プリズマ☆イリヤにテイルズの魔術をぶっこんだだけ小説   作:エタりの達人

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イリヤが可愛かったからちょっとツンケン気味のイリヤが書きたかった。それだけなんだ。

※自分で改めて読み返しておかしいなと思ったところを修正


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 この世界、『地球(■■■・■ュ■■ー■)』。平和で、穏やかな世界。家が立ち並ぶ住宅街を一歩抜ければ、そこは人工物が広がるコンクリートジャングル。平原は無く、森も立ち並ばない。特にこの日本大陸にはそういう場所は数少なく、人口数の多いこんな街ではそれが常識的である。

 ここに遠方の人とも会話や伝文のできる機械(■■■■ィ■)がある。これは正しく人間にとって画期的な発明であり、これのおかげで人類は飛躍的に進歩したといっても過言ではない。

 もう外に出て命をかける必要はどこにもないのだ。それだけでも十分と言える。少なくとも、僕にとってはだが。

 

 しかし素晴らしい、こうしてベッドから起き上がらずとも意思を伝える手段があるというのは本当に素晴らしいことだ。指ひとつを動かして文字をうち文章と成し送信すれば、はい終わり。これで僕はまたこのベッドから出れずじまいではあるが、その代わりに確かな平穏と言うものを手にいれた。

 さぁ、そうと決まれば夢の続きを見るとしよう。朝日よ、おやすみなさい。次に出会う君は頬染めた血色のいい君になっていることだろう――――

 

「起きなさーーーーーいっ!」

 

「なにしやがんだてめぇッ!」

 

「なんでそんな強気に出れるの!? 学校に遅刻するからって起こしてあげたのに!」

 

「お前はあれか? 文字を正しくできない脳でも持ってるのか?? 僕メールでなんて送ったっけ???」

 

「えーっと、『体がだるいので今日は休みます。先生にもよろしく伝えてください』だっけ」

 

「よーく分かってるじゃないか。じゃ、そういうことだから」

 

「そういうことだから、じゃなーい! そんなの許されるわけないじゃない、ほら起きた起きた!」

 

「やめろーッ! 僕からもうなにも奪わないでくれーっ!」

 

「ただの布団だよ! っていうかくっつかないでよ! き、気持ち悪い!」

 

 男子が女子から言われたら傷つく言葉No.1を平気で口に出せるお前が僕は一番恐ろしい。今のは普通に傷ついたぞ。

 だがもう布団(アヴァロン)は連れ去られてしまったのだ。今更どうこうしても言い訳並べてもこいつには通じないし、なによりこれ以上は迷惑だろう。それに、愛想つかれるかもしれない。それは少し嫌だ。

 

◆◆◆

 

 人物紹介をしておくべきだろう。まずはこうして君たちに語っている僕は、まぁ僕だ。特に面白い名前でもないし変わったあだ名があるわけでもない。というより、あだ名をつける場合どうしたものかと困ってしまうような、そんな字面と字数をしているのであだ名がつけられないと言うべきだろう。

 どちらかと言えば理系が得意であり、趣味はちらほらとある感じ。ようするに僕は普通の小学生と言うべき存在だろう。

 好きなことは、寝ることだ。惰眠を貪れる背徳感がたまらない。嫌いなことは好きなことの反対、つまり布団から出て動くことに他ならない。

 

「いい加減にしよう、そろそろお前も僕離れするべきだよ。いつか雛鳥は大きくなり、巣立ちするべき時が来る。お前にとってそれは今なんだ」

 

「雛鳥はどっちよ、私的にはそろそろそっちが自立するべきだと思うんだけど。このままじゃ、ろくな大人にならないよ?」

 

「ろくでもない大人にだって稼げる仕事がある。僕はそういうものに永久就職するんだ」

 

「反面教師のいい見本というか、既にろくでもないというか」

 

「つまりそのお陰でお前はまともに育ったんだぞ。つまり控えめに言って僕を養う義務があるんじゃないか?」

 

「耄碌になるにしても半世紀後にしてよね。ま、まぁ結婚には反対じゃないっていうか、賛成っていうか……」

 

「(常々思ってたけれど、こいつほんと趣味悪いな)」

 

