怠けてました。ペテ公に殺されそうですね。怠惰怠惰とか言って。
『試合開始』
その合図と同時に天霧、陽乃が比企谷に向けて駆け出した。だが、それと同時に比企谷は隠蔽の星散の能力、歩行時の自身の隠蔽を使い、歩行とみなされる限界の速さで大きく時計回りをするように歩いた。もちろん、魔法無効化などできはしないので、陽乃の光を奪う魔法により、ここにいる全員の視界が暗闇に閉ざされた。
「バースト」
そこに紗夜が持っていた巨大な銃の煌式武装、三八式煌式擲弾銃ヘルネクラウムが当たりに撒き散らされる。陽乃と天霧はその場で顔を引き攣らせながら上へ全力ジャンプする。
「咲き誇れ!呑竜の咬焔花!」
ユリスが細剣を振るった軌道に魔法陣が浮かび上がる。そこから猛烈な熱波が迸り、その魔法陣を破るように巨大な焔の竜が現れた。ユリスはその竜に乗り、上空へ退避した。
そして、比企谷は……
「2統星解放」
自身を封印している統星の解放を行った。
そこにいた4人は比企谷から溢れ出る膨大な星辰力に圧倒され、さらにその膨大な星辰力の圧力が風となり襲いかかる。
陽乃の能力である光を奪う魔法も比企谷の前に効果は消え、紗夜の放った擲弾銃の流星闘技も霧散し、ユリスが召喚(?)した焔の竜も消えた。
簡単に言うと、比企谷はほぼ無敵状態になったのだ。この星辰力が消費されるまでは比企谷に対して魔法は効果を持たないだろう。唯一、接近戦のみ彼に傷を付けられるだろう。しかし、視界の回復した彼とその純星煌式武装である隠蔽の星散の前では、接近することすら許されない。接近できても隠蔽の星散で吹き飛ばされるだけ。つまり、結局遠近ともに無敵ということだ。
「あれ?」
「比企谷の目が……」
「……輝いてる」
「……///」
「泣くぞ」
陽乃は目の輝いた比企谷がイケメンすぎて、前のギャップに萌え、比企谷はそう言われたことが意外とショックだったのか、とりあえずといった感じで天霧に向かって全力ダッシュする。その速さは先程の天霧とともに急いで駆けていた時とは比べ物にならない。むしろ瞬間移動と言われた方がしっくりくるくらいに速い。
音速とか超えてるわけじゃないけど。
ほら、もっと速くの元へ、的な。
しかし天霧はそれを捉えていたようで思いっきり後方へジャンプ、次いで右斜め前にダッシュ。陽乃の方へ向かう。比企谷はスピードを出し過ぎて止まれないのか、そのまま壁の方へ走り続ける。そしてそのスピードのまま壁にジャンプ。前方一回転して壁を蹴る。その際、壁が凹んだことは言ってはいけない。
「はっ!」
天霧が黒炉の魔剣を陽乃に向けて振る。陽乃は半身になって躱し、そのまま天霧の手を思いっきり引っ張る。天霧は黒炉の魔剣を振った勢いのまま地面に落ちていく。
「うわっ」
ギリギリ腕立て伏せの状態で膝は付かなかったものの、陽乃に腕を蹴られ、膝をつく。
陽乃、1k
天霧、1d
そのころ、紗夜とユリスは2人で比企谷の相手をしていた。魔法を放っても銃を撃っても、舞うような動きの比企谷に全て落とされ、斬られる。
「咲き誇れ!六弁の爆焔花!」
「……バースト」
再び魔法を放ち、擲弾銃を撃つ。
「煌めき弾けろ!光玉!」
そこに陽乃が駆けつけ、光を凝縮した玉を放つ。
しかし、この場全体に広がっている比企谷の星辰力でその感覚も分かっていた。
「圧縮」
ただその一言だけでここにある星辰力全てが圧縮される。その星辰力は魔法や擲弾銃の流星闘技だけでなく、3人の動きすら止めた。
比企谷は3人に近づき、紗夜に1発、陽乃に1発、ユリスに1発撃ち込む。ポンプアクション型のショットガンのため、連発できないのだ。1回1回弾を弾倉に送り込みながら歩く。
3人は尻餅をつき、キル判定がでた。
が、比企谷は足を払われ、前に倒れ、膝をつく。
「比企谷、後ろも注意しないと」
「やらかしたなー」
天霧だ。ここに広がっていた星辰力は圧縮によって一部に移動したため、気配を殺し、足音を立てずに近づいてきた天霧に気づかなかったのだ。
比企谷、3k,1d
陽乃、1k,1d
天霧、1k,1d
ユリス、1d
紗夜、1d
「解放」
比企谷はそう言いながら立つと、走って壁近くまでいく。陽乃達3人は解放の言葉で圧縮されていた星辰力から解放された。その星辰力は再び辺り一面へ撒き散らされた。
「……バースト」
「また俺かよ!……見様見真似でいくか……」
紗夜の向けた方に比企谷は叫び、呟いた。
「……天霧辰明流剣術初伝……貮蛟龍」
わざわざ擲弾銃の流星闘技に向かって走り、剣型煌式武装で斬る。もちろん、その場で爆発したが、比企谷は自分の身に圧縮した星辰力を纏い、無傷であった。
しかし、比企谷は動揺せずとも、まわり、特に天霧と紗夜の動揺っぷりは凄まじかった。
初伝とはいえ、天霧の技をたった一度で模倣、成功させたのだから。
その動揺で紗夜は比企谷に、天霧は陽乃にキル判定をくらった。