朝か。万能部について遠亞に教えてたら、久しぶりに徹夜しちまった。ふわぁ~。
ま、おかげで朝走ることなく通学出来てるけどな。
何事もなく門まで着いた。遠亞は眠そうにしてるけど、それぐらいだな。
「おーい門番。もんばーん!」
校門に着く。いつもなら門番が立っているんだが……見当たらない。
「門番が居ないなんて珍しいな。宇良華どうする?」
「おニちゃんと一緒がいい!」
「それは駄目だ」
「ケチー!」
とはいえ宇良華をどうするべきか検討もつかねぇな。森にほっぽりだしとくのもあれだし、かといって寮に置いとくのは……部屋ぐちゃぐちゃにされるからなぁ。
「……しゃーねぇ、不腐風先輩に預けとくか。宇良華、遠亞に着いてけ。遠亞。……遠亞!」
「うわっ! な、なんだ!?」
「不腐風先輩のとこに宇良華を―――」
「嫌だからね」
思わず掴んでいた宇良華の手を振りほどく。
殺意。そう、殺意だ。敵意とか悪意とかは結構慣れてるが、それとは質が違った……!
「お前は誰だ……!?」
「宇良華だよー? 急にどーしたの、おニちゃん!」
……気のせい、だったのか?
遠亞は……眠そうだ。『眠り姫』は……片目だけで俺を見ている。何言いたいかわかんねぇよ。
「……ちょっと眠くてな。遠亞、よろしく」
「うい」
有り得ないくらい眠そうだなおい。
「なあおい、腹へったんだが」
「うるせえっ!」
三時間目、細かいルールの勉強(バトルフェイズ関係)をしていたら襲撃された。
複数人で突入してきて、デュエルディスクを展開する間もなく全員縛り上げられた。
何でこうなったのか分からないが取り合えず、
「ぐっ、てめー! デュエルしやがれー!」
「デュエルすれば余裕で勝てるのに……!」
周りの奴らがうるせぇ。『デュエルすれば』? ばっかじゃねぇの?
世の中デュエルだけで決まるもんじゃねーんだよ。
「ふわぁ……あら、これは?」
「おう『眠り姫』。変な奴らが入ってきただけだ」
「あらぁ…ふゎ…ならお休み……」
おい、なんつーか、せめてもうちょっと焦ろよ。どことなく侵入者どもが呆れてるぞ? 覆面のせいで分からないけど。
しっかしなんだってこんな……他のとこはどうなってんだろうな。ここに居る侵入者どもは五人。教室は三年×五クラスだから、全ての教室に同じ数乗り込んできたとしたら七十五人。校長室に三人乗り込んでるとして、総勢七十八人か? かなり大規模だな。
これだけ大規模だとすれば、それだけの人数が着いてくるようなさぞかし立派なお題目があるんだろうな。
「なあ、お前らの目的はなんだ?」
「黙ってろ」
「金か? カードか? 権威か?」
「黙れと言っている!」
いって、蹴られた。……おいおい、なに泣いてんだブルー女子ども。
「ったく」
さて。どうすっかな……五人同時はいくらなんでも無理だ。精々が三人……二人なら確実にやりあえる。こいつら別段武術やってる感じじゃねぇからな。
ただ、一人だけ長めの銃を持ってやがる。しかもよりによって俺の対面かつ距離がある。まずはあいつを近付けるかなんかしないと―――
「十、十哉君」
隣で転がっていたイエロー女子にひそひそと呼ばれた。なんだってんだ。
「なんだ?」
「だ、大丈夫? 怪我はない?」
「大丈夫だ」
正直接点が無いから名前を覚えてない。誰だよお前。
「ねぇ」
「んだよ」
「何でそんなに冷静なの?」
「そりゃあ……まあ、何でだろうな」
慣れてるとか言えないだろ。いや、慣れてるというよりもっとヤバいのを知ってるからな。いつもニコニコしてる親父が怒った時なんか死ぬかと思ったし。
「あ、あのさ―――」
「おいそこ! さっきからうるさいぞ!」
ひそひそ話しかけてくるから侵入者に怒鳴られた。
……待てよ? 怒らせるってのは良い考えだな。ただ、俺が真っ先に倒したいのは銃を持ったあいつ。あいつが近くに来てくれればな。
と、放送が繋がる。
『マイクテストマイクテスト』
ちっ合成音声か。しかし、これはチャンスだな。
『急に襲われて心細い思いをしているだろう生徒諸君』
侵入者どもも放送のせいで注意散漫だ。こっそり移動し、縄を……ほど…ほどく…………よし、本格的な縛り方だったら無理だったな。
『安心したまえ。反抗しなければ怪我を負わせることはしないと約束しよう』
そーっと、そーっと。
「寝てろ」(無言の腹パン)
殴ったら直後に相手の口を押さえて、首を締める。
『我々の目的は命ではない。金でもない。そして名誉でもない』
よし、落ちたな。次は―――
『楽しみたいだけだ。遊びだ。ゲームだ』
振り向く前に後頭部に固い何かを突き付けられた。
「残念だったな」
「……」
両手を上げる。こういうときは両手を上げるのが基本だよな。
『我々は生半可な遊びでは、飽きてしまったのだよ』
だから、銃を右手で弾けるんだよアホ。
「なっ!」
「おらっ!」
反時計周りに裏拳。上手く顔面に当たった。後は銃をむしりとる!
