鬼巫女に憑依する幻想郷ライフ   作:寿司三昧

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おもに幻想郷、主人公の働き口についてです。

鬼巫女と霊夢の区別をつけるために髪の色を茶髪にしています。


働き口が見つかりました。

 

寺子屋の授業が終わったようだ。

子供たちが次々と門から出てくるなか、

少し変わったものを被っている身長が少し低い女性が出てきた。

彼女は白い中に少し青が混ざった髪の毛をしており、他の人達とは違う感じがした。

恐らく件の慧音先生であろう。

 

子供たちが全員帰ったことを確認したときに、こちらに気付いたようで近付いてくる。

 

「こんにちは。」

 

「あ、こんにちは。貴方が慧音先生ですか?」

 

挨拶を返し、本人確認をとる。

彼女は此方をまじまじと見ると

 

「外来人の方ですね?貴方は?」

 

と言われた。

ここで初めての自己紹介だ。

正直、鬼巫女の本名は知らない。

恐らく博麗 霊夢なのだろうが、

それを名乗ると後々主人公たちと鉢合ったときに問題が起きそうだ。

鬼巫女 …と名乗っても怪しまれそうだ。

かといって男の時の名前も…

 

待たせると悪いと焦って咄嗟に"霊夢"と言ってしまった。

 

「霊夢…さんですか。宜しくお願いします。自己紹介もしましたし、どういったご用でしょうか?」

 

霊夢になってしまった。しかしまだ希望はある。

漢字を変えれば良いのだ

取り合えず用を伝える。

待っている間に考えた用件は三つ。

 

幻想郷とはどういった所なのか、

ここに居住することは可能か、

最後は働き口だ。

 

ひとつ目は基本として、人が住んでいる所に居たいということと、現在無一文ということで下二つを考えた。

 

「ふむ…まず幻想郷についてですが…」

 

曰く、妖怪、神といった現代では忘れられたものが住み、博麗大結界によって外と隔てられているらしい。

更に魔力、神通力等も存在するらしい。

 

本当に名前の通り、ファンタジーだった。

神も居るとなると、鬼巫女でも生き抜くのは難しいかもしれない。

 

「居住については可能ですが、郊外に近いところになりますよ?働くといっても…何処も事足りてると思いますが…」

 

働き口は無さそうだが、家はありそうだ。

これで人里に来るために森を抜けなくてよくなる。

あの家には特に何もなかったし引っ越しも必要ないな。

 

働き口について、本当に何もないのか粘ってみる。

先生は考え込み、ハッと何かを思い出したようだ。

 

「そういえば甘味処の店主がもう歳で人がほしいと仰っていましたね。」

 

どうやら俺は甘味処とやらで働くことになりそうだ。

 

 

 

 

自宅になるであろう場所を確認し、慧音先生もとい、

上白沢 慧音さんに甘味処の場所を教えてもらった。

 

自宅は思ったより広かった。

何故誰も住んでいないのか聞いてみると、

何と前に住んでいた人は里に妖怪が来たときに美味しくいただかれたらしい。

妖怪が来るとき、真っ先に襲われるのが郊外近いここであり、大変危険らしい。

どうりで誰も住もうとしないわけである。

 

まぁ、人里に住めるだけマシと考えるべきか。

 

 

 

 

甘味処は里の中心からそう離れてはいないらしい。

そこの店主はかなりの歳の老婆であり、

息子はここを継がない、だから自分が生きている間はまだやるつもりらしい。

人員募集の理由は、ひとりで回せなくなったから。

接客を頼みたいらしい。

 

基本的に注文を聞き、伝えるだけの簡単なお仕事。

早速仕事を覚えようと張り切りながらやり方を聞こうとする。

しかし、慧音さんに止められる。

 

「どうしました?これからお仕事を覚えにゃならんのです。」

 

「貴方…そんな格好でやるつもりなんですか?」

 

そう言われて、自分の格好を見る。

成る程、これはない。

今まで忘れていた。

自分が血濡れの巫女服(脇が出てる)を着ていたことを。

 

「…これしか、着るものが無かったもので。」

 

そう言うと、慧音さんは

 

「そういえば、その血はどうしたんだ…?」

 

と少し恐ろしい顔になって聞いてきた。

丁寧な言葉から一転した口調で。

 

取り合えず、門番に言ったことに付け足して

妖怪に襲われたから反撃したときに付いた血だ、と言っておく。お祓い棒を見せることも忘れない。

 

慧音さんは

 

「そうだったんですか…。自衛出来るなら心配はいりませんね。…それで本当に替えが無いんですか?」

 

