ぼっちは六花を謳歌する。   作:すのどろ Snowdrop

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8話

その日の放課後のことである。

 

 

 

陽乃さん大丈夫かね?一応濡れタオルを額に置いておいたけど。

っとと、天霧に用があるんだった。

 

走って天霧の教室に向かう。教室の場所は探知済だ。

 

「おい、天霧はいるか?」

 

教室のドアを全力であける。

 

「ど、どうしたんだい、比企谷」

 

「天霧、お前の連絡先寄越せ」

 

「あ、あぁ、いいよ。はい」

 

そんなポンとでてくるもんなのか?

 

「すまんな、じゃあな」

 

「あ、比企谷、これからユリスが学園を案内してくれるんだけど、一緒にどう?」

 

いや2人でいけよ。あと陽乃さん心配だし。

 

「もう学園の隅々まで把握した。だから必要ない」

 

「ははは、さすが比企谷だな」

 

なにが流石なのかはわからんが。

 

「じゃあな」

 

「また明日、比企谷」

 

明日?会えるのか?

 

さて、陽乃さんはどうしてるかね?

 

のんびり歩いているとクローディアとすれ違った。

 

「あ、比企谷君、昨日の純星煌式武装適合率検査のことなんですが、明日行います。この書類に目を通して頂いて、問題ないようでしたらご署名をお願いします」

 

おおう、署名とかいるのね。めんどくさいから見ないで署名だけしちゃえ。

 

「はい」

 

「て、適当ですね……。まさか読むことすらしないとは驚きですよ。あと冒頭の十二人入りおめでとうございます」

 

「ちょっと急いでたからな。じゃあな」

 

「はい、それではまた明日」

 

(比企谷君はいきなり冒頭の十二人入りですか。マクフェイルくんと何があったのでしょうか。まぁユリス絡みでしょうが。ふふ、今年の星武祭は楽しみですね)

 

**********************

 

帰宅。

 

「ただいま」

 

なんとなく言ってみた。

 

「おかえり、比企谷君」

 

あ、起きてる。

 

「陽乃さん大丈夫ですか?」

 

「なにがー?」

 

陽乃さんが奥からひょっこりと顔を出す。

 

「いや、朝「比企谷君」はい」

 

あの笑顔が怖い。どうしようもなく。

逆らうことはできない。

 

「ところで陽乃さん」

 

「なにかな?」

 

「鳳凰星武祭にでるなら練習とかしなくてもいいんですか?」

 

「そうだねー、夜にちょっと決闘しに行こっか」

 

ちょっと考え込む仕草をしてすぐに答える。

 

「け、決闘ですか……」

 

「そ、決闘。比企谷君の実力を知るには一番手っ取り早いからね。全力でかかってきてね」

 

「………………まぁ、そういうことなら分かりました」

 

間が空きすぎた気がするけどいいよな。

 

「なら時間作るために早めのお夕飯にしよっか。比企谷君よろしく〜」

 

「洋風と和風どっちがいいですか?」

 

「昨日は和風だったから今日は洋風で!」

 

さて、材料はなにが……。

ふ、増えてる……。陽乃さんが買ってきたのかね。

うーむ、これだけあるなら……。

オムライスでいっか。

ていうか陽乃さんって今日学園に来たのかね?まぁいいけど。

 

そうと決まれば。

ふぅ、と一息つき、早速取り掛かる。鶏肉を解凍し、野菜を切っていく。ご飯は冷凍のやつを使おう。

 

**********************

 

さて、作り終えた訳なのだが。

陽乃さんがオムライスを1口食べたきり動かなくなってしまった。

今回は放置してみよう。

 

放置してから数分、陽乃さんはようやく復活した。

 

「比企谷君!」

 

「はひゃい!?」

 

ビビったわ。すごく驚いた。いきなり大声で話しかけないで。

 

「このオムライス美味しすぎ!この卵のふわとろ具合とか最高だよ!……ご飯が包まれてないのが欠点だけど」

 

珍しく興奮しているようだ。あと、ボソッというのやめようね?美味しいんだからいいじゃないすか。

 

「そ、そうですか」

 

何かと思ったらそんなことか。まぁ、喜んで貰えたなら何よりだ。

 

