ブラック・ブレット 【無限の剣製】   作:爆走ボンバー人間

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第一剣 「仮面の男との邂逅」

男は歩き続けていた

 

男が今歩いているのは果てしなく広がる荒野だった

 

周りには剣が突き刺さっていた

 

だがそれは数十や数百ではなく数え切れないほどの数、まさに無限とも思えるほどのものだった

 

短剣、長剣、片手剣、刀剣、両手剣、大剣、細剣、双剣などそれぞれが別のもので

固有のものだった

 

男はその奇妙で、どこか恐れと寂しさを感じる荒野をただ突き進んでいた

 

まるでそれしか知らないように

 

まるで、それ以外に道がないかのように

 

 

 

まるで…そうしなければならないかのように

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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まだ朝日が昇り始めてすぐの時刻

 

朝である事を主張してくる目覚まし時計の音を切り、布団からその体を起こす

 

起きてすぐに少し固まっている体をほぐし、ジャージに着替えて日課である早朝の

走りこみ、腕立て伏せ、腹筋、スクワットなどの筋トレを行う

 

一通り帰宅するとシャワーで汗を洗い流し

とその上からエプロンをつける

 

冷蔵庫から昨日のうちに仕込んでおいた材料などを取り出し、調理に取りかかる

 

大体の工程が終了し残りが後少しだと言うところで火を弱め温度を安定させて

おいてから台所を離れる

 

「おーい朝だぞ、起きてるか?」

 

目的の部屋の前にまでたどり着き中にいるだろう部屋の主を呼びながら数回ノックをする、が反応はない

 

入るぞー、と断りを入れて部屋に入る

 

部屋の中はかわいらしく装飾されており本棚には漫画やDVDがありぬいぐるみが

数個置かれているという女の子らしい部屋であった

そしてそのベッドには気持ちよさそうな顔をして眠っている少女

 

透き通るような銀髪に幼い顔立ちではあるが人形のように整った顔立ちで誰もが

美少女と認めるものである

 

楽しい夢を見ているのだろうか、その少女は口元が綻んでおり無邪気な寝顔であった

 

見ていて微笑ましい物でありあまりにも気持ちよさそうにしているためもう少しこのままでいさせてあげたいが、そんなわけにもいかないため少女の肩をゆすって起こす

 

「おーい、シロエ。もう朝だぞ、早く起きろ」

 

「う~ん、あと五分~」

 

「それ絶対五分経っても起きない決まり文句じゃないか。いいから起きろ、遅刻するぞ」

 

う~、と言いながら布団から這い出てよろよろと寝ぼけながら洗面所へと歩いていく自身の妹を見届け、台所へと戻り残っている調理を手早く済ます

 

「お兄ちゃん、おはよ~う」

 

「ああ、おはようシロエ」

 

制服へと着替え未だに眠気が覚めないのか目を擦りながら挨拶する自身の妹に対し

挨拶を返す

 

「わー、今日もおいしそうなご飯!」

 

椅子に座り食卓へと並べられた料理を見て顔を輝かせる

 

食卓に並べられているのは和食で統一されており朝に適したさっぱりとしたもの

であった

 

 

~少年少女食事中~

 

「ごちそうさまでした!今日もお兄ちゃんのご飯はおいしかった~」

 

「お粗末さまでした。これぐらい誰だって出来るさ。シロエも料理してみるか?

俺が教えてやるぞ」

 

朝食を食べ終え満足といった様子のシロエに提案する

 

「え!?う~んどうしようかな、あ!でもそうすれば私がお兄ちゃんに朝ご飯用意

して、………えへへ~」

「シロエ?」

 

「!?え、えっと、い、今はいいかな!また今度教えてお兄ちゃん!」

 

「あ、ああ。分かった」

 

だらしなく顔を緩ませ想像するシロエに声をかけるとシロエはハッ!、となり慌てた様子で断る

 

…四郎は口元から垂れていたよだれをふき取っている妹の姿には気付かなかった

 

「行ってきまーす!」

 

「行ってらっしゃい。車に気をつけろよー!」

 

はーい!と返事する妹を見送り自身も昨夜のうちにアイロンをかけておいた

しわのない制服戸締りをして学校へと向かう

 

 

 

……これがこの世界の、衛宮四郎の日常の朝である

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「一成、こっちの修理終わったぞ」

 

「む、そうか。すまんな衛宮、こんなことまで頼んでしまって」

 

「別にいいさ、俺が好きでやってるんだからな。それよりほかはもうないのか?

