では23話どうぞ。
その日の大広間は阿鼻叫喚の地獄絵図が広がっていた。
ある者はなぜあんなのに夢中になっていたのかと嘆き、
またある者は現実を直視できず死んだ目で虚空を眺め、
別の者は嘘だと言い、怒り狂う。震えた声で自分は嘘だと思ってたと虚勢を張る者もいた。
その者たちの共通点は女性ということぐらいだろうか。
ギルデロイ・ロックハートが今世紀最大の詐欺師であると世間に公表された結果だ。
怒りや恨みをぶつけようにも、ロックハートは最早死んだも同然である。
その思いの矛先は夢を砕いたアルバス・ダンブルドアとレナード・テイラーに向けられていた。
思いは呪いに変わり二人を襲うも、難なく防がれる。
そんな混沌としか表現できない大広間には全校生徒と全教師が集められていた。
ダンブルドアが立ち上がり話し始める。
「おほん。諸君、知っての通りギルデロイ・ロックハートの功績は全て噓じゃった。彼は他者の成した事を忘却術を使って自分の手柄にしておった。まぁ、顔が良いのとその執筆能力は本物じゃったろうが、多くの者が騙されておった。今は自身の放った忘却術で全てを忘れてしまっておる。」
改めて事実を突きつけられたロックハート信者には崩れ落ちる者もいた。
ロックハートのことをどうでもよく思っているほど理解不能な光景だった。
「さて、大事なのは騙された過去ではなく、これからの未来じゃ。また闇の魔術に対する防衛術の教師がいなくなってしまった。そこでわしはレイブンクロー所属のレナード・テイラー君を教師に推薦した。彼の実力は並みの魔法使いを凌駕しておるし、父親は闇払い局の副局長じゃ。これ以上の適任者はいないじゃろう。すでにレナード君からは了承を貰っておる。レナード君は授業は免除じゃ、今年一年だけ教師として生活してもらう。ではテイラー先生、挨拶をお願いしますぞ。」
「新たに闇の魔術に対する防衛術の教師に就任しました、レナード・テイラーです。よろしくお願いします。さて、こんな二年生のガキに教師なんか務まるか、教えられることなんかねぇ、と思われる方も多々いると思います。」
スリザリンを中心とした上級生、ハリーやロンなどは大声で文句を言っている。
逆にレイブンクロー生からはそのような声は皆無だったが。
「皆さんの文句はもっともでしょう。そこでそういった方たちのためにある制度を考えました。それはある条件をクリアすれば授業は免除、宿題も無し、試験も一定以上の成績を保証するものです。これは寮や学年関係なく誰でも平等に機会が設けられます。」
大広間が一気に騒々しくなる。レオの言った制度は勉強が嫌いな学生にとっては夢のようなものだ。次にレオの言う条件が何なのか皆注目する。
「条件とは、闇の魔術に対する防衛術の教師であるこの僕、レナード・テイラーに魔法で何かしらのダメージを与えることです。」
一瞬、静まったが次の瞬間にはスリザリンの上級生、グリフィンドールの双子などが呪いを放つ。四方八方からレオに向かってくる呪いの閃光はレオに命中する直前に雲散霧消した。
「話は最後まで聞いてください。レイブンクロー以外1点減点。教師なので減点することもできるので覚えておいてください。では詳細な説明をしましょう。この……そうですね、免除課題と呼びますか。これに挑戦するのには学年、寮等は問いません。また場所や時間は授業中でなくとも許可します。僕の研究室以外ならば問題ありません。食事中の大広間、移動中の廊下、授業中の教室内、いずれもいけると思った時に仕掛けてOKです。クリア条件は先ほど述べた通り魔法でダメージを与えること。どんな方法でも構いませんし、挑戦回数も制限しません。
僕は基本的に防御主体ですがもちろん反撃もしますので挑戦される人は最低失神は覚悟するように。僕はレイブンクロー所属ですがどの寮が相手でも手加減はしませんのであしからず。最後におまけでクリア時には寮に50点の加点とします。
更なる詳細なルールは掲示板に張り出しておきますので各自確認してください。以上。」
