双つのラピス   作:ホタテの貝柱

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赤い弓兵さんのと、今は名前の無い誰かだった人の生前話が少し。


番外編 続・身に覚えの無い既成事実

「ママ…?お顔が真っ青よ?」

 

 

少女はアーチャーをママと呼び、気遣う様に彼を見上げた。恐る恐る、アーチャーに聞いてみる。

 

 

 

「アーチャー、いつ産んだの…?」

 

 

途端、キャスターが堪えていた笑いを吹き出させてくすくす笑い始めた。

 

 

 

「リヒト、そもそも私がう、産める訳無いだろ…!これは先輩が…おいパパ!貴方がきちんと説明してくれ!」

 

 

アーチャーがやけくそでキャスターをパパと呼び、説明してくれと助けを求める。くすくす笑っていたキャスターが少女を抱き上げ、アーチャーに代わって口を開く。

 

 

 

「ママがお困りの様だから、代わりに答えよう。半身、君も薄々分かっていたかもしれないが…本官たちは聖杯戦争が終われば、潔く帰るつもりだ。しかし、帰ってしまえば我らは消えてなくなる。だからふと、何かを残したくなった。アーチャーが消えかけ、本官もその思いがより強くなったのさ。」

 

 

やっぱり、キャスターは帰るつもりなんだ…突き付けられた事実に、一瞬ショックを隠せなかった。アーチャーもやっぱり、聖杯戦争が終われば座に帰る気らしい。

 

 

 

「まぁ、形のあるものとして手っ取り早く残せるとしたら…こういう事だ。少々、本官が頑張り過ぎた。この子はしいて言えば、我らを媒介とした写し身であり使い魔だ。」

 

 

サーヴァントは英霊本体の写し身だと言うけれど、キャスターは更にアーチャーとの間に子供というか…自分たちの写し身である使い魔をつくり出したなんて。使い魔と聞いても、少女は年相応の子供と何ら遜色は無い。キャスター、頑張り過ぎ。

 

 

 

「パパ、ママどこか悪いの?」

 

「ミレイ、ママはどこも悪くはないさ。」

 

 

ミレイ、キャスターは少女をそう呼んだ。その響きは、父さんの名前と何処か似ていた。

 

 

 

「漢字で美しき礼と書く。神父の名前を一字、拝借した。勿論、本人には無許可だがな。君の名付けに倣ったまでだ。」

 

「君って奴は…キレイに対する嫌がらせで、その子にその名前付けたの?」

 

「まさか!そんなつもりは無いさ。」

 

 

すると、小さな足音を立て、ミレイがぼくに駆け寄って来た。見れば見る程にぼくともそっくりなんだけど、アーチャーの要素があんまり無い様な…?しかしふと、彼女の赤みを帯びた髪色に誰かの面影を感じたのだけれど果たして誰だろうか。

 

 

 

「過保護なキャスターが半身の後先を心配して、使い魔をつくったのさ。」

 

「君が座に帰る分には…今更、引き留めたりしないよ。けど、この子を置いてくつもり?」

 

「ぱぱとままは一人じゃないからな。」

 

 

キャスターが変なことを言う。ぱぱとままは一人じゃない?

 

 

 

「ぱぱ!ままはどこ?」

 

 

ミレイは何故か、ぼくのことまでぱぱと呼ぶので紛らわしい。使い魔に感情や自我は必要無いと言うのが魔術師の中での一般論だけど、こうも人間らしいとどうやって扱ってよいものか困る。

 

 

「君のママはアーチャーでしょう?」

 

「ちがうの!もう一人の方のままよ。」

 

「え?」

 

 

 

ミレイは大きく首を振り、もう一人のままは何故かと聞いてくるから困惑してしまう。キャスターのぱぱとままは一人じゃない発言とか、どういうこと?

