遊戯王AU-M<英雄の孫>   作:yourphone

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今回、デュエル無しです。それと同時に文章の量が半減してます(スッ つ『収縮』)



欲しいならくれてやる

「朝だぞぉ……ふわぁ」

 

始業式の朝。外に放り出して鍵を閉めた筈なのに何故か中で寝ている『眠り姫』。

揺らしても、当然のごとく起きない。

 

……だけなら、いつも通りの朝だったんだが。

 

「こっちはどうすっかなぁ……」

 

緑色の物体が『眠り姫』に寄り添うように寝ている。

先日、流されるように押し付けられたこのガキンチョ。

数日間一緒に暮らした訳だが、分かった事は無い。何処から来たとか、何しに来たとか、全部(とぼ)けられた。唯一、宇良華(うらか)という名前だけ分かった。

 

……流石に子供を無理矢理起こすのは、なぁ。

 

「てか面倒見ろって授業中どうすんだよ。……まあ、後で考えるか。とにかく起きろぉ!」

 

両手で頭を掴み、ガンガン振る。

 

「はあ、はあ、くそっ、これでも駄目か……しゃーねー、引っ張ってくか」

 

……『眠り姫』は寝てる、ガキンチョも寝てる。『眠り姫』は連れてく必要があるが、こっちは別に良いか。

よし、置いていこう。どうせ今日は早めに終わる。終わり次第戻ってくれば良いだろう。

 

「とはいえ不安だな」

 

紙にシャーペンでメモを残す。合鍵と一緒にドアの前に置いておく。

自分の鞄と『眠り姫』の鞄を左手に持ち、『眠り姫』の手首を掴む。

 

「ほら行くぞ『眠り姫』」

「……ふみゃ………Zzz」

 

起きないんだよなぁちくしょう!

引きずられてるんだから起きろよ! 痛くねえのか!?

 

なんとか門まで着く。早めに寮を出たかいあって時間に余裕があるな。

 

「む、遊城十哉か。妹はどうした?」

「まだ寝てるから置いてきた。って、だから妹じゃねえっつぅの」

「置いてきた? 朝ごはんや朝デュエルはしてやらんのか!?」

「あ、やっべ朝飯食わないから忘れてた……待て、朝デュエルってなんだ」

「読んで字のごとく朝一のデュエルだ」

 

だろうな。しかし……くっそ、そうか飯か。何か忘れてる気がしたんだ。だが今から戻るには……少し遠すぎる。

 

「……しゃーねえ。我慢してもらうか」

「なに!? あんな小さい子供に我慢させるのか!?」

「ああ。朝起きないのが悪い」

「それを起こすのが男の役目だろう! 今すぐ戻って――」

「おっと時間だ、遅刻厳禁だからな。そんじゃ!」

 

鞄を腕に通し、両手でゴテゴテした服の襟首を掴み、走る。

 

「な、貴様、遊城十哉ぁ! 戻ってこい!」

「授業……始業式終わったら戻ってやるよ!」

 

くっそ、朝から叫んで走るのはキツいんだよ!

学園の中に入り、門番の視線から外れた事を確認。歩き始める。

もはや俺が『眠り姫』を引っ張っていくのは当然の事になってる。

そして大講堂、オシリスレッドの指定位置に座る。『眠り姫』は隣に放る。

 

「あら……ふわぁ……ここは?」

「やっと起きたか? ―――すぐ寝るんだろうが「Zzz」……そりゃねぇぜ……」

 

もう無視する。お、始まるか。

 

 

     ――――――――――

 

 

あー、なんでこう学園長の話ってのは長く感じるんだ?

