出てこいエーデルワイス!   作:第101装甲師団

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モブがモブで終わんないような、そう言うのを目指して書いてます。


ブルール市街戦

ある、我々の世界とは変わった世界の欧州。

大国間の緊張した対立が限界点を越え、冷戦が熱帯夜のごとく暑くなった世界。

そのなかで対立する帝国と俗称される国家から攻撃を受けている国があった。

ガリアと言う資源のある小国、我々でいうWW2のルーマニア、ベネズエラだろうか。

最初は2ヶ月程度の戦争であると思っていたが、予想以上の抵抗を受けていた。

 

と言うのが歴史の表舞台だ。

これは決して英雄伝説や、また人道だの倫理だの愛だの正義だの言う話とは違う。

これは非合理的に己のプライドの為に戦って散ったある戦車兵オットー٠フランツ少尉の話である。

 

ーPanzer Los!(戦車前へ!)ー

 

ガタガタと小刻みに揺れる車内。

戦車の車内はそれほど明るくない、一部に車内灯を点灯させているのみで、このクソッタレた重たい甲冑のようなヘルメットのお陰で視界はあまり良くない。

だが悲しいかな、これをしていないと不整地走行中頭ぶつけて事故死や砲弾で飛んだハッチや破片で死ぬ確率が上がる。

私がしている手袋や膝当ても同じ理屈だ。

真夏だと暑いが、幸い今は春。

ここで私の戦車の乗員を紹介しよう。

 

「少尉、なんで俺らだけなんすかぁ」

 

そう幼げな声で尋ねてくるのはクルツ٠フォン٠カストロップ軍曹。

歳は19らしいが、絶対偽装していると私は思っている。

貴族の次男で長男の兵役が手違いで行われーー家長と長男は養子であっても徴兵されない規則ーー地方本部に乗り込み俺がいくと怒鳴り付けた奴だ。

私の戦車小隊事実上最年少である。

 

「オメェ貴族なのに学がないな、笑われるぞ。

装甲偵察中隊つき戦車小隊は装甲擲弾兵2個小隊と共にブルールに威力偵察を行うこと!

会議聞いとけ、砲手だろ」

「スンマヘン」

 

今カストロップに解説したのがスフバートル٠ブラスコヴィッチ、階級は伍長。

今は甲冑で分からないが強面だし筋骨ががっちりしている、軍隊以外に俺がメシ食えるのは刑務所だけだァ!と発言する小隊の問題製造器。

だが食料品酒類とうの調達と廃墟から野戦憲兵(フィーベルポリツァイ)に見つからず物を確保する天才だ。

剛毅で粗暴な問題児だが、一応マトモで使える奴だ。

...でも怖いよ。

 

「小隊停止、擲弾兵から小銃班で偵察させよう。

守備隊か、逃げ込んだ敗残兵とかいたら面倒だなあ」

 

砲搭から顔を出して双眼鏡で見てみる。

ブルールはガリア方面に丘が幾つかあり、街の中心部は風車が大きく聳えており海岸とは反対側に田畑がいくつも続いている。

典型的地方都市と言うべきだろう。

 

「お!?」

 

双眼鏡から三人の青い服を着た背丈の低い子を見かける。

小銃で武装しているが、余裕で制圧できる、正規軍に子供が勝てるわけねーモン。

正規の民間防衛組織ならいやだなあ、一応国民皆兵だから流れ弾気にしなくて良いけど面倒なんだよなあ。

後でパルチザンと化して補給線脅かすように教育されてるモン。

正規の組織じゃ無きゃ犯罪者連中で極刑に出来るンだが...。

 

「まあ、偵察次第かなァ。

他の部隊から連絡来てませんかね?」

 

中隊本部と連絡をとってみる。

どうやら他の部隊も交戦しておらず、前進しているらしい。

これはいざ戦闘になったら味方の増援を得て包囲戦も仕掛けれそうだ。

 

『こちらエルザス!敵と交戦!