 

 

「今頃、もう一人のままなら朝食の後片付けでもしてる頃合いだろう?ほら、アーチャー。最後の一口も早く食べたまえ。」

 

 

 

アーチャーはぼくとミレイに見られながら、罰ゲームを受けさせられてるみたいな顔をして最後の一口を口にした。その様子をキャスターは満足気に眺める。

 

 

「先輩…ミレイのことはリヒトのみに、留めておいた方がいいのでは?」

 

「変に隠す事も無いだろう?」

 

「いや、しかし…」

 

 

 

アーチャーは何やら、ミレイの存在を皆に知られるのが嫌な様子だ。けど、隠し立てしても何れはバレると思う。

 

 

「ママ、ミレイをもう一人のままに会わせたくないの?」

 

 

 

ミレイが頰を膨らまし、アーチャーを不満気に見る。ミレイの言う、もう一人のままって誰のことなんだろう。

 

 

「ミレイ、そんな顔で私を見ないでくれ…いや、そのだな…」

 

「半身、食器を下げて来るからアーチャーを少しの間頼む。行くぞ?ミレイ。」

 

「はーい。」

 

「待ってくれ!先輩…あぁ、行ってしまったか。」

 

 

 

キャスターは食べ終えた食器を珍しく、自分から下げにミレイを連れ立って行ってしまった。アインツベルンの城でのこと、又しても聞きそびれ…いや、此処にも当事者が居たな。

 

 

「アーチャー、ミレイのもう一人のままって誰?」

 

「さぁな…?あの子がそう呼んでるだけだろう。」

 

 

 

アーチャーはわざとはぐらかす。傷は平気?と聞けば、アーチャーは小さく頷いた。

 

 

「バーサーカーとの戦いで、姉さんは君が帰って来たこと自体が奇跡だって言ってたけど…やっぱり、キャスターが何かやったの?シロがさ、あの城でキャスターを見たって言ってるんだ。」

 

「衛宮士郎は城でイリヤに幻術を掛けられて、軟禁されていた。都合のいい幻でも見たのではないかね?」

 

 

 

アーチャーも飽く迄、はぐらかすつもりらしい。って言うかそもそも、アーチャーが一人で帰って来る自体が有り得ないと思うんだよなぁ。

 

 

「アーチャー、バーサーカーの囮になって自分は消滅するつもりだったでしょう?君、人の為なら自分一人位の命なら潔く差し出しちゃうタイプだと思うし…誰かさんみたいに。」

 

 

 

 

アーチャーの眉が、ぴくりと小さく動いた。アーチャーとシロは、本当によく似てる。

 

 

「……キャスターが何やったか知らないけど、君のそんな自殺行為をキャスターが見逃す筈無いんだよね。君のことモノみたいな扱いして悪いんだけど、キャスターは自分の所有物に勝手なことされたらキレるし。それが例え小さなイリヤスフィールでも、容赦しなかったよ。」

 

「知ってるさ…先輩は最悪、イリヤスフィールをバーサーカーごと殺すつもりだったんだろ。全く、いつも呑気そうに腑抜けたツラをして、腹の内では何を考えているのか分からないから半神様は恐ろしいな。」

 

 

 

あぁ、やっぱりキャスターの奴…自然と溜め息が漏れた。たまに、ぼくでもキャスターが何を考えているのか分からない。

 

 

「あのサーヴァントの扱いには困るだろう?君も。最弱クラスのキャスターとして現界してはいるが、蓋を開けてみればあの中身はとんでもないぞ。バーサーカーとして現界しなくて良かったな。」

 

「……やめてよ。キャスターがバーサーカーなんかで現界したら、それこそ手に負えない。」

 

 

 

アーチャーが皮肉気に笑う。キャスターはあれでも、相当格落ちした現界をしている。バーサーカーなんかで現界したらリミッターなんて存在しないし、彼が復讐の権化と化した最期がそのまま再現されてしまう。クラスチェンジでバーサーカー化してもほんの数分の変化が限界だ。

 

 

「やっぱり、キャスターが何かしたんだね。」

 

「先輩は何もしてないさ。」

 

 

 

アーチャーは妙に、含みのある発言をする。

 

 

「シロが見たっていうキャスター、イリヤスフィールをイリヤ姉さんって呼んでたんだってさ。あと、あんまり意味のよろしくなさそうなスラング混じりに毒吐かれたってシロはすっかりショック受けちゃったみたいでね。それ、絶対キャスターだけどキャスターじゃない気がするんだよ。ねぇ、アーチャー…本当に何も知らない?」

