……他に書くこと無いなぁ。
「それでは入学試験、実技の部……デュエル開始ぃ!」
雪 LP8000
「遠亞が負けることは無い……だろう、十哉君」
「だったら良いですね」
「……ふん」
大講堂には新入生と『眠り姫』が向かい合う。
新入生……遠亞とやらは何故か白の学ランを着ていて、エメラルドグリーンの短い髪の毛をしている。『眠り姫』の身長と比較して考えると、かなり背が低い。
そして俺の左にはオベリスクブルーの
そして右には
「おネちゃんがんばれー!」
そして、俺の膝の上で『眠り姫』の応援をしている自称・俺の妹の宇良華。
いや、今更だがどうしてこうなってんだ。
―――今朝まで記憶を遡ってみる。
「やりなさいグリオンガンド、フェニキシオン! 『閃光と暴風の
「うおぶっ!?」
黄色に輝く拳と、紅く煌めく拳が俺の腹にめり込む。
十哉 LP0
win 雪
「ごふっ、げほげほっ」
「おニちゃん大丈夫!?」
「おう……」
駆け寄ってくる宇良華に返事をしつつ、腹を押さえて立ち上がる。……なんで普通のソリッドビジョンなのにリアルダメージがあるんだ?
「っててて……おい、起きたか?」
「ええ、ここまではっきり目が覚めたのは久し振りですわ」
しっかし珍しいな、『眠り姫』が起きるだなんて。
普段は半分より上に上がる事のないまぶたが上がり、吸い込まれそうな黒い眼がこちらを見ている。
背筋は伸び、強者のオーラのようなものを醸し出している。多分こいつ良いとこのお嬢様なんだよな。ゴスロリ服も上等な素材使ってるらしいし。……普段が普段だからそうは見えないけど。
「しかし『目覚めた』ってことはだ。嫌な予感がするな」
「あら酷い。まるで私が災害のような口振りですわね?」
「……災害以外のなんなんだよ」
前にも何度か『眠り姫』が『目覚めた』事がある。そしてその度に面倒事が湧いてきた。
不良どもに絡まれたり門番が寮に襲撃してきたりと、ロクなことが無い。その癖、何故か尻拭いが俺にくる。
(不良どもは俺がボコボコにして、門番は口八丁で退けた)
「人間ですわ」
「俺はそこから疑ってるんだが?」
「おニちゃん、おネちゃんは人間だよ?」
宇良華が割り込んでくる。少しイラッときた。
「宇良華、そろそろ時間だから門番のとこ行ってこい。な?」
「え? わあっ、もうそんな時間!?」
宇良華は緑の髪をなびかせて、あっという間に駆けていった。
そうそう。俺たちが授業を受けている間、宇良華は門番のところに預けてある。
真のデュエリストうんぬんと言って言いくるめた。……デュエル脳は頑固だが扱いやすい。
「ふーぅ。ったく……『眠り姫』、俺らも行くぞ。用意しろ」
「あら、貴方が既に終わらせていたんじゃ無いの?」
「そこまでしねぇよ。お前、仮にも女だろうが」
「れっきとした
「あっそ」
歩き出す。そーいやー、今日って新入生が入ってくる日か。
席に座って一時限目の始まりを待つ。教室がざわめいてるのは、恐らく『魔をも恐れぬ眠り姫』が起きているからだろうな。
と、放送が入る。
『あ、あー、あ~のね。オホンッ。オベリスクブルーの天上院天馬、ラーイエローの三沢
……あ? は? 俺なんかしたっけか?
教室の他の奴らの視線が集まる。
「呼ばれましたわ。行きましょう?」
「おう……いやお前は呼ばれてねーだろ?」
「行きたいからいくのですわ。……それに、貴方は私の従者でしょう?」
「ちげぇよ! いやなんかそれに近い立ち位置になってるけどな!」
「うるさいですわねぇ」
「誰のせいだと思ってんだ!」
くっそ、こいつは寝ても覚めても……!
