なんて話を友達とした。
それはそれとして『雪花の光』が三枚集まったんで『超重武者』組もうとして、ほぼ30円コーナーで買って、回して。
テンBーN居ないわダイ8とチュウサイとイワトオシピン刺しだわってのもあるけど……うん。微妙に相性悪いわ。悲しいなぁ。
あ、そうそう。とても長くなるので前後編に分けます。
木霊姉妹とのタッグデュエルから一週間たった。
最後の最後になにやら不吉な事を言われたが、今のところ何も面倒な事にはなってない。……そのせいで余計落ち着けないんだが。
そうそう、宇良華は新葉さんと仲良しになってる。最初こそギクシャクしてたがレストランで交流会という凪草さんの仲介もあったしな。ごちそうさんです。
「ふー。こんなもんか」
綺麗にした応接室を前に伸びをする。
汗をかくほど動いていないとはいえ、そろそろ季節は夏。暑くなってきたら帽子借りるか。
「おニちゃん、洗濯畳んだよ!」
「おし」
俺たちの仕事は基本的に事務所内外の掃除だ。それに加えて洗濯やちょっとした料理も作ったりしている。
料理はYUSHOプロジェクトの事務員たちの昼食となっていく。たまにアイドルたちも食べにくる。凪草さんとか、純香さんとかな。
……あー、純香さんは海外出張から戻ってきてはいるがめちゃくちゃ忙しそうにしている。
と、話がそれたな。とにかく今は午後三時。掃除も洗濯も今日の分は終わった訳だ。
「んじゃどうすっか」
「デュエル!」
「しねーよ」
「えー」
デュエルディスクを構える宇良華を軽くあしらって応接室を出る。
このやり取りは今までにも何度かやっている。けど、俺は出来る限りデュエルをしたくないんだ。わりぃな。
「やあ、十哉君」
「ん? あぁ、骨塚さん。こんにちは」
骨塚さんはアイドルというよりはライターだ。一番の稼ぎ時がまだである木霊姉妹よりも事務所内で会う機会は多い。……大抵目の下に隈が出来てるけど、今日はそうでもないな。
「春人で良いってば。宇良華ちゃんもさっきぶり」
「さっきぶりー!」
宇良華は子供らしい元気さで既に事務所内のマスコット的立ち位置になっている。一応保護者である俺としてはいつ小斎さんたちを怒らせるような事をしでかすか気が気でないんだが。
「十哉君、明日何か予定があるかい?」
「予定ですか?」
「そう。純香ちゃんからお使いを頼まれてるとか」
「いえ」
そう答えると、骨塚さんは笑う。
「そっかそっか! それじゃあ明日朝イチで僕の部屋に来て欲しいんだ!」
「それは良いですけど……何でですか?」
「うーん……『キメラテック・オーバー・ドラゴン』でサンレンダァッ、かな」
「はあ?」
おっと、あんまりな内容で素が出ちまった。なんだよサンレンダァッて。
「ま、内容は明日のお楽しみーってね」
そう言って骨塚さんはウインクしてその場から去っていった。
「……なんだったんだ?」
「なんだろうね?」
俺と宇良華は揃って首を傾げた。
翌日。俺は言われた通り事務所に着いて真っ先に骨塚さんの部屋へ行った。宇良華は先に掃除をしているはずだ。
いきなり開けるなんて失礼な事はせず、ノックする。
「うん、どうぞ」
「失礼します」
中に入る。骨塚さんは机の前に座り何か書いていた。
照明が付いていて部屋は明るい。むしろ眩しいぐらいだ。しかしカーテンはしまっている。外は充分明るいんだが……これ、逆に目が悪くなるんじゃねぇか?
