GOD EATER 2 RAGE BURST ~For fellows~ 作:ゼロ・シン
少し耳にした話だと、ブラッド隊というのは普通の神機使いとは偏食因子が違うらしい。
ブラッド隊特有の必殺技のようなものがあるという。
早く使えるようになってほしいな。
私はフライアの中にある庭園に向かった。なんでも、フライアの中で最も美しい場所らしい。
エレベーターが止まり、扉が開く。
そこには多くの草花が咲きほこる、楽園のような場所が広がっていた。
「わーすごい…こんなところがあるなんて。」
私は思わず感嘆の声をもらす。
庭園の奥にある木に人影が見える。近づいて行ってみると向こうもこちらに気が付いたらしい。
「ああ…適合試験、お疲れ様。無事終わって何よりだ。」
そう声をかけてきた。
かっこいい人だなぁ。私はそう思った。
立ち尽くしている私にその男性は笑って声をかける。
「まあ座るといい。」
私はその人から少し距離を置いて座る。
よく見ると少し豪華な服装をしている。でも荘厳な雰囲気を醸し出している。
その人は言葉を続ける。
「ここはフライアの中でも、一番落ち着く場所なんだ。暇があると、ずっとここでぼーっとしている。」
確かにここは落ち着く。花のにおい、水のせせらぎ…。ここにいるだけで心が安らぐ気がする。
「いい場所ですね。」
「ああ、すごく気に入っている。」
そういえばこの人は誰なんだろう。
その心を読んだかのようにそういえば、というとその人は続ける。
「まだ名乗っていなかったな。俺は、ジュリウス・ヴィスコンティ。これからお前が配属される、極地化技術開発局『ブラッドの』
隊長を務めている。」
隊長!?
「も、申し遅れました!私、本日付でブラッドに配属されました、柊 初凪(ひいらぎはつな)と言いますっ!」
ジュリウス隊長は笑って手をかざすと言う。
「あまり恐縮しなくていい。これから、よろしく頼む。」
「は、はい!よろしくお願いします!」
隊長は立ち上がる。
「さて、休んだ後でフライアをゆっくり見て回るといい。また後で会おう。」
そういうとジュリウス隊長は庭園を後にした。
私はそのあともしばらく庭園でぼーっとしていた。そのあとに一通りの施設の確認を終わらせるとロビーに向かった。自動販売機で
回復道具や装備などをそろえる。
基礎訓練が受けられるとメールが来ていたためオペレーターのもとに向かう。
「初めまして。オペレーターのフラン=フランソワ=フランチェスカ・ド・ブルゴーニュです。」
「ふらん、ふらんそわー…?」
「フラン=フランソワ=フランチェスカ・ド・ブルゴーニュです。」
えーと…うん、長い
「…ごめんなさい」
「大丈夫です慣れていますので。」
「はぁ…」
「基礎訓練が受けられるそうですが、受注なさいますか?」
「あ、はい!受けます!」
「それでは訓練場へ向かってください。まもなく開始します。」
「わ、わかりました!」
私は神機保管庫から神機を持ってくると、訓練場に駆け込んだ。
「すみません!遅くなりました!」
「大丈夫だ。訓練を開始するぞ。」
管制室からジュリウス隊長の声が聞こえてくる。
「まずは基礎的な内容から始めよう。まず戦闘で重要なことは状況把握だ。それを怠ればアラガミに不意を突かれる可能性もある。」
「は、はい。状況把握、ですね」
「そうだ。次に高低差だ。相手によっては有効になる場合がある。覚えておけ。」
高台。訓練場にもあるよね。高いところから攻撃すれば相手には攻撃できない。そういう感じかな?
「訓練場にも二か所設置されている。登れるようにしておけ。」
「は、はい!…え?待ってくださいあれに上るんですか!?」
「そうだ。何事も経験だ。試してみるといい。」
訓練場の高台の高さ。私の身長が160センチちょっと。それの三倍以上あるって…
「これに上れだなんて…。」
私は力を振り絞って飛び上がってみる。手を伸ばし、高台のふちをつかむ。と―――
「え、嘘!?届いちゃった!」
身体も全然軽い。神機を持っているはずなのに片手でも体が持ち上げられる。
「偏食因子を投与したことによって身体能力も飛躍的に上昇している。アラガミと戦うために肉体も強化されているんだ。」
訓練場の奥に銅色の光る物体が出現する。
「訓練用のダミーアラガミだ。倒してみろ。」
「わかりました。」
データベースで勉強した。ナイトホロウ型。遠距離攻撃が多少あるけど近づいちゃえば…!