大広間はざわついている。授業が免除されるだけでなく50点も手に入る。挑戦回数も無限。これは挑戦するしかない! と寮学年問わず多くの生徒がやる気になっていた。
一方で本当に優秀な一握りの生徒たちはレナード・テイラーがいかに規格外か見抜いていた。先ほどの多数の呪文が消え去ったこともどうやったのかさえ分からない。このルールも余程クリアされる自信が無ければどの寮も点数稼ぎ放題だ。それが許可されたということはダンブルドアがレナード・テイラーの実力が高いと認めていると同義だ。まずは無謀な生徒が突撃してから情報を集めて挑んでも遅くはないだろうと、慎重に考えていた。
(さて、これだけ条件を揃えれば僕にどんどん魔法が飛んでくるだろう。それでこそ『指輪』のテストになる。)
この免除課題の本当の目的はレオの造った十の指輪の性能試験だ。生徒たちの授業免除や得点などはおまけで、指輪の効果や弱点などを見極めるためのものである。
(今年一年でどれだけテストができるか楽しみだなぁ。上級生やハーマイオニーには期待だな。)
次の日からレナード・テイラーが通る廊下は魔法の閃光で溢れかえるようになった。
しかし、レオは呪ってくる相手の方も見ずにいつものペースで移動している。レオに向かった呪いはレオの十数cm手前で急に方向転換して魔法を放った生徒に向かって跳ね返される。レオが去った後の廊下は様々な呪いの症状で倒れたり、呻いたりしている生徒で埋め尽くされていた。あまりにも医務室に運ばれる生徒が多かったためマダム・ポンフリーの怒りが炸裂した。以後廊下での呪文は武装解除と失神のみが許可された。
そんなこんなで少しは落ち着きを取り戻したホグワーツ。
今日は二年生の闇の魔術に対する防衛術の授業だ。相手はグリフィンドールとスリザリンの合同。
レオが教室に入るとすでに多くの生徒が杖を持って待ち構えていた。授業中に失神等されると迷惑なので反射は停止させて残りの防御機構のみを作動させる。
呪いはやはりレオに到達する前に消失していく。
「それじゃあ、出席を取ります。攻撃は続行してもかまいませんが返事はしてください。」
攻撃など無視して出席を取る。その姿から直接的な攻撃は流石に無駄だと理解させられ、教室は静かになった。
「はい。全員いますね。この闇の魔術に対する防衛術で皆さんに教えることは俗に言われる闇の魔術からの身の守り方、そこから発展させた戦い方です。高学年になるほど強力な防御と攻撃を教えますが、まず全学年共通しての基本的な考え方から教えようと思います。その後は必要性の高い呪文から教えていきます。個人のレベルに応じて順次ステップアップしていきましょう。ホグワーツに入学して一年は経過したので魔法の発動等は大丈夫だと思うのでそこは省きます。」
多くの生徒はロックハートの授業よりはマシだとわかり少しホッとした。それに戦い方を知るのはいいことだと感じもした。
「さて、まずは防衛の基本的な考え方から。もし自分に敵対的な魔法使いと遭遇したらどうしますか? 強さは自分より格上であると想定してください。それではフィネガン君。」
「えーと、知っている呪文を駆使して戦う?」
「はい、残念。フィネガン君は死亡しました。相手が余程なめていないならすぐに殺されてしまうでしょう。次、ザビニ君。」
「相手と交渉して命だけは助けてもらう、とか。」
「条件次第ではそれも通用しますが相手はこちらの命を狙うと考えてください。ではロングボトム君。」
「………ます。」
「もうちょっと大きな声で、どんな考えでも僕は笑いませよ。」
「逃げます……。」
この答えにスリザリンは笑い、グリフィンドールからはしっかりしろと言われてしまう。ネビルは自分の答えに恥ずかしがって俯いてしまった。
しかしレオとハーマイオニーだけがネビルを正当に評価した。