「ちっ、取り敢えず行くぞ」
「だからそう言ってますわ」
嫌々ながらも大講堂へ急ぐ。
と、ちょうど教室を出たタイミングで天馬と会う。
「ようテンテン」
「あ、やあジュージュー。それとおはよう雪さん」
「ええ、おはよう」
流石テンテン、イケメンだけあって『眠り姫』が起きてても動揺の一つも見せない。
そして『眠り姫』は俺を間に挟んでテンテンの反対側で歩く。
「なあテンテン、なんで俺らが呼び出されたか分かるか?」
「さあ? でも予測することは出来るかな」
「へえ? じゃあ教えてくれよ首席さん」
皮肉混じりに聞いてみるが、爽やかな笑顔を返された。
「うん。まず今日は新入生が入ってくる日だね?」
「だな」「ですわね」
「そしてさっきの放送で呼ばれた三人は……それぞれのコースでトップの実力者だ」
「……つまり『俺は学園トップだぜ』ってか?」
「まあ、それは事実だから否定はしないけどね」
うっぜえ。カーブボール投げたら顔面に打ち返された。
「大体、それを言ったらジュージューだってオシリスレッドのトップじゃないか」
「おい、それ本気で言ってんなら学園やめろ。冗談だったら顔面パンチな」
「はは、照れちゃって」
なんかうまーくあしらわれてるよな。伊達に長い付き合いじゃないか。
なんて喋ってたら大講堂の入り口に着いた。そしてスタンバってた校長がこっちに気付く。
「む、やっと来た~のね。それじゃあ中に入る~のね」
「待ってください。ラーイエローの三沢君がまだ」
「ここに居るぞ」
うおわっ!? 真後ろから声が!
振り向くと、確かに黄色の制服を着た男が居る。
「いつの間に……」
「あら、始めから居ましてよ?」
「え」
つまり俺がテンテンと喋りながら歩いてる間ずっと後ろに居たのか!?
「あー、その、ごめん。気付かなかったよ」
テンテンがすかさずイケメンフォローをする。
が、
「ふん。お前は敵だ、天上院天馬。挨拶など不要!」
おお、
「――――俺はそれより、そこの『眠り姫』が気付いているのに無視してきたのが辛い……」
「そうな~のね。雪矢雪、わた~しは貴女を呼んでない~のね」
ラーイエローの奴が何かぼそっと言ったが、校長の声が大きくてよく聞こえなかった。
「それがどうか致しました?」
「ちゃんと授業を受けないといけない~のね」
「私が授業をちゃんと受けるとお思いですの?」
「むぐぐ……」
おい、鮮やかに言いくるめられてんなよ校長。
「まあ良いではないですか校長」
「あ、おニちゃん!」
「すいませんちょっと腹痛なので」
「逃がすか」「逃がしませんわ」
やめろ! HA☆NA☆SE! 嫌な予感しかしないんだよ!
「俺はまだ死にたくないっ!」
「なっ、遊城十哉、貴様!」
肩を掴んでいる手から、制服の上着を脱ぐことで脱出。走って逃げる。
とはいえ、歴戦の猛者である門番から逃げられる訳も無く。
「手間かけさせやがって」
「おニちゃん、めっ!」
普通に逮捕された。
いやさあ……門番なら門番してろよ……。
大講堂の席。五十歳ぐらいの大物感溢れるお爺さんが座っていた。
「遅かったな」
「すみません社長。生徒の一名が逃走を図ったので少し手間取りました」
「ふん?」
訂正。リアルに大物だったわ。あの門番が敬語でお辞儀までしてる、更に社長という言葉。
「校長。このじ……この方はもしかして」
「そう、この方はKC社社長、海馬木馬様な~のね」
流石に姿勢を正す。海馬つったら、天下のKCじゃねぇか。何だってこんなとこに。
「お前たちが……ふむ」
じっくり観察される。緊張のあまり誰も喋らない。……しかし、緊張とは無縁な奴は居るもので。
「それで、私たちは何の為に呼ばれたのでしょうか?」
その名は雪矢 雪。人呼んで『魔をも恐れぬ眠り姫』。
校長がめっちゃ慌てて何か言おうとしてるけど、慌てすぎて言葉が出てきてない。
「ふん、海馬遠亞のコース決めだ。あれに必要なのは実践だ」
いや分かんねぇよ。誰だよ遠亞って。
「成る程、遠亞様はどちらに?」
「既に筆記試験は終えてある。後は実技試験だけだ」
「実技試験は普通、校長か校長代理の方が行うのでは?」
「それがお前たちだ」
……はあ?
