―――は?
服は着替えた
「ここか……『ティンクル☆スター』は」
ピンク色の洋風レストランだな。それなりに繁盛しているみたいだ。……こんなとこに俺と宇良華が入るのは場違いな気がする。
つーか服装がヤバい。俺は黒にドクロが描かれているTシャツにジーパン。まあ、これはいい。問題は宇良華だ。
「おニちゃん、入らないの?」
宇良華は俺がさっきまで着ていたオシリスレッドの上着を
「入らないと、そろそろ寒いよぉ」
「分かってる」
その下に何も着ていない。―――何も、だ。
そもそも宇良華は荷物を持っていない。持ち物も考えず着の身着のままであの島まで来ていたから、当然の様に着替えを持っていない。流石にアカデミアで子供服は売ってないからな。
あ、別に着替える所を見たわけじゃねぇから。それと、濡れた服は
とにかく、宇良華は俺の上着をワンピースのように着ているんだ。一応転んでも良いように袖はまくってある。
「……はぁ。じゃ、行くか」
「うん!」
腹をくくって、場違いな店へ入る。
「いらっしゃいませ! ……二名様でしょうか?」
「いえ、待ち合わせです」
一瞬店員の女性の顔がひくついたが、まー仕方ねぇか。昼だからともかく、夜だったら確実に事案だしな。
「えーと、
「オーナーと!? し、しばらくお待ちください!」
オーナー? てっきり採用担当者だと思っていたんだが。兼任か? いやしかし……そんな簡単な仕事じゃないだろ。
「すみませんお待たせしました! さぁ、こちらへどうぞ」
うわ、明らかに対応が変わってやがる。
そんな店員に案内されたのはレストランの奥、四人用のテーブル席。そこには既にスーツ姿の男性が座っていた。
「やあ。君が遊城十哉君だね? まあ、座りなよ」
「はい」
俺が奥に座り、宇良華を横に座らせる。
小斎さんは眼鏡をかけていて、思っていたよりも若そうだ。
ただ、ニコニコと笑っているのが、なんだか胡散臭い。俺の偏見だろうけどな。
小斎さんは店員に飲み物を頼んでから、口火を切った。
「じゃあまずは純香ちゃんの名刺を見せて貰えるかな?」
「あ、はい」
キャリーバックから名刺を取り出して渡す。けど何でだ?
「ふぅむ……確かに純香ちゃんのだね。ちなみに何処で入手したんだい?」
「デュエルアカデミアの授業で外部からのコーチを呼ぶ事がありまして、その際に純香さんから渡されました」
「で、そのデュエルアカデミアからは実質停学処分と」
「……はい」
店員が飲み物を運んできた。俺と小斎さんはコーヒー、宇良華はクリームソーダ―――クリームの乗ったメロンソーダ―――だ。
さて……。
「ちなみにどういう理由なんだい? デュエルアカデミアは規則に厳しいと聞くし、そこの……妹さんのせいかな?」
「いえ。誰かの嫉妬ですよ」
「う、宇良華のせいじゃないもんっ!」
適当に言葉を濁す。実際、ここを追求されたら面倒なんだよな。説明とかなんとかが……別にアカデミア自体は嫌いじゃないからあんまり悪く言いたくない。
「そうか、それは失礼したね宇良華ちゃん」
「いー、だ!」
「それはやり過ぎだ宇良華。ったく……それで、アルバイトの採用とかの話はどうなりますか?」
っと、しまった。少し焦りすぎたか?
小斎さんは少し考えた後、真剣な表情を見せてきた。
「……では、一つだけ試験させてもらおうか」
「試験ですか?」
「なに、簡単な事さ。宇良華ちゃんでも出来る」
むしろそう言うのが怖いんだけどな。
「ここの店の名前を言って欲しい」
……はぁ? 宇良華と顔を見合わせる。
「さぁ、どうぞ」
「……『ティンクル☆スター』」
「『ティンクル☆スター』!」
ふむふむと小斎さんは頷き、
「では、このカード名を当ててみせてくれ」
「…………」
無茶言いやがる。そんなの分かるかよ。
「あ、宇良華分かった!」
「ほう?」
「マジかよ……」
宇良華に分かるのかよ。……待てよ? つまり、流れ的にヒントが出てると。……あぁ、なんだ。
「小斎さんの意地が悪くないなら、分かりましたよ」
「ほほう。では、どうぞ」
宇良華とアイコンタクト。そして同時に口を開く。
「「 『魔界劇団―ティンクル・リトルスター』 」」
小斎さんがにやりと笑う。そしてカードをゆっくりと回して、その表面を見せる。
「可能な限り、君達の要望に答えよう」
そのカードは『魔界劇団―ティンクル・リトルスター』。
ティンクル・リトルスターとビッグ・スターって兄妹みたいですよね。
ただ、魔界劇団で一番使いやすいのはサッシー・ルーキーなんですけど。同率でエキストラ。
そうそう、
思い出したら腹が立ってきた。そんじゃあ次回予告。ナレーター:宇良華。
あのオジサンの試験を乗り越えた私達。新しい部屋で、新しい生活が始まるの!
でも人生はそんなに甘くないの。おニちゃんとオジサンが飲んでた
だけどだけど、おニちゃんは頑張るよ!
……あれ、そう言えばなんで私も働いてるの?
次回、『お仕事、時々嫌がらせ!?』