ブラック・ブレット 【無限の剣製】   作:爆走ボンバー人間

6 / 6
「第五剣 青空教室の子どもたち」

「おーい!お兄ちゃんもクゥちゃんも遅いよー!」

 

「待ってよシロエちゃん!」

 

「早く行きたいのは分かるけど、危ないから足元には気をつけろよ」

 

はーい、と返事を返すシロエは駆け足で先へと向かいクゥちゃんはシロエを追いかけている

 

会った時は余裕がなく鬼気迫る顔つきだったが今ではそれも大分解れており、ボロボロだった衣服もシロエの服のワンピースと麦わら帽子を被っており、年相応のかわいらしい女の子の様子を見てあの時助けられて本当に良かったと思った

 

そんな事を思い返しながら、シロエ達から距離が離れすぎないように背負っている荷物が揺れないように

歩く脚を速めた

 

 

 

 

 

 

 

昨日の夜、仮面の男『蛭子影胤』とその娘である『蛭子子比奈』から勧誘をされた後、交戦した。

 

明らかに通常の民警よりも圧倒的に強者であろう二人相手に素手で勝てるほど甘くはないと判断し、一部の

者しか知らず一般の人間には人うしなければならない魔術-『投影魔術』を使い応戦した

 

投影した干渉・莫也という二振りで対の中華剣を振るい交戦するも相手も流石は親子というべきか

巧みな連携を前に攻めあぐねた

 

いくら夜で人目のつかないような場所であっても何度も銃声や剣戟の音がすれば周りにも勘づかれる

 

またしても警察が近くまで来たため撃退には成功したが仕留めるまでにはいかなかった

 

影胤は去り際にこんな事を言い残していた

 

「今日はここで打ち切りになりそうだ。そうだ!今私と民警達でレースをしているんだ。君が私を

殺すというのならそのレースに参加するといい。そこで今度こそじっくり殺し合おうじゃないか」

 

「じゃあね、四郎。次は斬るから!」

 

そう言い残して逃げられてしまった

 

あいつらが言っていたレースというのは何の事かは知らない為、ある奴に伝手で探ってもらうことにした

 

あいつに借りを作るのは嫌だけど、嫌だけども!こうする以外に情報が手に入りそうにないため仕方なく

あいつに依頼しておいた。

 

依頼したことに多少後悔の念を覚えつつ少し憂鬱な気分に陥っていると目的の場所が見えてきた

 

周りは瓦礫が積み上げられているがそこだけは瓦礫が撤去されておりでこぼこの地面も綺麗に

整えられており使い古された黒板と長机に椅子があり、7~10歳ぐらいの少女たちと初老の老人が授業を

していた

 

「みんなー!おはようー!」

 

「ん?あ!長老!みんな!シロエちゃん達が来たよ!」

 

「え!?ほんとだ!四郎お兄ちゃんもいる!」

 

「もう一人知らない子もいるよ!」

 

シロエが呼びかけると全員がこちらに気づき顔を輝かせて大はしゃぎしてこちらに駆け寄ってくる

 

「シロエちゃん久しぶり!元気だった?」

 

「うん!元気にやってるよ!」

 

「四郎お兄ちゃんも久しぶり!今日も来てくれんたんだね!」

 

「ああ。今日は俺が皆に勉強を教える日だからな。約束はちゃんと守らないとな」

 

「別に勉強だけじゃなくていつでも来てね!」

 

「そうか?ありがとな。暇が出来たら来るようにするよ」

 

「ねぇ、四郎さん。後ろの子は誰?」

 

「新しい子?」

 

「そうだったな。クゥ、皆に挨拶できるか?」

 

「う、うん!」

 

俺の後ろに隠れて帽子を掴んで顔を隠していたクゥは少し恥ずかしそうにしながら自己紹介した

 

「え、えと、クゥって言います。よ、宜しくお願い…します」

 

言葉が少し途切れ途切れになっていたが最後まで言い切ると、不安そうに他の子達の様子を見る

 

