その日の放課後のことである。
陽乃さん大丈夫かね?一応濡れタオルを額に置いておいたけど。
っとと、天霧に用があるんだった。
走って天霧の教室に向かう。教室の場所は探知済だ。
「おい、天霧はいるか?」
教室のドアを全力であける。
「ど、どうしたんだい、比企谷」
「天霧、お前の連絡先寄越せ」
「あ、あぁ、いいよ。はい」
そんなポンとでてくるもんなのか?
「すまんな、じゃあな」
「あ、比企谷、これからユリスが学園を案内してくれるんだけど、一緒にどう?」
いや2人でいけよ。あと陽乃さん心配だし。
「もう学園の隅々まで把握した。だから必要ない」
「ははは、さすが比企谷だな」
なにが流石なのかはわからんが。
「じゃあな」
「また明日、比企谷」
明日?会えるのか?
さて、陽乃さんはどうしてるかね?
のんびり歩いているとクローディアとすれ違った。
「あ、比企谷君、昨日の純星煌式武装適合率検査のことなんですが、明日行います。この書類に目を通して頂いて、問題ないようでしたらご署名をお願いします」
おおう、署名とかいるのね。めんどくさいから見ないで署名だけしちゃえ。
「はい」
「て、適当ですね……。まさか読むことすらしないとは驚きですよ。あと冒頭の十二人入りおめでとうございます」
「ちょっと急いでたからな。じゃあな」
「はい、それではまた明日」
(比企谷君はいきなり冒頭の十二人入りですか。マクフェイルくんと何があったのでしょうか。まぁユリス絡みでしょうが。ふふ、今年の星武祭は楽しみですね)
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帰宅。
「ただいま」
なんとなく言ってみた。
「おかえり、比企谷君」
あ、起きてる。
「陽乃さん大丈夫ですか?」
「なにがー?」
陽乃さんが奥からひょっこりと顔を出す。
「いや、朝「比企谷君」はい」
あの笑顔が怖い。どうしようもなく。
逆らうことはできない。
「ところで陽乃さん」
「なにかな?」
「鳳凰星武祭にでるなら練習とかしなくてもいいんですか?」
「そうだねー、夜にちょっと決闘しに行こっか」
ちょっと考え込む仕草をしてすぐに答える。
「け、決闘ですか……」
「そ、決闘。比企谷君の実力を知るには一番手っ取り早いからね。全力でかかってきてね」
「………………まぁ、そういうことなら分かりました」
間が空きすぎた気がするけどいいよな。
「なら時間作るために早めのお夕飯にしよっか。比企谷君よろしく〜」
「洋風と和風どっちがいいですか?」
「昨日は和風だったから今日は洋風で!」
さて、材料はなにが……。
ふ、増えてる……。陽乃さんが買ってきたのかね。
うーむ、これだけあるなら……。
オムライスでいっか。
ていうか陽乃さんって今日学園に来たのかね?まぁいいけど。
そうと決まれば。
ふぅ、と一息つき、早速取り掛かる。鶏肉を解凍し、野菜を切っていく。ご飯は冷凍のやつを使おう。
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さて、作り終えた訳なのだが。
陽乃さんがオムライスを1口食べたきり動かなくなってしまった。
今回は放置してみよう。
放置してから数分、陽乃さんはようやく復活した。
「比企谷君!」
「はひゃい!?」
ビビったわ。すごく驚いた。いきなり大声で話しかけないで。
「このオムライス美味しすぎ!この卵のふわとろ具合とか最高だよ!……ご飯が包まれてないのが欠点だけど」
珍しく興奮しているようだ。あと、ボソッというのやめようね?美味しいんだからいいじゃないすか。
「そ、そうですか」
何かと思ったらそんなことか。まぁ、喜んで貰えたなら何よりだ。
