エミヤ・オルタが転生したそうです   作:野鳥太郎

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3話初投稿です。
実は3話まで書いてました。
桃谷は犠牲になりました。
やり過ぎた感あります。

戦闘描写難し過ぎてヤバイ・・・。


ボブは蹂躙するそうです

校内選抜の第1回戦は、僕とステラの模擬戦と比べる程ではないが話題のタネとなっていた。

 

無敗というわけではないが、重量級の甲冑型固有霊装による高い防御力と突進力で多くの勝利を収め、優秀な伐刀者として評価されている3年の桃谷。

 

そんな彼を相手取るのは、公式な戦闘記録のない2年の衛宮。分かっているのは彼がDランク伐刀者であること、固有霊装が“干将・莫耶”ということのみであって、実力は全くの不明。

多くの人は桃谷さんの勝利と考えているらしいが、先日衛宮から東堂さんを打ち負かしたと聞いている僕やステラからすれば・・・

 

 

「黒鉄、ヴァーミリオン」

 

 

不意に背後から声をかけられた。振り返るとそこには新宮寺理事長が真剣な面持ちで立っていた。

 

 

「理事長先生?どうしたんですか?」

 

「僕達になにか・・・?」

 

 

僕達が要件を尋ねると、彼女は一度ゆっくり息を吐いてから言葉を紡ぎ始めた。

 

 

「第1回戦についてだが、突出した実力のお前達は良く観ておくことだ。特に衛宮をな。奴の実力は私や西京寧音、それと限られた生徒しか知らん。その上で一つ言っておく、

“正面からぶつかって勝てる奴と思うな”。奴は闘いで一切の容赦をしない。場合によっては最悪、本気で相手を殺しにかかると思え」

「・・・え?」

 

「そこまで、とんでもないんですか?彼は」

 

「無論死人が出ない様私が見ている。当人にも事を大きくするなと言ってあるが、正直理解してるのか不明だ。普段無害な分、やる時はやり過ぎる(・・・・・)奴だ」

 

 

校内選抜は実像形態での闘いだ。それでも死者は出たことがない。試合の目的は飽くまでも伐刀者としての優秀を競うものであって、相手を殺す事など・・・それこそ人間としての良心がある限りあり得ない。

 

 

「衛宮とお前達2人が当たらないとは限らないからな。予習も兼ねて奴をよく観察しておけ、以上だ」

 

 

そう言うと理事長は行ってしまった。

 

 

「ねえ、イッキ」

 

「分かってる。出来ることなら嘘だと信じたいよ」

 

 

不気味だが何かと親切にしてくれた衛宮士郎に対するイメージが崩れそうになる。

その数分後、僕達は理事長の言葉は事実だと理解することになる。

 

 

 

・・・・・・

 

 

客席からは相手、桃谷に対する声援が響き渡っている。オレは一応無銘という事もあってそう言ったものはない。あるとすれば好奇の目線、そして・・・

 

 

「やれやれ、あんな風に睨まれると流石に居心地が悪いな」

 

 

客席の一角から此方を怨敵とばかりに睨みつけてくるのは眼鏡をかけた3年女子。

昨年その技も、信念も、精神も叩き落としてやった女だ。名前は・・・うん?つい先日まで憶えていた気がするが思い出せない。

まあいいか。今は気にする必要もない。

 

 

「おい」

 

「うん?・・・あぁ」

 

 

声をかけてきたのは対戦相手である桃谷。試合は既に始まっているらしく、相手は既に甲冑型の固有霊装“ゴリアテ”を展開していた。

 

「すまない、少し考え事をしていた様だ」

 

「つべこべ言ってないで早く霊装を展開しろよ。生身の奴とやり合うつもりはないんだ」

 

「殊勝な事だ、ではいかせてもらうか。

・・・投影開始(トレース・オン)、“干将・莫耶”」

 

 

磨耗し壊れ尽くしてなおこの呪文だけははっきり覚えている。

唱えると同時に現れたのは双剣・・・ではなく、刃の付いた双銃だ。黒い方が干将、白い方が莫耶だ。

 

 

『遂に出ました、アレが長らく正体不明だった衛宮選手の固有霊装、干将・莫耶だぁ!

