遊戯王AU-M<英雄の孫>   作:yourphone

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想定外の刺客(後編)

 クラスメートがあっさりと負けたからか、デュエルが終わったというのに中学生たちは静かだ。

 

「十哉君」

「なんですか?」

 

 骨塚さんに呼ばれる。そっちに行こうとすると手で制された。

 

「あぁ、そこに居ていいよ。十哉君はデッキを三つ持ってたよね?」

「はい」

「じゃあ一人相手に一つずつね」

 

 元からそうしようと思っていたから、頷く。

 さて、あのぽっちゃりは項垂れながらデュエルコートから降りる。次に俺の前に立ったのは―――

 

「あぁ、十哉様……貴方とデュエルするこの瞬間をどれだけ待ち望んだ事か!」

「お前かよ」

 

 てっきり梓は最後だと思ってたんだが……まあいい。こいつ相手ならこっちだな。

 

「よし、んじゃ」

「そうそう十哉様。あの約束を覚えていますか?」

「……約束?」

 

 んー。……駄目だ思い出せない。なにせ俺が本土に居たのは一年以上前。それに加えてアカデミアでの一年は激動ってレベルじゃねぇくらい濃い日々だったからなぁ。

 

「覚えてなくても仕方無いですわ……あの事件よりも前にした約束ですもの」

 

 梓はそう言いつつも残念そうな顔を見せる。おい止めろ、子供とはいえ美人がそんな顔するとこっちが悪いような……いやまぁ覚えてない俺が悪いんだが。

 

「幼かった私は十哉様にこう言いましたわ。『デュエルして、私が勝ったら結婚してください』と」

「ぶふっ!」

 

 忘れたくもなるわそんな約束!

 

「ふふふ……それ以降なんだかんだとデュエル出来ずに十哉様はあのクソニィと共にアカデミアに行ってしまった……しかし今! ここで! 十哉様とデュエル出来るのはすなわち運命! さあ、観念して私の夫になりなさい十哉!」

「キャラ変わりすぎだ!」

 

 しかも呼び捨てしてるじゃねーか!

 

 

 遊城十哉 LP4000

 天上院梓 LP4000

 

 

「私の先攻! ……くふふふ」

「なんだよ」

 

 気味の悪い笑い方しやがって。

 

「あはははぁ……十哉様ぁ……私程度が十哉様を試すような真似をすることを許してくださいぃ……」

「だからキャラ変わりすぎだっての」

「魔法発動! 『真紅眼融合(レッドアイズ・フュージョン)』!」

「んなっ、『灰流うらら』!」

 

 こいつライフ4000のデュエルでなんて事しやがる! うららが無かったら負けてたぞ!?

 

「ふふ、十哉様ならばこの程度簡単に止めてくださると思ってましたわ。『レッドアイズ・インサイト』を発動、コストとしてデッキから『真紅眼の黒炎竜(レッドアイズ・ブラックフレアドラゴン)』を墓地へ送り、『レッドアイズ・スピリッツ』を手札へ。

 更に『紅玉の宝札』を発動。手札の『真紅眼の黒竜』を捨てて二枚ドロー。デッキから二枚目の『真紅眼の黒炎竜』を墓地へ」

 

 手札が減らないのに墓地が肥えていく。テンテンの事をクソニィとか言うだけある。

 

「『真紅眼融合』の効果でこのターン召喚及び特殊召喚は出来ませんが、セットならば可能。モンスターをセット、カードを二枚セットしてターンエンドです」

 

 

 天上院梓 LP4000 手札1枚

 モンスター 伏せ1枚

 魔法・罠  伏せ2枚

 

 

 さて、俺のターンだ。

 

「ドロー。スタンバイ、メインだ」

「待ってください十哉様。スタンバイフェイズに罠カード、『レッドアイズ・スピリッツ』を発動。墓地の『真紅眼の黒炎竜』を特殊召喚します!」

 

 

『真紅眼の黒炎竜』

 レベル7 闇属性 ドラゴン族 デュアル

 攻撃力2400 守備力2000

 [召喚権を使用する事で効果を得るデュアルモンスターの一体。効果はバトルフェイズ終了時に黒炎弾。デッキでも通常モンスター扱いであれば……]

