これからは「ハーマイオニーと天才の魔法式」となります。
どうぞよろしくお願いいたします。
では35話どうぞ。
1993年9月1日。キングス・クロス駅。
九と四分の三番線は例年通りホグワーツに向かう子供たちとその親でいっぱいだった。
ただ少し違うのは辺りを警戒する魔法使いの姿がちらほら見かけることだ。
恐らくはアズカバンを脱獄したシリウス・ブラックを警戒しての対応なのだろう。
レオとハーマイオニーの今年の見送りはフェリスただ一人だった。アースキンとハーマイオニーの両親は仕事で忙しく来ることができなかった。
「行ってらっしゃい、レオ。ハーミーちゃんもね。もしシリウス・ブラックが出てきたらぶっ飛ばしちゃいなさい!」
「出てこないのが一番良いよ。それでは行ってきます。」
フェリスはハーマイオニーを呼び止める。
「レナードのことも頑張ってね。大丈夫よ、あなたが一番息子のことを想ってるわ。そ・れ・と、一回お義母さんって呼んでみて♡」
「お、お義母さま……。」
「うん! 満足。それじゃあ、恋に勉強に青春を楽しんでね!」
多くの子供たちがコンパートメントの窓から出発の挨拶をしながらホグワーツに向けて列車は走り出す。
フェリスはクリスマスに二人が戻ってきた時どんな感じになっているか今から楽しみだった。
コンパートメント内ではレオとハーマイオニーが三年生からの新しい授業について話している。時折レオやハーマイオニーに挨拶に来る生徒もいるがほぼ全てハーマイオニーを見て固まってしまう。
そんなやり取りを何度かして流石にハーマイオニーも機嫌が悪くなってきた。
「まったく! みんな私のことどう見てたのかしら。ちょっと髪の毛をいじって、歯を矯正しただけなのに。」
「まぁまぁ。外見が変わろうともハーマイオニーはハーマイオニーだよ。周りのことは気にしなくてもいいんじゃないかな。」
「それもそうね。レオがしっかり私のことを見てくれればそれでいいわ。そういえば今年の授業でレオは占い学を選択したみたいだけど、私はやめた方が良いって言ってたけど占い学はどんなものなの?」
「占い学は理論や公式、そういったものが通用しないものなんだ。そういうものだからハーマイオニーには不向きだと思ったんだ。未来を感じ、見通す。そういう才能や感性が重要になってくる。魔法省の神秘部には予言が保管されているみたいだけど僕もちゃんとした予言者には会ったことが無いね。占い学を選択したのもダンブルドア校長が占い学の教授に選んだ人だから才能が有る人だろうからこの『眼』で見てみたかったからなんだ。」
「そうなのね。予言って100%確実に的中するものなのかしら?」
「どうだろうね。僕はあくまでその時点でより可能性の高い未来を感じ取って伝えてるのが予言だと考えているよ。その予言を与えられた人がその言葉に影響されることで更に可能性が高まって最終的に的中する。または予言を信じなかったり回避しようとした結果が結局は予言の内容になる。どっちにしても予言者は全ての可能性を読んで未来を予言してるんじゃないかな。そういう意味じゃ予言は未来の可能性を狭めていると言えるのかもしれないな。まぁ、僕も専門外だから憶測でしかないけどね。」
二人で談笑を続けていると列車の速度が低下してきた。まだホグワーツに到着するにはまだ時間があるはずである。
「どうしたのかしら? まだホグワーツに着かないはずよね?」
「何かトラブルかな。待っていればアナウンスなり発車するなりするんじゃないかな。」
数分しても何も反応はなく周りのコンパートメントも騒がしくなってきた。
だが次の瞬間、周囲が急に静かになった。レオは何も感じていないがハーマイオニーは恐怖で体が震えていた。
「ハーマイオニー!? 大丈夫か、どうした!?」
「レ、レオ……。急に寒くなってなんだかわけもわからず怖いの……。」
「何かしらの精神的な作用……、恐怖、
レオが『遮断』の範囲をコンパートメント全体に拡大する。これでこれ以上ハーマイオニーに影響はないはずだ。
「ごめん、ハーマイオニー。僕は常に防御しているから気付くのに遅れた。大丈夫?」
「ありがとうレオ……。後ろ!」
レオが振り向くと吸魂鬼の一体がコンパートメントの扉を開けて侵入しようとしているところだった。ボロボロのマントにカサカサの肌。見るの者に嫌悪感を抱かせる存在がそこにはいた。
「
レオが呪文を唱えると白銀の銃が手に現れた。
「三秒以内に失せろ。さもなくば消滅させる。」
吸魂鬼には言葉は通じていないのか立ち去る気配はなくコンパートメント内に入ろうとする。次の瞬間には銀色の弾丸がその胸を貫いた。
胸に空いた穴から光を放出し、その体を光の粒子に変えて霧散する吸魂鬼。
レオは鞄から純白の液体が入ったフラスコを取り出す。
「ハーマイオニー、これを飲んで、幸福薬だ。落ち着いて、ゆっくりでいいよ。」
『遮断』で吸魂鬼の影響はなくなったが、心と体は冷えたままだ。レオに言われるがままフラスコから幸福薬を飲んでいく。味はものすごく甘く飲みにくかったが、飲み込んだ途端体の不調は消えていった。