「それで、用件はなんですか?」
「その前に。凪草君からアルバイトの試練については教えてもらっているね?」
「はい。ある程度は」
そもそもYUSHOプロジェクトでは普通の方法ではアルバイトは雇わない。
まずアルバイトとなるにはYUSHOプロジェクト内の職員の誰かから名刺か紹介状を貰う必要がある。その名刺を小斎さんに見せる事でアルバイトとなれる。……それアルバイトと言うのか、っていう突っ込みは無しだ。逆に言えば名刺さえあれば誰でもアルバイトになれる訳だ。あぁ、当然年齢制限はあるけどな。
そうして晴れて大手の芸能事務所のアルバイトになれる……が。そこでふるい落としが行われる。それが小斎さんの言った『アルバイトの試練』だ。
「今までのアルバイト君たちのほとんどは木霊姉妹のタッグデュエルで何も出来ずに負けるか、ミー君―――あ、金上君の事だけど―――にフルボッコでガチ泣きのどっちかだからねぇ。実を言うと僕は自分の試練をきっちり決めてないんだよね」
「そうですか」
あぁ、確かに慣れないタッグデュエルに加えてデッキによっては完封されかねない木霊姉妹の除外デッキのコンボにはそうあっさりとは勝てないだろうな。金上さんは良く分からんが。
ちなみに木霊姉妹はそれぞれソロ用のデッキを持っていて、凪草さんが『妖仙獣』、新葉さんが『植物ナチュル』を使って宇良華をボコボコにしていた。
宇良華は泣き出して新葉さんが宥めてた。
「以前に行った試練はちょっとした詰めデュエルなんだけど十哉君はアカデミア生でしょ? 僕がパッと考え付くようなのじゃ簡単過ぎるだろうからずーっと他の方法を考えてたんだ」
「……そうですか」
詰めデュエルだったら楽だったんだがな。世の中そう簡単には行かないらしい。
「それでカレンダーを見ててふと思い付いたんだ。今日のとあるイベントは十哉君の試練にピッタリだとね!」
「……イベントですか?」
「そう!」
骨塚さんの演説に熱がこもり始めた。うるせぇわ眩しいわでちょっとSAN値とやらが削れそうだ。
「そのイベントとはズバリ、修学旅行! 今日ここにハートランド中学校の生徒たちが見学に来るんだ! 中学生たちのお相手に僕が指名されているんだ……十哉君、君には中学生たちとデュエルしてもらおう!」
「あ、はい」
中学生か。俺が中学生のときはどうだったか……シンクロが出たぐらいだったか? まあどうにでもなるだろ。
それにしてもハートランド中学校か。なーんか忘れてるような……なんだっけな。
「じゃ早速」
「あー、その前にデッキの調整していいですか?」
「もちろん」
よし、手早く終わらせるか。
俺はハートランド中学校の生徒たちのデュエル相手としてデュエルコートに立つ。そして一人とデュエルしてさっさと勝ち、『大人って強いだろ?』みたいな事を言って去る。
そうなる予定だった。
「十哉様!?」
「……げっ!」
そうだった。ハートランド中学校……俺はギリギリ隣の中学校だったが……天馬はあっちの中学校に通っていた。
そして、実は天馬には妹がいる。
何故か俺にめっちゃなついてくる鬱陶しいやつが!
「十哉様?」「あれが―――」「
「おいそこぉっ! デタラメ言うな!」
なんでそうなってる!? 確かに遊城家と天上院家は家族単位で仲良くしてるけどな。
「……その、十哉君。まだ手を出してない、よね?」
「まだってなんですか
骨塚さんまで……くっそ……。
「ははは……ごほん。さて、思わぬ再会に感慨もひとしお。さすれば我ら
骨塚さんは大仰に手を広げる。芝居がかった調子で言葉を紡ぐ。
「さあ、こちらのデュエリストは十哉君! 彼はアルバイトの身ではあるけれど、しかしその実力は僕らプロデュエリストに勝るとも劣らず!」
「当然ですわ!」
「さあ! ハートランド中学校の生徒よ! 正しく実力ある者を三名選べ!」
三名だと!? ―――きついな。いけるか?
「俺だ!」「お前この前負けてたじゃねぇか!」「あれは別格だろ!」「私が行くわ!」「はぁ? 十哉様とデュエルする女性は私だけで十分!」「おい落ち着けって!」
中学生どもがわちゃわちゃすること一分ほど。
上位二人は既に決まっていたようで最後の一人はじゃんけんで決まった。……まあ、確かに運も実力の内っていうけどな。
一人はエビみたいな髪型の男子。上位二人の片方だ。
一人は天上院梓。……まぁ、テンテンの妹だしな。
最後の一人はぽっちゃり体型の男子だ。昔のテンテンを思い出すな……あいつは今でこそ爽やか系のイケメンだが、
「最初は俺だ!」
「おし」
ぽっちゃり君が前に出る。何故だか憎々しげにこっちを睨んでくる。俺なんかしたか?
「俺たちのアイドル梓さんにぃ……あそこまで慕われているなんてぇ……うらやまけしからん!」
「本音出てるぞ」
「知るかあっ! 俺の先行!」
遊城十哉 LP4000
豊田太一 LP4000
ん?
