ブラック・ブレット 【無限の剣製】   作:爆走ボンバー人間

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第四剣 「悪からの誘い」

「それじゃあシロエ、その子を風呂にまで案内してやってくれないか?その間に晩飯の準備をしておくからさ」

 

「わかった!それじゃあ一緒に入ろう!私が洗ってあげるから」

 

「え、あの、ちょっと…」

 

「ほら遠慮しないで!早く早く!」

 

戸惑う少女を引っ張ってシロエは風呂場へと入っていく

 

あの少女をここに連れてきたのは行くあてもなかったようだしあんな怖いめにあって不安もあるだろうから

今日のところは家に来てもらってゆっくりと休んでもらおうと思ったからだ

 

最初は戸惑っていたが一人だと心細いためおとなしくついてきてくれたのだ

 

少女を連れて風呂場へ行くのを見届けてキッチンに行こうとするとシロエが戻ってきた

 

「どうしたシロエ?着替えなら俺が後で持っていくぞ」

 

「お兄ちゃん……覗かないでね」

 

「そんなことするか!いいからちゃっちゃと入ってこい!」

 

「はーい♪」

 

シロエは少し楽しげに風呂場へと戻っていく

 

にしても、なんてこと言うんだ。そんな事するはずがないのに

 

妹からしたら軽い冗談なのかもしれないが俺からしたら冷や汗ものだ

 

もしさっきの会話を第三者にでも聞かれたとしたら俺にあらぬ疑いの眼差しを向けられるかもしれない

危険なものだ

 

妹の俺に対する印象が若干心配になってきた

 

俺は一度さっきの会話を胸の中にしまいこみ調理に専念する

 

今日はもともと普通のカレーにするつもりだったが少しアレンジを加えることにした

 

今日買ってきた物等の必要な食材を取り出し野菜を水洗いしていく

 

人参、玉ねぎ、ピーマンをみじん切りにする。ピーマンはまたあとで別に加えるため分けておいておく

 

フライパンにオリーブ油とニンニクを入れて火にかけ、油にニンニクの匂いが渡ったら豚のひき肉を入れて

炒め、さらにそこに絞ったしょうが汁を投入する

 

みじん切りにした人参と玉ねぎをいれて水と塩を加えて野菜が柔らかくなるまで煮る

 

ピーマン後で一緒に入れる

 

柔らかくなったらトマトピューレ・カレールウを入れ、熱湯で湯がいたレーズンを入れて完成だ

 

レーズンはどちらでもいいのだがアクセントになって美味みがでるのでオススメだ

 

これなら栄養も高く食べやすいだろう

 

ちなみに甘口だ。シロエもだけどまだ子供だからこれぐらいがちょうどいいだろう

 

後は皿によそって完成というところでシロエ達が風呂から上がってきた

 

二人とも風呂上がりであるため体から湯気が出ており髪にはまだ水気が抜けきっていなかった

 

シロエは言わずもがなだったが少女の方も体や髪をしっかりと洗ったため手入れのされていなかった髪は綺麗に後ろに三つ編みにされており本来持っていた可愛さが出ておりそこらの小学生に比べると10歳とは思えないほどの色気が出ていた

 

「はー、さっぱりしたぁ。やっぱりお風呂は良いね!まさに人類が生み出した至高の文化だよ!」

 

「確かに風呂はいいものだけどそれは大げさすぎないか?」

 

「そんなことないよ!女の子にとってお風呂は必要不可欠なんだから!クゥちゃんも

気持ちよかったよね!」

 

「え!?う、うん。暖かくて、気持ちよかった…」

 

シロエがクゥと呼んだ子に同意を求め戸惑いながらも同意していた

 

「そ、そうか。所でその子の名前はクゥって言ってたけどもうあだ名で呼ぶほど仲良くなれたのか?」

 

「ううん、クーちゃん名前がないって言ってたから私が考えたの。ちゃんとクゥちゃんの了承は取ったし

クーちゃんも喜んでくれたから。ダメ…だったかな?」

 

シロエは勝手に決めた事に不安げに上目遣いで見てきた

 

俺はそんな様子のシロエに優しく微笑んで頭をなでる

 