 昼下がりの日光を照り返し幽玄と揺らめく銀の頭髪、芸術品である陶磁を思わせるような真っ白な肌、ザクロのような瞳、そして作られたかのような整った顔はどこか品性というものを感じさせる。指一本だけで見ても、隣を歩く彼女が人間美術品であることは明確であった。

 

 これが僕の友人、イリヤスフィール・フォン・アインツベルン。僕と違って長ったらしく、そして縮めやすい名をもつ彼女は仲のいい友人は皆イリヤというあだ名をつけている。

 彼女は美少女と呼ぶに相応しい人間ではあるがときめき思い出ゲームのようなメインヒロインと違って頭はあまりよろしくない。いや、学校内での成績は上位に食いつくぐらいには知識があるのだが、どうも突発的なことに弱かったり、ド忘れなどが多いらしく、正直勉強面ではそれほど信用はされていないらしい。

 そのため、彼女の代わりに頭を使う担当は何かと僕とされている。昔公園で遊んでいたというだけでここまで仕事を押し付けられるとは、人生何があるかわからないものである。

 だからこそ彼女が僕に対して恋心を抱くような、そんな過ちを犯してしまったのだが。

 

「ボソボソ言うなって、聞こえないじゃん」

 

「な、なんでもないなんでもない!」

 

 本人はこれで誤魔化せてると思っているのだから重症だ。

 

 さて彼女、イリヤスフィールが昼上がりの放課後に僕の部屋にきてこうしてただ駄弁っているだけなのには理由がある。

 

 友人がいない? まぁそれは一種の真理をついているのかもしれないが本人が可哀想なのでその可能性から今は目を剃らすことにしよう。

 お隣さんだから? 残念僕の小屋とイリヤスフィールの豪邸は結構な距離が空いているから、僕の家に向かうのはアインツベルン家では許可制になるほどだ。

 正解の鍵は、僕の生活習慣と彼女の趣味にある。

 

「ね、そろそろ見せてよ!」

 

「ん。まぁいいけど、今回はあんまり自信作じゃないぜ」

 

「またまたご謙遜を~」

 

 そんな難しい言葉をどこで覚えてきたんだ。いや、十中八九テレビか。現代っ子は親よりテレビから言葉を教わることが多いらしいからな。

 

 しかし言われてしまったからには乗り気でなくとも見せなくてはならない。本当に自信がないんだけどなぁ。ため息混じりに引き出しから一枚の紙を取り出して提示する。

 紙はそこら辺に売っている方眼ノートから切り取ったもので、これが僕の趣味に一番適した用紙だ。紙には丸や正方形や台形、縦横斜めと縦横無尽に描かれていて、それらが合わさって幾何学的な物となっている。

 

 所謂、魔法陣というもの。これを描くのが、いくつかある中でも表だって言えるようなものじゃない生活習慣一つだ。

 

「おぉ~……なんかよくわかんないけどすごい! すごいよこれ!」

 

「お前、それ前見せた時も同じこと言ってたぞ」

 

「それぐらいすごいの! これは、なんの陣?」

 

「んー……そうだな、前が焔の陣だったから、今回は風の陣……だと思う」

 

 その言葉に彼女は眉を細めると、こう言った。

 

「また、いつもの夢(・・・・・)?」

 

 その言葉に、僕は軽くうなずくことで肯定の意を示す。

 前述した通り、僕は夢を見ることが好きだ。ただその夢の内容は、あまりにも現代科学からかけ離れているもの。夢とは脳が記憶の整理をした場合に発生する現象であり、これから夢に出てくるのはどこか見覚えのある光景であったり内容であったりすることが多い。

 それに当てはめて考えるのならば、僕の夢はあまりにも逸脱している。

 

 夢には、ある男が出てくる。そのある男は色んな人に囲まれていて、帆もエンジンもない船で海を渡り、空を駆け、見えた人全てを救っていく。そんな偉大で愚かな男が夢の中での主人公だ。僕は彼の目で物を見ていて、所謂彼の追憶というものを体験している。