「皆さん、笑っていますがこれが正解です。勝てない相手にはそもそも戦わない。これが生き残る確率が最も高いのです。手練れの魔法使いほど呪文の速さなど段違いです。劣る者はそれに立ち向かおうとすると防御、攻撃など選択肢が多くなってしまい確実に先手を取られます。逃げる一点に絞れば少しは生存確率を上げることができます。勇敢なグリフィンドール生にはなかなか難しいかもしれませんが、逃げるのも勇気です。逃げられない、戦わなけらばならなくなってから戦闘については考えましょう。ロングボトム君には1点あげましょう。」
その後の講義は呪いの避け方、杖の動きの予測などを教えていった。
グリフィンドール生は逃げるなんて消極的な防御方法には不満を持っているようだ。
「ではちょっと実践してみますか、皆さん逃げることについてはまだ不満があるようですしね。ポッター君とロングボトム君、前へ。二人は僕と戦ってみましょう。ポッター君は逃げずに戦う。ロングボトム君は先ほどの講義内容を参考に逃げてみましょう。手加減はしますので心配はいりません。」
手加減宣言にハリーはカチンときた。逆にネビルはホッとする。
先にハリーが相手することになった。
「ではコインが落ちたら開始です。合図と同時に攻撃しますのでポッター君も防御なり攻撃なりしてください。」
コインが舞い、床に落ちる。
「
ハリーの杖は成すすべなく取り上げられレオの手に渡る。
「では、次ロングボトム君。先ほどと同様の合図と同時に攻撃しますので逃げ回ってください。」
ネビルは怯えながらもレオの杖をしっかりと見ている。
再びコインが床に落ちる音が響く。
「
ネビルは発音と同時に横に飛ぶ。すぐにレオは次の武装解除を唱えるが、ネビルは転がりながら移動して避ける。机の陰に隠れて起き上がりレオを確認してジグザグに走りながら距離を取る。
「はい、そこまで。どうでしたか? 僕が悪人ならば杖がないポッター君を殺すも、服従させるも、拷問して情報を手に入れるも、人質にするも自由です。対してロングボトム君は数秒ですが逃げることに成功しました。たった数秒ですがその間に仲間が助けるかもしれませんし、相手の都合から手間を考えて撤退するかもしれません。どちらにしろ生存率が高い方は言うまでもありませんね。では見事逃げ切ったロングボトム君に2点あげましょう。」
残り時間はあと十分ほどであった。
「残り少ないですね……。次の授業は基礎の呪文を教えます。残りの時間は免除課題に挑戦するもよし、他の授業の宿題をするもよし、寝ていてもかまいません。自由時間とします。」
そういうと同時に皆が一斉にレオに攻撃しだした。
終業のチャイムが鳴るまでレオはそこから一歩も動かなかったが誰もレオにダメージを負わせることはできなかった。
その光景をハーマイオニーは凝視してレオの能力をしっかりと分析していた。
(レオの防御は複数ある……。反射と無効化……、それ以外にもあるかもしれない。とりあえず挑戦するには情報が足りないわ。もっと見極めなきゃ。)
レオはハーマイオニーの見極めようとする視線に気づいていた。この免除課題をクリアするとしたらハーマイオニーだと思っている。自分の造った魔法具を彼女が超えることができるか楽しみだった。
レオには授業は無しで教師に専念してもらいました。
そして授業免除という餌で生徒を利用した性能評価実験。ひどい主人公もいたもんだ。
各学年の授業内容は以下のような感じ。
共通:基本的な防衛についての考え方。今回の話の内容、他
一年:魔法についての理論説明。魔法の発動方法等。以前ハーマイオニーに教えたこと
二年:武装解除、
三年:二年より呪文数が増えるがそこまで変化なし +体術(結構重要)
四年:三年までで習得した呪文を使った模擬戦実施
五年:OWLも考えた呪文習得
六年:攻撃と防御の上位呪文を習得 レオオリジナルも場合によっては教える
七年:NEWTに向けて勉強 優秀者には独自に課題も
各生徒ごとに合わせて調整はする。例としてネビルは一年レベルから基礎をしっかりさせる。ハーマイオニーはすでに七年レベルといった具合に。
では次回お楽しみに。