つまんないし 、語尾は『~~のね』だし、つまらんし。

 

「あ、おーい! ジュージュー」

「ん? ……ああ、テンテンか」

「止めてくれよテンテンだなんて」

「だったらジュージューってのも止めろよ」

 

この青い髪を持つ爽やかなイケメンは天上院(てんじょういん) 天馬(てんま)

じいさんの結婚相手が天上院家だから、いわゆるはとこって奴だ。……男だがな。

 

「相変わらず青い服が似合ってんな?」

「あはは、十哉も早くこっちに来なよ」

「あー? やだよめんどくせぇ。一々デュエルなんてしてらんねぇし」

「だろうねぇ。……そういえば、春休みに家に戻らなかったんだって? 十里さん悲しんでたよ」

 

親父の顔を思い出す。笑ってる顔しか浮かばない。

同時に、その分怒ってた母親の顔を思う。

………けっ。

 

「知ったこっちゃねぇよ」

「まったく。手紙ぐらいは出してあげなよ。……因みに、その人も相変わらずだね」

 

『眠り姫』の方を見て、その程度のコメントか。いちいちイケメンだな?

 

「厄介だよな?」

「いや『な?』って言われても」

 

キーンコーンカーンコーン

 

「おっと、んじゃあ今年もよろしくな」

「ああ!」

 

『眠り姫』を引きずって教室へ急ぐ。

つっても、多分HR(ホームルーム)やって終わりだろうがな。

 

「さーせん遅れましたー」

「いや、ナイスタイミングですよ遊城」

 

そう言って軽く笑うのは霞城(かじょう)先生。大抵の事は笑って見逃してくれるイイ人だ。

 

「そうっすか?」

「ええ、ちょうど出席確認で君の番でした」

「そうっすか」

 

『眠り姫』を右端一番後ろの席に放り投げ(すわらせ)、鞄も置く。俺はその三個左の席に座る。

 

霞城先生、フルネームは分からない。この人について絶対に触れてはいけないのは容姿。いや、別に太ってる訳じゃない。顔も悪くないと思う。ただ、霞城先生は自分の見た目にコンプレックスを持ってるらしい。女っぽいとかなんとか。

 

だったら髪切って筋肉つけろよって思うが……あの人年中金欠だからなぁ……給料を何に使ってるんだか。かなりの額ある筈なんだが。

 

「雪矢さん、起きてください。雪矢さーん」

 

……優男だよなぁとつくづく思う。反面、なんつぅか、悪意に気付かないんだよな。

おいおい、真後ろで意地悪そうに笑ってる奴に気付けよ。てかいつの間に背中に紙張るのが趣味になったんだ、先生?

 

「……はぁ。まあ、ある意味いつも通りで安心しましたよ。……さて、春休みはどうでしたか? 楽しめました?」

 

いいや全く。

 

「では、さっそく課題を提出してください。……忘れちゃ困りますしね」

 

結構な量の課題を取り出し、前の奴に渡す。……『眠り姫』のは前の奴が勝手に取り出してた。

 

「ふんふん……はい。で、まぁあんまり長く話してもあれですから一つだけ。皆さんは二年生になったので『リアルソリッドビジョン』の使用を認められます」

 

教室が沸き立った。リアルソリッドビジョンねぇ。

 

「ですが、あれは使い方を間違えるととても危険です。ので、明日専門の方をお呼びして使い方を教えてもらいます」

「先生ー、専門の方って誰ですか?」

「さあ? 私には分かりませんね」

「えー」

 

ガキかよ。

 

「それじゃあ今日の授業はおしまいです」

 

他の奴らがガタガタと席から立ち始める。

俺も立ち上がり、取り敢えず先生の元へ

 

「先生。霞城先生」

「おや、十だ……十哉君。何ですか?」

「背中に何か付いてるぜ」

 

それだけ言ってさっさと教室を出る。

んーで、寮に戻ってガキンチョをどうにかして……冷蔵庫になんかあったっけ。

 

「おーい、えいゆーのお・ま・ご・さーん」

 

後ろから何か聞こえてきた。まあ無視で良いだろ。

 

「おいこら無視すんな」

 

肩を掴まれた。あのなぁ、こちとら忙しいんだよ。

 

「何かあるなら名前で呼べよ。で、なんだ?」

「ちっ………お前のお姫さまを忘れてるぜぇ?」

「……? 誰の事だ?」

「おま、(とぼ)けんなって。『眠り姫』だよ。『魔をも恐れぬ眠り姫』!」

「……あいつが何かしでかしたか? 別に責任は取らないぞ?」

「じゃなくて……なぁおい、真面目な話さ、お前ら付き合ってんだろ?」

 