 

「さぁ、どうぞ。もちろん大人しく負けて私の夫になっても―――」

「んな事するかよ。むしろお前、負けても泣くなよ? 『破壊剣の伴龍』を通常召喚」

 

 ……骨塚さんの方からうわって声が聞こえたが無視だ。

 

「効果で『破壊剣士融合』をサーチして発動だ」

「何もしませんわ」

「手札の『バスター・ブレイダー』と『レッドアイズ・ダークネスメタル・ドラゴン』を融合。

 来たれ万物の頂点を狩るものよ。今その力を見せつけよ。『竜破壊の剣士―バスター・ブレイダー』」

 

 やたらゴツい『バスター・ブレイダー』が現れる。その効果により『真紅眼の黒炎竜』は守備表示となる。

 

「更に『破壊剣の伴龍』をリリースして墓地の『バスター・ブレイダー』を特殊召喚。バトル!」

「『真紅眼の鎧旋(リターン・オブ・レッドアイズ)』を発動! 墓地の通常モンスター、『真紅眼の黒炎竜』を特殊召喚!」

「わりぃな、チェーンして速攻魔法『破壊剣士の宿命』を発動! 対象はそっちの墓地のドラゴン族モンスター、『真紅眼の黒竜』と『真紅眼の黒炎竜』だ」

「なっ!」

 

 『破壊剣士の宿命』により二体のモンスターが除外され、その数×500、『竜破壊の剣士―バスター・ブレイダー』の攻撃力が上がる。『真紅眼の鎧旋』は対象が除外された事によって効果が不発になる。

 

「『竜破壊の剣士―バスター・ブレイダー』の攻撃力は現在4800。伏せモンスターに攻撃! バスター・ソード!」

 

 伏せモンスターは……『黒鋼竜(ブラックメタルドラゴン)』。守備力は600。

 『竜破壊の剣士―バスター・ブレイダー』は貫通効果を持っている。つまり―――

 

 

 遊城十哉 WIN

 

 

「俺の勝ちだ」

「……」

 

 まぁ、ピンポイントでメタはったからな。我ながら大人気ないとは思う。

 

「ふ……」

 

 ん?

 

「ふふふ……ふふふふふふ……」

 

 うっわ……情緒不安定かよ。

 

「ええ、負けましたわ。ふふ、十哉様ならこうでなくてわ! 次こそは勝ちますから、首を洗って待っていてください!」

 

 やけに爽やかな顔でデュエルコートから降りる梓。……てかまだ挑戦するつもりかよ。

 

「十哉君、十哉君、あれは流石に無いと思うんだけど」

「選んだデッキが()()()()有利なデッキだっただけですよ」

「いやいやいや、完全完璧に、相手を見てからデッキを選んでたじゃないか」

「デッキを複数持つ利点ですね」

 

 そう返すと骨塚さんはやれやれと首を振る。

 さて。あのデッキを使う気は更々無いから、最後に使うデッキは『バージェストマ』だが……相手のデッキによっては何もせずに負けるからな……。

 

「よっしラストは俺だな! かっとビングだ、俺!」

 

 元気だなおい。最後って事は梓よりも強いって事か?

 

「俺は九十九遊馬(つくもゆうま)! よろしくな!」

「ああ」

 

 ちっと深呼吸。よし、まだ行ける。

 

「「 デュエル! 」」

 

 

 遊城十哉  LP4000

 九十九遊馬 LP4000

 

 

「先攻は俺か! モンスターをセット、カードを二枚伏せてターンエンドだ!」

 

 

 九十九遊馬 LP4000 手札2枚

 モンスター 伏せ

 魔法・罠  伏せ2枚

 

 

 速いな。まあいいか。挑発する気にならねぇ。

 

「俺のターン、ドロー。カードを……4枚セット」

「はぁ!?」

 

 遊馬が驚く。そんなに驚くか? いや、驚くか。

 あと、なんか外野から流石十哉様ーとか聞こえてくるが無視だ。

 

「永続魔法発動、『王家の神殿』。これにより1ターンに1度、罠カードを伏せたターン中に発動出来る。その効果を適用し、今伏せた『バージェストマ・ピカイア』を発動。手札の『バージェストマ・レアンコイリア』を捨てて2枚ドロー」

「伏せたターンに罠カードを!?」

 

 ドローカードは……最高、だな。あと反応がいいな遊馬。

 

「『カードカー・D』を召喚」

 

 

『カードカー・D』

 レベル2 地属性 機械族

 攻撃力800 守備力400

 [あれ、いままで出てなかったっけ? 自身をリリースするだけで2枚もドロー出来るよ!]