「えっとえっと、おニちゃん、どーゆーこと?」
宇良華が俺と手を繋ぎなから聞いてくる。手を繋いでいるのは『おニちゃんが逃げないよーに!』だそうだ。余計なお世話だ。
「……俺たちに遠亞とやらの実技試験を行えって事らしい」
「ふーん。……じちゅぎしけんってなぁに?」
「じ
「デュエル! デュエル、わたしもデュエルしたい!」
「はいはい静かにしよーなー」
宇良華のせいで、なんつうか、気が抜けたわ。今更俺だけ緊張するのも馬鹿らしい。
……流石に相手が相手だから慣れない敬語は使うけどな。
「話は分かりました。それで、どんな順番でデュエルするんですか? ……オマケも付いてきているとはいえ、元から三人も呼んだんですから一回で決めるつもりは無いんですよね?」
「遊城十哉! 貴様、敬語ぐらいしっかり出来んのか!」
門番がぶちギレる。んなこと言われても。……結構しっかりしたつもりなんだけどなぁ。
「よい」
「しかし――」
「よいと言っている」
「…………はっ」
てか門番、なんであんなに『社長の腹心』みたいなポジションが似合ってるんだ?
「遠亞の試験。まずはレッドの代表からデュエルしてもらう。そこで遠亞が負けたらレッド。勝ったら次のラーイエローの代表とデュエルだ」
「成る程、そうやって三連戦……その遠亞とやらが勝ち抜けたらどうするんですか?」
「ここはその程度の場所ということだ」
おう、言ってくれるねぇ。
「あの、アルケーン校長。他の新入生たちのコース分けは?」
「既に終わっている~のね、Mr.天馬」
「そうですか……」
「校長、これって赤紙になったりするんですか?」
「そうな~のね、レッドボーイ」
「扱いの差を感じる」
……ん? そういやなんか人数少なくねえか?
「おいテンテン、『眠り姫』と……あー、ラーイエローの奴は?」
「試験方法の確認の時にはどこかに行ってたから、もう準備してるんじゃないかな?」
まじかぁ。
「……ま、良いか。審判は門番がやるのか?」
「ああ」
「んーじゃ、赤紙貰いながら高みの見物といきますかね……。社長さん、見物ならそこよりあっちで見た方が良いですよ」
「遊城十哉ぁ! 馴れ馴れしいぞ貴様ぁ!」
門番が怒鳴る。……まあそうだな、今のはちょっと緊張が緩んでた。
「門番、宇良華が怖がってるだろ」
「むっ」
つーか審判なんだから早く降りろよ。
とまあ、こんな感じか。
「僕は後攻だ。……ふん、すぐに終わらせてあげるよお姉さん」
「出来ると良いですわね」
言葉による軽いジャブを打ち合う。
「では、永続魔法『補給部隊』を二枚発動。手札から『
「レベル5を特殊召喚か」
おお、やっぱ起きてると違うな。引きとかプレイングとか。
「黄色き竜は自らの重さに耐えかねる……サルファフナーが自身の効果で特殊召喚されたとき、自分フィールドのカード一枚を破壊しますわ。私はサルファフナーを自壊」
「は? 出したのにわざわざ壊すのか?」
「馬鹿丸出しですわね……サルファフナーでデッキから『水晶機巧―ローズニクス』を特殊召喚、そして二枚の『補給部隊』で二枚ドローですわ」
『水晶機巧―ローズニクス』
レベル4 水属性 機械族
