・この動画は東方Projectの二次創作小説です。
・原作と異なる設定があります。
・本作品はシリーズものです。順番にお読みください。
こんにちは、SparklingLeafです。ハーメルンでは「はじめまして」ですね。いつもはpixivやniconicoで活動している者です(詳しくは私のプロフィールをご覧ください)。よろしくお願いします。
今回ハーメルンに投稿させていただくのは、『紅い月が輝く夜に』の小説版です。並行してMMD動画版をniconico動画とYouTubeに投稿させていただきますので、興味があればご覧ください(合わせてご覧いただくと、話の内容が理解しやすいかと思います)。
【niconico動画】
→http://www.nicovideo.jp/watch/sm31124324
【YouTube】
→https://youtu.be/UcKpWuzkQSs
さて、物語の舞台は紅魔館、主人公は咲夜さんです。吸血鬼のお嬢様に仕える人間から見た妖怪たちの生活を描かせていただきます。
今回はプロローグということで、かなり少ない文字数となってしまいました。次回からは数章まとめて投稿するので、文字数は増えます。今回はご了承ください。
また、気になる点などあればお知らせください。ネタバレにならない範囲で、出来るだけ答えようと思います(ただし、ひどい誹謗中傷などの場合はお答えいたしません)。
それでは――紅魔館へ、ようこそ。
幻想郷を、赤い光線が照らし始めた。里では静かに雪が舞い、冷たい風が吹き抜けていく。木々は葉の落ちた枝を躍らせ、人間たちはいつも通りに活動を開始しようとしていた。
それとは逆に、霧が覆い始めた湖の畔にたたずむ紅い館では、少女が今にも眠ろうとしていた。館の主であるその少女は背中の黒い羽をゆったりと動かし、青い髪を揺らしながら、自分の寝室に向かって歩いていく。その途中、少女は最も信用している従者を見つけた。従者は主の姿を捉えると深々と頭を下げた。
「おはようございます、お嬢様」
「おはよう、
少女が眠そうな声で咲夜に笑いかける。咲夜は一瞬、戸惑うような表情を浮かべた。
「また一晩中仕事をなさっていたのですか?」
「ええ、今はまとめの時期だもの。どうしても仕事がたまってしまうのよ」
「でも……お嬢様も、せっかく人間たちの生活に慣れてきたところでしたのに」
これを聞いて、少女も残念そうな顔をした。
「そうね、ようやく昼の生活にも慣れて、彼女たちと遊べると思っていたから残念だわ……。でも、きっと吸血鬼にはこの生活が合っているのよ。わざわざ変えなくてもいいのかもしれないわ」
そういうと、少女は微笑んで言葉を継いだ。
「さ、もう私は眠るわ。また夕方ね」
「はい。おやすみなさいませ、レミリアお嬢様」
咲夜が再び頭を下げると、主レミリアはまたゆっくりと歩きだした。
レミリアが寝室に入るのを見届けると、咲夜は館の門に向った。先程まで舞っていた雪は止んでいるが、風は相変わらず冷たく吹いている。咲夜が震えを抑えながら門を開けると、横にはチャイナドレス姿の女性が立っていた。女性は咲夜に気がついて軽く会釈をする。
「おはようございます、咲夜さん。お早いですね」
風の冷たさを気にしない様子の女性を、咲夜は羨ましく思いつつ、挨拶を返す。
「おはよう
「私はこれでも門番ですから」
美鈴の言葉に、咲夜は呆れてしまった。
「それを言うなら、私はメイド長だもの。本当はあなたよりも早く起きなきゃいけないのよ」
「そういうもんですかねぇ……」
美鈴がうなっているのを見て、咲夜はフッと笑った。
「まあ、なんでも良いわよ。それじゃ、今日も門番よろしくね。役立たずの妖精メイドよりひどくない程度の働きであれば、なんでも良いわ」
「はい、おまかせください!……え、ちょっと咲夜さん?もうちょっと期待してくれても良いんじゃ……」
少し肩を落とす美鈴に背を向け、咲夜は楽しそうな表情を浮かべながら館に戻っていった。
館に入ろうとした咲夜の上から、ふいに声が聞こえた。
「あ、咲夜。おーい!」
咲夜が見上げると、バルコニーから手を振る少女の姿があった。キラキラと輝く虹色の羽に負けないくらい明るく、眩しい笑顔に、咲夜は思わず目を細めた。
「妹様……?おはようございます」
「うん、おはよー!」
レミリアの妹はえいっと声を出しながら、バルコニーから咲夜の前に飛び降りる。咲夜は不思議に感じながら、少女に言った。
「お嬢様はまた昔の生活リズムに戻ってしまわれたのに、妹様はお元気ですね」
それを聞いて、少女はがっかりしたように顔をしかめた。
「そっか、お姉様、元に戻っちゃったんだ……」
「ええ、仕事がお忙しいようですね」
「遊んでもらおうと思ってたんだけどな……でも、しょうがないよね」
少女はため息をつくと、咲夜を見上げる。
「ねえ咲夜、今日霊夢のところに遊びに行っていい?」
「博麗神社ですか?そうですね……」
咲夜が悩み始めたのを見て、少女は懇願するように言った。
「お願い!おとなしくお喋りするだけだから」
「……分かりました。でも、夕食に間に合うようにお戻りくださいね?」
「やった!ありがとう咲夜!」
そう言うと、少女は嬉しそうに笑いながら、自分の部屋に戻っていく。以前は考えられなかったようなその明るく元気な姿に、咲夜は笑みを浮かべずにはいられなかった。
「さて、私も仕事をしようかしら……」
誰に言うでもなくつぶやくと、咲夜も館の中に戻っていった。
こうして、新しい一日が始まった。