 

「効果でリリース、2枚ドローしてエンドフェイズに。ターンエンドだ」

 

 

 遊城十哉 LP4000 手札3枚

 モンスター 無し

 魔法・罠  伏せ3枚

      『王家の神殿』

 

 

「よーし! 俺のターン、ドロー! 俺は手札の『ゴブリンドバーグ』を召喚!」

 

 

『ゴブリンドバーグ』

 レベル4 地属性 戦士族

 攻撃力1400 守備力0

 [手札のモンスターを特殊召喚させられる優秀なモンスター。ドバークではなくドバーグ]

 

 

「効果で手札の『タスケナイト』を特殊召喚して守備表示になる!」

 

 

『タスケナイト』

 レベル4 光属性 戦士族

 攻撃力1700 守備力100

 [手札0の時に墓地から『バトル・フェーダー』のような動きをするモンスター。似たような名前の『ガンバラナイト』は遊戯王Wikiではボロクソ言われている]

 

 

「太一と梓をあっさり倒したんだ、俺も全力でいくぜ! 俺は『ゴブリンドバーグ』と『タスケナイト』でオーバーレイネットワークを構築!

 オレの戦いはここから始まる! 白き翼に望みを託せ! 現れろNo.(ナンバーズ)39! 光の使者『希望皇(きぼうおう)ホープ』!」

 

「……は?」

 

 俺の知らないモンスター!?

 

 

『No.39 希望皇ホープ』

 ランク4 光属性 戦士族 エクシーズ

 攻撃力2500 守備力2000

 [攻撃を二回まで無効化出来る。

 この世界では『No.』は流通してません。一種類につき一枚のみの、ある意味オリジナルカード。しかし効果はOCG基準です]

 

 

「かっとビングだ俺! バトルフェイズ! ホープでダイレクトアタック!」

「っ!」

 

 やべえ何してくるか分からねぇ! どうする、どうする!?

 

「ならトラップ―――「攻撃宣言時にホープの効果! ORU(オーバーレイユニット)を一つ使い、攻撃を無効にする!」―――は、はあ?」

 

 まじで何してんだ!?

 

「そして! ホープの攻撃が無効となった事で速攻魔法『ダブル・アップ・チャンス』を発動! これでホープの攻撃力は倍の5000! ホープ剣・ダブルスラッシュ!」

 

 なるほど、取り敢えず分かったあいつの効果は『素材を取り除いて攻撃無効』、と。他に何かあるかもしれないが……これで止められるか?

 

「『くず鉄のかかし』でその攻撃を無効にする」

「なんだって!?」

「そして罠カードの発動に対して墓地の『バージェストマ・レアンコイリア』の効果を発動。モンスターとして特殊召喚だ」

「しかも罠カードがモンスターになった!?」

 

 遊馬の反応がプロ顔負けだ。プロとはこういうものだぞ、太一とやら。

 それにしても。

 

「罠を恐れず攻撃してきたからそのモンスターになんらかの耐性があるのかと思ったが……何も無いのか」

「ちっくしょぉ、決められなかったか! カードを伏せてターンエンドだ!」

 

 

 九十九遊馬 LP4000 手札0枚

 モンスター 『No.39 希望皇ホープ』(右EX)

      伏せ

 魔法・罠  伏せ2枚

 

 

 対象に取れるし、あれの対処は楽だ。だが……『No.(ナンバーズ)』か。あれが39なんだからそれだけ居るんだろう。

 なんか外野が遊馬に文句を言っている。当然無視だ。

 

「俺のターン、ドロー。……スタンバイフェイズにトラップ発動『強欲な瓶』。チェーンして墓地の『バージェストマ・レアンコイリア』だ。モンスター扱いで特殊召喚し、一枚ドロー」

 

 これで手札は四枚。……ある意味、最悪の手札だ。

 

「こっちもエクシーズで行かせてもらう。俺は二体のバージェストマたちでエクシーズ召喚!