「ていうかなんでそんなに料理が上手いの、比企谷君」

 

「専業主夫希望でしたからね。家事全般は得意分野ですよ」

 

「な、なるほど……」

 

なんか引かれた気がするけどいいや。

料理は俺が唯一でもないけど、誇れることだ。

陽乃さんには負ける時もあるけど。

 

**********************

 

「さて比企谷君、準備はいいかな?」

 

「もちろんです」

 

夕飯を食べた後、少し話してから外で決闘できる公園まで散歩がてら移動した。

そしてこれから陽乃さんと決闘だ。

情報はないのかって?そんな時間はなかったのだ。本人から光を操ることは聞いているが。

 

「不撓の証たる赤蓮の名の下に、我雪ノ下陽乃は汝比企谷八幡への決闘を申請する」

 

「我比企谷八幡は汝雪ノ下陽乃の決闘申請を受諾する」

 

陽乃さんの星辰力が手のひらに集まってくるのを感じる。

 

「光よ、敵の視界を奪え!」

「星奏、歌姫」

 

直後、強烈な光が陽乃さんを中心に広がる。フラッシュ焚かれたみたいだ。

視界がはっきりとしねぇ。だけど。

 

「解放、守護陣」

 

とりあえず貼っておこう。

 

「闇よ、敵の光を奪え」

 

俺の視界が真っ暗になった。

直接干渉とかだるいな。

 

「星辰力よ、我が元に集え、第一級星装」

 

星辰力がかなり消費された気がする。守護陣ももうすぐ破られそうだ。

 

「光の声が空高く聞こえる♪」

 

マイクに声を通す。ていうかシルヴィに何も言ってってないけど大丈夫かな。いやでも言うならリースフェルトの時に言うか。

陽乃さんにもフラッシュを浴びせる。

 

「くっ、光よ、我が命に従え」

 

光じゃダメか。てか視界が回復しない。

 

「星辰力を縛りし我よ、今を以て我が全てを解放す!」

 

瞬間、俺の星辰力が爆発的に高まり、それだけで周囲に風が吹き、俺の守護陣とマイクが弾け飛んだ。そして俺の視界が回復した。

 

「なっ!?」

 

回復した視界で陽乃さんを見ると、驚きの表情を浮かべて、解放の衝撃で起きた風に抗うように徐々に俺に近づいてくる。

 

あ、やべ、解放し過ぎたかも。……制御できなくなってきた。

 

何故なら、星辰力が光り輝き空に立ちのぼっているからだ。そして周りに吹いている風は暴風になる。それが圧力となりさらに風が強くなる。

 

目立ちたくないなぁ。もう遅いだろうけど。

 

「光よ、我が身を……キャッ」

 

しかしその言葉が最後まで続くことはなかった。風に飛ばされたのだ。

そして、

 

 

 

パキッという音とともに校章が砕けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……俺の。

 

『校章破壊。勝者雪ノ下陽乃』

 

俺はため息を1つつき、力を抑えるための言葉を紡ぐ。

 

「星辰力よ、我が身から解放されし力を5つの統星に封印せよ」

 

星辰力が封印され、放出されていた星辰力が途切れる。

 

「はぁ、比企谷君の星辰力の量多すぎてビックリしたよー。でも星辰力で自分の校章を破壊するとは思わなかったけどね……ふふっ」

 

「なんか中学の頃に急に星辰力が増えたんすよ。それで頭に浮かんできた封印の力で抑えてたんですが、負けそうになったので思わず解放してしまいました。すみません」

 

「ううん、いいよいいよー。これで比企谷君がかなり強いって分かったんだし。対策はおいおい考えていこっか」

 

まさか星辰力が高まりすぎて自分のを破壊するとは。

そこも問題点だなぁ。

星辰力を操れるようにしないと星武祭ですぐに負けちまう。

 

 

 




第一級星装
2番目に強い、星辰力で作られた防具。
この下に二級、三級、四級がある。上には完全星装がある。

星辰力解放
八幡の封印されてる星辰力を解放する。この決闘後、一段階ではなく、五段階にわけて封印した。

星辰力封印
星辰力で自分の力を抑え込む。

途中の歌詞は“コスモス”だった気がする。覚えてないです。

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