「ていうかなんでそんなに料理が上手いの、比企谷君」
「専業主夫希望でしたからね。家事全般は得意分野ですよ」
「な、なるほど……」
なんか引かれた気がするけどいいや。
料理は俺が唯一でもないけど、誇れることだ。
陽乃さんには負ける時もあるけど。
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「さて比企谷君、準備はいいかな?」
「もちろんです」
夕飯を食べた後、少し話してから外で決闘できる公園まで散歩がてら移動した。
そしてこれから陽乃さんと決闘だ。
情報はないのかって?そんな時間はなかったのだ。本人から光を操ることは聞いているが。
「不撓の証たる赤蓮の名の下に、我雪ノ下陽乃は汝比企谷八幡への決闘を申請する」
「我比企谷八幡は汝雪ノ下陽乃の決闘申請を受諾する」
陽乃さんの星辰力が手のひらに集まってくるのを感じる。
「光よ、敵の視界を奪え!」
「星奏、歌姫」
直後、強烈な光が陽乃さんを中心に広がる。フラッシュ焚かれたみたいだ。
視界がはっきりとしねぇ。だけど。
「解放、守護陣」
とりあえず貼っておこう。
「闇よ、敵の光を奪え」
俺の視界が真っ暗になった。
直接干渉とかだるいな。
「星辰力よ、我が元に集え、第一級星装」
星辰力がかなり消費された気がする。守護陣ももうすぐ破られそうだ。
「光の声が空高く聞こえる♪」
マイクに声を通す。ていうかシルヴィに何も言ってってないけど大丈夫かな。いやでも言うならリースフェルトの時に言うか。
陽乃さんにもフラッシュを浴びせる。
「くっ、光よ、我が命に従え」
光じゃダメか。てか視界が回復しない。
「星辰力を縛りし我よ、今を以て我が全てを解放す!」
瞬間、俺の星辰力が爆発的に高まり、それだけで周囲に風が吹き、俺の守護陣とマイクが弾け飛んだ。そして俺の視界が回復した。
「なっ!?」
回復した視界で陽乃さんを見ると、驚きの表情を浮かべて、解放の衝撃で起きた風に抗うように徐々に俺に近づいてくる。
あ、やべ、解放し過ぎたかも。……制御できなくなってきた。
何故なら、星辰力が光り輝き空に立ちのぼっているからだ。そして周りに吹いている風は暴風になる。それが圧力となりさらに風が強くなる。
目立ちたくないなぁ。もう遅いだろうけど。
「光よ、我が身を……キャッ」
しかしその言葉が最後まで続くことはなかった。風に飛ばされたのだ。
そして、
パキッという音とともに校章が砕けた。
……俺の。
『校章破壊。勝者雪ノ下陽乃』
俺はため息を1つつき、力を抑えるための言葉を紡ぐ。
「星辰力よ、我が身から解放されし力を5つの統星に封印せよ」
星辰力が封印され、放出されていた星辰力が途切れる。
「はぁ、比企谷君の星辰力の量多すぎてビックリしたよー。でも星辰力で自分の校章を破壊するとは思わなかったけどね……ふふっ」
「なんか中学の頃に急に星辰力が増えたんすよ。それで頭に浮かんできた封印の力で抑えてたんですが、負けそうになったので思わず解放してしまいました。すみません」
「ううん、いいよいいよー。これで比企谷君がかなり強いって分かったんだし。対策はおいおい考えていこっか」
まさか星辰力が高まりすぎて自分のを破壊するとは。
そこも問題点だなぁ。
星辰力を操れるようにしないと星武祭ですぐに負けちまう。
第一級星装
2番目に強い、星辰力で作られた防具。
この下に二級、三級、四級がある。上には完全星装がある。
星辰力解放
八幡の封印されてる星辰力を解放する。この決闘後、一段階ではなく、五段階にわけて封印した。
星辰力封印
星辰力で自分の力を抑え込む。
途中の歌詞は“コスモス”だった気がする。覚えてないです。