 無限の可能性を持つ遺伝子たちよ! 重なり絡まり、大いなる母となれ! 来いよ、『バージェストマ・オパビニア』!」

「エクシーズモンスターか! だけど俺のホープの攻撃力のが高い!」

「そりゃそうだ。こいつは戦闘用じゃないからな。エクシーズ素材を一つ取り除いて効果を発動。デッキからバージェストマ罠カードをサーチする。俺が加えるのは、『バージェストマ・ピカイア』。そのまま発動」

「ま、待った! 罠カードは伏せないと使えないはずだ!」

 

 またこれか。いや、そりゃ初めて見るならそう言うか。

 

「あー、『バージェストマ・オパビニア』が存在する限り、俺はバージェストマ罠カードを手札から発動出来る。チェーンして墓地の『バージェストマ・レアンコイリア』を特殊召喚させる」

「ず、ずりぃ!」

 

 俺に言われても、困る。

 

「ピカイアの効果で手札から捨てるのは、『バージェストマ・エルドニア』。二枚ドロー。お、いいな。

 今度は『バージェストマ・マーレラ』、チェーンして墓地の『バージェストマ・エルドニア』を特殊召喚させる。マーレラの効果でデッキから罠カード、『ゴブリンのやりくり上手』を墓地へ。

 次。セットしていた『ゴブリンのやりくり上手』を発動、チェーンして墓地の『バージェストマ・マーレラ』を特殊召喚させる。墓地の『ゴブリンのやりくり上手』は一枚。よって、二枚ドローし、一枚をデッキの一番下へ」

「お、おいおい、こんなにモンスターが並ぶのかよ……」

 

 たったの四体だろ? しかもその内三体は攻撃力1200のバニラモンスターだし。手札五枚のうち三枚は使()()()()しな。

 

「カードをセット。『王家の神殿』の効果を適用してセットターンに発動、『無謀な欲張り』。チェーンして墓地の『バージェストマ・ピカイア』を特殊召喚させる。『無謀な欲張り』によって二枚ドロー」

「何回同じ事するんだよ!」

「勝てるまで、何度でもだ。俺は『バージェストマ・オパビニア』と『バージェストマ・マーレラ』でリンク召喚! 来い、『マスター・ボーイ』!」

 

 

『マスター・ボーイ』

 水属性 水族

 攻撃力1400 link2(↙↘)

 [あれ、お前出てなかったっけ?(二回目) 実質攻撃力1900で破壊されると墓地の水属性回収(サルベージ)]

 

 

「おお~! これがリンク召喚! やっぱ間近で見ると違うぜ!」

「そうか? 俺は―――」

 

 ……おっと、立ちくらみか。危ない危ない。

 

「ん、十哉君?」

「大丈夫ですよ、骨塚さん。俺は三体のバージェストマたちで」

 

 

 

 

 

 バンッ

 

 

「エクシーズ召喚……は?」

 

 ここは……この常識に真っ向から反抗している階段に、無数の扉。延々と続く迷宮。

 トラゴエディアの時のあそこか。疲れるぜ。

 

『―――、―――ォ―――』

 

 ん? 近くの扉から変な声がしたな。前回は扉を越えては聞こえてこなかったんだがな。

 ……まあ、開けてみるか。

 

『オォ……キサマガ、オレサマノアラタナヤドヌシカ!』

「人違いだ」

 

 さっさと扉を閉める。さーて、どうやって戻るかな。

 

『マテマテ!』

 

 うげ、黒い影みたいな何かに腕を捕まれた。冷たくて気持ちわりぃ。

 

『オレハNo.(ナンバーズ)ノ96バン、アノ39バンテイドカンタンニタオセルツヨキチカラダ!』

「間に合ってる」

 

 実際、あのまま『バージェストマ・アノマロカリス』を出していればあの希望皇ホープとやらは破壊されていた。

 

『オレナラバヨリダメージヲアタエラレル』

「いらねぇ」

 

 あんましつこいと破るぞ? さっさとデュエルを再開させろ!

