『君の名は。その後・続編(二次小説)』~奇跡をもう一度~「絶対に瀧君を助ける!」そこに現れたのは、、、   作:えー・あーる夢見

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第九章
第9話


 

 横転した車の運転手が、初見である事に驚く瀧。

 

 「早く!救急車を!!」

 ケータイを探す。

 

 「な、無い?!」

 ケータイが無い事に気付いて焦る瀧。

 

 「どこかに忘れてきたのか?!、、なんで今まで、無い事に気づかなかったんだ!!」

 悔しそうに、辺りを見回す。

 

 「とにかく、初見さんを。、、」

 

 横転した時に、シートベルトで体が固定され、助手席が下になる形だったお陰で、頭を打ったり、流血などの傷も無さそうだ。

 幸い、ガラスも、運転席側と、フロントは割れていなかった。

 

すぐに初見の身体を、車から引きずり出して、少し離れた場所に、自分の上着を敷いて寝かせた。

 息はしているが、気絶しているようで、目を開かない。

 

 「そうだ!初見さんのケータイで、、」と、探し始める瀧。

 

 すると、前方から、聞き慣れた声がする。

 

 「瀧くーん!」

 

 「み、三葉?!」

 

三葉が息を切らせながら、走って来たのだ。

 

 「三葉!なんでここに?!」

 混乱した表情で、その方向を見る瀧。

 

 三葉が泣きながら駆け寄る。

 

 「瀧君!、、」

 その先を言おうとした時、、

 

ゴゴゴゴ、、、、!!!

 

 

 と、地震が起こった!

 

 瀧は、三葉を抱き締めてしゃがんだ。

 

 地震がおさまった。

 

 三葉が瀧の腕の中で、ブルブルと震え始めた。

 

 「ま、、まに、間に合ったんや、、。」

 

 「三葉、、」

 

 「生きてる!瀧君、生きてる!!」

 

 三葉は、泣きじゃくりながら、瀧の胸に顔を埋めた。瀧は、まだ戸惑いが抜けきれない。

 

しかし、三葉はすぐに我に返った。

 

 「りん君!」

 「りん君?」

 「りん君は?!、、は、初見さんは?」

 

 三葉が、少し離れた所で瀧の上着の上に横たわる、初見を見つけて駆け寄った。

 

 「無事なの?」

 「早く、三葉のケータイを貸して!救急車を呼ぶから。」

 

 「りん君!りん君!」

必死に呼びかける三葉。 その声に、少しだけ反応して、、

 「父さん、、」と、三葉には聞こえない位に小さな声を出した初見だが、まだ気がつかない、、。

 

 三葉は、初見が自分を置いて、一人で行った時の事を思い出した。

 

 三つ葉は、初見がその時から、何らかの無茶な行動で、瀧の車を止めるつもりだったのだ、、と分かった。

 

 そして、立ち上がろうとした途端、瀧が助かった安堵と、初見の姿に対するショックとで、そのまま倒れ込んでしまった。

 

 瀧の腕に抱き止められた事と、遠くから聞こえてくる救急車のサイレンの音を、うっすらと感じながら、、、。

 

 

 真っ暗闇の中に、瀧の声だけが聞こえる、、

 

 ここは、とある病院のベッドだ。

 

 「三葉!三葉!」

 三葉の手を握り、瀧が名前を呼び続けている。

 

 、、この世に、これ程まで自分を安心させてくれる声と、温かく、大きな手があるのか、、

 

 そんな声と、手の感触を実感しながら、三葉がゆっくりと、目を開けた。

 

 「三葉! 気がついたか?」

 

、、瀧君だ!本当に、瀧君だ! 生きてる! 目の前にいる!、、、

 

 三葉は、体を起こすなり、枕元で、イスに座っていた瀧に抱きついて、

 「良かった! 良かった!」

 と、泣きながら何度も言った。

 

 

 「お、おい三葉、、そんなに泣いたら、俺の肩が、ぐちょぐちょになっちゃうよ。、、

 それに、何? 山で会ってからずっと、俺の事、『生きてて良かった』って、、?