「骨塚さん。ライフが4000なんですけど」
「あぁ、そりゃ三人連続デュエルだからね。変に長引くよりは良いでしょ?」
「そっすね」
「無視すんなー! 『
『爆走特急ロケット・アロー』
レベル10 地属性 機械族
攻撃力 5000 守備力 0
[圧倒的デメリットとともに出てくる攻撃力5000。5000ですよ奥さん。あのホルアクティの値段の半分ほどですよ! 強いね(なおデメリット)]
ほう、列車デッキか。厄介だな……。
「まだまだ!ロケット・アロー をリリースして、いでよ俺の切り札! 『
ちげぇのかよ。
『偉大魔獣 ガーゼット』
レベル6 闇属性 悪魔族
攻撃力 0 守備力 0
[リリースしたモンスターの攻撃力を倍化させた攻撃力となるモンスター。昔切り札にしていた人もいるのでは? 投稿者は『ゴブリン突撃部隊』をリリースして切り札にしてました]
「ガーゼットの攻撃力はリリースしたモンスターの倍になる! よって攻撃力……怒濤の10000!」
「「おぉ!」」
ギャラリーの中学生たちがどよめく。
「更に『進撃の帝王』を発動だ! これで俺のガーゼットは効果の対象にならず効果破壊されない! これを越えるのはプロだって難しいぜ! ターンエンド!」
豊田太一 LP4000 手札2枚
モンスター 『偉大魔獣 ガーゼット』
魔法・罠 『進撃の帝王』
なるほど……確かに面倒な布陣だ。攻撃力10000は出てくるカードゲーム間違えてるだろって攻撃力だし、効果での処理も一手間かかる。
「俺のターン、ドローだ」
手札を見る。ふんふん、こりゃあ……
「完璧な手札だ」
「なに!」
「その程度でプロを苦戦させるなんて、あまっちょろい。『ブンボーグ003』を召喚、効果だ。」
ヴェーラーは? ……無い。
「『ブンボーグ001』を特殊召喚、墓地へ送り『トランス・ターン』。『ブンボーグ002』を特殊召喚、効果で『ブンボーグ005』をサーチ。
『機械複製術』を『ブンボーグ002』を対象として発動。同名モンスター二体をデッキから特殊召喚。効果で『ブンボーグ006』と『ブンボーグ・ベース』をサーチ。
『ブンボーグ002』二体でリンク召喚『クリフォート・ゲニウス』。
ペンデュラム召喚、ゲニウスのリンク先に『ブンボーグ009』と『ブンボーグ007』だ。
ゲニウスの効果のチェーンして墓地の『ブンボーグ001』を特殊召喚。『ブンボーグ005』をサーチ。
『ブンボーグ・ベース』を発動。『ブンボーグ009』と『ブンボーグ001』でチューニング。シンクロ召喚、『ブンボーグ・ジェット』。効果発動、『ブンボーグ005』と『進撃の帝王』を対象。どちらも破壊だ」
「えっ……効果破壊するつもりだな!」
「ん? あー、破壊したのはついでだ」
「え……」
長々と悪いな。まぁこれももう終わる。
「破壊された『ブンボーグ005』の効果で墓地の『ブンボーグ002』を特殊召喚。効果で……『ブンボーグ008』をサーチ。もう一度『ブンボーグ005』をPスケールにセッティング。『ブンボーグ003』の効果を『ブンボーグ・ジェット』を対象に発動」
攻撃力は―――
『クリフォート・ゲニウス』が1800
『ブンボーグ003』が2000
『ブンボーグ002』が1500で二体
『ブンボーグ007』が2500
『ブンボーグ・ジェット』が
あっぶねギリギリ。これはシンクロしない方が単体の攻撃力は上か? まあ面倒だから計算はしないが。
「な……俺のガーゼットと攻撃力が同じ!?」
「これでも勝てるが、万が一『速攻のかかし』やら『バトル・フェーダー』なんかがあると厄介だからな。最後にダメ出しだ」
最後に一枚の魔法カードを使う。
「これが機械族だけに許された最高にして最強のカード!」
まあ『リミッター解除』なんだが。
「こ、攻撃力……20000!?」
「やれ、『ブンボーグ・ジェット』! ガーゼットに攻撃!」
「う、うわぁぁぁぁぁ!」
遊城十哉 WIN
俺は大きく首を回す。ついでに肩をぐるんぐるん回転させる。
「さて。次は誰だ?」