『君の名は。その後・続編(二次小説)』~奇跡をもう一度~「絶対に瀧君を助ける!」そこに現れたのは、、、 作:えー・あーる夢見
第12話
、、(※小さなBGMで、『なんでもないや』の「もう少しだけでいい」、、から始まる方の曲が流れます、、)
、、、この手紙を読んでいる時、どうか、あなたが、元気でいてくれますように。
瀧さん、初見さんと共に、、それが一番の願いです。
三葉さんには、少し話しましたよね?
僕は、生まれる前に、、母のお腹の中にいる時に、父を事故で亡くしました。
でも、本当は、この話は、初見さんの生い立ちではありません。
初見さんの体をお借りしている、この僕、『りん』の事なのです。
、、、とにかく、まずは話を、聞いて下さい。、、
読んでいる瀧も、聞いている三葉も、一瞬、目を見合わせたが、、すぐに続けた。、、
(※ここからは、読み手の声が、瀧から、20代の青年の『りん』へと変わります。
場面も、りんと、その母親との回想シーンが流れます。
小さかった、りんを見守りながら、父親の死の悲しみを乗り越えながらも、明るく振る舞う母親。
2人で力強く、深い絆で結ばれながら生きてきた様子が、手紙の内容と共に、映し出されて行きます。、、)
、、、それでも母は、いつも幸せそうに、父との思い出を、僕に話してくれました。
母は、父を、心から愛していました。
でも、年に1度だけ、父の命日に、車で事故現場の近くまで行き、手を合わせる時だけは、泣いていました。
そして、いつも言うのです。
「私が、あなたのお父さんを助けられなかった。
私は助けてもらったのに、、。」
子供の頃は、その意味を、特に聞く事はありませんでした。
僕が高校生になった時に、母は、今までに話した事のない話をしてくれました。
とても不思議で、誰も信じられない様な話だから、誰にも話した事がない、、と話し始めてくれました。
、、母が、高校生の時に、同じく、高校生の時の父と、体の中身だけが、入れ替わる体験をしたのだ、、と。、、
瀧の読む声が止まった。
三葉も、息を飲んだ。
2人とも何も言えず、一瞬、視線を交わして、すぐにまた、瀧は、続きを読んだ。
、、、父と母は、同じ年の、高校生ではありましたが、、不思議な事に、父の方だけが、母が生きている時間よりも、3年、先の世界にいました。
だから父は、母が住んでいた村が、入れ替わった頃から、その後に、彗星の落下、衝突によって、消滅してしまう事を知りました。
どうしても、母の事を助けたかった父は、奇跡的に、もう一度だけ、彗星が衝突する前、、つまり、まだ生きている母との入れ替わりに成功して、村の皆を避難させ、母と母の家族と、村の殆どの人達は、運命が変わり、助かったのだ、、と、語ってくれました。
僕は、あまりに良く出来たSF小説の様で、最初は、信じられませんでしたが、普段、こんな話はしない母が、真剣な目で話すのを見て、信じました。
父の事故後、母は、 自分も何とか、事故に合う前の父の体と入れ替わり、事故を食い止めたい、、と願い続けていました。
父が、最後に奇跡の入れ替わりを願い、それが叶った、『神社の御神体のほこら』に、僕を連れて行ってくれた事もありました。
そして、父がしたのと同じく、祈ったけれども、何も起こらなかった、、。
だから、母が泣くときは、哀しみの他に、悔しさの涙も流していたのです。
そんな母を見るうちに、成長した僕は、
今度は自分が、その奇跡で、父を助けたい!、、と、思うようになりました。
なぜ、初見さんと入れ替わったのか、、
初見さんとは、父の会社時代からの付き合いでした。
父が亡くなってからも、初見さんは、僕と母を、まるで身内のように良く心にかけて下さいました。
地質学などの分野に興味を持った僕は、高校生の時から、将来、初見さんの様な仕事がやりたい。 と思うようになり、 しょっちゅう、初見さんの仕事を見せてもらったり、手伝ったり、、時には、出張にも動向させてもらいました。
だから、、もしも、本当に入れ替わりの奇跡が起こせるのなら、初見さんになりたい、、。
初見さんになれれば、母も、 そして父も、疑うことなく、初見さんの言葉を信じてくれて、あの日、あの場所へ行く事を、食い止める事が出来るかもしれない、、、
そんな計画を立てて、僕は、あの『ほこら』へ向かい、中へと入り、願ったのです。
一瞬、目まいを感じたところまでは、覚えていましたが、、
目覚めると、初見さんの体になっていました。
日付は、あの事故の日の早朝。
夢か?現実か?ハッキリしないまま、とにかく、瀧さんのケータイに電話を入れましたが、繋がりませんでした。
すぐに、初見さんのケータイや、スケジュールなどを調べて、その日が瀧さんが事故に合う日であることが、わかりました。
すぐに、自分が生まれ育ったマンションへ急ぎ、母に話をして、、一緒に始発の新幹線に乗りました。
僕が、一人で行く手もあったけど、母に行かせてあげたかった。
それから後は、、
僕は、父さんを助ける為なら、どんな無茶でもするつもりです。
初見さんの体を借りているのに、、
本当に身勝手だと思います。
でも、どうしても、父を助けたい。
三葉さん、いや、母さん。
無事ですか?
父さんは? 初見さんはどうなりましたか?
皆さんが、とにかく今、元気でいてくれる事を、なによりも願っています。
そして、母さん。
どうか僕を、産んで下さい。
今度は、父さんも一緒の思い出を、たくさん作って下さい。
最後に一つだけ、ワガママなお願いを聞いて下さい。
三葉は、大粒の涙を流し続けている。
瀧も、泣きながら、読み続ける。
、、、出来れば、今度は、僕に弟か、妹を、、。
母さん、たくさんの愛をありがとう。
父さん、すごく会いたいです。、、