後半は信じられないといった感じだった。

仕方ないじゃない。本当に無いんだから。

 

店主のお婆さんが割烹着を貸してくれた。

巫女服とはしばしお別れである。

割烹着を着た俺を見て、

 

「もう少し…着るものに気を使ったらいいのでは?」

 

慧音さんからの一言。

 

「おr…私は服装とかは割とどうでも良かったんで…」

 

俺…と言ってしまった。

今は女なので俺はちょっと違和感がある。

慣れるようにしなければ。

 

暫く慧音さんとお婆さんに教えてもらったりしながら仕事を覚えていた。

 

「それじゃ…宜しくお願いしますね。」

 

慧音さんが帰ったあとお婆さんにそう言われ、

客を待つことにした。

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

射命丸 文。

妖怪の山に住む鴉天狗で新聞屋をやっている妖怪である。

 

鴉天狗は主に報道を担当としている。

現在彼女は、自身が出版する「文々。新聞」のネタ探しを行っている。

彼女の新聞の内容は人里を含めたかなり幅広いもので、

今回も人里上空で里を見渡している。

 

「…ふぅむ、人里で何かありそうな感じがしたのですが。」

 

数十分前、突然自分の第六感らしきものが人里へ向かえと囁いたので来てみたは良いが…。

今回は外れなようだ。

 

「大会まではまだ猶予がありますし、また後日としましょうかね。」

 

最近は吸血鬼騒動以降、特になにも起きていない。

裏のとれないことは記事にしないポリシーなので、デタラメは書くつもりはない。

別の所で移動しようとした時、ふとあるものが目に入った。

 

それは二人の女性。ひとりは上白沢慧音。人里ではよく知れた人物。

文が注目したのはもうひとりの女性だ。

 

「あれは…神社の博麗の巫女…?いや、それにしては…。」

 

その女性は博麗の巫女に瓜二つであったのだ。

血縁者…というわけでもないだろう。

本人かとも思ったが、

 

「いや…瞳の色が違う。それに髪の色も黒ではない…

妖怪が化けている訳でもないでしょうし。…これは調べてみる必要がありそうですね。」

 

そうして私は、甘味処の前に立っている者の前に降り立つことにした。

 

 

◇◇◇

 

 

 

客に対して、上手く対応はできていると思う。

あとお婆さんに笑顔の方がいいと言われて、営業スマイル擬きで頑張ってはいるが笑えているか不安だ。

基本的に客は人間だが、極稀に妖怪が混ざっていたりする。

 

「妖怪にも人間みたいな姿をしてるやつが居るんだな。」

 

妖怪といえば本でよく見る姿だと思っていたが、実際にはそれは下級位の妖怪で上になると殆んど人型らしい。

因みに慧音さんも半獣らしい。聞いたときは驚いた。

現在時間は夕刻。客足も途絶えてきた。

お婆さんも片付けを始めているので、あと少しらしい。

それまで頑張って笑顔を絶やさないようにする。

 

ふと視線を感じたので空を見上げる。

…人が浮いていた。

人って浮けるんだなぁ。

そんな現実逃避をする。恐らくあれも妖怪なのだろう。

だってよく見ると羽が生えてるし。

鬼巫女の視力で見ていると大体容姿がわかった。

 

黒髪、赤い瞳に赤い帽子を被っている。

服装は比較的シンプル。巫女服とは大違いである。

高い下駄らしきものを履いているので、イメージ的には天狗。どうやら鼻は長くない模様。

 

そんな天狗さんはこちらをずっと見ている。

ちょっと恐ろしいので、目をそらす。

すると丁度、慧音さんがやってくる。

 

「仕事はちゃんとこなせそうですか?」

 

どうやら見に来てくれたようだ。

これで暫くは天狗さんを意識からはずせそうである。

 

「慧音さん!仕事はやっていけそうです。仕事紹介もですが、住む許可まで下さってありがとうございます。」

 

「いえいえ、いいですよ。でも本当に宜しかったので?彼処を勧めたのは私ですが…その…」

 

「大丈夫ですよ。こう見えて結構力には自信ありますから。」

 

体が鬼巫女だからこんなことが言えるが、元の体なら無理な自信がある。

鬼巫女万々歳だ。

 

このまま慧音さんと話してそのまま帰りたい。

あの天狗さんはまだ居るのだろうか。

そう思い、空を見上げる。

慧音さんも釣られて見上げる。

 

しかし天狗さんはいなくなっていた。

安心した。

しかしあの天狗さんはなんだったのだろう。

そう思った時だった。

 

 

 

「どうしました?空なんか見上げて。」

 

 

 

そんな声が聞こえたのは。

 

 

 

 


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