 

『……クックックッ、ジカンカセギは終わった』

「はぁ」

『もう拒もうとしても遅い! 貴様の体はモラッタ!』

 

 思わず顔をしかめる。

 それを見て何を()()()()()()()、この小物臭のする変なドロドロした影は笑う。

 

『フッハハハハ! 恐怖で声も出ないか!』

「間違っちゃねぇな」

 

 俺が肩をすくめると同時に、黒い影―――96とか言ってたか? じゃあクロで―――が後ろから蜘蛛の様な脚に捕らえられる。

 

『ハ?』

『くっくっくっ、遊城十哉。やはりお前たちの血筋と共に居ると退屈せずに済む』

「トラゴエディア、お前エクシーズモンスターは取れないだろうが」

 

 トラゴエディアはクロをムシャムシャと食べる。

 

『こやつはもはやお主の闇の一部であろう?』

「あろう? じゃねーよ要らねーよ」

『ククク……まぁそう言うな遊城十哉。どんなものであろうと使える物は使う。……自分で言っていたではないか』

 

 

 

 バンッ

 

 

 気付いたら倒れていた。ちっ……頭いてぇ。

 

「十哉君!?」

「お、おい大丈夫かよ!」

 

 うるせぇ。頭を押さえて立つ……うおっ。

 

「十哉様……十哉様十哉様十哉さまぁ!」

「お、おう十哉だぞ梓」

「だって、だって急に倒れてぇ!」

 

 話が通じてないぞ、梓。だが、まあ。

 

「悪い、心配かけたな」

「うぅ……結婚してくれ?」

「言ってねーよ」

 

 どんな耳の構造してるんだよお前は。ほら、さっさとデュエルコートから降りろ。

 

 さて。

 

「すみません骨塚さん、ちょっとたちくらみです」

「……」

「九十九遊馬だったな? デュエルを中断しちまって悪かったな」

「い、いやそれは良いんだけどよ……大丈夫なのか?」

「あぁ。こんなの日常茶飯事だ」

 

 デュエルディスクを構える。……そうそう、エクシーズ召喚する所だったな。手札は六枚。

 ―――おいおいおい、アノマロカリスが書き換えられてるじゃねぇか! くそっ、このクロ助のやつ……!

『バージェストマ・アノマロカリス』が三枚入っていたから良いものの、これで『餅カエル』が変わってたらマジで捨ててたな。

 

「デュエル再開だ! 俺は三体のバージェストマたちで……エクシーズ召喚!

 無限の可能性を持つ遺伝子たちよ! 集まり絡まり、絶対なる海の支配者となれ! 来い、『バージェストマ・アノマロカリス』!」

 

 

 

『バージェストマ・アノマロカリス』

 ランク2 水属性 水族 エクシーズ

 攻撃力2400 守備力0

 [素材を一つ取り除く事でフィールドのカード一枚破壊、罠カードが自分の墓地へ行ったらデッキトップの罠カードを手札に加えられる。その他は墓地に行くから森羅にでもいれるか? ……無いな]

 

 

 

「罠カードがエクシーズ素材になっている時、素材を一つ取り除いて効果発動! 希望皇ホープを破壊する!」

「トラップオープン! 『ナンバーズ・ウォール』! これによってフィールド上の『No.』モンスターは効果では破壊されない!」

 

 心の中でだけ舌打ちする。アノマロカリスだと攻撃力が足りてない。

 

「それにチェーンして墓地の『バージェストマ・エルドニア』を特殊召喚させる。……カードを伏せてターンエンドだ」

 

 

 遊城十哉 LP4000 手札5枚

 モンスター 『マスター・ボーイ』(左EX)

      『バージェストマ・アノマロカリス』(中央)

      『バージェストマ・エルドニア』(左端)

 魔法・罠  『王家の神殿』

      伏せ2枚

 

 

「俺のターン! ドローだ! ……そのままバトルフェイズ! 『No.39 希望皇ホープ』で『バージェストマ・アノマロカリス』に攻撃!」

「落ち着けよ。メインフェイズ終了時にアノマロカリスの効果で『ナンバーズ・ウォール』を破壊!」

「うわっ! ……だけどやることは変わらないぜ! 『No.39 希望皇ホープ』で攻撃! ホープ剣スラッシュ!」

 