「うん!宜しくねクゥちゃん!」

 

「クゥって可愛い名前だね!」

 

「え?う、うん。シロエちゃんが考えてくれたんだ」

 

「そうなんだ!シロエちゃんグッジョブだよ!」

 

「えへへ、そうかな~」

 

褒められたシロエは照れ臭そうに頭をかいてはにかんでいた。

 

くいっ、と袖が引っ張られ袖の方に視線を向けると一際幼い子がお願いしてきた

 

「えへへ、四郎お兄ちゃん肩車してー!」

 

「ああ、いいぞ。それ!」

 

「わーい!高い高ーい!」

 

一度荷物をおろしてしゃがみこみ首からちゃんと脚がかけられているのを確認してから一気に持ち上げる

 

「あー!ずるい!私も四郎お兄ちゃんに肩車してほしい!」

 

「私もー!」

 

「わかったから、順番に…ってうわ!?」

 

他の子達が待ち切れずに俺の体に次々とぶら下がっていきその重量と勢いでバランスを崩しそうになるが

気合いで耐えきる

 

「負ける…かー!」

 

「わー!すごーい!」

 

「四郎お兄ちゃんすごーい!」

 

「これでも鍛えてるからな。これぐらい余裕だ!」

 

「じゃあ私も、えい!」

 

「え!?いやこれ以上は……うわー!?」

 

さらに乗りかかってきたため流石にバランスを保てず背中から倒れる

 

ぶら下がっていた子たちは驚いてすぐにその場から離れたおかげで誰かの下敷きになったりして怪我をした子はいなかったが俺は思い切り背中を地面にぶつけることになった

 

鈍い痛みが背中に走りじんじんと痛んだがここで痛がるそぶりを見せてしまっては他の子たちに多少の罪悪感を感じさせてしまうため平気な振りを装う

 

「シ…四郎お兄ちゃん大丈夫?」

 

「痛くなかった?」

 

「いや、全然だよ。このぐらいへっちゃらだよ」

 

「ごめんなさい、四郎お兄ちゃん」

 

「俺は大丈夫だよ。それよりも皆がこうして元気でいてくれる方が俺にとっては嬉しいからさ。だから、そんな悲しそうな顔じゃなくて笑った顔を見せてくれ。な!」

 

こちらも笑った顔を見せれば少し暗い顔をしてた子たちも徐々に笑顔になる

 

「よし、それじゃあそろそろ皆戻ろうか!俺は松崎さんと挨拶してくるからおとなしく待ってるようにな」

 

「「「はーい!」」」

 

皆が手を挙げて返事をし、楽しそうに談笑しながら席に戻っていくのを一瞥してから少し離れたところで

こちらを微笑ましそうに見ていたこの青空教室の松崎さんの下に行き挨拶をする

 

「お久しぶりです松崎さん。授業の邪魔をしてしまってすいません」

 

「いや良いんですよ。あの子たちも衛宮君が来てくれるととても喜びますから。礼を言いたいのはこちらの方です。わざわざ週末に来てもらって子どもたちに授業をしてくれるのですから、やはり振るい教え方よりも新しい教え方の方が何かと良い勉強になるでしょうし」

 

「と言っても、俺も成績が良いというわけじゃありませんし、ちゃんと教えられてるか不安が残ってますけどね」

 

「いえいえ、あの子たちも衛宮君の授業を楽しそうに聞いて成績も上がってますよ。

それに最近では腰が少しきつくて、もう歳ですかね。だから若い人手があるととても助かるんですよ」

 

「俺は好きでやってるだけですから。でもそう言ってもらえると嬉しいですね」

 

そこで話を区切り本題に入る

 

「それで松崎さん、お願いがあるんですが…」

 

「ああ、君が連れてきたあの子の面倒だね。構わないよ」

 

「本当にすいません。こんなことを松崎さんに頼むのは筋違いだと言うのに…」

 

