ぼっちは六花を謳歌する。   作:すのどろ Snowdrop

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2話

由比ヶ浜sidestart

 

なに、これ……。

 

掲示板に貼られていたのは奉仕部全記録と題名に書かれたものだった。

 

こんなのって……。

 

“由比ヶ浜は何もしない、足を引っ張っていただけ”

 

“由比ヶ浜はすぐに暴言を吐く”

 

“自分のグループの管理もできないような奴”

 

“ノリだけで受けちゃいけない依頼まで受ける”

 

“料理スキル皆無なのにレシピ通りに作らずそれを毒味させる”

 

“感情だけでものを言う馬鹿”

 

酷いよ……。

 

“雪ノ下は1人で突っ走って躓く”

 

“1人で受けた依頼の尻拭いを人にさせる”

 

“自分は何もしないくせに人のやり方を否定する”

 

“葉山は自分のグループの問題を他のところに持ち込む糞野郎”

 

“相模は自分でできないことを引き受け人にやらせ、最後に逃げる屑”

 

ヒッキー……。

 

あたしは何もできずに突っ立っていた。

真実しか書かれていない。だから動くことすらできない。

 

『あそこに書かれてることって本当かな?』

 

『らしいよ、なんでも戸塚君と川崎さんとよく分からないすっごく綺麗な人で書いたらしいよ』

 

『えーっ、じゃあ本当なんだー、奉仕部って酷いんだねー』

 

『そうそう、商店街にもそれ貼ってあったよ』

 

『うっそー、ウケるんだけど』

 

『だよねー!』

 

どこからかそんな声が聞こえる。

 

『ていうかあそこで呆然と立ってるのってー、由比ヶ浜さんじゃない?』

 

『あー、ほんとだー。噂の張本人が張り紙みてるとかちょーウケる』

 

『ていうか葉山君がそんな人だとは思わなかったよー』

 

『しかもしかも三浦さんを隠れ蓑みたいにしてるんでしょ?』

 

『それだけじゃなくて雪ノ下さんを手に入れるために奉仕部に無理な依頼したんでしょ?』

 

『最低な男だね』

 

『雪ノ下さんもすぐに人を罵倒するんでしょ?』

 

『そんな人に憧れてたなんてありえなーい』

 

ほんとは今すぐにでもその言葉を否定しに行きたい。だけど足は動かなかった。

 

『相模ちゃんも馬鹿だね』

 

『ほんと馬鹿だね』

 

『ていうか屑?』

 

『それあるー!』

 

「どう?ガハマちゃん、比企谷君の気持ち、わかった?こんなのは6年前に経験済みだってさ」

 

「こんなのって……、こんなのって、ないよ、ヒッキー……」

 

あたしは泣き崩れた。

 

「そうやって泣いてもなんの解決にもならないよ。比企谷君は人にできないことで皆を救ってたんだよ。偉いよね、どこかの誰かさん達と違って」

 

そう言って陽乃さんは立ち去った。

 

この日を境に、あたしとゆきのんと葉山君とさがみんは虐められた。文化祭直後のヒッキーみたいに。いや、それ以上かもしれない。

 

私達4人の中でも被害が大きかったのはさがみんだ。

そして、1番早く壊れたのもさがみんだった。

 

 

 

ヒッキーがこんなことする人だとは思わなかった。

 

あたしは自分のことを棚に上げてることを分からずに、そう考え、復讐の二文字を脳内に浮かべた。

 

由比ヶ浜sideout

 

 

 

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小町sidestart

 

小町はなんとなくTwitterを見ていた。

だからそれにいち早く気付けた。

 

総武高校の由比ヶ浜って人に暴言吐くくせに自分では何もしないらしいよ。それにペットを助けて貰ったのにお礼を言ったのが事故から1年経った時らしいよ。

 

総武高校の葉山君、実は何もできない屑野郎らしいよ。全部他人任せ。酷いよね。しかも恋する女の子を隠れ蓑にしてたらしいよ。

 

etc…

 

何これ。これがお兄ちゃんの言ってたこと?

 

piririri

 

電話だ。誰から……。

 

結衣さんだ……。

ふと、置き手紙に書かれていたことを思い出す。

 

奉仕部には関わらないでくれ。お前まで巻き込みたくない。

 

ふざけんなって思ってた。

ごめんね、お兄ちゃん。

ありがと、お兄ちゃん。

帰ってきてね、お兄ちゃん。

小町はお兄ちゃんの味方になるから……。

 

小町はそっと、携帯の電源を落とした。

 

小町sideout

 

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戸塚sidestart

 

八幡に頼まれたことを材木座君と雪ノ下さんと川崎さんと一緒にこなし、今は授業中。

張り紙したことに書かれていたことは本当らしい。

葉山君も由比ヶ浜さんも今は1人でいる。

可哀想だとは思うけど、やってたことは酷いことだから。

ごめんね、僕は八幡の味方なんだ。そう約束したし、材木座君と雪ノ下さんと川崎さんと僕の4人で誓ったことでもあるんだ。

放課後、また4人で集まって由比ヶ浜さんや葉山君の家族のところに行くことになっている。そして、僕達はアスタリスクに行く計画をたてている。八幡もそこに行くっぽいし。

 

頑張ったね、八幡。もう少ししたらまた会おうね。

 

戸塚sideout

 

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八幡sidestart

 

「シルヴィ、俺ってどこに入学すればいいの?」

 

肝心なことを聞きそびれていた。

 

「八幡君が好まないだろうところはアルルカントとガラードワースだね」

 

「んー、星導館は?」

 

「放任主義というかなんというかだね。結構いい感じだよ」

 

「ほーん、なら星導館でいいや」

 

「そこなら知り合いいるからなんとかできるよ」

 

「お、マジか。助かる」

 

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「着いたね」

 

「いやー、シルヴィがいなかったら魔王に頼み込んでここに来るところだったよ」

 

「魔王って誰よ……そういえば荷物は?」

 

「圧縮してリュックの中に入ってる」

 

すっごく便利な能力です。なんでも小さくしたり大きくしたりできるからね。重さも変えられるし。

 

「そ、そっか。とりあえず手続きしに行こっか」

 

八幡sideout

 

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陽乃sidestart

 

さーて、私は比企谷君からの依頼も終わったし、アスタリスクに戻ろっと。鳳凰星武祭のパートナーも見つけないと行けないしね。

そういえば比企谷君どこに行ったんだろう。千葉にはいないと思うんだけど……。

まぁ、連絡はとれるからいっか。

 

陽乃sideout

 

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材木座sidestart

 

けぷこんけぷこん、八幡はアスタリスクに行くらしい。であれば我もアスタリスクに行こうではないか。なんの運命か、叔父もそこにいるのでな。

待っておれよ、八幡。もう少ししたら戸塚殿と行くからな!そして今度こそ八幡の役に立つのだ!

 

材木座sideout

 

 

 


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