 まだ駄目だぜ、遊馬。

 

「攻撃宣言時に『無謀な欲張り』を発動、チェーンして墓地の『バージェストマ・オパビニア』を特殊召喚。二枚ドローだ。

 そして俺のフィールドから罠カードが墓地へ送られた事でアノマロカリスの効果発動」

「ホープ剣スラッシュさせろよ~!」

 

 だから落ち着けっつったんだろうが。

 

「デッキトップを確認し、罠カードならば手札に加える。めくられたカードは……『カードカー・D』。墓地だ」

 

 ちっ……まだ手札が足りないってのに……。

 

「……あー、今度こそいいのか? 締まらないなぁ……ホープ剣スラッシュ!」

「ぐっ」

 

 遊城十哉 LP3900

 

 ようやく初ダメージか。まあいい。

 

「モンスターをセットしてターンエンドだ!」

 

 

 九十九遊馬 LP4000 手札0枚

 モンスター 『No.39 希望皇ホープ』(右EX)

      伏せ(中央)

      伏せ(右から2)

 魔法・罠  伏せ

 

 

 こうして見ると伏せばっかだな。

 

「俺のターン、ドロー……は『無謀な欲張り』の効果で出来ない。メインフェイズだ」

 

 手札は七枚。バージェストマが二体居るし、それこそ『餅カエル』を出して待てば良いんじゃねぇか?

 

『オレをぉぉ……出せえぇぇ……』

 

 うるせぇ。どうせお前出しても攻撃無効にされるだけだろうが。

 

『だあぁぁあせえぇぇぇえ』

 

 あーくそっ、うるせぇっ!

 

「カードをセット。即座に発動、『八汰烏の骸』! チェーンして墓地の『バージェストマ・ピカイア』を特殊召喚させる。一枚ドロー!」

 

 まだ、か。仕方ねぇ。

 

「俺は三体のバージェストマたちで……オーバーレイネットワークを構築!

 太古の異形よ! 集まり絡まり、深淵なる闇からの使者を導け! ナンバーズが一つ―――『No.96 ブラック・ミスト』」

 

 

『No.96 ブラック・ミスト』

 ランク2 闇属性 悪魔族 エクシーズ

 攻撃力100 守備力1000

 [元祖戦闘絶対勝つマン。今は『ダーク・リベリオン』系統がこいつより簡単に出てくるからなぁ]

 

 

 

「なっクロ!?」

「ナンバーズ!?」

 

 お前遊馬にもクロって言われてるのか……いや、知り合いだったのか。

 

『フフフ……オレは復活したぞぉ!』

「喋るんじゃねぇ。バトル! ブラック・ミストで希望皇ホープに攻撃! シャドウウィップ!」

「させっか! ホープの効果発動! ムーンバリア!」

 

 まぁそうなるよな。

 

「カードを三枚伏せてターンエンドだ」

 

 

 

 遊城十哉 LP3900 手札4枚

 モンスター 『マスター・ボーイ』(左EX)

      『No.96 ブラック・ミスト』(中央)

 魔法・罠  『王家の神殿』

      伏せ4枚

 

 

 さて、戦闘ならばそうそう簡単には越えられないブラック・ミスト。となればなんらかの効果でブラック・ミストを処理しにくる筈だ。

 

「俺のターン! 負けられねぇ……かっとビングだ、俺! ドロー!

 俺は永続魔法『エクシーズ・チェンジ・タクティクス』を発動! これによって希望皇ホープモンスターが特殊召喚される度に、500のライフと引き換えにドロー出来る!

 そして俺は……希望皇ホープ一体でオーバーレイネットワークを構築!」

 

 エクシーズモンスター一体でエクシーズ召喚!? 十二獣(じゅうにしし)かよ!