「いやいや、君が街にいる子たちを連れて来てくれるおかげであの子たちも喜びますしそれに街よりも

こちらの方が住みやすい子もいるでしょうから、そんな子たちを連れてきてくれる衛宮君に感謝こそすれ

恨む事なんか何一つありませんよ。それに君には色々手伝ってもらってるからね。こんなことでよければ

いくらでも構わないよ」

 

「本当にありがとうございます、松崎さん」

 

「いやいや。こっちの事はいいからそろそろあの子たちの下に行ってあげて下さい。あの子たちも衛宮君の事を待っていますから」

 

「わかりました。そうだ!松崎さん、これを預かっといてくれませんか?」

 

近くに置いておいた風呂敷に包まれた荷物を松崎さんに預ける

 

「これは…ああ、そういうことですか」

 

「後のお楽しみという事であの子たちには黙っといてくれませんか?」

 

「ええ、分かりました」

 

失礼します、と頭を下げてから今か今かと待っていた子どもたちの所へと向かい授業を始める

 

 

 

 

 

 

 

 

「じゃあ今日はここまでにしとこうか」

 

俺がそう告げると子どもたちは一気に力が抜けていき、だらんとなる

 

「やっと終わったよ~」

 

「むずかしかったね~」

 

授業が終わりそれぞれが談笑を始める

 

それにしてもみんなちゃんと復習もしているようで学校に通ってる子たちよりは学力は低いが

ちゃんと理解できているようである

 

「それじゃあそろそろお昼だしご飯にしようか。今日は皆頑張ったし、俺が作ってきたご飯を食べようか」

 

「「「え!?四郎お兄ちゃんの手料理!!?」」」

 

俺が作った物と分かると全員の眼が輝いたように見えた

 

「わーい!四郎お兄ちゃんのご飯だー!」

 

「やったね!授業頑張ったかいがあったよ!」

 

「それじゃあ渡していくから席についてくれ」

 

そう言うと同時に一瞬で全員が席に着き早く早くと急かす

 

俺の料理をそこまで楽しみにしていると思うと自然と笑みがこぼれた

 

松崎さんに預かってもらっておいた風呂敷の包みをはずし蓋をあけると中にはサンドイッチが詰まっていた

 

今か今かと待ちわびている子どもたちにサンドイッチを手渡していく

 

「それじゃあ手を合わせて、頂きます!」

 

「「「頂きます!!!」」」

 

食事の挨拶を済ませてすぐに子どもたちはサンドイッチにかじりつく

 

「おいしい!」

 

「うん!おいしい!」

 

ワイワイと笑顔でサンドイッチをほおばっていく子どもたちを見て作った立場としてはこれ以上にない

お返しだった

 

「あ!これ花がはいってるよ!」

 

「知ってる!これ菜の花っていうんでしょ!」

 

「ああ、それは食べられる花なんだ。栄養も高いし春一番の食品でもあるから入れてみたんだ」

 

「へー、そうなんだ!」

 

「四郎お兄ちゃんって物知りだね!」

 

「いや、料理をするうえでたまたま知っただけさ」

 

「いいなぁシロエちゃんは。いつもこんな料理食べられるなんて」

 

「うん!お兄ちゃんの料理は世界で一番おいしいんだから!」

 

「いや、褒めてくれるのは嬉しいけどそれは流石にいいすぐじゃないか?」

 

あまりの過大評価に苦笑する

 

「私も料理が出来たらいいのになぁ」

 

「それぐらいならいくらでも教えてやるぞ。そうだ!じゃあ次は皆で調理実習でも開いて簡単な料理でも

やってみるか!」

 

「調理実習!?」

 

「私、調理実習なんてしたことない!」

 

「楽しそう!」

 

子どもたちは身経験である調理実習に期待を膨らませながらまた一口とサンドイッチを食べる

 

菜の花のサンドイッチは子どもたちにとても評価が高かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





青空教室の子どもたちとの日常回でした


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10は一言の入力が必須です。また、それぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。