敵は正規の自警団と推察され...なんだあの女!?銃弾が見えるって言うのかよォ!!』

 

その後悲鳴と共に通信が途切れた。

同行しているエルザス装甲擲弾兵とロードリンゲン装甲擲弾兵の内エルザスが交戦した。

こりゃ戦闘になるが、弱いものいじめになる。

だが戦争ゆえ勝てばよかろう!中隊本部に砲兵の支援を呼ぼう。

 

「Achtung!(傾注せよ!)

1305時をもって我々は砲兵の支援を受けブルールに突入する、市街戦闘になるから各員目をこらして警戒せよ!」

『ヤボール(了解)』

『シュタンメン(了解しています)』

 

我が軍は戦車全車に無線機を搭載している。

...なに?フランスとは大違い?どこの国だね?。

(ドイツと日本は戦車に無線機を完全に搭載している希少な国家だった。)

 

「お前らメシ食っとけ」

「くそっ、野戦炊事車も主計も居ねェ」

 

ブラスコヴィッチ俺に何か言いたそうに睨むな。

出来ない事だってあるんだよ、ぼく少尉だよ、したっぱなんだよ。

缶詰のスープとパッサパサ軍用黒パン、そしてサッカリンとエアザッツ(タンポポ代用コーヒー)。

...泣きたい。

ああくそ、タルトとか食いたい。

口元を緩めながらそんなこと考えてたらエルザス、ロードリンゲン小隊の小隊長がひきつった笑みをしている。

 

 

 

ふち○すぞ。

 

 

腹も満たした。

トイレも済ませて砲兵の支援もある。

足りないのは神様のご加護のみ。

 

『Panzer los !』

 

それと共にバンツァーヴェルファーから撃ち出されるロケット弾がブルールの平穏を爆砕する。

VUOMと駆動音を鳴り立てて時速30キロで市街に近づく。

ケッテンクラートとバイクの偵察小隊が側面援護で前進する部隊の両翼に展開していく。

質も量も我が方優勢、負ける訳がない。

何もかもこの鉄の軍靴で踏み潰せばよい、時代の産んだ戦車は地上を駆ける獅子だ。

戦略的高所である風車塔を爆砕して中心部を混乱させる、戦車と装甲擲弾兵は堂々と大通りを前進していく。

 

「戦車警報ーッ!」

 

自警団が散発的銃撃をしかけるが、戦車の装甲が弾き飛ばしていく。

 

『クルツ、弾種瑠弾、目標正面距離300機関銃、戦闘照準!』

『ヤボールコマンダー!』

 

騒音がひどくマイクで会話する。

こればかりはどうしようも無いから仕方ない、きっと100年過ぎても変わんない。

砲を指向すると、敵が慌てて逃亡を開始するがそれをぶっ飛ばす。

瑠弾はその炸裂と破片で殺傷せしめる砲弾で、これがなかなか効果覿面だから陣地制圧は必須な物だ。

 

『うぉっ』

 

思わずそんな声が出た、払い下げらしいが対戦車ライフルでペリスコープを狙ってきた。

赤い髪飾りだろうか?それを巻いた女の子だ。

 

『MG!』

 

MG34による掃射をしようとすると、殺気でも感じたのかと言うくらいすぐに逃げていった。

指導教官とかなら分かるがあんな民兵が?なんて連中だ。

そう思っていると装甲擲弾兵から連絡が入った。

 

『Achtung! Panzer Alarm!』(警戒せよ!戦車警報!)

 

なんてことだ。

民兵が戦車持ってやがる、装甲車両くらいにしとけよ!。

おまけに報告を聞くに我々の後方から攻撃を仕掛ける気だろう。

 

『ウルフリック!俺と一緒に敵戦車を食いにいくぞ!