 

「知らない。」

 

 

 

アーチャーは頑なに知らないと突っ撥ねる。絶対、これはなんか知ってる顔だ。もういいや、話を変えよう。

 

 

「じゃあいいよ、もう君には聞かない。そう言えばさ、ミレイってぱっと見…君とあんまり似てないよね。」

 

「私に似なくて正解だ。むしろ、君や先輩によく似ていて私は安心してる。」

 

「似てたら困ることでもあるの?それはそれでかわいいとぼくは思うんだけど。」

 

 

 

アーチャーが珍しく、ムッとした顔でぼくを見る様は何処か幼さがあって誰かと似てる。

 

 

「あと…あの子のあの髪色、誰に似たんだろうね?キャスターは黒髪だし、君も白いから不思議だったんだ。」

 

「さ、さぁな…」

 

 

これ以上、アーチャーをいじめるのはやめよう。何と無く、彼もこれ以上の追求はやめてくれって顔してるし。

 

 

 

「……ごめん、君をいじめ過ぎた。そんな顔しないでよ、誰かさんみたいで罪悪感がするから。」

 

「私はあいつではないと、何度言ったら気が済むんだ君は。」

 

 

アーチャーの機嫌をかなり損なわせたらしい。ごめんねと謝ったけと、彼からフイと視線を逸らされてしまった。

 

 

 

「リヒト…確かに、私はバーサーカーとの戦いで消えるつもりだった。私はどうせ写し身だ、私が消えても本体には何ら支障もない。だから、いつ消えても別に良かったんだ。凛達を守れるなら、それで。」

 

「君、そんなこと考えてたの?」

 

「最後まで聞け!だが…先輩が、もっとみっともなく生き残ろうと足掻けなんて言ったんだ。先輩を見ていると、どうしても生前を思い出す。」

 

 

キャスター、アーチャーにそんなこと言うなんて本当に珍しい。本当、キャスターのアーチャーに対する執着は何処から来ているんだろう。

 

 

 

「生前も、何度と死を覚悟したのに…何度も死の淵から掬い上げられてしまった。例の、先輩そっくりな奴にだ。何度も命を救われ、本当にそいつが死にかけた時は自分が命に代えても助けようと思った。その時になって、やっとの思いで彼だけを助けた。だから何も恨むことは無かったさ、彼を置いて行くことだけは唯一の心残りだったが。」

 

 

アーチャーがどんな最期を迎えたのかは、知らない。けれど、キャスターそっくりな誰かが居てくれたおかげで彼なりに満足のいく最期だったと思う。

 

 

 

「私は英霊になってから…まぁ、君なら守護者の仕事も分かるだろう?何度も人の滅びを回避する為、アラヤに使われる内に彼のことも何もかも、忘れ去ってしまった。ひどい話だがね。人だった時の記憶など、その程度さ。残ったのはひどい虚無感と絶望だけだった。」

 

 

キャスターはアーチャーのことを、頑張り過ぎてああなってしまったのさと言っていた。忘れ去ってしまったという割には、思い出してるじゃないか。

 

 

 

「忘れたって割には君…その人のこと思い出してるじゃないか。」

 

「召喚されて直ぐなど、彼そっくりな先輩が目の前に現れた所為で頭痛がひどかったんだぞ!?」

 

「キャスターの奴、その日はヤケに上機嫌でさ。まるで、楽しみそうに何かを待ってた感じだった。まさか…君のこと待ってたの?」

 

「さぁ?それは知らないが、初対面からやけに気に入られてしまってこっちはいい迷惑だった。」

 

 

初対面から気に入られたってつまり一目惚れじゃないかと気が付いて、もう本当にキャスターの奴はどうしてしまったんだろう。

 

 

 

「うっわ…キャスターの癖に、一目惚れとからしくない。」

 

「なッ!?」

 

 

アーチャー、それ確実にキャスターの一目惚れだよ。まぁ確かに、アーチャーも整った顔立ちの部類には入ると思うけどさ。

 

 

 

「そっかーキャスターの一目惚れかー。君も災難だったね、キャスターに目を付けられちゃって。」

 

