【完結】ハーマイオニーと天才の魔法式   作:藍多

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ハロウィンと言えばトロール。
さて今作ではトロールはどのような扱いなのか。

では13話どうぞ。


13. ハロウィン

ハーマイオニー達が侵入した翌朝。

 

グリフィンドールから一気に140点も減点されたことで大広間はかなり荒れていた。

ハリー達は無謀な決闘をしようとしたとして周りからは非難されていた。

ハーマイオニーとネビルは事情を説明したのかそこまで扱いは悪くはないようだ。

スリザリンのマルフォイがポッターとウィーズリーがいかに間抜けかなどと大演説を始めるとさらに混沌とした状態になってしまった。

先程までハリーとロンを非難していたグリフィンドール生たちもその矛先をマルフォイとスリザリンに向けだしたのだ。

スリザリンを罵倒するグリフィンドール。

マルフォイを筆頭に煽るスリザリン。

どうしたらいいのかわからないハッフルパフ。

こんな場所で食事など取りたくないとため息をつくレイブンクロー。

最終的にマクゴナガルが一喝するまで、醜い罵りあいは続いた。

レオは早急に研究室にハーマイオニーと避難したため、ゆったりと食事を楽しむことができた。

 

「昨夜は災難だったね、ハーマイオニー。」

 

「全くよ。でももう少し上手いことどうにかしたかったわ。結局、私も減点されてしまったわけだし。なんにせよもうこれ以上の減点は許されないわ。」

 

今回の件でより一層、規則に対して厳しくしなければと心に誓うハーマイオニー。

 

 

 

それからは大きな変化もなく毎日が経過していく。

レイブンクローはレオに刺激されたのか例年より団結して学問に励んでいる。

いつもはお互いが勉強のライバルという感じで少しギスギスした雰囲気もあるのだが、今年はレナード・テイラーという高い能力を持った壁または目標がいる為、皆そこに向かって協調しているのだった。

金曜日の午後のレオの勉強会は今や上級生や他寮の生徒も来るようになっていたため、研究室の空間を拡張して専用の勉強スペースを作っていた。

勉強会と言ってもレオはほとんど教えることはせず、皆が協力して宿題や苦手の克服等に力を入れている。

レオは主に魔法を発動するアドバイスなどをしているだけだ。

だが『眼』で個人個人の魔法の癖や式の欠陥を見抜くことで適切なアドバイスになるため、皆の力量はどんどん上昇していった。

 

 

1991年10月31日

 

この日は朝からかぼちゃとお菓子の香りでホグワーツは満たされていた。

別にハロウィンだからとはいえやることは変わらない。いつもどおりに授業を受け、教授たちと議論したりして充実した一日であった。

 

大広間でかぼちゃだらけの夕食を食べていると、クィレルが大慌てで入ってきた。

皆が注目する中、息を切らせながら叫んだ。

 

「ト、トロールが……地下室に、お知らせしたくては……。」

 

その言葉を言った次の瞬間にはクィレルは崩れ落ちる。気絶してしまったようだ。

トロールと聞いて大広間は大混乱となってしまった。生徒はパニックを起こし滅茶苦茶な行動をとろうとする。

レオは捕まえれば実験材料に使えるかなと、他の生徒が思いもしないことを考えていた。

ダンブルドアが杖から爆音を出して、生徒たちを落ち着かせる。ひとまず各寮に戻って教師たちで対処するとのことだ。レオの研究室はすぐ近くな為、トロールとの遭遇はないと判断されたのか一人で戻っていった。

 

研究室に戻ると、扉の前でなんとハーマイオニーが座り込んでいた。

最悪の想像をしてしまい、急いで駆け寄る。ハーマイオニーはこちらに気付いたとたん、走ってきて更には抱き着いてきた。

 

「ハーマイオニー? どうしたんだ? ……うん、怪我はしてなさそうだ。」

 

「レオ……、レオ……。私、わたし……。」

 

抱き着いたまま泣き出してしまうハーマイオニー。

いつトロールと遭遇するかもしれないし、こんな状態のハーマイオニーを放っておくなどできるわけがない。ひとまず研究室の中に入って落ち着かせることにした。

泣き止まない彼女をソファーに座らせ、暖かいココアを差し出す。

 

「はい。まずはこれを飲んでゆっくりしようか。」

 

ハーマイオニーは少しずつココアを飲む。レオは黙ってハーマイオニーの反応を待っていた。

しばらくして、落ち着いたのか少しずつ話し始めた。

 