ついでにやっておくけど」

 

「それなら次は視聴覚室のビデオデッキを頼む。この度天寿を全うしてしまった

ようでな」

 

「全うしてたらもう直せないだろ」

 

時間は昼休み、四郎は近場の高校の冬木高校に通っており同じくその学校の生徒

であり生徒会長の柳洞一樹に頼まれ生徒会の仕事を手伝っていた

 

「そう言えば衛宮、アパートでガストレアが出たという噂はもう聞いたか?」

 

「いや聞いてないな。それでそのガストレアはどうなったんだ?」

 

「心配するな、既に民警が駆除したそうだ」

 

ビデオデッキを生徒会室で修理し終えお茶を入れている四郎に一成がそんな話をする

 

だがその話を聞いて顔を険しくする四郎を見て既に駆除された、と伝えると四郎は

ほっ、として席に着き自分の弁当を食べ始める

 

「それにしても物騒な世の中になってしまったものだな。いくらモノリスの中にいるとしてもいつガストレアが現れるのかも分からんのだから」

 

「まぁ、『モノリス』があっても絶対にガストレアが侵入してこないというわけでもないからな」

 

『モノリス』

 

それはガストレアが苦手とする磁場を発生させ、その異常な再生能力を阻害する

という黒い金属で出来た巨大な壁の事だ

 

全長1618キロ、幅1キロの壁でこの東京エリアを一定の間隔で囲んでおりそのおかげでガストレアからの侵攻を防ぐ事が出来るのである

 

だがそれも完全というわけではない

 

逆に言えば磁場が届かないところからなら簡単に侵入できるということだ

 

例えば上手く気流に乗って超高度から侵入したり、地下深くから侵入する事がある

 

そしてもし侵入された時もっとも恐ろしいのが『感染爆発(パンデミック)』である

 

感染爆発とはガストレアウィルスに対して抑制因子を持たない人類が血液感染で

継承崩壊というプロセスを経てガストレアに変貌しそのまま一気にガストレア化が

広がっていく事である

 

もしそうなってしまえばこのエリアはすぐにでもガストレアに呑みこまれ、瞬く間に滅んでしまうだろう

 

「もうこの話はやめないか?起こるかどうか分からない事をいくら言ってもきりが

ないしそんな後ろ向きな事考えてたら暗い雰囲気になっちまうしさ」

 

「むう、確かにそれもそうだな。まだ半人前ではあるが俺も寺の住職だ。こんなことを言っていても出来ることと言えばお経を唱えることしかできんしな。…所で衛宮、その唐揚げもらってもよいだろうか?」

 

「ああ、構わないよ」

 

かたじけない、と一樹が拝んでからおいしそうに唐揚げをいただきそこからは当たり障りのない話をして

時間を過ごした

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やばい、ちょっと遅くなったな。夕飯も大分遅れちまうな」

 

買い物袋を持ちながら四郎はすっかり日が落ち暗くなった夜道を駆け抜ける

 

学校を終えた後帰りに買い物をしていると重そうな荷物を抱えた老人を見て放って

おけず、荷物を代わりに持ち家まで送ったのだが、家とは真逆の方向であったため

こんなに遅くになっているのである

 

シロエ心配してるかな、と考え家でお腹をすかして待っているであろう妹の為に休むことなく脚を走らせていたのである

 

そんな時近くの公園を通り過ぎようとしたとき、二つの人影が見えた

 

こんな暗がりであっても四郎の眼はその二人の影をはっきりと視認していた

 

一人は血のように紅い燕尾服にシルクハット、そして不気味に笑う仮面を被った男

であり

もう一人は闇に溶け込むかのような黒いドレスに腰には二本の小刀、青い髪にその目は紅く染まっていた少女だった

 

どう見ても怪しさ満点の姿である

 

だが少女の紅い眼を見て、『呪われた子どもたち』という事が分かるので二人は民警かと思った

 

 

『呪われた子どもたち』とはガストレアウィルスを内包した子どもたちの事である

 

普通の人間がガストレアウィルスに感染すれば時間をおかずして感染者はガストレア化する

 

だが彼女たちは自らの体にガストレアウィルスを持ってる為、ウィルスの浸食に耐性を持ち一定のラインに達しない限り彼女らがガストレアと化す事はないのだ

 