「全くだ!勝手にパスを繋げられ、忘れてた記憶を次々と引きずり出されて数日は偏頭痛がひどかったんだからな!」

 

 

いつの間にか、アーチャーのキャスターに対する愚痴聞きみたいになってるけどまぁいいや。半分は惚気話になってる気もするけど。

 

 

 

「アーチャー、まさか君が消滅しなかったのって姉さんからの魔力供給の他にキャスターからの魔力譲渡もあったから?うっわぁ、本当勝手なことしてくれたなキャスターの奴…ぼくの立場が無いよ。」

 

「君には悪かったと思ってる…しかし、パスを切ろうとしたら先輩がうるさいんだ。」

 

「キャスターが本当にごめん。ところで聞くけど、君ってバイセクシャルなの?キャスターの時代は同性同士も割と大らかだったと言うか…君もキャスターと、その…あんまり抵抗が無さそうだから。経験、あるのかなって。」

 

 

思い切って踏み込んだ質問をしてみると、アーチャーは大袈裟なまでにのけ反った。あ、これは…と思いかけ、多分相手はその誰かさんだろうなと察する。

 

 

 

「…あ、言わなくていいよ。相手は何と無く、分かったから。」

 

「違う!彼とはその…彼の元職業柄、大っぴらな事には出来な「ねぇ、まさか相手の職業が同性とかご法度な感じ?」

 

 

アーチャーがしまったという顔をして、口元を手で覆う。キャスターも元神官だけど、アーチャーのお相手とやらもそういう系のお仕事をなされていたらしい。

 

 

 

「君、あんまり古い時代の英霊じゃ無さそうだし相手が元神父さんか元牧師さんとか?うっわぁ、そこまでそっくりだと運命感じちゃうよね君も。」

 

 

顔や職業まで似てるって、出来過ぎにも程がある。アーチャーはまごついていたが、恐る恐るキャスターのそっくりさんについて話し出す。

 

 

 

「元神父で、軍人でもあった…激しい紛争地域で、元は従軍の神父をしていた様な男だ。」

 

 

従軍神父って仕事があるのは知ってる。けど、余程の信仰心と肉体的にも精神的にも強くないと絶対に出来ない仕事だ。

 

 

 

「中々、特殊なお仕事されてたんだねその人…君が命を何度も救われたって聞いて、納得した。君、元は軍人か何か?何度も死にかけたってことは、そういう地域に君も居たんだし。」

 

「いや…私は本職というよりも何と言うか、フリーランスの仕事をしていたから…傭兵の様なものだった。彼とはたまたま、難民キャンプで再会したんだ。その時には彼は退役して神父の職も辞して、民間団体でボランティアをしていたか。私を追いかけて、ずっと私を探していたと聞いたらどう思う?」

 

「思ったんだけどさ、その人も相当君のこと好きだよね?神父で同性ってご法度だし、中には元々そういう嗜好の人で葛藤した末に教会の門を叩く人も居るけど。神父になるって相当根気強くないとなれないよ?それをあっさり辞めるって、そういう事でしょうに。」

 

 

多分、アーチャーとその人は長年の付き合いだったんだと思う。それが色々あって、別々の道を歩んでやっぱりアーチャーが忘れられなかったその人が信仰心も何もかもかなぐり捨ててとか何処のドラマか小説だと言いたくなる。

 

 

 

「…君、神職者を惹きつける呪いでも持ってるの?」

 

「私もかなりの不心得者だが、呪いを受ける様な過ちを犯した覚えは無いさ。」

 

「けど、君…中々罪深いよね。神職者二人も振り回すなんて、相当だ。」

 

「うるさい…それに、君には言われたくない。」

 

 

何故かアーチャーに怒られてしまった。けど、アーチャーが生前のことをぼくに話してくれるのは珍しい。

 

 

 

「ひっどいなぁ。ねぇ、アーチャー…何でそんなこと、ぼくに話してくれたの?」

 

 

恥ずかしそうにしていたアーチャーだが、急に真摯な眼差しでぼくを見てくるから思わず心臓が緊張感で高鳴る。

 

 

 