 

「カオスエクシーズチェンジ! 現れよ、CNo.39! 混沌を光に変える使者! 希望皇ホープレイ!」

 

 

『CNo.39 希望皇ホープレイ』

 ランク4 光属性 戦士族 エクシーズ

 攻撃力2500 守備力2000

 [OCG次元では下敷き。悲しいかな、これが次元の違いよ]

 

 

「『エクシーズ・チェンジ・タクティクス』の効果でドロー!」

 

 九十九遊馬 LP3500

 

「更に反転召喚、『ゴゴゴゴーレム』と『ガガガマジシャン』!」

 

 

『ゴゴゴゴーレム』

 レベル4 地属性 岩石族

 攻撃力1800 守備力1500

 [守備表示だと一回戦闘破壊耐性、高い攻撃力と使える奴]

 

『ガガガマジシャン』

 レベル4 闇属性 魔法使い族

 攻撃力1500 守備力1000

 [レベル変動出来る。それだけ……と言うことは無く、ガガガの専用サポートが受けられる。それだけ]

 

 

 最初のターンに伏せられていたのが『ゴゴゴゴーレム』か。……もっと積極的に攻撃すれば良かったな。

 

「よっし、バトルだ! 『ガガガマジシャン』で『No.96 ブラック・ミスト』を攻撃! ガガガマジック!」

「攻撃宣言時に効果発動、 素材を一つ取り除いて『ガガガマジシャン』の攻撃力を半分にし、同じだけブラック・ミストの攻撃力を上げる! 『ガガガマジシャン』の攻撃力は750、ブラック・ミストは850だ!」

「ぐうぅっ!」

 

 

 九十九遊馬 LP3400

 

 

「わりぃ、『ガガガマジシャン』……次は『ゴゴゴゴーレム』で攻撃だ!」

「効果発動! 『ゴゴゴゴーレム』の攻撃力は900、ブラック・ミストの攻撃力は1750だ!」

「ぐっ!」

 

 お前、ターン1の制限無いのかよ。

 

 九十九遊馬 LP2550

 

「まだまだあっ! 希望皇ホープレイでブラック・ミストに攻撃! ホープ剣・カオススラッシュ!」

「効果発動! ホープレイの攻撃力は1250、ブラック・ミストの攻撃力は3000だ!」

「うわあぁぁっ!」

 

 九十九遊馬 LP1800

 

 ……なんで攻撃を繰り返したんだ? エクシーズ素材を無くす為か?

 

「ここだっ! 速攻魔法『エクシーズ・ダブル・バック』を発動! これはエクシーズモンスターが破壊されたターンに自分フィールド上にモンスターが居ない場合に発動でき、その破壊されたエクシーズモンスター一体とその攻撃力以下の攻撃力を持つモンスター一体を特殊召喚する! 戻ってこい『CNo.39 希望皇ホープレイ』、『ゴゴゴゴーレム』!」

 

 ブラック・ミストに倒された二体のモンスターが現れた。……だが何だかんだでブラック・ミストの攻撃力は3000。越えてないぜ?

 

「リバースオープン、『エクシーズ・ソウル』! 俺の墓地のホープのランク×200、俺のモンスターたちの攻撃力を上げる!」

「っ!」

 

 まさかこれを狙って!? 攻撃力が上がるブラック・ミストを相手に正面から堂々と殴り勝つのかよ!

 

「ホープのランクは4、よって攻撃力が800アップする! ホープレイの攻撃力は3300! ブラック・ミスト、お前の攻撃力を越えたぜ! ホープレイで攻撃! ホープ剣・ソウル・スラッシュ!」

 

 罠カードは……使()()()()

 

『ぐあぁぁぁっ!』

 

 遊城十哉 LP3600

 

 よっしゃ、ざまぁみろブラック・ミスト!

 

「次だ! 『ゴゴゴゴーレム』で『マスター・ボーイ』に攻撃! 攻撃力は2300になっている!」

「それはさせねぇよ。トラップ、『くず鉄のかかし』を発動! チェーンして墓地の『バージェストマ・レアンコイリア』を特殊召喚させる」

「あっ!?」

 

 忘れてたか? 忘れるよな。俺もちょっと忘れてた。

 

「な、なんでブラック・ミストを攻撃した時に使わなかったんだ?」

「そりゃ、出てくるバージェストマを攻撃されたくないからだ」

 

 嘘だけどな。本当はあのくそうるせぇクロを黙らせたかっただけだ。無視してたけど俺の頭の中でギャーギャーうるせぇこと―――ちっ、いつの間にか精霊が居る事を受け入れてやがる。くそっ!