なんて不可思議な形状でしょう?遠近何方にも対応出来るオールラウンダーということなのでしょうか!』

 

『はいはいちょっと黙って見てなぁ。騒がしいから』

 

実況者が妙に騒がしいが、西京女史が諭したので良しとする。今は此方に集中すべきだ。

 

 

「それがお前の固有霊装か。そんなちっぽけなモンで俺が止められんのか?」

 

「かく言う其方は図体がデカいだけだな。外見だけのハリボテ、中身は空っぽだ。息でも吹き掛ければ飛んでいくんじゃないか?」

 

「言ってくれるじゃねえか。それじゃあ・・・試してみな!」

 

 

やすい挑発に乗ってくるあたりやはり脳筋か。しかしまあ突進力はなかなかだ。並みの伐刀者なら十分な脅威だろう。

だから、

 

「どうもそれしか能はなさそうだな。退屈なんで終わらせるぞ?」

 

 

 

・・・・・・

 

 

「おいおい嘘だろ・・・?」

 

 

誰が呟いたのかはわからない。しかし、観戦していた者達の心情を的確に表していた。

 

 

「ゴハッ・・・!」

 

 

衛宮から10m程離れた位置で血を吐く桃谷。

彼の纏う鎧の腹部はひしゃげ、所々小さな穴が空いている。貫通した穴からは血が漏れ出し、彼の肉体が大きなダメージを負っていることを示していた。

 

勇猛に突っ込んで行った桃谷だが、彼に待っていたのは初めての体験だった。

 

全身全霊の突進は衛宮士郎の右手、正確には白の銃剣“莫耶”を持って簡単に受け止められていた(・・・・・・・・・)。しかも衛宮本人はその場から少しも押されることなく、不動のまま。

 

これまで突進を受け流されたり、回避されたことは何度もあった。しかし、こうも簡単に真正面から押さえつけられるなど一度もなかった。驚愕と混乱のなか、彼を襲ったのは強烈な鈍痛と、無数の刺す様な痛み。

 

それが衛宮の強烈な蹴りと、双銃の射撃によるものと理解したのは、一瞬の浮遊感と、地面に叩きつけられた感覚の後だった。

 

 

「思ったより呆気なく吹っ飛んだなぁ。少し拍子抜けだ」

 

 

衛宮が何かを言った様だが、それを理解する前に再び身体を無数の衝撃が襲う。

 

 

「・・・ッ!!?」

 

 

それが収まる頃には身体はピクリとも動かなかった。辛うじて残った意識が、再び声を捉えた。

 

 

『I am the bone of my sword.』

 

 

理解のできない言葉だった。その言葉の意味は理解出来る。しかし、それに“込められた”意味が理解出来なかった。

 

 

『So as I pray,』

 

 

寧ろ理解してはいけない様な、そんな感覚。

次の瞬間、“ナニカ”が桃谷という人間に撃ち込まれた。僅かに残った意識が凄まじい警報を鳴らす。

 

 

「理事長から煩く言われてな、容赦は出来んが加減はしてやった。なに、死ぬ事はないだろうよ。多分な」

 

 

嗤うような声音は最後に1つ、唱えた。

 

 

Unlimited Lost Works.(無限の剣製)

そこで桃谷の意識は途絶えている。

 

 

 

・・・・・・

 

 

桃谷が衛宮に突っ込んでいってから50秒程。余りにも呆気ない幕引きよりも、衛宮の力の方が多くの者に衝撃を与えた。

 

桃谷の大柄な身体を片腕で受け止めたかと思うと、その次の瞬間には桃谷は吹き飛ばされていた。

 

衛宮の蹴りが正確に捉えられたのは全体のほんの一握り。それ程までに速く、鋭い一撃だった。およそ人が出せる膂力ではない。

 

次に吹き飛ぶ桃谷に追い撃ちとばかりに放たれた弾丸は12発。嬲るように急所を除き全身に撃ち込まれたソレは全て命中し、強固な桃谷の甲冑を容易く貫通した。

 