何言ってんだこいつ。

 

「真面目に返すが、答えは“NO‼”だ」

「はぁ!? んな訳ねぇだろ!」

「……決めつけてんのに聞いてくるんじゃねぇよ。なんだ? あれと付き合いたいのか?」

「う……いや……まあ……その……」

「んだったら」

 

胸ポケットに指を突っ込む。やっぱりあるのか、このカード。

 

「ほい、これやるよ。頑張れ」

「え?」

 

白紙のカードを渡し、寮に向かう。

……誰かがついた呆れたようなため息が、やけに耳に残った。

 

 

     ――――――――――――

 

 

「おいおい、こりゃあ……なんだ?」

 

門番から全力で逃げて、俺の部屋に辿り着いた……筈なんだが。

 

「きったねぇ……なんだこれ……」

 

ああ。正直に言おう。俺はそんなにきれい好きじゃぁねぇ。最低限、寝る場所と座る場所があれば良いと思ってる。ここ最近……そう、大体一年間は『眠り姫』が入ってくるから比較的綺麗になっていた……筈なんだ……が……。

 

「ク・ソ・ガ・キ……!」

 

怒りに身を任せて、まずは片付け。

 

「……てか部屋に居ねぇし。どこ行きやがった」

 

部屋を出て、しっかり鍵をしめて、さて。

 

「森とかに行ってたら俺の手に負えないからな……くそっ、門番のとこ行くか」

 

走り出す。……なんか今日走りまくってるな、俺。

 

「む! 遊城十哉ぁ! ようやく戻って来たか! さあこっちへ来い! 」

「うるせえ! ……おい門番、チビが消えた」

「チビ? あぁ、貴様の妹なら俺が保護してある。ちょうど貴様と入れ違いになったようだな」

「そうか。……ふぅ~」

 

そりゃあ良かった。……勝手に居なくなって死なれちゃあ、困るからな。

 

「よし、ではデュエルだ」

「やだよ何でだよやんねぇからな」

「貴様……それでも漢か……!?」

「し、静かに怒ろうとやんねぇからな」

 

スキンヘッドサングラス黒スーツの男がにじり寄ってくるのは、かなり、怖い、な。少し震える。

 

「む、そういえば雪矢雪はどうした?」

「あぁ、ようやっとお役御免だそ……う……ちっ」

 

無意識にポケットに突っ込んだ左手に触れる物。……見なくても分かる。あの白紙のカードだ。

一応取り出す。あー、やっぱりな。

 

「門番、これやるよ」

「……。……いや、要らん」

「遠慮するなって。ほら、ガキンチョを見つけてくれたお礼だ」

「要らん。この俺に賄賂は効かぬ」

「そうじゃなくて……まあいいや。ガキンチョ連れてきてくれ」

「ああ」

 

門番が門の横にある門番小屋に入っていく。

よし、なんとか誤魔化せた。門番とデュエルだなんてやってられっかっての。

 

「おニちゃん!」

 

小屋からガキンチョが飛び出してくる。そして―――

 

「わぁい!」

「ゴフッ」

 

抱きついてくる。腹に、頭が刺さる。

 

「お……ぐ、元気そうだな……ゲホッゲホッ」

「起きたらおニちゃん居ないんだもん!」

「ぐっ、ふっ、分かった、分かったから頭突きを止めろぉ!」

 

 

ちなみに、寮に帰ったら『眠り姫』が寝ていた。




仕方無いとはいえ、オリキャラ三昧。
しかも書くことが無い。……あ、次回予告のBGMは自分で流してください。
よって次回予告:ルドロス・アルケーン

二年生たちはリアルソリッドビジョンの特別講習な~のね。特別講師は……秘密、な~~のね。プロの方な~のね。
……わた~しもやってみたい~のね。一緒に講習受けようか~しら。

次回、『エンターテイメント・デュエル!』

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