「よし。それじゃあ、僕は奴らを殲滅してくる。今の薬を飲んだからしばらくは
「待って!」
コンパートメントから出ていこうとするレオの腕を掴んで引き留める。
「いかないで、レオ。一人にしないで……。」
幸福薬で確かに心身ともに問題はなくなった。だからと言って一人は嫌だった。彼とは離れたくなかった。
レオは大きく息を吸って吐いた。
「ごめん、ハーマイオニー。こんな状態の君を放置して出ていくなんて冷静じゃなかった。もう一人にしようとしないよ。」
そう言って手を握るレオ。
彼が近くにいる、それだけで安心できる。安心感と薬の効果か眠気が襲ってきた。
「少しでも眠った方が良いよ。回復には睡眠が一番だ。」
「ありがとう、レオ……。少し眠るわね。」
そう言ってハーマイオニーはレオの肩に頭をのせて眠ってしまった。
次に起きたときにその様子を見ていたウィーズリー双子にからかわれることになってしまった。
組み分けも無事終了し、皆が食事を待ち構えていたがその前にダンブルドアからの注意事項があるらしい。
「新入生は入学おめでとう! そして二年生以上は新学期おめでとう! さて皆にいくつかお知らせがある。大事な事じゃからお腹いっぱいで眠くなる前に済ませてしまおう。」
「ホグワーツ特急で調査、これをわしは許可した覚えがないのじゃがの、皆も知っているように魔法省の要請によりホグワーツでは現在
続いて新しい教授が紹介された。魔法生物飼育学のウィルヘルミーナ・グラブリー=プランクと闇の魔術に対する防衛術のリーマス・ルーピンの二人だった。
プランクと比べるとルーピンへの注目が集まっていた。ツギハギだらけのローブ、痩せこけて青白く、白髪がある髪。こんなのが闇の魔術に対する防衛術の教師で大丈夫か? そういった反応をする生徒が多い。
そんな考えを吹き飛ばす衝撃的な爆弾発言がダンブルドアの口から発せられた。
「一つ補足を入れよう。ルーピン先生は狼人間じゃ。だが」
そこまで言って大広間から悲鳴が上がる。ダンブルドアは落ち着くまでゆっくり待った。
静かになるまで10分ほど経過し、続きを話していく。
「続けよう。まず、ルーピン先生は安心できる人じゃ。それに今は改良型脱狼薬が存在している。これがある限り満月の夜でも狼人間が変化することは無くなった。それでも狼人間に対する世間の風当たりは依然強い。だからこそこれからの魔法界を作っていく諸君らにはそういった偏見を無くしてもらいたいのじゃ。まずはルーピン先生の授業を受けてはくれんかの。彼が立派な人であることが分かるじゃろう。ではルーピン先生、挨拶をお願いします。」
「やぁ、みんな。こんにちは。ダンブルドア校長が言ったように僕は狼人間だ。だけどここ数年僕は狼に変化したことは無い。もし万が一、狼に変化してしまったらホグワーツを去ることを約束しよう。これはダンブルドア校長や理事たちも了承している。全力をもって闇の魔術に対する防衛術を楽しく勉強できるよう頑張るのでよろしくお願いします。」
そう言って頭を下げる。拍手はほとんど無かった。
その後はプランクの挨拶があったがほとんどの生徒は聞く余裕はなかった。
だが、そうであっても腹は減る。御馳走が出現したからには生徒たちは食べる以外の選択は無くなり、先ほどまでの気持ちも幾分か解消されるのだった。
宴も終わり生徒たちはそれぞれの寮に行く。レオも久々の研究室に入る。やはりここは落ち着く。他の生徒も寮に戻るとこのような感覚なのだろうかと考える。
レナード・テイラーの三年目のホグワーツ生活が始まった。
タイトルから消失したハリー・ポッター、原作同様失神しております。
予言については本作では一番可能性の高い未来を伝えているので、必ずしもそうなるとは限りません。同じ預言者がした予言では後の方がより精度が高くなる設定です。
レオはハリーの後に生まれているのでハリー関連の予言は大分狂うことになります。
・レオが使った守護霊の呪文
守護霊は姿が変わるし、対吸魂鬼ぐらいにしか使えないなら武器の形の方がいいんじゃないか? ということで銃に改造。人には効果はないが吸魂鬼は一撃必滅。実は他の使い方もあるがそれはそのうちに。
・幸福薬
純白の滅茶苦茶甘い粘度のある液体。イメージは練乳。
飲むと吸魂鬼の影響を即座に回復+耐性付与。更に守護霊の呪文の成功率UP。
何もない時に飲みすぎると多幸感が強すぎて中毒症状が出る。
・怒るレオ
ハーマイオニーが害されたためいつもより冷静さがなくなる。
もしハーマイオニーが止めてなかったら吸魂鬼は全滅してた。
・新教師
魔法生物飼育学は原作のハグリッドの代理だったプランクを採用。
闇の魔術に対する防衛術はルーピン。
レオが脱狼薬を改良したので満月でも変身することが無くなったので狼人間への世間の目も大分良くはなっている。だがまだまだ偏見は強い。
校長としてはこれから先もそれではお辞儀復活時に狼人間を戦力として使われるので、できるだけ偏見を無くしたいのであえて狼人間は大丈夫だとアピールするためカミングアウト。
では次回お楽しみに。