攻撃力1800 守備力1000
[自分の表側のカードを破壊してクリストロンチューナー呼び出しor墓地から除外して手札の『水晶機巧』モンスター特殊召喚]
崩れた竜の残骸から、紅い水晶で出来た尾長鳥が現れる。
「馬鹿だと……!」
遠亞が怒るが、『眠り姫』は無視して進める。
「墓地のプラシレータを除外。水晶は緑の光に導かれる。手札から『水晶機巧―シストバーン』を特殊召喚、『水晶機巧―クオン』を通常召喚」
おお、回る回るどこまで行くかね。
『水晶機巧―クオン』
レベル1 水属性 機械族 チューナー
攻撃力500 守備力500
[相手ターンに手札から呼び出してシンクロするチューナー。水色の男の子っぽい見た目]
「ローズニクスの効果。
『眠り姫』は歌うように滑らかに進める。あの召喚口上、いつ考えてんだろうな。
「墓地のシストバーンを除外。藍の光は水晶の道しるべ。『水晶機巧―スモーガー』を手札に加えますわ」
……考えてるな。手札が良いってのもあるだろうけど。
「カードを一枚伏せて、ターンエンドですわ」
雪 LP8000 手札1枚
モンスター 『水晶機巧―クオン』[左から2]
『水晶機巧―ローズニクス』(守備)[中央]
『水晶機巧―クオン』[右から2]
魔法・罠 『補給部隊』[右端]
『補給部隊』[右から2]
伏せ[中央]
「ドロー!」
遠亞にターンが移った。
「十哉君、どう見る?」
「遠亞のデッキによりますよ。弱くは無いんでしょうけどね」
「ふむ」
横からの質問には適当に答える。ってか見てりゃあ分かるだろ。
「おニちゃん、おネちゃん勝てるの?」
「勝つかもな」
デュエルってのは最後まで分からないものだが、な。
「まずは『ドラゴン・目覚めの旋律』を発動! 手札の『
そして手札の『青眼の白龍』を見せて『青眼の亜白龍』を特殊召喚だ!」
『青眼の亜白龍』
レベル8 光属性 ドラゴン族
攻撃力3000 守備力2500
[ルビ泣かせの名前、決闘者を唸らせる緩い召喚方法。そして攻撃or破壊。普通に強い]
かなり刺々しい白龍が現れる。神秘的な雰囲気だが、どこか禍々しい感じを与えてくる。
「……ズルいですわね、その出方は」
「それは弱者の戯れ言さ。オルタナティブの効果! そこの鳥を破壊! 『破滅のバーンストリーム』!」
光の奔流にさらされ、ローズニクスが粉微塵にされる。
「『補給部隊』で二枚ドローしますわ」
「ふんっ、幾らでも引けば良いさ。どうせ勝ち目は無いんだからな。『トレード・イン』を発動! 手札のブルーアイズを捨ててツード――」
「チェーンしてクオン、更にチェーンして『リビングデッドの呼び声』。逆順処理ですわ」
やるねぇ。未来でも見えたか?
「まずはローズニクスを蘇生。そして次にクオンの効果で手札からスモーガーを特殊召喚してシンクロ。
水に染まる水晶は、かくも白き疾風に変わる。さざ波を立てなさい、『水晶機巧―クオンダム』!」
『水晶機巧―クオンダム』
レベル4 水属性 機械族
攻撃力1800 守備力2000
[相手ターンにシンクロできるアクセルチューナー。他のアクセルチューナーと違って、バトルフェイズにもチューニング出来る!]