「君には…先輩や、彼の様にはなって欲しくないからだ。」

 

「ちょっと待ってよ、それまさかぼくとシロのこと言ってる!?まぁ、シロのことは放って置けないし…好きだけど!そういう意味では見てないよ!」

 

「なら、凛と早くどうにかなってしまえ。」

 

「何でそこで姉さんが出て来るのさ!」

 

「……君が凛を姉さんと呼ぶ限りは、道も遠そうだな。それと、衛宮士郎の事では無く君自身のこれからについて言ったつもりなのだが?」

 

 

今度はこっちが赤面する場面だった。あれ?何で、こんな話になったんだっけ…?アーチャーがしてやったりと、ぼくに対してにやりと笑う。

 

 

 

「ぼくは神父にもならないし、軍人にもならないよ!魔術師は魔術師で血統云々にうるさいし、魔術協会の貴族然とした鼻持ちならない青い血の連中はもっと苦手だ!だから悩んでるんだよ!」

 

「いっその事、冬木に留まってバーテンダーでもしたらどうだ?その方が平和でいいかもしれないぞ。あの店、中々いい店だな。」

 

 

ちょっと待って!何で君、ぼくのバイト先に行って来たみたいな発言してるのさ…!?

 

 

 

「以前見かけた君目当ての外国人常連客に鉢合わせして、二度と来るなと睨みを利かされてな。私も命が惜しいから、馴染みの店には出来そうもないのが残念だ。」

 

 

しかも王様と鉢合わせしちゃったの!?知らない、ぼくが知らない所でそんな事があったなんて話…アーチャーが今度は、ぼくを追い詰める。

 

 

 

「しかし、何故また以前の聖杯戦争に参加していたサーヴァントが受肉しているのやら…あれだろう?先輩の兄というのは。」

 

「そ、れは…」

 

「弟を私に取られて、君に相当ご執心の様だ。」

 

 

アーチャーなら、多分王様の真名も知ってる。

 

 

 

「アーチャー、そのこと…姉さんに、話したの?」

 

「いいや?私も見張りをさぼって、君の働いてる店に行ったことが凛にバレたら何をされるか分からないから何も喋ってはいないさ。」

 

 

アーチャーはまだ、姉さんに何も喋ってない。姉さんに隠してること、多過ぎていざバレたらぼくも此処にはいれない。

 

 

 

「……安心しろ。君が何を隠しているのか知らないが、先輩やミレイの事もあるし私は何一つ自分のマスターに話すことは無い。お互い、私たちは共犯者だ。だから、君もこれ以上の私に対する追求はやめたまえ。それでお互いに、プラマイゼロだ。」

 

 

アーチャーの方が駆け引きは一枚、上手だったらしい。ほっと、胸をなで下ろす。

 

 

 

「わかった、じゃあ…最後に一つだけいい?」

 

「何だね?」

 

「キャスターの事は兎も角さ、その…誰かさんのことは吹っ切れたの?なんか、キャスターの勝手ばかりで君に悪いなって。」

 

「彼も先輩も、私にとっては同じだ。優劣をつけるつもりも無いよ。二人共、それは割り切ってるんじゃないか?」

 

「まるで、その人も君とキャスターの関係知ってるみたいに言うよね?変なアーチャー。ねえ、その人ってキャスターに似てるってことはぼくにもそっくり?」

 

 

いたずら心でそう聞けば、アーチャーは不意にぼくの頭を撫でて来た。びっくりして、アーチャーを見ると彼は何処か困った顔をして笑う。

 

 

 

「…君には似ても似つかないさ。なられても困る。」

 

「よかった。」

 

 

彼の笑った顔はやっぱりシロに似てるんだけど、ぼくは気付かないフリをした。




補足

弓兵さん、生前の記憶プラスαでオリ主の知らない所で我様と
面識アリ。本編の何処かでオリ主のバイト先にこっそり来店済み。
我様と鉢合わせして、死にたくなければ二度と来るなと凄まれて
面倒事回避の為に弓兵さん撤退。そんな感じ。

この時点でオリ主はアーチャーの正体に何と無く気付いてるものの
弱みを握られ、それ以上の追求はやめる。

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