『君の名は。その後・続編(二次小説)』~奇跡をもう一度~「絶対に瀧君を助ける!」そこに現れたのは、、、   作:えー・あーる夢見

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第十章
第10話


 

 「お疲れ様、三葉、ありがとう。」

 ベッドに寝かされたまま、分娩室から病室に戻ってきた三葉。 すぐに起き上がり、出産の大変さはまるで無いみたいに見えた。

 

 瀧が、三葉の頭をポンポンと撫でながら、優しく微笑みかける。

 2人は病室で、赤ちゃんが来るのを待っている。

 

 「出産って、思っとったより、全然楽やったわ~。 スルッと出て来た感じ。 テレビドラマで見てたんと、違かったわ。」

 

 「とにかく、母子共に健康で、良かったよ。

 この病院は、父親の立ち合いをやらない方針だから、この部屋で待っている時間が長かった-。」

 

 「聞いたら、立ち合いの途中で、血を見て倒れちゃうお父さんがいるらしいんよ。それで、立ち合いをやめているんやて。

 以外と瀧君も、倒れるんちゃう?」

 三葉が笑った。 その笑顔を見て、瀧もやっと、ホッとした。

 

 

 

 「赤ちゃん、足型を取ったら、部屋に連れて来てくれるんやて。」

 

 「早く抱きたくて、たまらないよ。」

 

 「もう、聞いてるよね?元気な男の子やったよ。

 名前は、2人で赤ちゃんの顔を見てから決めよう、、って言ってたよね?

私、まだ思いついてないんよ。 瀧君に似て、優しいイケメンになって欲しいなぁ。」

 

 「三葉に似て、温かい人になって欲しいな。あ、少しとぼけた所も似ちゃったりして、、ははは。」

 

 「あー、瀧君てば!」

 2人は笑いあった。

 

 「あ、そう言えばさ、、」

 瀧が、思い出したように言った。

 

 「頼まれていた着替えなんだけど、、

 退院する時に、何か羽織れる上着って。

三葉のクローゼットを探したんだけど、上手く選べなくて、取りあえず、奥の方に掛かっているヤツなら、会社に着て行く事は無いと思って、、。これ、持って来てみたよ。」

 紙袋から、瀧が取り出した上着は、三葉が初見と、瀧を助けに行った 『あの時』 に着ていた物だった。

 瀧は、もちろん、三葉も、それを忘れていた。

 

 「それでさ、これを出した時に、内ポケットからこんな物が落ちて、、」

 瀧が、小さく畳まれた封筒を差し出した。

 

 「『三葉さんへ、、りん』って書いてあるから、、もちろん、開けたりしてないよ。、、 とにかく見てみて、、」

 

 「りん君から? 何やろ?」

 

 三葉が手紙を受け取り、開けようとした時に、病室のドアがノックされて、

 赤ちゃんが運ばれて来た!

 三葉は、手紙を無意識に枕元に置き、 「来た!!」

 と目を見開いて、ドアが開く様子を見た。

 瀧も同じ目で見ていた。

 

 看護師さんの腕に抱かれ、真っ白なおくるみに包まれて眠る赤ちゃんが、 そーっと、三葉に手渡された。

 「おめでとうございます。さあ、ママに抱っこしてもらおうね。パパも来てくれたよ、、。」

 

 『ママ』『パパ』と、初呼ばれて、感激と同時にドキドキする瀧と三葉。

 

 「、、なんて綺麗な、透き通るピンク色の肌、、いい匂い、、かわいい匂い。 かわいい感触、、」

 

 赤ちゃんの、全てが愛しい、、。そんな気持ちで、腕に抱いた我が子を、真っ直ぐに見つめる三葉。

 

 その姿が、 全く化粧をしていないにも関わらず、

 「本当に綺麗だ、、。」

 と、心の中で感動して、瀧は、見とれてしまった。

 

 「ほら、パパも、抱っこしてあげて!」

 

 瀧の腕に手渡された、小さな重み、、、。

 でも、初めて感じたズーンと響く重さ、、。

 

 そして、全てを自分に委ね、信頼しきってくれている、その寝顔に、瀧の目に涙が溢れてきた。

 

 「す、、凄い。」

 

 三葉が、瀧の涙をタオルで拭いながら、、

 

 「ほんま、、凄いやろ?

 この、たった一瞬で、 この子の為なら命をかけられる! 絶対に、幸せにしたい!!って思わせるオーラを、赤ちゃんって、持っとるんよね、、。」

 

 2人が赤ちゃんに見とれている最中、三葉のケータイが鳴った。

 この着信音は、、 三葉の父からだ!

 

 応答するなり、父は、、

 

 「三葉か?! 父さんだ! 産まれたのか?! どうなんだ? 男か?!

女か?!」 、、かなり興奮しているのが、声を聞いただけで分かった。

 

 「ほら、お父さん落ち着いて、、今、顔を見せるから、、元気な男の子やよ。」

 

 三葉がテレビ電話に切り替えて、瀧に抱かれている赤ちゃんを、アップで映した。

 こんな騒がしい中でも、スヤスヤと良く眠っている、、。

 

 父は、画面の向こうで涙ぐみながら、、

 

 「なんてしっかりとした眉毛と、キリリとした目元! 鼻筋も良い!!

 きっと、この子は、真っ直ぐに、凜とした人生を歩む立派な男になるに違いない!!」

 

 、、と、息を荒らげて言った。

 

 


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