 しかも、なんで、あんな場所に来ていたの?」

 

 瀧に話しかけられて、落ち着きを取り戻した三葉が、 瀧の目を見ながらゆっくりと話し始めた。

 

 「瀧君、信じられへんかもしらんけど、私、また、時間を超えたんだと思うんよ。 さかのぼったの。

 

 今回は、入れ替わりは無かったんやけど、昨日の夜から、もう一度、その日の朝に戻って、一日をやり直したんよ。

 、、、それで、運命が変わった、今があるんよ。」

 

 三葉はまた、涙をぬぐい始めた。

 

 瀧は、三葉の肩に手を添えて、背中をさすりながら、

 

 「、、で、変わらなかった場合の運命って、俺、死んでたんだね。

 あの地震の時に通るはずだった、あの先にあるトンネルで、、」

 

 「どうして、その事を?」

 

 「三葉がここで眠っている間に、一緒に現地で合うはずだった人から聞いたんだ。

 

 あの時の地震で、ちょうど、俺が通りかかっているはずのトンネルの真上の岩盤が崩れて、、

 直撃を受けたか、崩れたトンネルの屋根に押し潰される大事故に、巻き込まれていたそうだ。」

 瀧の表情が冷めて行く、、

 

 「、、あの手前で、初見さんの車が横転してなかったら、、今頃、、俺の後から、同じトンネルに向かった車も一緒に、、。でも、あんな無茶、、三葉が計画した事なのか?」

 

 「あ!、、りん君はどうなったの?!」

 三葉が焦って聞いた。

 

 「初見さんね、今はまだ安静で、面会は出来ないけど、でも奇跡的に、かすり傷程度で、少しずつ、気がついて来ているみたいだよ。」

 

 「良かった、、本当に良かった、、。

 りん君がね、昨日の朝早くに、うちへ来たの。

 瀧君が行く場所に、地震の予兆が出たけど、どうしても瀧君に連絡が取れないから、危険を知らせに行こう、、て、連れて行ってくれたんよ。それに、、」

 他にも、初見に世話になった話を、瀧に聞かせようとも思ったのだが、、

 

 「でも、先生の話だと、この事故の事や、三葉と一緒に来た事とか、殆ど覚えてないみたいだよ。」

 

 「え?!」、、でも確かに、、

 

 三葉は心配したが、覚えているかどうか?はともかく、とにかく無事で良かった、、と心から安心した。

 

 そして、瀧に言わなければならない事があるのを思い出した。

 

 

 「瀧君、あのね、、」

  頬が桜色に染まった。

 

 「赤ちゃん、、できたんよ。」

 

 顔を上げた三葉の瞳を、まじまじと見つめて、一瞬、ポカンとした瀧。

 

 「えっ?!」

 

 「瀧君。お父さんになるんよ!」

 

 瀧は、まだ言葉が出ずに、三葉を見つめたまま、、その目から、涙が一筋、ツーッとこぼれ落ちた。

 息をするのも忘れているかのような、沈黙から一転、、

 

 「やったぁー! 三葉、やったぁー!!」

 

 瀧は、両手の拳をグッと握り、頭を上下に何回も振り、まるで、物凄く大きなくじ引きの、大当たりでも獲得したのか、、と、思わせる程の、力のこもった喜びを、三葉に見せた。

  この病室が個室で良かった、、。

 そんな風に思う三葉を、思い切り抱き締めた。

 

 「ありがとう、三葉、俺を父親にしてくれて、、」

 瀧が三葉の耳元で言った。

 

 その感謝の伝わる温かさ、抱き締めてくれる力強さから、瀧がこのニュースを、心から喜んでくれているのだ、、と感じられて、三葉は幸せだった。

 

 「それを言うなら、私だって、、」

 

 三葉が自分を抱き締めている瀧の腕を降ろし、その手を両手で包み込む様に握った。

 

 「ありがとう。お母さんにしてくれて、、。」

 三葉の頬にも、涙が伝う。

 

 瀧の優しい声で、

 「元気な赤ちゃん、迎えようね、、。」

 

(場面は暗転する、、。

~10カ月後~ の文字が出る)

 

 、、そして、季節が移り変わり、冬の空に、寒さを打ち消す様な、元気な赤ちゃんの産声が響く、、。

 


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