「その子もその名前が気に入ってるんだろ?だったら俺がとやかく言う資格はないよ。むしろその子の喜ぶ名前を付けてあげたんだから起こるはずがないだろ」

 

「…うん!ありがとうお兄ちゃん!」

 

「ああ。それじゃあそろそろ飯にしようか!今日はカレーだ!」

 

「本当!?やったー!」

 

シロエはクゥちゃんの手を引いて席に座らせ自身も席について早く早く!と急かす

 

俺はそれに苦笑しながらカレーをよそって二人の前に置き自分の分をよそう

 

「それじゃあ手を合わせて「あ、あの!!」ん?どうした?」

 

いざ食事の挨拶をしようとしたところでクーが制止する

 

「なんで…そんな普通にしてられるの?私は、『呪われた子どもたち』なんだよ?なのに何でこんな普通にしてられるの?たすけてくれたの?怖くないの!?」

 

不安が込められたその声は小さくとぎれとぎれだったが途中から溜まっていた感情が爆発し声を張り上げる

 

クゥちゃんのその問いに対し俺は

 

「なんで怖がる必要があるんだ?それに助けた理由だって困ってる奴がいたら助けるのは普通だろ?」

 

それが常識であるかのように言う

 

「でも、私は普通の人間じゃないんだよ?化け物なんだよ?」

 

「クゥは化け物なんかじゃない。俺たちと同じ人間だよ。俺の目の前にいる君は俺からしたら

普通のかわいらしい女の子にしか見えないよ」

 

「でも、でも…!」

 

俺は壊れ物を扱うようにクゥの頭を撫でながら目元に溜まっていた涙をぬぐった

 

「もう我慢しなくていいんだ。泣きたいときは泣けばいい。素直になっていいんだ。君は十分苦しんだ。

これ以上君が傷つく事なくてもいいんだ」

 

だから、と続け

 

「泣きたいときは泣いてもいいんだ。甘えたいときは存分に甘えてもいいんだ。クゥはまだ

子どもなんだから、大人である俺に甘えてもいいんだ」

 

クゥは俯いていて表情は見えないが体が少しだけ震えておりやがて声を絞り出す

 

「………本当に…いいの?」

 

その小さな問いに

 

「ああ、いいよ」

 

と、答えたと同時にクゥが飛びついてきた

 

「うう、グス、わだじ、ずっとさみ、しくて…でも!誰にも、頼れなくて…!」

 

「ウワアアァァァァァァン!!!ァァァァ!!ウァァァァァァァ!!」

 

俺の服をつかみ、喉の奥から張り出された泣き声をただただ枯れるまで上げ続けていた

 

そんなクゥに俺は何も言わずただ黙ってクゥの背中をさすり泣きやむまで付き合った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「すぅ、すぅ………」

 

あの後泣きやんだクゥは大声で泣いていたのを見られて恥ずかしいのか、ずっと俯きがちで目線が合うと

慌てて逸らされた

 

その態度にシロエは少し面白くなさそうな顔をして腕をつねられた

 

なんでさ

 

そのあとは作ったカレーを暖かいうちに食べて喜んでくれたのは作った身からしたら満足だった

 

食べ終わった食器を片づけている間シロエはクゥに天誅ガールズを見せていた

 

すぐにクゥもはまったようで二人の楽しそうな会話がこちらにまで聞こえてきてこっちもいい気分になった

 

今は天誅ガールズを見続けていたせいで疲れて寝てしまったらしい

 

本来なら注意しなければならないのだろうが、今日ぐらいはいいかと許してしまうあたりやはり俺は

少し甘いのかもしれない

 

うーん、ここは厳しくしかるべきなのだろうか?でも今回ぐらいは別に…悩むなぁ

 

そんな事を考えながら二人をおぶってベッドに入れる

 

二人ともとても気持ちのよさそうな寝顔を浮かべており先程まで考えていた事がどうでもいいと思えてきてしまった

 

この幸せを壊させるわけにはいかない

 

だから……この幸せを害する敵を排除しに行くとしよう

 

四郎が部屋から出て言った時にはさっきまでの優しそうな笑顔ではなく

 

 

 

 

 

 

どこまでも冷たく、心を殺したかのような冷酷な魔術師の顔であった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

四郎が家を出てから少しして自分を追っている気配を確認しながら人気の少ない道通りまで来て漸く止まる

 