私は床をけって走り出す。目のまえにダミーが近づく。剣を振りかざし一気に振り下ろす。
何かを切る感触が両手に走る。目のまえのダミーは活動を停止した。
「やった!」
「いい動きだ。次に移るぞ」
ジュリウス隊長は続ける。
「お前の神機は銃形態(ガンフォーム)に切り替えることもできる。銃形態に変形し、ダミーを攻撃してみろ。」
私は神機を銃形態に変形させる。私の銃はショットガン特徴は―――
「突っ込む…!」
私は重心を前に持って行き、床をける。瞬時にダミーとの距離を詰めると、弾丸を発射する。ダミーから火花が散ると、行動を停止した。
ラッシュファイア。さっきも言った通り瞬時に敵との間合いを詰められる…らしい。データベースでやり方を勉強してみて、今回初めて使ってみたけど、
まだあんまし距離感つかめてないな。
ジュリウス隊長から放送が入る。
「銃形態による攻撃はOP(オラクルポイント)を消費する。残量を意識してうまく立ち回れ。」
表示されている残弾数を確認すると、残り95と表示されている。
「了解です」
「今日の訓練は以上だ。早く身につけ、戦場で活躍してくれ。」
そうだ、ここで満足してちゃいけない。目指してるのは戦場。ダミーじゃない、アラガミを倒すことだ。
「はい!ありがとうございました!」
「また明日に応用を兼ねた訓練を予定している。忘れるな」
「了解!」
私は管制室に向かって頭を下げると、訓練場を後にした。
「はぁー今日の訓練疲れたなぁ。」
私は訓練を終えてロビーにやってきた。エレベーター前のスペースに置いてあるソファに腰を掛ける。
前には大きな袋を持った女の子がパンを食べ続けている。
その女の子は私に気づくと手を振って話しかけてきた。
「あ、お疲れ様~。君もブラッドの新入生……じゃなくて、新入りの人だよね?」
女の子はパンを持ったまま続ける。
「私はナナ。ブラッドの新入りです!よろしくねー!」
「私は初凪です。よろしくね」
「私のほかにも新入りの人いたんだー。よかったぁ」
「私も同期に友達ができてよかったよ」
それにしても…さっきからこの子はパンを食べ続けている。横にある袋をよく見てみると全部パンが入っている。
「よく食べるね」
「そうかな?結構…モグこれでフツーだよ?」
パンを5個以上平らげることが普通…か。それで太らないのはいいなー。うらやましい。
「それにさ、ゴッドイーターは食べるのが仕事だからこれも仕事の一環みたいなもんですよ!……でしょ?」
そう言ってナナは袋からパンを取り出すと一口で食べてしまった。
「あ、え!?うそ…」
「?あ!そうだ!お近づきのしるしに…」
ナナは袋からパンを取り出す。
「はい、どうぞ!お母さん直伝!ナナ特製のおでんパン!すっごくおいしいから、よかったら食べてよー!」
そう言ってさっきから食べているパンを渡してくる。
「あ、ありがとう…?」
「おっと、私そろそろ訓練の時間だから!」
そう言ってナナは立ち上がる。
「行ってきまーす!」
このパン…よく見ると串が刺さってるんですけど…あの子さっき一口で…
「残したら、後で怒るからねー!」
ナナはそう言い残し訓練に向かうのであった。
さてと、私も次の準備しとかなきゃなー
おでんパン食べ終わった私は立ち上がり、ターミナルを開く。
あれ、ナナからメールが…
(さっきはありがとう!同期の人がいて、ほっとしたよー これからも一緒に頑張っていこうね!
もしおでんパンの味が恋しくなったらいつでもおすそ分けするからねー!)
「あはは…。」
最初はどうかと思ったけど食べてみると結構おいしかった。串だと思ったのはパスタでした。安心。
他にもジュリウス隊長からメールが…
(メールは不慣れなもので手短になってすまないが、今後ともよろしく頼む。)
…あの隊長、ちょっと思ったけどこういうの苦手そう。まあでも、なんかかわいいかも。
さて、
機材や消費道具の整理を終えた私はフランさんのもとに向かう。
「フランさーん!何かやることってありますか?」
「お疲れ様です。先ほどの訓練は良好な結果だったそうですね。」
「そうなんですかね?まだよくわかってなくて…」
「そのうち慣れていくと思います。準備が整ったら、次の訓練任務にどうぞ。」
「わかりました。ちなみに訓練が終わったらどうなるんですか?」
「そうですね。すべての模擬戦闘カリキュラムにおいて、十分な結果が得られればいよいよ実践にて試験運用……という流れですね。」
「そう…ですか。」
実践。もう少しで戦場に立てる。頑張らなきゃ。
「実践をこなす中で、あなたのブラッドとしての適性を判断します。」
「もし落ちたらどうなるんでしょうか…」
「……さあ。今までに見たことがないのでわかりませんね。」
フランさんちょっと辛口だなー
「…………無事、ブラッドになれるといいですね」
「え?」
「…何でもありません。訓練に向かってください」
「あ、はい、わかりました!」
私は神機を取りに行き、訓練場に向かった。
…フランさん、結構いい人?
