハーマイオニーは久しぶりにちょっと頭のねじが外れたレオの行動を見た気がする。でもそういうところも今では好意的に感じる。それに自分の一部がレオのペットに使われるのも悪くない気持ちだ。他の人間が利用されるくらいなら自分の一部の方がよっぽどいい。
(私も大分おかしくなってる気がする……。でも別に嫌じゃないし好きなんだからしょうがないよね。)
ハーマイオニーは髪の毛を一本抜いてレオに渡す。
この一本が後々あんな影響を及ぼすとはハーマイオニー、そしてレオは想像していなかった。
数日後。
レオは一メートルほどの水晶でできた培養槽の前にいる。
魔法省とホグワーツから新魔法生物の創造の許可は得ることができた。魔法省には「家庭で簡単に飼えてなおかつ闇の魔法からも守る役立つ生物の創造」という名目で許可を取った。
培養槽の中はレオが造った賢者の石から得た命の水で満たされている。そこに去年手に入れたバジリスクと一年の時のハグリッドが持ち込んだドラゴンから造った合成単細胞を投入する。
ちなみにハリエットと名付けられたドラゴンは今ではかなり大きくなっている。最初はレオ特製の首輪で大人しくさせていたが、今では首輪がなくとも誰が主人か解るようになったのか簡単な命令には従うようになった。校長の許可を取ってたまに禁じられた森の上空を飛ばして運動させたりもしている。これもペットと言えるかもしれないが、レオの目的はすでにペットを飼うというより新しい生物の創造になっていた。
命の水に入った細胞は増殖を始める。そこへハーマイオニーから提供してもらった髪と賢者の石を守っていたケルベロスに使った知性を上げる魔法薬の改良品も合わせて加える。この改良品は知性を上げるだけでなくあらかじめ特定の情報や命令を生物に組み込ませるためのものだ。薬が強すぎるため普通の魔法生物には使えないが命の水の効果とドラゴン、バジリスクの生命力ならば問題ないだろう。そして仕上げに賢者の石の極小結晶を添加する。
後はこの培養槽の中でどのように育つか楽しみにしていよう。
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レオがペットを創ると言って数日が経過した。
私が研究室を訪れる。もうすでにレオからの許可を得なくても自動で研究室に入る許可を得ているので、どんな時でも自由に出入りしている。今日も特に用事があるわけでは無いがレオに会いたいという気持ちだけでここに来ている。
「レオは……いないのね。残念。帰ってくる前に紅茶でも用意して待ってましょうか。」
お茶の準備を進めていると一緒に連れて来ていたクルックシャンクスが何かを見つけたのかニャーと鳴き始めた。
「どうしたの? 何かいた?」
クルックシャンクスのそばに行くとそれはいた。
半透明で単眼のサッカーボールほどの大きさの生物? だった。見たこともないものだったが形状はいつか図鑑で見たアメフラシの様な感じだ。プルプル動きながらクルックシャンクスを見つめている。クルックシャンクスも見つめ返しているが警戒している様子はないから危険なものではないのだろうか。仮に危険なものだったらとっくに研究室から排除されているはずだ。とりあえずクルックシャンクスは抱えて避難させておこう。
謎生物はこちらに気付くとクゥクゥと鳴きながらゆっくり近づいてきた。
思ったよりも気持ち悪いとかいう感情はなく、愛らしく感じている。
とりあえず、言葉は通じるか解らないが話しかけてみる。
「こんにちは。あなたはだぁれ? どこから来たの?」
「クゥ? マー? マー!」
なんだか赤ちゃんを相手にしているみたいだ。手で触れてみると人肌ぐらいの温度でプルプルした質感、でもべたつくことは無かった。この子がレオが創造しようとしていたペットなのだろうか。触ったり持ち上げたり色々としていると何となくだが喜んでいるのが分かる。
「ママ! ママ!」
「え? ママ?」
(相当懐かれてしまったみたいね……。というか喋れるのね。)
そうしているとレオが帰ってきた。私とこの子を見つけると少し驚いたみたいだ。
「クー。こっちに来なさい。」
その言葉でクーと呼ばれたこの子が形状を蛇のように細長く変えてレオの腕に絡みついた。
「まったく、好奇心旺盛だな。とりあえず培養槽内に戻ろう。外は楽しかったかい? ハーマイオニーちょっと待ってて。」
しばらくしてレオが奥の部屋から戻ってくる。
二人で紅茶を飲みながらさっきの生き物について話している。
「驚かせちゃったかな。さっきのが僕が造った魔法生物、名前はクー。クゥクゥって鳴いたからっていう単純な理由で付けた。まだ成長途中の幼体だね。でも好奇心旺盛でたまに培養槽を飛び出して研究室内を見て回っているんだ。」
「レオが造るペットだからもっとすごいのを想像していてけどちょっと予想外だったわ。あの子喋れるの? あと私のことをママって呼んでたけど。」
「うん。喋れるしうまく成長すれば僕の手伝いをできるぐらいにはなる予定、魔法も使えるはずだ。ハーマイオニーのことをママって呼んだのは初めて会った僕以外の人間だから刷り込みと、以前提供してもらった髪が影響してるのかもね。」
「なるほどね。あの子は私の分身みたいな感じなのね。最終的にどんな感じの生物になるのかしら。」
「姿かたちは自由自在だからクーが気に入った形になるんじゃないかな。僕の予想では一週間ほどで培養槽から出して成長できるようになると思うよ。」
その後はいつものように魔法について話したりして時間を過ごしていった。
その一週間後あんなことになるなんて私もレオも想像していなかった。
ペット創造回でした。
スキャバーズ(ピーター)逃亡。
原作より早い。クルックシャンクスに捕まる→レオに発見→終了の為、必死に逃げてます。
ロンがレオについてまで不満なんか言っているのは失恋からまだ立ち直っていないため。喧嘩後はいつも自己嫌悪している。徐々には立ち直って精神的にも成長中。
新キャラのクーについて解説
ドラゴンとバジリスクの特性を付加した単細胞魔法生物に人間の遺伝子を組み込んで創造。
群体型生物で姿形は自由自在。現状はまだ赤ん坊。知性向上剤と命の水で成長は早い。
体液は命の水:竜の血:バジリスクの血=2:1:1の割合。体中に極小賢者の石を内蔵。
成長に従い解説を入れていく予定です。
では次回お楽しみに。