「わざわざ人がいないところまで来たんだ。いい加減に出てきたらどうだ?」

 

誰もいない所で四郎がそう口にすると角から二人の人影が出てきた

 

「気づいてたんだ?ねぇ、パパ。やっぱり斬っていい?」

 

「よしよし、だがまだ駄目だよ」

 

「むぅー、パパ~」

 

「それはそうとやはり気づかれていたか。一体いつ気付いたんだい?参考までに教えてくれないだろか?」

 

「最初からだよ。そっちの子から殺気が漏れてからな、案外早く気づいたよ」

 

影から出てきて四郎に問い掛けたのは昨日襲ってきた仮面の男でありその傍らに小刀を持った

藍色の髪の少女だった

 

「ふむ、それでも常人が気づけるほどのものではなかったはずなのだが。やはり君は面白いね。

そう言えば自己紹介がまだだったね。私の名は蛭子影胤。こっちは娘の子比奈だ」

 

「御託はいい。用件は何だ?俺を始末しにでも来たのか?」

 

「いやそんな事ではない。単刀直入に言おう、私の仲間にならないか?衛宮四郎」

 

「何?どういう意味だ?」

 

いきなりの勧誘に四郎は相手の意図がなんなんのか図ろうとする

 

「そのままの意味だよ。私は今ある計画を進めていてね、そのために君の力を貸してほしいのだよ」

 

「何で俺なんかを勧誘するんだ?仲間がほしいなら俺みたいな奴じゃなくても他にもいるだろ?」

 

「何大したことではない。私が君を気に入ったからだ。昨日の君のあの眼が私はとても気に入った。

あれは並大抵の人生では得る事の出来ないものだからねぇ」

 

ヒヒヒ、と笑うとそのまま仮面の男はハンカチを手の上に乗せ取り払うとそこには銀のアタッシュケースが

あり、それを開くと中には大量の金がはいっていた

 

「もちろんただというわけではない。協力してくれるというのならこの金は君に譲ろう」

 

「こんなことをしてまであんたは何がしたいんだ?あんたの目的はなんだ?」

 

「昨日も言っただろう。私は世界を滅ぼすものだ。君は一度もこの東京エリアの在り方は間違っていると

思った事はないかね?」

 

そう言われ昼間の事を思い出す

 

10歳足らずの少女に過度なまでの対処に周りからの悪意にあふれた暴言の嵐、極めつけは少女を庇った

自分さえも殺そうとした警官。正直なところ間違いなく普通ではなく狂っていると言っていいだろう

 

そんな四郎の様子に気づいたのか仮面の男はさらに言葉を続ける

 

「私とともに来い!衛宮四郎!君もこの世界には不満を持っているだろう?私とともに来ればこれから

訪れるであろう『大絶滅の嵐』からも逃れる事が出来る。共に世界を変えようではないか!」

 

腕を広げ高らかに言い放つ。

 

四郎はそれを見てフッ、と口元を皮肉気に歪ませて一笑する

 

「何がおかしいと言うのかね?」

 

「別に、ただあんたは大きな勘違いをしてるってだけだ」

 

「勘違い?」

 

「確かにこの世界は狂っている。かつての大戦によって人間という種、そのものがおかしくなった。

兵器開発は以前より活発になり、一般人でも自己防衛なんていう体のいいもので武器を持つ事を

許されている。警察も平気で人殺しをする奴もいるし簡単に死が訪れる世界になった。そしてその中でも

一番被害が出ているのは呪われた子どもたちだ。殺しても罪に問われないから怒りの矛先を彼女たちに

向けて簡単に殺す。異常すぎる」

 

「それが分かっているのなら、私と組むべきではないのかね?」

 

「だからそれが勘違いだと言ってるんだ。確かにこの世界は異常だと散々言ったけど

 

 

 

 

 

俺にとってそんな事は些細な問題なんだよ」

 

 

 

それを聞いた仮面の男-蛭子影胤は一瞬相手が何を言ったのか分からなかった

 

自分の目の前にいる少年はこの世界の異常性が分かっていながらそれを些細な問題(・・・・・)だと言いきったのだ

 

平和な国であった日本がこんな堂々と兵器を開発できているのはガストレアへの対策としてだ

 