 

「く……メイン2! 俺は『CNo.39 希望皇ホープレイ』一体でオーバーレイネットワークを構築!

 今こそ現れろ、FNo.(フューチャーナンバーズ)! 天馬、今ここに解き放たれ、縦横無尽に未来へ走る。これが俺の、天地開闢! 俺の未来! かっとビングだ、俺! 『FNo.0 未来皇(みらいおう)ホープ―フューチャー・スラッシュ』!」

 

 

 

『FNo.0 未来皇ホープ―フューチャー・スラッシュ』

 ランク0 光属性 戦士族

 攻撃力0 守備力0

 [『FNo.0 未来皇(みらいおう)ホープ』のリメイクカード。墓地のNo.の数だけ攻撃力が上がるけどこの世界では……うん]

 

 

 また知らないモンスター……それに、ランク……0……!?

 

「エンドフェイズに『ゴゴゴゴーレム』は破壊される。ターンエンドだ!」

 

 

 九十九遊馬 LP1800 手札0枚

 モンスター 『FNo.0 未来皇ホープ―フューチャー・スラッシュ』(右EX)〔守備表示〕

 魔法・罠  『エクシーズ・チェンジ・タクティクス』

 

 

「まだドローは出来ない。スタンバイ、メイン! トラップ発動、『エクシーズ・リボーン』。墓地の『バージェストマ・オパビニア』を蘇生、チェーンして墓地の『バージェストマ・ピカイア』を特殊召喚させるぜ。

 『バージェストマ・オパビニア』の効果発動、デッキから『バージェストマ・オパビニア』をサーチする。そのまま発動。チェーンして『バージェストマ・エルドニア』を特殊召喚。その永続魔法を破壊だ」

「うわぁっ!」

 

「そして、伏せていた『ゴブリンのやりくり上手』を発動。チェーンして『バージェストマ・オパビニア』を特殊召喚。墓地の『ゴブリンのやりくり上手』は二枚、よって三枚ドローし一枚戻す。

 三体のバージェストマたちでエクシーズ召喚。二度現れろ、海の支配者! 『バージェストマ・アノマロカリス』! 効果を使い『FNo.0 未来皇ホープ―フューチャー・スラッシュ』を破壊!」

「なっ、うわぁあっ!」

 

 フィールドも無い、手札も無い。これで終わりか。

 

「バトル! 『バージェストマ・アノマロカリス』でダイレクトアタック!」

「まだ終わらねぇっ! 墓地の『タスケナイト』を特殊召喚してバトルフェイズを終了する!」

「……そういやそんなの落ちてたな。トラップオープン! 『八汰烏の骸』! チェーンして墓地の『バージェストマ・ピカイア』を特殊召喚させる! 一枚ドロー!」

 

 …ん? これは……。

 

「ふぅ~。なんとか耐えきった……」

「いいや、タイムリミットだ」

 

 

 遊城十哉 WIN

 

 

「……は? 何でだよ! 俺はまだ負けてねぇぞ!?」

「俺の手札には『封印されし者の右腕』『封印されし者の右足』『封印されし者の左足』『封印されし者の左腕』、そして『封印されしエクゾディア』が揃った。これにより俺の勝ちだ」

 

 ブーイングは甘んじて受けた。




小説が長いぞ遊作ぅっ!

九十九遊馬のデッキ、再現しきれなかった……。CNO.出してしまった……。ガガガもっと出せば正規の『FNo.0 未来皇(みらいおう)ホープ』が出せたのに……。

くよくよしても仕方無い。本編が長いんだから後書きくらい短くしよう。
ってことで次回予告。ナレーター:骨塚春人

ナンバーズ―――それは選ばれた者にのみ使えるカードたち。
いやぁ、十哉君とあの中学生君の両方が使うなんてビックリだね。あの中学生君の『FNo.』は初めて見たし十哉君はデュエル中にカードを産み出していたし。
……え、初めの掛け声? やだなぁ純香ちゃんそんな事しなくても……あ、ちょ、やめ、それだけはやめてえぇぇっ!


じ、次回、『輝く宝石』!

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