 その世界はお伽噺のように夢があって、けれどどこか生々しい現実が散らばっていた。目の前に現れる様々な異形の存在、放たれる数々の技と奥義、そしてきらびやかで合理的な魔法。男はどちらかと言えば理系であったようで、魔法を使うのに長けている存在だった。

 

 この魔法陣は、その男が使っていたものだ。実際にこの魔法陣を使ったところを見たわけじゃない、というか戦闘中は常に視点が目まぐるしくて陣に意識を向けている時間など一秒もない。僕がこうして魔法陣を描けているのは夢から覚めた僕の脳内に、これが焼きついてしまっているからだ。訳も理由も原理もわからないが、そういうものなのだ。僕はそれがいつまでも残っている違和感を嫌って、こうして紙に陣を写し出しているのだ。

 それを運悪くイリヤスフィールに見られてしまって、こういう関係に至っている。

 

「一回、誰かに見てもらおうよ。ほら、夢占いとか」

 

「相談したところで法外な値段ふっかけられてデタラメ吹き込まれるだけさ。それに、そもそも子供の言うことを大人が信じるかどうかも怪しいし」

 

「それは、そうかもしれないけど……」

 

 イリヤスフィールの心配が伝わってくる。長い付き合い(と言っても五六年だが)なのだから、彼女がそういう心配をする人間だというのはわかる。だからあまり僕のことで気持ちを曇らせてほしくないのだが。

 

「ま、僕もこの夢とは長い付き合いだ。きちんと対処すれば僕に害を成さないことも僕自身で証明済み。大丈夫さ、きちんと付き合っていける」

 

「……うん」

 

「僕としては、他人の心配より自分の心配をした方がいいと思うけどね。週末のテストはどうなることやら」

 

「その話は思い出させてほしくなかったよ……」

 

◆◆◆

 

 僕は夢を見るのが嫌いではないが、そう長い時間あんな夢をみたいと思うほど気が狂っているわけじゃない。生々しい空想世界というものにひかれるほど、まだ大人ではないからだ。かといって仮面ライダーのようなヒーローになりたいと思っているわけではない。

 いやまぁ女性に囲まれている夢を見た日は、もう少しそれを見ていたいと今日のように二度寝をしようとすることもあるけれど。おっぱいはいいぞ。

 

 すっかり血色のいい君が沈んでからはや数時間、既に時間は八時を過ぎている。小学生が出歩いていい時間ではないが、親にはキチンと許可を貰っている。いや、許可を投げてきたと言った方が正しいだろうか。

 そんなことはともかく、僕は日課として夜の散歩をしているのだ。街灯がLEDライトに変わってしまったせいで夜空の星は確認しづらいけれど、それでも時たま見える星座は僕の心を確かに癒してくれる。

 

 しかし、星ではないような何かも瞬いているような、そんな物が見えるのは気のせいだろうか。というか星でもないのに光ってるのが目に写っているんだけど。何あれ、光の柱? ついに誰かが聖剣でも引き抜いたのか?

 

「……あれ、イリヤスフィールの家だ」

 

 なにとなしに呟く。イリヤスフィールの家は僕のような土壁の家と違ってしっかりとしている今風の家だ。二階もあるし、家族全員それぞれの部屋だってある。僕からすれば豪邸以外の何物でもない所なのだが、あの家にあんな光を放つ機能なんてついていただろうか? 僕の記憶が正しければそんなものはついてなかったような気がするんだけど。

 

「あれは……っ!」

 

 背後から声が聞こえた。振り向いてみれば目に痛くない程度に赤い服を身にまとったツインテールの女性が立っていて、どこか驚いた表情で光の柱を眺めているのがわかる。アインツベルン家と何か関係のある人なのだろうか、しかし僕はこんな女性を見たことなんて一度もない。

 どう声をかけたものだろうか、と思っている間に女性はいなくなっていた。どうやらかける前に駆けていってしまったようだ。我ながら上手い、十点。誰か、座蒲団一枚持っていって。

 

「……ツッコミもされないボケしたって意味ないか」

 

 馬鹿なことをしていては彼女に誤魔化されてしまう。出来る限り急いでみるか。

 走り出した僕を眺める月は蒼い。




あぁ^~毎朝イリヤに起こされたいんじゃぁ^~

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