ロクでなし魔術講師と寡黙な義弟   作:ほにゃー

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第11話 悪魔の公爵

「ふっ!」

 

メイスを手に、アルトはランスに接近する。

 

「くっ!《大気の壁よ》!」

 

ランスは〝エア・スクリーン”を使い、空気の障壁を使う。

 

だが、〝エア・スクリーン”は物理的な力に弱く、術が消滅しやすい。

 

アルトはメイスを空気の障壁に向け、振り下ろす。

 

空気の障壁は簡単に壊れるが、ランスはすでに指をアルトに向けていた。

 

「《穿て》!」

 

〝ライトニング・ピアス”が放たれ、アルトの体を捉える。

 

ランスは勝ったと確信をした。

 

だが、アルトは手にしたメイスを無理矢理引き戻し、〝ライトニング・ピアス”を防いだ。

 

「なっ!?馬鹿な!プレートメイルを貫く威力だぞ!それをメイス如きで防ぐなどと………!」

 

「何驚いてるのさ?」

 

いつの間にか、アルトはランスの懐へと潜り込んでいた。

 

そして、メイスを大きく振りかぶる。

 

「がっ!?」

 

ランスはそのまま窓から外に叩き落される。

 

「逃さない」

 

アルトは窓から飛び降り、ランスを追いかけようとする。

 

「お、おい、アルト!」

 

すると、カッシュがアルトを唐突に呼び止める。

 

「何?」

 

アルトは立ち止まり、カッシュの方を見る。

 

「その……殺したり…………しないよな?」

 

カッシュは今のアルトの行動から、アルトがランスを殺してしまうのではと思い、そう尋ねる。

 

「……何言ってるの?殺すに気まってるでしょ」

 

アルトは淡々とそう告げる。

 

その言葉に、クラス全員が戦慄した。

 

「ど、どうして!?」

 

「どうしてって、アイツは敵だよ。生かせば、いつかまた襲ってくる。そうならない為にも、殺さないと」

 

「………例えそうでも……殺しはダメだ」

 

「………もう行くよ。逃げられると厄介だし」

 

そう言い残し、アルトは窓から外に飛び降りると、ランスを探して走り出す。

 

(殺すのはダメ……か。………そんなこと考えたこともなかったな)

 

そんなことを思いつつ、アルトはランスを見つけた。

 

ランスは腹を押さえながら、壁に寄りかかっていた。

 

(ま………いっか。あいつは―――――)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「殺してもいい奴だし」

 

アルトはメイスを手にしたまま、飛び上がり頭上から攻撃を仕掛ける。

 

そして、そのままランスの頭を叩き潰す。

 

「あれ?なんか軽い?」

 

「《穿て》!」

 

ランスを殺したと思ったら、背後からまた〝ライトニング・ピアス”が飛んできて、アルトはそれを回避する。

 

「あれ、何?」

 

「分身だよ。ゴーレムに着色をして、それっぽく見せかけたものだ。だが、偽物だったとはいえ、容赦なく叩き潰すとはな」

 

「敵なんだから容赦する方がおかしいでしょ」

 

「確かに。だが、貴様本当に子供か?」

 

「そうだよ。そして、あんたが生贄にしようとしたのもね」

 

メイスを片手で振り回し、アルトはメイスの先をランスに向ける。

 

アルトは足に力を込め、一気に飛び出す。

 

ランスはアルトの攻撃を躱すも、徐々に追い詰められはじめ

 

(くっ……重いメイスを装備しながらこの動き……!このままではやられる……!ならば!)

 

ランスは回避をやめ、真正面からアルトに向き合う。

 

「終わりだ」

 

アルトは突きを放つように片手でメイスをランスに向ける。

 

「《その剣に光在れ》!」

 

ランスは自身の左腕を〝ウェポン・エンチャント”で強化し、アルトのメイスを受け止めた。

 

いくら強化したとはいえ、左腕一本で受け止められるはずもなく左腕の肉は破れ、骨が砕ける。

 

ランスは強烈な痛みに耐えながらも、なんとかメイスを使い物にならなくなった左腕で抑え込む。

 

「この距離でメイスを抑え込まれては、反撃もできないだろ。死ね!」

 

ランスは指をアルトに向け〝ライトニング・ピアス”を放とうとする。

 

「《穿「《貫け》」

 

だが、ランスが言うより、アルトが言うのが早かった。

 

アルトのメイスの先から〝ライトニング・ピアス”が放たれ、左腕を吹き飛ばす。

 

肩から血を流し、ランスは地面に倒れる。

 

「な、何故……武具から……魔術が………!」

 

「ああ、気になるの?大したことじゃないよ。コイツはえっと……なんだっけ?まぁいいや。とにかくコイツには魔力の伝達率が高い金属で作られてて、俺はコイツに魔力を流して、先から魔術を放っただけ。俺、攻性呪文(アサルト・スペル)を当てるのが苦手でさ、至近距離じゃないと当てられないんだ。だから、メイスで接近して、コイツで魔術を打ち込む。簡単でしょ?」

 

ランスはアルトの説明に、驚き、固まる。

 

そして、あることを思い出した。

 

ある魔術師の話を………

 

「思い出した。……つい最近まで、帝国宮廷魔導士団にある少年の魔術師がいた。その少年は、子供でありながら多くの破壊工作や暗殺を行い、行く手を阻むものは誰であろうと、手にした深紅のメイスで叩き潰し、殺す。その少年が通った後には血の海と遺体しかなかった。その所業から裏世界から悪魔と恐れられた魔術師。………コードネームは――――《バルバトス》」

 

そうペンタンドに刻まれた紋章は悪魔〝バルバトス”の魔法陣(シジル)だった。

 

「だから?」

 

アルトは無表情でそう言い、メイスをランスの頭に向ける。

 

「ふっ……俺を殺すか。流石は悪魔、〝バルバトス”だ。慈悲のない容赦の無さ。恐れ」

 

そこまで言いかけ、ランスは死んだ。

 

アルトが言葉の途中でメイスをランスの頭に叩き込んだからだ。

 

「長いよ」

 

アルトはそう言い、メイスを消す。

 

「さて、教室に戻ろっと」


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