アーマイゼンフレッサーが攻撃を一旦ひきつげ、頼んだぞ』

 

戦車が進める位の道は限られている。

行動予測と地図を見れば大体のルートは絞れるから、あとは出てくるのを待ってやれば良い。

ノコノコ出てくるナーゲル(釘)は打ち付けるのが一番!。

予定の位置につくと整然と後退する歩兵が、ライフルで装甲をノックする。

 

「あの通りから出るぜ!数は一両、随伴歩兵無し!」

「シュタンメンカメラード(分かったよ戦友)。

ダンケシェーン(ありがとうな)」

「頼むぜ」

 

歩兵の対戦車能力はあまり高くない。

対戦車火器や対戦車砲を持っていると面倒だし、対戦車集束手榴弾を持ってると厄介だ。

なお原作では確認できなかったため、この世界では戦車は火炎瓶を受けても平気とする。

そもそも原理として機関損傷による効果を狙うものだが銃撃受けても平気なラグナイトを見るに大丈夫そうに見えたからである。

 

『来たぞ、突発戦闘に備えよ!』

 

あの戦車の地鳴りが聞こえてきた。

こちらは機関を絞って遠ざかっているように偽装してみる、家の窓から少年がこっちを見ていたがすぐに親らしき人影に引っ込まされた。

影が見え、青い独特のガリアの塗装がされシュルツェンの施された3号戦車のような車両が街路に現れた。

 

「フォイヤー!」

 

私の砲弾は敵の後部を撃ち抜き、同行していたウルフリック曹長の砲弾はシュルツェンは貫いたが砲搭側面がこちらを向いており斜めであったせいで、

GAM!と音を立てて弾かれてしまった。

 

「シャイセ!!(くそったれ!)

シュネルシュネル!!(急げ急げ!)」

「ヤー!」

 

クルツが黒色の弾頭のパンツァーグラナーテ34(徹甲瑠弾)を装填している。

敵は動けないが戦闘能力はある。

絶対にアイツは私かウルフリックを撃つぞ!。

その直感は正しく敵はウルフリックの車体下部を撃ち抜いた。

S35のような我が軍の戦車は車体下部と車体上部に弾薬ラックがある。

それゆえ撃ち抜かれると非常にまずい!。

それを理解しているからウルフリック曹長達は撃たれると同時に脱出した。

 

「ま、まって!」

「よし手を掴め!!」

 

操縦手のカイテル伍長を救おうとウルフリック曹長が手を貸し。

発火した弾薬の火龍に飲まれて二人は黒こげになり、片腕を負傷したボルマン軍曹以外死亡した。

 

「装填よし!」

「畜生おっ死ね!」

 

砲弾は車体中央を撃ち抜いた、これで車長か砲手は負傷したろうし撃発器も壊れたろう。

すると敵の車長と操縦手が車外に出てきた、逃がすものかとクルツが機銃掃射して薙ぎ倒し、私はハッチを出てウルフリックの戦車に近づく。

完全に破壊されており後方支援隊や整備大隊でも無理だ、完全にお釈迦になっている。

 

「ボルマン軍曹!大丈夫か」

「だ、大丈夫です。大丈夫...」

 

あっという間に仲間が死んだことに動揺しているのか、ボルマン軍曹は声が震えていた。

 

「ザニテーター!(衛生兵!!)」

 

緑十字が胴体と背曩に描かれている衛生兵が現れる。

基本両軍で衛生兵への銃撃は即決で射殺しても許される行為だ。

なにせ敵とは言え仲間を治療して助けてくれるかも知れないし、味方の衛生兵が撃たれる危険が高まる。

報復の連鎖は止められなくなったら無茶苦茶だ。

戦争はあくまで最低限ルールを守るものだ。

 

「...バカだった奴だったなあ」

「俺、あの人に300ライヒスマルク借金してたのに...」

 

ごうごうと燃え盛る彼の戦車を後ろに、市街の敵は組織的抵抗を失い掃討戦に移行していた。

すると偵察兵が報告を入れる。

 

「市街の西方の屋敷が敵の指揮本部?」

「ヤボール。無線機に鐘楼、負傷兵の野戦病院も兼ねているらしいです」

 

今市街の八割を抑えている。

残りを掃討したらさっさとそこを叩いて終わらせよう。

もうすぐ午後になる、補給等を済ませて一挙に踏み潰してやる!。

 




次回、エーデルワイスとの出会い。

「畜生!魔女のバァさんの呪いだ!」

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