だが、武器というものは使うものによって誰にでも牙をむく道具だ

 

そのせいでガストレアを倒す一方、民警や一般人による殺害件数も大戦前よりはるかに大きく治安も

いいと呼べるものではない所もある

 

武器があるだけで人は簡単に自分の為に使う事がこの世界ではそう珍しい事ではない

 

ある意味この世界において小さくない問題をこの少年は分かっていながら些細な問題だと言ったのだ

 

まるで自分には関係ないと言わんばかりに

 

「あんたが俺の言った事が理解できないのは分かる。だからこれだけは言っておく

 

俺はある人に救われ、ある人に憧れ、そしてそのある人になる事を拒んだ。あの時、あの人のように

なる事を拒み、あるものを目指したときから俺は、ある一つの味方でありそれを害するものは

例え友であろうと仲間であろうと呪われた子どもたちであろうと聖天子だろうと世界であろうと…………

俺の敵だ。そして今のあんたはそれを害するもの。

つまり、俺の敵だ」

 

これを聞いて影胤は少年の言ってる事はほとんどが分からなかったが一つだけ分かった事があった

 

それも自分にとって面白い事が

 

「フフフ、ハハハハハハハハハハ!そうかそういうことか!君も私と同じように狂っている(・・・・・)ということか!いや、この場合は壊れてると言うべきかな!君は本当に私の予想を超えてくれるねえ。

実に面白い!」

 

だが、

 

「そうなると君は私達の計画の邪魔ものというわけだ。なら、ここで排除しておかなければならないね。

子比奈、予定変更だ。彼を斬れ」

 

「やった!パパ大好き!」

 

影胤の許可が下りた影胤の娘-蛭子子比奈は嬉しそうに喜ぶ

 

そして二本の小刀を構え狂気に染まった顔をする

 

「それじゃあ四郎。死んでね!」

 

そのまま地面を蹴り少女とは思えないほどの速さで四郎に接近する

 

 

 

本来、人間がイニシエーターに勝つことは出来ない

 

イニシエーターは人間が出せる力の何倍もの力をガストレアウィルスの影響によって引き出す事が出来る

 

そんな彼女らに勝つことはほぼ不可能なのだ

 

それに加えて四郎は何の武器も持っていない

 

このまま迫りくる刃に斬り裂かれその生涯を終えるだろう

 

 

それが普通の人間ならばの話だが

 

 

迫る子比奈に四郎はただ冷静に相手と渡り合うための武器を想像する

 

自分が最も使い慣れている『剣』を

 

体の中の魔術回路を開き魔力を流し込み頭の中に武器の設計図を思い浮かべる

 

イメージは銃の撃鉄

 

投影開始(トレース・オン)!」

 

想像理念を鑑定し

 

基本となる骨子を想定し

 

構成された材質を複製し

 

製作に及ぶ技術を模倣し

 

成長に至る経験に共感し

 

蓄積された年月を再現し

 

今ここに、幻想を再現する!

 

ガキィィィン!と鉄と鉄がぶつかる音が響き子比奈の小刀が防がれる

 

先程まで何も持っていなかった四郎はどこから取り出したのか二本の白と黒の中華剣で子比奈を防いだ

 

子比奈は自分の攻撃を防がれた事に驚きながらもそのまま小回りのきく小刀を二本使い高速で

斬りかかってくる

 

そのすべてを四郎は防ぎ切り、それだけにとどまらず足払いをかけ体勢を崩す

 

そこへ中華剣を振りおろすが子比奈は体の前で小刀をクロスして防ぐ

 

だが踏ん張りが利かなかった為影胤の下まで吹き飛ばされた

 

「君は…本当に何者なんだい?」

 

影胤は動揺を隠し切れていない声で四郎に尋ねる

 

 

 

「そうだな。かつて正義の味方を目指し、それを拒んだ悪…と言ったところだな」

 

 

 

 

 




初投影シーンです

これは余談ですが四郎が強すぎないかと言われているようなので言っておきますが
UBWの士郎は干渉・莫耶を投影することで葛木と互角でした
サーヴァントとも少しでも渡り合える葛木と同等なら蛭子影胤や子比奈ぐらいなら
対処できると思います

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