「……ふん、守備力2000に何が出来る? 『青き眼の賢士』を通常召喚、効果でデッキから『太古の白石』を手札に」
「そこでクオンダムの効果ですわ。―――クオンダム、ローズニクス、クオンの三体でダブルアクセルシンクロ! 白きさざ波は紅き旋風にて巻き上がる。今放たれしは黄色き閃光! 『水晶機巧―グリオンガンド』!」
クオンダムたちが飛び上がり高速で回転し始め、突如、光が大講堂を満たす。
……俺は何度も見てるが、それでも眩しい。
光が収まったとき、そこに居たのは金色に輝く一体のモンスター。
『水晶機巧―グリオンガンド』
レベル9 水属性 機械族
攻撃力3000 守備力3000
[チューナーを複数体必要とする珍しいシンクロモンスター。出てきた時に素材の数だけ相手モンスターを除外できる。対象を取らなければなぁ……]
「相手ターンにシンクロ、それも二回……ふっ、まあ僕のブルーアイズたちには…………僕のオルタナティブはどこだ!?」
「グリオンガンドは
よく見ると、グリオンガンドの拳から煙が立ち上っている。恐ろしい速さで殴ったんだろうな。
「……少し甘く見ていたよ、お姉さん。『調和の宝札』を発動。手札の『太古の白石』を捨てて二枚ドロー。そして『ハーピィの羽箒』を発動してカードを一枚伏せる。エンドフェイズに墓地の『太古の白石』の効果で『白き霊龍』を特殊召喚」
『白き霊龍』
レベル8 光属性 ドラゴン族
攻撃力2500 守備力2000
[出てきたら相手の魔法・罠を除外してくる奴。ステータス的に強くは無いが厄介]
遠亞 LP8000 手札3枚
モンスター 『青き眼の賢士』[右から2]
『青眼の霊龍』[中央]
魔法・罠 伏せ[中央]
「ドロー。……墓地のスモーガーを除外して『クリストロン・インパクト』をサーチ、捨ててサルファフナーの効果。蘇生、自壊。黄色の光に」「『灰流うらら』だ」
おっとぉ? サルファフナーを止められるとそれなりに面倒な事になるんじゃないか?
「……ではバトル。グリオンガンド、賢士に攻撃。『閃光拳』」
グリオンガンドが一瞬で賢士の前に移動、普通に殴った。
「ぐっ……!」
遠亞 LP5000
「メイン2。プラシレータを通常召喚。効果でグリオンガンドを破壊して最後のクオンを特殊召喚。緑の光に包まれなさい。……そしてグリオンガンドは破壊されたときに除外されているモンスター一体を特殊召喚できますわ。最後の一閃、染められしは藍の輝き。シストバーンを特殊召喚」
回るなぁ。今度はどこまで行くんだ?
「おネちゃん勝ってるの?」
「今んとこはな」
「墓地のローズニクスを除外してレベル1のトークンを生成。美しき鳥は、死んでなお紅き羽を残して行く……そして、羽持つ小さき者は新たな力を手に入れる。クオンと水晶機巧トークンでチューニング! 『フォーミュラ・シンクロン』!」
『フォーミュラ・シンクロン』
レベル2 光属性 機械族
攻撃力200 守備力1500
[元祖アクセルチューナー。出てきたらドローブースト]
現れたのは人と車が合体したような見た目のモンスター。なんつぅか、どうしてそうなった。
「フォーミュラ召喚でワンドロー。……一枚伏せ、フィールド魔法『クリスタル
フォーミュラとプラシレータでクオンダムへ。ターンエンド、エンドフェイズにポテンシャルワンドロー」
フィールドに宝石が散らばる。グリガンほどじゃ無いが、かなり眩しいフィールドになってるな。
雪 LP8000 手札2枚
モンスター 『水晶機巧―クオンダム』(守備)[EX]
『水晶機巧―シストバーン』[右から2]
魔法・罠 伏せ[中央]
「ドロー! ……ふっ、これは『キテる』ね。『龍の霊廟』! デッキから霊龍を墓地に、霊龍は墓地では通常モンスター扱いだから更に太古の白石を墓地へ! ここで伏せカードオープン、『銀龍の轟砲』! 甦れ『白き霊龍』!」
二体、同じモンスターが並んだ。……あれ、脱皮した直後のブルーアイズなのか? そんな雰囲気だな。
「霊龍が出てきたとき、その伏せカードを除外だ!」
「チェーン、『リビングデッドの呼び声』。黄色き竜は何度でも現れる」