『君たちはゲームのコマだ。カードだ』
「動くなっ!」
倒れた奴に銃を突き付ける。
さて、この銃が偽物なら問答無用で襲ってくるはず。或いは仲間意識が薄いとか。
『我々のゲームに付き合ってもらおうじゃないか』
「……他の奴らを解放しろ」
そんなことは無かったみたいだな。大人しく生徒たちの縄をほどいていく。……あ、霞城先生は気絶してるな。教師としてどうなんだか。
「十哉!」
「うるせえ静かにしろ!……そいつらを全員縛れ。両手の親指同士を結べばほどかれる事は無いはずだ。縛ったらなるべくバラバラにして一人に三人見張りを付けろ」
「わ、分かった」
―――いやぁ、やっぱあの雑誌すげぇわ。『月刊 デュエルマッスル』、今度『役に立ちました』って投書しとこう。
「と、他のとこも行くか」
まずはテンテンのところだな。
「テンテン、残りは校長室ぐらいか?」
「そうだね」
一つずつ確実に潰していった結果、侵入者どもの撃退にほとんど成功した。残ってるのは放送を入れた主犯だけだ。
……しかし、主犯はこんなに銃を調達出来たのか。同じ銃が全部で十五丁。さっき確認したところ実弾が入ってたし、大規模なんてもんじゃねえなこりゃ……。
「……よし。これで校長のドッキリとか災害訓練とかだったらぶっぱなしてやる」
「ジュージュー、その時は人に当てないようにね」
「「止めないのかよ!?」」
おお、他の銃持ちの奴らの息がピッタリだな。
……そういや、不腐風先輩と遠亞と連絡ついてねぇな。『眠り姫』は勝手に着いてきてるし。こう言うときこそ寝てろよな。
「……ジュージュー、多分大丈夫だ。罠は無い」
「俺もアレだけど、お前も大概……アレだな」
「アレってなんだい?」
「
扉を蹴破り中へ。
「おニちゃん!」
校長室にはルドロス校長と門番、そして宇良華が縛り上げて転がってて、遠亞と不腐風先輩が椅子にくくりつけられていた。
宇良華以外は、皆気を失っている。
「おニちゃん助けて!」
「十哉!」
「待て」
校長室への出入り口はここしかない。窓はあるが閉まっている。そして隠れられそうな物置は存在しない。
だから―――
「へ?」
俺は
「……今朝の質問に答えて貰おうじゃねぇか」
「な、え、おニちゃ―――」
「俺に妹は居ないっ!」
怒鳴り付ける。いい加減、うるさいんだよ。
「っ……!」
「良いか? 聞くぞ? 『お前は誰だ?』」
銃を押し付ける。と、肩に手を置かれた。
「十哉! 銃は必要ないだろ!」
「んだよテンテン……まあいい。どうせチビ一人だけだ」
安全装置をかけ、銃を後ろに放る。
「……で、どうなんだ」
「―――ねぇ、おニちゃん。カードの精霊って知ってる?」
「知ってるが信じねぇ」
即答してやる。カードの精霊は……存在しない。
じいさんと親父が見ていたのは幻覚だ。
「ふーん。ふうぅぅん。それじゃあ駄目だね、ダメダメダメダメ」
「うっぜぇ……!」
一発ぶん殴ってやろうか? ってか、雰囲気が明らかに変わってやがる。
「そんなんじゃあ答えは見えてこないよ……十哉なら、分かると思うけど」
「んだと……つまりなんだ、お前はカードの精霊だとでも?」
「そうだよ?」
可愛らしく
―――その手には、二つのオブジェクト。
「『千年リング』!」
目……あぁ、ウジャト眼か……。
意識が
クヒヒッ『千年リング』で疑似『千年パズル』に魂を封印したよ?
アハッ、ちゃんと認めないと……ずっと、ずぅーっと、出れないからね?
ぼやぼやしてたら、体腐っちゃうから―――
「しっかり、ね。おニちゃん」
「お前! 十哉に何をした! 答えろっ!」
あー、おニちゃんの親友の。……どうしよっかな。どうするもこうするもないかな。
「それが知りたいなら……あーそびーましょ?」
私のデュエルディスクを展開。自然味溢れるディスクだよ♪
「……やってあげよう、宇良華ちゃん」
「ウフフ、ありがと! それじゃあ―――」
「「 デュエル! 」」
《教えて、万能部!》
遠亞「万能部が色々なことする部活だっていうのは分かったけど、具体的に何するんだ? あと他の部員って何人だ?」
十哉「お前の取り合えずの活動は、校内の《お便りポスト》の回収だな。あそことそこと、そことあそこだな」
遠亞「多いよ! っていうかそれだと読者が分からない!」
十哉「……あー、これ見てる皆は感想欄に書いてくれ」
遠亞「僕が言うのもアレだけどメタい!?」
十哉「んで他の部員は……三年が五人、二年が四人、一年が一人だ」
遠亞「へー……一年僕一人!?」
十哉「けっけっけっ、頑張れよぉ?」
十哉「っつー訳で第一回《教えて、万能部!》だったぜ! 次回も見てくれよな!」
―――とまあ以上が試験的に作ったコーナーです。なるべくアニメ風に。アニメのSDキャラが出てくる感じで。
そんなの置いといて次回予告。ナレーター:十哉
宇良華によって良く分からないとこに飛ばされた俺。迷路はあんまし得意じゃないが……ま、頑張るか。
お、あれは……誰かの、トラウマ?
次回、『心の迷宮』