「前回のおさらいからだ。目のまえの敵を倒せ。前回より手ごわい相手だ、油断するなよ。」
「はい!今回もよろしくお願いします!」
今回のターゲットはオウガテイルタイプ。あのタイプは…
「お母さん殺したのと同じタイプか。ダミーと言えど全力でかかるよ!!」
私はダミーに回り込むようにして接近すると背後から一気に剣を振り下ろす。
前回のようにはいかず、その尾ではじかれてしまう。それによって隙ができてしまいダミーのタックルをもろに喰らう。
「っ!」
私は数メートル吹き飛ばされ床を転がる。
「いったぁ…」
「アラガミの攻撃を避けるのが難しい時には装甲を展開して防げ」
私は装甲の展開方法を確認すると再びダミーに向かっていく。
ダミーは尾から針を飛ばしてくるが装甲で防御し、その隙の敵の懐に潜り込む。
「あたって!!」
銃形態に変形させるとゼロ距離から散弾を撃ち放った。
ダミーはその場に倒れ活動を停止した。
「自分の体力に気を付けろ。手遅れになる前に回復することを忘れるな。」
「了解です」
「実際の戦場では悠長に回復している暇はない。閃光弾(スタングレネード)を使ってアラガミに隙を作れ。」
スタングレネード。ちょっともったいない気もするけど出し惜しみして死にたくないもんね。
「ではもう一度さっきのアラガミと戦ってもらう。」
先ほどと同タイプのダミーが出現する。
「さっきの反省を生かして戦え。」
「了解。」
さっきは後ろからまっすぐ切りかかってはじかれた、なら―――
「フェイントなら!」
私はさっきと同じように回り込むと軽く剣を振る。同じようにダミーも尾ではじこうとしてくるが軽く受け流すとその反動を利用して
回転して切りつけた。当たり所がよかったのかダミーはバランスを崩し転倒する。
「神機にはもう一つ大きな特徴がある。」
「大きな特徴?」
「ああ。捕食形態(プレデターフォーム)と呼ばれる、アラガミからオラクルを奪える形態だ。」
「捕食…神機が食べるってことですか?」
「ふっ、何事も経験さ。やってみるといい。それによって自身の能力を一時的に上昇させることができる。
隙をついて捕食してみろ。バーストしてアラガミを倒せ。」
私は神機を捕食形態に変形させる。刀身が引き込まれ、代わりに制御ユニットが顔を出した。それはまさにアラガミだった。
「神機にこんなのが!」
「そのまま喰らいつけ!」
私は神機をダミーに喰らいつかせた。その瞬間、体が温かいものに包まれた。
「なにこれ…あったかい?」
「それがバースト状態というものだ。実践でも活用してみろ。
そういうと隊長はもう一体ダミーを出現させる。
「え、ちょっと隊長!?」
「実践では一対一の状況の方が珍しい。複数体の相手をできてこそ実践で活躍できるものだ。」
「そ、それはそうですけど…!」
「大丈夫。今のお前ならいけるさ。」
「あーもう!やってやりますよ!!」
私は倒れているダミーに剣を突き立てるともう一体のダミーに向かって投げつけた。
投げられた方のダミーはすでに戦闘不可能な状態にあり、もう一体はダウン中。これなら…!