「だが呼び出したところですぐに破壊され……そういうことか」
「黄色き骸に呼び出され、金に光る少女が一人。『水晶機巧―シトリィ』!」
いわゆる過労死ってやつだよなぁ、サルファフナー。
「シトリィ特殊召喚に何かあるかしら?」
「……無い」
「こちらはありますわ。クオンダム、シストバーン、シトリィの三体でアクセルチューニング! 黄色き閃光よ、光りなさい。……何度でも! グリオンガンド!」
フラッシュ。実に目に悪い演出だよな。
「ガキンチョ、目は大丈夫か?」
「まぶちぃ……」
適当に目を覆ってやる。
「珍しくずいぶんと優しいじゃないかジュージュー」
「うっせぇ」
妹じゃないっつったって、一応俺が子守役だからな。それくらいの常識はある。
「霊龍二体と墓地の白石を除外ですわ」
「ぐぅ……!」
「……因みに、ですけど。グリオンガンドのシンクロ条件は『チューナー以外のモンスター一体』と『チューナー二体以上』ですわ」
「それがどうし……チューナー二体?」
あー、そういう。追い込んでくなぁ。
「な、つまり、まさか!」
「貴方が霊龍を出さなければ……グリオンガンドまで行きませんでしたわ」
「う……ぐ……」
遠亞が呻く。悔しいだろうなぁ……クックックッ。
「おニちゃん悪い顔してる」
「してねぇよ。……あー、説明要りますか社長さん」
「いい」
ばっさりと言い切ったな。それはそれで良いけど。
「……ターンエンド」
「エンドフェイズにポテンシャルワンドローですわ」
遠亞 LP5000 手札2枚
フィールド無し
「それでは私のターン、ドロー。……最後は
『クリスタルP』はあるだけで水晶機巧の攻守を300上げる。よって『眠り姫』のフィールドの合計攻撃力は……3300+1800 の 5100。
「その手札……片方は『復活の福音』かしら? そしてもう一枚は……何かしらね? 多分、ブルーアイズのどれかでしょうけど」
「っ!? どうして……」
「カマかけですわ。当たっていたようでなによりですわ」
「~~~ッ!?」
ひっでぇ。これはひでぇもっとやれ。
なんて思ってたら右から殺気。
「何かね?」
「どうかしましたか?」
とぼけたら顔をじっと見られた後、無言で顔を背けられた。おお、こわ。
「バトルフェイズ。シストバーン、グリオンガンドでダイレクトアタック。『紫電の閃光二撃』」
「うわあぁぁ!」
遠亞 LP0
win 雪
「勝ってしまった~のね」
「『眠り姫』……あんなに強かったのか」
「おネちゃんの勝利~やったぁ!」
三者三様の反応。……社長はこれっぽっちも反応しないのな。流石ってとこか。
「勝者、雪矢雪! ……よって海馬遠亞、君はオシリスレッドに所属してもらう」
「う…ぐ……ありえない……ありえないありえないありえない! こんなの無しだ! もう一度――」
「遠亞!!!」
大講堂全体に響くような大声。社長が立ち上がっていた。
「っ!」
「見苦しいぞ! お前も海馬の名を持つのなら受け入れろ!」
宇良華がしがみついてきたから頭を撫でてやる。怖いか? そうかそうか。
「そしてより強くなれ! この敗北をバネにしろ!」
「と、父さま……」
「……一番以外は許さんからな」
「はいっ!」
……もしかしなくても、これって感動のシーンか? 拍手てもした方が良いのか?
「ルドロス・アルケーン校長。約束通り遠亞はオシリスレッドに。……遊城十哉」
「あん?」
「遠亞を頼む」
「……後輩だからこき使いますよ?」
「当然だ」
そして、まだ少し怯えている宇良華の頭を撫でる。
「……妹は大事にしてあげろよ」
「――――はい」
そ、そんな穏やかな老人の眼で言われたら『妹じゃねぇっ』 なんて言えねえじゃねえか!
「……む。俺の出番は無かったのか。……むうぅ」
木馬君は約50歳。遊戯王GXからそんくらいの時間が経ってると考えてください。
青眼、別に弱い訳じゃ無いんだけどね。
そんでは次回予告:遠亞
負けた……まぁ良い、次がある。すぐにでもリベンジしてやる!
え、寝てる? それに洗濯掃除に料理!? え、ちょ、仕送りは減らさないでくれ~!
次回『それぞれの新たな日常』