ぼっちは六花を謳歌する。   作:すのどろ Snowdrop

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1章:再開と《光の魔王》
1話


八幡sidestart

 

『……あなたのやり方、嫌いだわ』

 

あの時の冷たい視線が俺を射抜く。

何もしなかったくせに。自分だって勝手に依頼受けたくせに。

俺を……知っているんじゃなかったのか……?

 

『人の気持ち、もっと考えてよ……』

 

何もできないくせに。何もしてこなかったくせに。自分のグループのくせに。自分の感情を優先したくせに。

ふざけんな。

お前こそ人の気持ち考えろよ。

 

『君はそういうやり方しか、知らないんだとわかっていたのに。……すまない』

 

はっ、だったらここに依頼持ってきてんじゃねーよ。どうせ三浦にも相談してなかったんだろ。

同情なんていらねぇんだよ。だったら金寄越せってんだよ。

歯が軋む音がする。

だけど……

 

『ヒキタニくん、わりぃけど、俺負けねぇから』

 

ニカッと笑った戸部の笑顔が。

 

『お礼、言っておこうと思って』

 

海老名さんの安堵したような微笑みが。

 

『八幡、辛かったらいつでも相談してね』

 

戸塚の笑顔が。

 

『ごめん、ほんとにごめん……。そんなことになるとは思わなかった……。あと、ありがとう』

 

泣きながら謝罪してくれた雪ノ下さんが。

 

『我はいつも八幡の味方であるぞ』

 

材木座のキメ顔がウザかったけど優しくて。

 

それが俺の数週間を支え。

 

 

 

でも

 

 

 

やっぱり

 

 

 

俺を

 

 

 

壊したのは

 

 

 

 

 

 

 

俺だった。

 

「これからどうしようか」

 

と言ってももう行く場所は決まっている。

アスタリスクだ。

死ぬのも手だが、アスタリスクには1度でもいいから行ってみたいしな。

 

星脈世代である俺はアスタリスクに憧れた。

でも行くきっかけが見つからなくて。

親に頼んでも聞き入れて貰えなくて。

 

「どうやって行こうかなぁ」

 

「どこに?」

 

「どこにってそりゃあ、アスタ……あ?」

 

は?

 

「ここ、いい場所だよね」

 

「誰だよお前」

 

俺は振り返らず前を向きながら問う。

 

「私はシルヴィア。シルヴィア・リューネハイム」

 

「いや誰だよ。知らねーよ」

 

「アスタリスクに行きたいの?星辰力が溢れ出てるし星脈世代ではあると思うんだけど」

 

「勝手に話進めんなよ」

 

ため息をつく。ここに来て何度目だろうか。

 

「アスタリスク、連れてってあげようか」

 

「何が目的だ」

 

嘲笑うために決まっている。

 

「気になっちゃってね。ここに来る人はほとんどが心に問題を抱えているんだよ」

 

「俺がそうだとは限らないだろ」

 

「雰囲気でわかるものだよ。だから連れてってあげる。ううん、連れていかせて」

 

「貴女にメリットがない」

 

振り向きながら答える。

 

「ヒーローは人助けをしても見返りは求めないでしょ?」

 

リューネハイムとやらはウィンクしながら言った。

 

「でもこの世にヒーローはいない」

 

「ヒーローってさ、死にたい人にとっては敵でしかない。でも助かりたい人にとっては強大な味方になる。人によってヒーローって違うんだよ。きっと貴方はヒーローになろうとしてたんだね。だから見付けられない。違うかな?」

 

「概ねあってるんじゃないんですかね。でも今の俺でも、これからの俺でもヒーローにはなれない。そして、今までの俺でも、ヒーローには、なれなかった……」

 

声が震えてくる。

 

やめろ、まだ終わってないんだ。

 

目も熱をもってきた。

 

もう、嫌なんだ。何もかもが。俺がここで死んでも……

 

「ここで死んでも悲しむ人なんていない、なんて思ってないよね?」

 

心でも読めるのか。でも貴女には関係ない。

 

「比企谷君、だよね」

 

「なんで俺の名前を知ってるんすか」

 

「幼稚園のころ、一緒だったよ。私が虐められてる時、貴方が助けてくれた。私の星辰力が暴走し始めた時に、比企谷君が比企谷君の力で私の星辰力を押さえ付けてくれた。今でも覚えてるよ。ちょこんと立ってるアホ毛とその目。変わってないね、そこは」

 

幼稚、園のころ……?

…………数分かかったが、思い出した気がする。確かにあの時の子と髪の色が似てる。

 

「シル、ヴィ……?」

 

「そうだよ、八幡君っ」

 

俺があの頃の渾名を呼ぶと、抱きついてきた。

俺は生まれた時から中学までは星辰力の扱いには長けていた。

能力で星辰力を抑えることくらい簡単だったろう。

 

俺はシルヴィの髪に手を伸ばし、そっと手を置き、前後にゆっくり動かした。

 

「ただいま、八幡君」

 

「おかえり、シルヴィ」

 

俺達は暫くの間そうやって抱き合っていた。

 

八幡sideout

 

**********************

 

小町sidestart

 

まったく、あのごみいちゃんは!

人が心配してあげてるっていうのに、何やってんだか!

結衣さんに聞いたら人の気持ちを考えずに突っ走っちゃったって!最低だよ、ごみいちゃん!

文化祭の時も女の子に罵声浴びせたんだってね!

だから駄目なんだよごみいちゃん!

 

「はぁ……」

 

帰り道は憂鬱だ。帰ったらごみいちゃんの分までご飯作らなきゃいけないとなると……。

 

「はぁ……」

 

何度もため息をつきようやく我が家に辿り着いた。

 

「ただいま」

 

ごみいちゃんの靴がない。そのうち帰ってくるでしょ。その時うんと怒ってやろう。

 

何となく、ごみいちゃんの部屋を開けた。

 

「え……」

 

何もなかった。

ベッドと勉強机だけが残されていた。

その机は電気が着いていた。

 

小町へ

俺はもうここには戻ってこない。探すな。じゃあな。

追伸*お兄ちゃんからの最後のお願いだ。奉仕部に関わるな。お前まで巻き込みたくはない。

 

どういう、こと?奉仕部に関わるなって何?私が巻き込まれるって何?わからないことだらけだ。

そうだ、携帯。

 

〜♪

 

携帯は机の中にあった。

そこに真実は書いてなかったけど、材木座?さんと戸塚さんと沙希さんと陽乃さんと電話をしていた履歴があった。メールもしていたと思うけど、その履歴も内容も完全に消されていた。

 

そして、事が明らかになったのは次の日のお昼だった。

 

小町sideout

 

 


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