銃形態に変形させ、床をけってダミーとの距離を詰める。そして、
「これで…おわり!!!」
銃口を突き付けて散弾を発射した。ダミーは活動を停止した。
「更にアラガミの屍を捕喰することでコアを回収し、素材を得ることができる。アラガミの研究や装備の強化に必要なものだ。忘れるな。」
私は再び捕喰形態に変形させると倒れたダミーを捕喰した。すると神機のコアが光り輝いた。
「これが捕喰?」
「そうだ。この捕食形態こそが俺たちがゴッドイーターと呼ばれる所以だな。」
「そうなんだ…。ところで隊長、さっきから気になってたんですけど、訓練場のところどころになんか光ってますよね?あれって何なんですか?」
「いいところに気が付いたな。捕喰のほかにも素材を入手する方法がもう一つある。フィールドに落ちている廃材だ。」
「あ、もしかして!」
「そうだ。この訓練場にも配置してある。回収してみろ。」
私は落ちている資材を手に取る。それは先ほどのダミーに使われているものと同じような金属片だった。
「これは…なんです?」
「訓練用ダミーに使われているダミー金属だ。後で整備班にでも売っておくといい。これで訓練はすべて終了だ。実践に備えてしっかり復習しておくように。」
「これで全部ですか?」
「ああ、そうだ。近いうちに実地訓練も予定している。」
「実地訓練?」
「実際の戦場に出て戦ってもらう。期待しているぞ。」
「実践…やった…!ありがとうございます!頑張ります!!」
私は管制室に一礼すると訓練場を後にした。
訓練場から戻ってきた私はエレベーター前の自販機で飲み物を買って飲んでいた。
「前から気になってたんだよね、このマスカットソーダ。結構おいしいかも。」
「あ、初凪ちゃん!訓練お疲れ様~!」
唐突に上から声が聞こえてくる。見るとナナが上から顔を出してこちらに手を振ってきていた。
私も軽く手を振り返す。ナナは階段を駆け下りてくると私の隣に腰を下ろした。
「ねえ聞いてよ~。さっきの訓練なんだけどね~」
ナナはさっき行われた訓練の内容を話し始めた。私と同じように途中からダミー二頭との戦闘になって苦労した、とかアイテム拾ったけどゴミみたいだったとか。
ナナの話を聞いているとエレベーターから一人の男の人が下りてくるのが見える。私と同じくらいの年に見える。
その人は鼻歌を歌っていたがこちらに気づくと声をかけてきた。
「……あれ?見ない顔だね、君ら。」
「こんにちは!」
ナナが立ち上がって声をかける。私も立ち上がって挨拶をした。
その人は少し考えるようなしぐさをすると何かを思いついたように指をさして言う。
「…あっ!ひょっとして噂の新人さん!?」
「はい、これからお世話になります、先輩!」
とナナが言う。
噂になってるのかな。でもまあ一応新人さんだし。
「先輩……いいね!なんかいい響き……!」
先輩は私たちの前のソファに腰を掛ける。
「よし、俺はロミオっていうんだ!先輩がなんでも教えてやるから、何でも聞いてくれ!!」
じゃあ―――
「あ、その前に言っておく!ブラッドは甘くないぞ、覚悟しておけよ!」
……少しイラっときました。そのことを悟られないように素早く質問をする。
「そういえば、ブラッドには血の力っていうのがあるんですよね?それって何なんですか?」
前から気になっていた。ほかの神機使いにはない能力、血の力。詳しいことがわからなかったので質問してみる。
「あ、それ私も知りたい!先輩、血の力ってなんですか?」
「え!?血の力……か。そうだなぁ………うーん……」
ロミオ先輩は少し驚いた様子だった。
知らなかったりして、と思ったら話し始める。
「簡単に言うと…必殺技みたいなものが使えるようになるんだ!うちの隊長なんて、すげぇカッコいい技持ってるんだぜ?」
「必殺技…」
私のつぶやきに先輩はそうそうと相槌をうつ。
「すごーい!!じゃあロミオ先輩の必殺技ってどんな感じなんですか?」
とナナがはしゃいだ様子で質問する。ロミオ先輩は少し焦った様子で話し始める。
「ば、バッカ、お前、ほら……必殺技ってのはさ、そんなすぐに手に入るもんじゃないんだよ……」
ロミオ先輩は頬を掻く。
「あ、そうだ!今みたいな質問はさ、ブラッドを設立したラケル博士にどんどん聞けばイイと思うな!じゃ、またな!!」
ロミオ先輩は足早にここから立ち去ってしまった。
……逃げた?
「あれ……質問タイム、もう終わり?なんかマズイこと聞いちゃったかなー?」
ナナの問いかけに私は苦笑し、さあ、と答えた。
今回もご覧いただきありがとうございます。ゼロ・シンです。
今回は適合試験後の主人公の動きをこんな感じに考えてるんだろうな、というのを妄想して書いた点が多々存在しています。私も実際、フライア内の庭園のような場所があったとしたら一度は行ってみたいものです。
PS毎回ご視聴くださり、と書いていたことに違和感を感じ、友人に聞いてみたところ案の定おかしかったため修正いたしました。