「いたぞ!あそこだ!」
親衛隊に追いかけられながらグレン、そしてグレンにだきかかえられてるルミアは逃げる。
追い詰められたと思えば魔術を駆使し親衛隊を蹴散らし、目を眩ませて逃走。
単なる魔術行使にしては実践慣れしており、魔術の腕も確かなものだと親衛隊たちはそう思った。
だが、そこにいるグレンとルミアは本人ではなかった。
グレンはアルベルト、ルミアはリィエルが黒魔《セルフ・イリュージョン》で姿を変えていた。
その様子を、黒魔〝アキュレイト・スコープ”で見ていたアルトは一息つく。
「どうやら囮はうまくいってるみたいだね。俺たちも行こう」
アルトはそう言い後ろの二人、グレンとルミアに言う。
「そうはいかん」
すると突如、三人の周りに十数人の髑髏の仮面を付けた集団が現れる。
「暗部か……」
「如何にも」
「ルミア=ティンジェル、貴様の首、頂こう」
「貴様さえ、大人しく首を差し出せば済む話だ」
「自分が生きるために他者を巻き込むのは貴様も不本意だろう」
「さぁ、首をよこせ」
「二人とも………行くよ!」
アルトは素早く黒魔“フラッシュ・ライト”を使い、暗部たちの視界を塞ぎ、逃げ出そうとするがその足元に一本のナイフが刺さる。
「“フラッシュ・ライト”とは考えたな。だが、甘い。暗部の人間は魔術こそ使えないものの、それを補うための術を持っている。例えば、聴覚と嗅覚、そして己の感を頼って戦うとかな」
暗部たちは“フラッシュ・ライト”をものともせず立ち上がり、ナイフ抜く。
「まだだ」
今度は、〝ブレイズ・バースト”で地面を爆破し、三人は逃げる。
逃げながらも魔術で暗部を攻撃しつつ、学院へと逃げる。
だが、次第に追い込まれ三人は袋小路へと追い込まれる。
「ここまでだな」
「お前たちの作戦はお見通しだ」
「親衛隊が追いかけてるのは黒魔〝セルフ・イリュージョン”で姿を変えた貴様らの仲間」
「本物は親衛舘隊が囮に注目してる間に、学院に向かう」
「だが、その程度の小細工は無意味」
「姿だけを変える術では我らの目は欺けない」
「奴らを囮に、本物は学院へ向かう」
「貴様らの目論見は崩れたな」
ナイフを手に近寄ってくる暗部。
そんな中、アルトは後ろにいるグレンとルミアに声を掛ける。
「もういいよ。二人とも」
「やれやれ、囮も楽じゃねぇな」
「この変身もね」
すると突如二人の姿が、シンリィとドウェインになった。
「な、なんだと!?」
「こ、これは!?」
「囮だ。まんまと引っかかってくれたな」
「〝セルフ・イリュージョン”……いや、そんなはずはない!確かに体つき、匂い、動きの癖、そのどれも全てが本物と同じだった………!」
「〝セルフ・ポリモフル”だ。その呪文を改変して、他人に成りすますなんざ、俺達にはお手の物だ」
「つまり親衛隊が追っている二人は囮の囮。私たちはあの二人が無事、競技祭を終えるまでの間の囮。ま、どちらかっていうとあんたたち相手の囮だけどね」
黒魔〝セルフ・イリュージョン”は光を操作することによって幻影で変身したように見せる黒魔術。で、術者のイメージ次第で何にでも変身が可能。
しかし、変えれるのは姿のみで声や癖までは変えられない。
だが、白魔〝セルフ・ポリモフル”は違う。
体の構造そのものを作り変えて変身するため、変身したもの能力を得ることが出来る。
その呪文を改変し、他者に化けることも可能である。
「馬鹿な!〝セルフ・ポリモフル”は一歩間違えれば、元に戻れない危険性もある!ましてや他者に変身するなどと……………!」
「恐怖がないのかって言いたげな表情ね」
「別に怖くねぇ訳じゃねぇ。ただ、そうしないと任務が遂行できない。そういう状況には慣れてるだけだ」
「あんた達はここで倒すよ」
そう言い三人はそれぞれの悪魔の
「《我願う・血の盟約に従い・我が手に悪魔の戦棍を》」
「《我願う・血の盟約に従い・我が手に悪魔の双剣を》」
「《我願う・血の盟約に従い・我が手に悪魔の槍斧を》」
アルトはメイス、シンリィは双剣、ドウェインはハルバードを手にし、構える。
「く、くそおおおおおおおおお!!?」
暗部たちは声を荒げナイフを抜き構える。
そして、数分後には倒された暗部たちが山のように積まれていた。
それと同時に、魔術競技祭は一悶着があったが、無事終わりを迎えれた。