「レオ……。私ってお節介すぎなのかしら? レオは私のことどう思っているの? 迷惑だと感じていない?」

 

「僕は君のことを一番の親友だと思っているし、迷惑と感じたこともないよ。それに君がこれからどんなことをしてもそれは変わらないと思うよ。」

 

「ありがとう……。でも周りはそうは思っていないみたいなの。私が皆の為と思って行動しても……。今日、ロンに悪夢のようなヤツって言われたの。それだけじゃない! あいつに魔法を教えたレナード・テイラーってヤツはさらに勉強ができるってことはもっと性格も最低最悪に違いないって言ってたの! 悔しかった。私が悪く言われるだけじゃない、私のせいでレオも悪く言われたの! 悲しくて、悔しくて……。レオに会いたくなって気づいたら授業にも出ないでここの扉の前で座り込んでしまっていたわ。」

 

レオは目をパチクリさせた。ハーマイオニーの言葉が予想外であったのだ。

 

「僕のことを気遣ってくれたんだね、ありがとう。でも、気にしなくていいのに。ロンだか誰だか知らないけど、僕のことを知らない人にどう思われようともどうでもいいよ。いや、例えホグワーツ全て、魔法界の全てが僕のことをどういう風に見ていても関係ないよ。僕の研究する魔法の美しさはそんなものには全く影響されないからね。それにハーマイオニーが僕のことを正しく見ているならそれだけで十分だよ。」

 

ハーマイオニーはレオの言葉で少し心が軽くなった。

 

「それより、ハーマイオニーはどうしたいんだい?」

 

「私は……。私はレオのようにはなれない。どうしても周りのことは気にしてしまう性分なの。でも変わりたい、変わって周りともう少し打ち解けた関係を作りたいわ。」

 

「なら変わればいいんじゃないかな。ハーマイオニー、君は僕なんかよりずっとまともな人間だ。少し改善すればすぐに仲良くするぐらいはできるんじゃないかな。」

 

「そうね、そのとおりね。解ったわ、レオ。私やってみる、変わってみせる!」

 

少しは元気を取り戻せたハーマイオニーを見てレオも自然と笑顔になる。

もう一杯ココアを飲んでゆっくりしてからレオはグリフィンドール寮までハーマイオニーを連れていく。

 

 

「レオ、別に私一人でも戻れるわよ。もう大丈夫だから。」

 

「ああ、言ってなかったね。校舎にトロールが侵入したらしい。今生徒は各寮に避難して、先生たちで対処しているところだ。」

 

「トロール!? どうしてここに……、でも、もう先生たちがなんとかしてくれたから大丈夫のはずよね?」

 

「どうだろう。まぁ、トロールぐらいなら僕でも対処できる。ハーマイオニー、安心していいよ。守ってあげる。」

 

ハーマイオニーはその宣言で顔を赤くさせつつも、安心した。

しばらく、何事もなく進んでいく。グリフィンドール寮まで半分ほどのところで強烈な臭いが漂ってきた。

 

「何なのこの臭い……。まさか!」

 

「運が悪いことにそのまさかだろうね。ハーマイオニー、僕の後ろに。」

 

臭いが強烈になるにつれ、足音も聞こえてきた。曲がり角から姿を現したトロールは三メートルを超える巨体だった。

ハーマイオニーは息を呑む。まともに戦ったらすぐ自分などミンチにされてしまうだろう。

でも、ここにはレオがいる。それだけで叫びそうな自分を抑えることができる。

トロールがこちらに気付いた。即座に向かってくる。

 

フェルム(刃よ)ロタティネ(回転せよ)ヒートルト(加熱)。」

 

レオが呪文を呟くと魔力で造られた一メートルほどの刃が現れた。

その後の呪文を受け、刃は回転し温度を上昇させていく。離れた位置にいるハーマイオニーでさえその熱気が伝わるほどの温度になるころには赤く発光するまでになっていた。

 

フリペンド(撃て)。」

 

レオが刃に命じた次の瞬間には射出された刃がトロールの首を焼き切っていた。

宙を舞って落ちる頭、崩れ落ちる頭のない巨体。

トロールがこちらに気付いてからほんの数秒でトロールはその命を終えたのだった。

 

「すごい……。」

 

ハーマイオニーはレオのすごさを改めて思い知らされた。私もあの程度の困難独力で乗り越えるだけの力をつけようと決心した。

 

「ハーマイオニー!」

 

「無事!?」

 

後ろから男子生徒二人が走ってきた。おそらく寮にいなかったハーマイオニーを探してきたグリフィンドール生だろう。よく見ればハリー・ポッターとケルベロスの守りに侵入した誰かさんであった。