もがく桃谷に撃ち込まれた弾丸は14発。直前の弾丸よりも高い魔力が籠められたソレは、着弾と同時に桃谷の体内で炸裂し、完全に再起不能へと追い込んでいた。

 

そして最後の締めとして放たれたのは1発。黒い銃剣、干将から不可思議な詠唱と共に放たれた錆びてボロボロになった魔弾。桃谷の心臓よりもややずれた位置に着弾し、ほんの僅かな間を置いて真価を発揮した。

 

観客だった生徒たちの中から悲鳴が漏れる。

無数の剣群で内側から串刺しとなった桃谷と、彼を中心に、アリーナの風景と重なるように薄っすらと浮かび上がる“異界”。錆ついた大量の剣が荒野に刺さり、これまた錆びた無数の巨大な歯車が浮かぶ空は血のように紅かった。

ソレはゆっくり消えていき、桃谷から生えていた剣軍も急速に錆びてボロボロと消えていった。

 

驚愕、戦慄と言った空気がアリーナを包み込む。そんな中、選手入場口から放たれた魔力が桃谷を包み込む。

噴き出していた血は止まり、空中で静止している。

 

 

「試合終了だ。救護班、さっさとIPSカプセルに運べ」

 

 

淡々と告げるのは破軍学園理事長、新宮寺黒乃。この様な事態を予測して待機していた様だ。

 

死亡・・・正確にはその直前である桃谷を救えるのは彼女だけだろう。彼女の二つ名は“世界時計(ワールドクロック)。時間を操る彼女は現役引退後、こうして多くの伐刀者を闘いにおける死から救ってきた。

 

時間の停止した桃谷はすぐさまIPSカプセルへと運ばれていく。それを見届けると、黒乃は衛宮を見、言った。

 

 

「貴様、去年積み上げていた人望を一瞬で水の泡にしたぞ?それに、伐刀絶技は使うなと言っただろう」

 

 

呆れた声音には確かに、怒気が含まれている。やり過ぎだと。

 

 

「あぁー、そんなことも言っていたような気がするなぁ。加減をしろのところしか憶えてなかった。まあ実像形態での試合だ。相手がヤル気なら、こちらも相応の返礼をしなければ釣り合いが取れんだろうよ」

 

「そのヤル気だが、決して殺す意味合いでないと去年言ったはずだぞ“錆びた剣弾”。力ある者には相応の責任が付き纏う。青臭い餓鬼が人殺しという刻印を背負いきれるとでも?身の程を弁えろ」

 

「了解した、以後気をつけるとする。しかし、始めから壊れてる奴(・・・・・・・・・)なら背負えるんじゃないか?失うモノが何もないんだからな」

 

 

そう言うと衛宮はアリーナから立ち去る。

普段よりも不気味に感じられたその無表情はまるで人形、機械の類に思えた。

 

 

 

かくして破軍学園における校内選抜1戦目は、伐刀者の華々しく、猛々しいモノではなく、一方的な蹂躙を持って終焉した。

 

この一件以来、衛宮士郎は“錆びた剣弾”と広く認知される様になる。

なお、彼の伐刀絶技“無限の剣製”は殺傷性の高さから許可なく使用する事を禁じられた。

無論殺傷性のみで伐刀絶技が封じられた訳ではない。観客としてアリーナにいる生徒たちへの精神的影響を鑑みての判断である。

 

無限の剣製発動と同時に幻出する異界。アレは直視するだけで恐怖、絶望、虚脱感などを感じる程酷く歪み、ドス黒い魔力で覆われていた。

 

最も、当の衛宮本人は伐刀絶技の事実上の封印に対し、特に何も思ってはいないようだ。

 

本人曰く、

 

 

「使い慣れた手段が一つなくなっただけだ。使えるモノが一つ無くなった位で闘えなくなる訳じゃあないだろう?」

 

との事であった。

 




ロストな無限の剣製使えなくたってブレイドな無限の剣製は使えるからね、問題ないね(強引
このボブは戦闘においては無慈悲ですハイ。

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