ロクでなし魔術講師と寡黙な義弟   作:ほにゃー

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3・4巻
第23話 二人目の編入生


「グレンどうしたの?」

 

競技祭から数日たったある日、アルトは隣で妙に落ち込んでいるグレンに声をかけた。

 

「ん?ああ、ちょっとな。アルトも知ってるだろ?今日、編入生が来るってこと」

 

「そうだっけ?」

 

「先生の話はちゃんと聞け」

 

アルトの頭を軽く叩き、グレンは言う。

 

「ルミアの護衛のために、特務分室から執行官を編入生として送り込んでくるんだよ。はぁ~……せめて〝法皇”のクリストフだったらなぁ……」

 

溜息を吐くグレンを見て、アルトは誰か来るのか気になり、その人物の名を訪ねた。

 

「ねぇ、グレン。誰が来るの?」

 

「アイツだよ。リィ「先生!おはようございます!アルト君もおはよう!」

 

グレンが名前を言おうとした瞬間、ルミアとシスティの二人が現れる。

 

「よぉ、おはようさん、お二方」

 

「おはよう、ルミア、システィ」

 

近づいてきた二人にアルトは手を挙げて答え、グレンは欠伸を噛み殺しながら言う。

 

「私のことなんか気にしないで、朝はもっとゆっくりしててもいいんですよ?」

 

「別に。俺はただ朝の散歩が好きなだけだし。たまたま、お前らと通学に使う道と時間が一緒なだけだし」

 

グレンはそのまま二人の数歩後ろに立って歩き、アルトはルミアの隣に立った。

 

競技祭の一件以来、ルミアが本格的に〝天の智慧研究会”から狙われていることが判明してから、グレンとアルトはルミアの登下校を護衛として付いてくるようになった。

 

「そう言えば、先生。今日、編入生が来るんですよね?」

 

「ああ、そうだ。仲良くしてやってくれ」

 

「でも珍しいですよね。こんな時期にやってくるなんて」

 

そんな他愛のない話をしていると、突如何かが飛んできた。

 

システィが見上げると、そこには大剣を手に襲い掛かってくる人物がいた。

 

「敵!?ルミア!」

 

システィはルミアを狙う敵だと思い、守ろうとする。

 

が、その人物はルミアではなくグレンを狙った。

 

だが、刃がグレンに届くより早く、間にアルトが割って入り、メイスで大剣を受け止めた。

 

「またアンタか。いい加減にしなよ」

 

「いい加減にするのは貴方の方。私はグレンに挨拶をしただけ」

 

「あれのどこが挨拶だ!?」

 

突如押しかかってきた少女、リィエルの頭を拳でぐりぐりと痛めつける。

 

「先生、その子ってもしかして」

 

「ああ、そうだ。こいつが例の編入生、リィエルだ。ま、表向きはだがな」

 

グレンはルミアとシスティに包み隠さず、リィエルの素性を話し、ルミアの護衛として派遣されたことを言う。

 

「私の護衛任務ですか!?」

 

「こんなに小さい子が宮廷魔導士だなんて……」

 

「明らかに人選ミスじゃない?」

 

アルトはリィエルの方を見て、そう言う。

 

アルトの言葉にカチンっと来たのかリィエルは不機嫌そうな顔をする。

 

「まぁ、それは否定しない。〝一緒に仕事したくないランキング”万年一位だからな。一体上は何を考えて此奴を送ってきたんだか………でも、腕は確かな奴だ。そこは信頼してくれ」

 

「えっと、リィエル……だっけ?久しぶり。貴方が来てくれるなんて心強いよ。よろしくね」

 

「ん、任せて。グレンは私が守る」

 

迷いなくそういうリィエルにグレンも、ルミアも、システィも一瞬固まった。

 

この子は一体何を言ってるんだ?っと言いたげにリィエルを見る三人。

 

「何言ってるのか分からないけどグレンに護衛はいらない」

 

そんな中、アルトはリィエルの前に立ち言う。

 

「グレンを守るのは俺だから、アンタはいらない」

 

何を言うかと思えば挑発的な言葉だった。

 

「聞き捨てならない。私の方がグレンを守るのにふさわしい」

 

「ふさわしいとかふさわしくないとかの問題じゃない。アンタじゃ、グレンは守れない。絶対にだ」

 

「私が貴方より劣ってると言いたいの?」

 

「そうじゃない。でも、俺はアンタより強いけどね」

 

「なら、試す」

 

「上等だよ」

 

そして、二人は同時に呪文を詠唱する。

 

「《万象に希う》」「《我願う》」

 

「《我が腕手に》」「《血の盟約に従い》」

 

「《剛毅なる――――》」「《我が手に悪魔の―――》」

 

詠唱が終わろうとしたその瞬間、二人の頭を鈍い痛みが襲う。

 

二人はその場に蹲り、頭を押さえながら痛みを堪える。

 

「おい、アルト、リィエル。もしまた、今みたいな事しようとしたら二人仲良く〝イクスティンクション・レイ”だからな」

 

グレンの目は本気と書いてマジと読む感じだった。

 

この時ばかりはシスティもルミアも、グレンを本気で怒らせてはいけないと思った。

 


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