 

「ハリー、それにロン……。」

 

どうやら誰かさんはロンであるようだ。二人は死んでいるトロールに驚愕しているようだが、ハーマイオニーを見て謝ってきた。

 

「ごめん、ハーマイオニー。僕たち君にひどいこと言った。君は悪くないのに。」

 

「こちらの方こそごめんなさい。私の態度も悪かったし、これからは改めるわ。そしてありがとう。私のこと探しに来てくれたんでしょう?」

 

「ああ、うん、そうなんだけど。必要なかったかんじゃないかな。もうトロールは死んでるみたいだし。先生の誰かがやったのかな?」

 

「レオが倒したのよ。そうだロン、レオにも謝ってくれないかしら。」

 

ハーマイオニーの言葉を受けて目を見開くハリーとロン。

ロンはばつの悪そうな顔をして謝ってきた。

 

「君があの有名なレナード・テイラーなのかい? ごめん、直接じゃないけど君にもひどいこと言った。それにしても、おったまげー。君、勉強ができるだけじゃなく強いんだね。」

 

「別にいいよ。そういえば何度か顔は見てるけど初めましてだね。改めてレナード・テイラーだ。よろしくウィーズリー君。それとこうして話すのはダイアゴン横丁以来かな、ハリー・ポッター君。」

 

「そうだね、僕は君が有名って知らなかったよ。改めてよろしく。」

 

レオはダイアゴン横丁でも見た黄金のベールを解析を進める。

 

(やはり、守護の魔法か。しかも犠牲をもって発動するタイプ……。おそらく彼の両親が死んだときに庇ったのだろう。これが原因でヴォルデモートは消えたのか。)

 

そうして話しているとトロールが倒れた音を聞きつけたのかマクゴナガル、スネイプ、クィレルがやってきた。

クィレルはトロールの死体を見て腰を抜かしてしまった。スネイプはグリフィンドールの三人、特にハリーを睨んでいる。マクゴナガルは四人に詰め寄ってくる。

 

「あなたたちこれはどういうことですか。特にミスター・ポッターとミスター・ウィーズリー! また寮から抜け出して。それにこのトロールの死体、何があったのか正確に説明しなさい。」

 

レオがハーマイオニーのこと、トロールに遭遇したこと、二人について説明をする。

 

「そうでしたか。ポッターとウィーズリー、二人の行動は立派ですがミス・グレンジャーの行動の元を考えればあなたたちが原因です。よって減点も加点も無しです。ミス・グレンジャーも同様に特に処罰等はありません。最後にミスター・テイラー、トロールの対処および生徒を守ったことからレイブンクローに15点与えましょう。三人は私が寮まで送りますので、もう今日は休みなさい。」

 

マクゴナガルは三人を連れて寮に向かった。スネイプはトロールの死体の処理をしているようだ。魔法薬の材料に使われるだろう。

レオはハリーの守護を解析し終えたが、クィレルからも守護するようになっているのには疑問が残った。

 

(解析が不十分だったかな? クィレル先生も解析した方が良いかな。)

 

クィレルの方を向くと、目が合った。開心術を仕掛けているが遮断されて失敗したようだ。その目には恐怖と怒りが感じ取れた。

 

(何か憑りついているしそれが影響しているのか。……あぁ、なるほど。ヴォルデモートか、だからハリーの守護が作用しているのか。)

 

守護についての答えを得たのでクィレルを無視して研究室に戻るレオ。

 

このハロウィンの騒動からハーマイオニーは周りに受け入れられるようになった。

ハリーとロンとはそれなりに一緒に行動するようになったようだ。




マルフォイが余計なことをしなければ英雄とその親友は獅子寮の戦犯扱いでした。
無駄に煽らなければ良かったのですが、彼の性格では無理だったのでしょう。

レオの勉強会はダンブルドア軍団のように戦闘中心ではなく塾のような感じです。

ハーマイオニーは原作と違って頼れる人がいたのでトイレには籠りませんでした。

トロールさんは絶命となりました。二次創作での生存率はどの程度なんでしょうね?
ちなみに首ちょんぱのイメージは気円斬です。ただ熱を加えたことで切断面が焼かれて血が出ていません。トロールの血液がくさいためレオが気をつかいました。

ハリーの守護解析完了。これでハリーに対しての興味がほぼゼロになりました。

ハーマイオニーとハリー、ロンは原作ほど仲良くなっていません。あくまで普通に友人として接して勉強ができるので頼りにしている程度です。

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