そしてその呪われた子どもと人間がペアを組みガストレアと戦うのがプロモーターとイニシエーターであり民警と呼ばれる組織に属しているのだ

 

 

そしてその二人に自分の存在が気づかれていた

 

「そこに誰かいるのだろう?いったい誰かね?」

 

そう呼びかけられ、隠れても無駄だと思いその二人の前に姿を現す

 

「俺は別に怪しい奴じゃない。気を悪くしたのなら謝る。あんた達は民警…」

 

「子比奈、殺しなさい」

 

「はい、パパ」

 

四郎が最後まで言い終える前に仮面の男が少女にそう言い放ち少女はそれに従い腰の小刀を抜き放ち四郎の首めがけて振るう

 

「なっ!?」

 

いきなりの攻撃に絶句する四郎であったが、迫る凶器を前に頭を後ろに倒し紙一重で回避し続けて振るわれたもう一刀の斬撃をそのまま後ろに転がることでかわす

 

「…避けないで。上手く切れない」

 

「いや避けないと死んじまうだろ!あんたどういうつもりだ!」

 

仮面の男に向かっていきなりの攻撃に対して怒りをぶつけるが仮面の男は意に介さず愉快そうに言う

 

「ヒヒヒ、悪いね。目撃者がいると面倒なことになるのだよ。だから私達にあってしまった事に運が悪かったと思って潔く死んでくれたまえ」

 

そう言った仮面の男は銃剣の付いた悪趣味な二丁の拳銃を抜きこちらめがけて

発砲してくる

 

「悪いがそんな簡単にはいそうですか、って言えるほど物分かりがよくないんだよ!」

 

四郎は飛んでくる銃弾を横に跳ぶことで回避する

 

だがそこに小刀の少女が跳びかかり一撃、二撃と次々と攻撃してくる

 

四郎はそのすべてを見て(・・)避け続ける

 

そしてもう一度少女が小刀を振るった直後を狙い反撃しよう、とした所で銃弾が飛んできたためすぐに回避し互いに距離が開く

 

「パパ、あいつ斬れなかった」

 

「そうだね。子比奈の攻撃をあれだけ避けるとは、ただの一般人ではないね」

 

「お前らは一体何者だ?何を企んでいる?」

 

四郎はこの二人を完全に敵とみなしその目的を問う

 

それを仮面の男はあっさりと答えるのだった

 

「ふむ、そうだね。私達は世界を滅ぼすものだ。目的は…まだ秘密だ。ヒヒヒ!」

 

それを聞いた四郎は男を睨んでいた目を一度伏せ、次にあげたときにはその目は敵意と決意があった

 

「…そうか。なら、俺はアンタ達をここで

 

 

 

 

殺す」

 

そう言い放った四郎を男は怒るでもあざ笑うでもなく、嬉しそうに笑った

 

「ハハハハハハハ!そうか君もその類の人間だったか!面白い!ならば私達もそれに応えよう!」

 

そして両者が構えるなか四郎は小声で呟く

 

投影(トレース)…」

 

四郎がその先の自分にとっての武器を出すための言葉を紡ごうとしたとき

 

近くでパトカーの音が鳴り響いた

 

おそらく近くにいた人が銃声を聞いて通報したのだろう

 

「…どうやら邪魔が入ってしまったようだね。帰るよ、子比奈」

 

「ええー!あいつ斬りたい!」

 

「我慢しなさい子比奈」

 

「むー。はーい、パパ」

 

少女は顔をむくれさせながらも男の言葉に従い小刀をおさめた

 

「それでは名も知らぬ少年よ、さようなら」

 

そのままその二人はこの場から去った

 

「待て!くっ!」

 

追いかけようとするがパトカーが近くまで来ていた為、巻き込まれる前に四郎は

その場から離れた

 

 

 

 

余談であるが、帰りが遅くなりしかも食材はさっきの戦闘でぐちゃぐちゃになって

おり使い物にならなくなっていた為その夜は出前を取った

 

シロエは心配した、何してたの!ととても怒っており夕食も出前になってしまった為彼女のご機嫌をとるのに頑張る四郎であった

 

 

 

 

 




補足 容姿

四郎→衛宮士郎

シロエ→イリヤ(眼はエメラルドグリーン)

柳洞一樹→柳洞一成

シロエは呪われた子どもたちというわけではないので眼だけ容姿を変更させました

イリヤファンの皆様申し訳ございません!

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