『君の名は。その後・続編(二次小説)』~奇跡をもう一度~「絶対に瀧君を助ける!」そこに現れたのは、、、 作:えー・あーる夢見
第5話
「立花三葉さーん。」
看護師の呼ぶ声に、ハッと我に返った三葉。
その胸元には、あの『彗星のリング』にチェーンを通したペンダントが光っていた、、。
「目まいの原因は、疲れとストレス。、、あと、もしかしたら、、妊娠されている可能性がありますね。」
、、、1週間後に再度、この病院の産婦人科へ行く事になった三葉。
薬局で待っている間、跳び上がりたい気持ちだった。
すぐに瀧に伝えようと思っていたが、思いとどまった。
「1週間後の検査の結果を待とう。 もしも、違っていたら?、、」
会いたい存在に会えなくなってしまう悲しさ、、三葉の心に、そんな想いが横切った。
「、、今日の結果は、疲れからのストレスだった。 と、瀧君には言っておこう。」
自分に言い聞かせる。更に、、
「あ、でも確か、来週は、瀧君が出張やわ。
もしも、嬉しいニュースだったとしても、直接、合って話せないんやね。、、、まぁええやろ、ケータイのテレビ電話でも。
瀧君、嬉しくて、きっと飛んで帰って来るやさ、、。」
そんな風に考えながら、何よりも自分が一番、ドキドキしながら1週間を過ごす三葉だった。
「もう少し、長めの上着も、持った方がええんちゃう?」
春だと言うのに、気温の変化が激しく、肌寒い日もある4月だった。
瀧の出張の準備を手伝う三葉。
手伝う、、とは言っても、瀧は、独り暮らしで自分の事をするのは慣れているので、三葉が横で、お節介をやいている様なものだ。
「そうだね。前日に立ち寄る取引先が用意してくれたホテルは、山の中だから寒いみたいだし。
しかも、そのホテルは、調査現場からは車で2時間くらいかかる所なんだって。もう少し近い所に、ホテルを取ってくれたら良かったんだけど。」
「ここから新幹線と車で、直接行くだけの仕事やったら、日帰りでも帰って来れたのになぁ。」
ちょっと不服げな三葉。
「まだ周りも、建設中の山道が多くて、完全に舗装されていない道を避けて、遠回りしないとならない場所も、何カ所かあるらしい。」
「お料理の美味しいホテ
ルだとええね。山の幸!」
「おい、旅行じゃないんだから。
、、でも、何か名物とかあったら買ってくるよ。お土産、どんなのが良い?」
「お菓子がええな。一個ずつ包装されてるの。その方が長く楽しめるやろ。」
三葉は、お土産のお菓子を食べながら、嬉しいニュースを喜んで興奮する瀧の顔を想像した。
「、、どうか、良い結果が出ますように。、、」
「え?何か言った?」
「別になんも。無事に帰って来てね。」
「最近は、地震も収まっている様だし、現場には初見さんも合流する予定だから心配ないよ。留守は気をつけてね。」
、、、翌朝、早くに瀧は出かけた。
瀧を送り出したあと、三葉は、結婚写真の隣に置いてある写真立ての中の、一葉お婆ちゃんに手を合わせた。
「瀧君に、赤ちゃんの報告が出来ます様に。」
そう願って、病院へと急いだ。
今度は大学病院の『産婦人科』の前にいる三葉。
お腹の大きな妊婦さんと一緒に座っているリアリティーが、ドキドキする気持ちをあおった。
「私も、仲間になれるんやろか、、」
、、、「立花さん、おめでとうございます! 5週目です。」
5週目、、がどれ程の事なのか?まだ専門用語にはピンと来なかった三葉。
だが、「おめでとうございます。」と言われた事に、目の前がパーッと明るくなるのを感じた。
出産までに必要な書類や、説明を受け、産婦人科を後にする三葉。
早速、予定通り、すぐに瀧に報告しようと思ったが、また考えた。
「瀧君に報告するのは、明日、仕事が終わって、こっちへ向かっている帰りの時間帯にしよう。
浮かれた気分で、走り慣れない山道の運転とか、危ないやろうし、お楽しみは、後に持って行った方がええよね、、。」
こんな時は、瀧より3歳、年上で、2人姉妹の長女でもある三葉の、しっかりした部分が見える。
「明日の夕方から夜なら、瀧君も、帰りの新幹線に乗ってる頃やろね。」
三葉は、帰り道、「ふふふっ」とニヤケてしまう自分の顔を、普通に保ちながら歩いていた。