双つのラピス   作:ホタテの貝柱

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第二十七話 斯くして青い悪魔は暗躍する

「…シロ、シロってば!」

 

 

背後から声をかけられ、仕方無く後ろを振り返る。付いて来なくていいって言ったのに、リヒトは付いて来た。

 

 

 

「歩くの早いよ。ずんずん一人で行っちゃうんだから!」

 

 

リヒトは俺が先にどんどん一人で行ってしまうのが不満なのか、少し怒った様子で頰を膨らませる。親父に引き取られてからも、この場所に何度と足を運んだ。ある日、うちに来たリヒトが自分も行くと勝手に俺の後をついて来たのだ。

 

 

 

「文句言うなよ。勝手に付いて来たのはリヒトだろ?」

 

「そうだけどさ…シロ、いつもおうち抜け出してここまで来てたんだね。」

 

 

一面の無惨な焼け野原を、リヒトはゆっくり見渡す。瓦礫は殆ど撤去されたが、まだ整備が追い付かずにこの辺りも手付かずな侭だ。

 

 

 

「この辺り?シロのおうちがあったの。」

 

 

リヒトは何かを察した様に、此処に元々の俺の家があったのかと聞いて来たから驚いた。

 

 

 

「此処に、玄関があった…」

 

 

焼け落ちて、今は何も無い場所を指差す。あぁ、来る度に自分がどんなに虚しいことを繰り返しているのか分かっている。

 

 

 

「彼らは…もはや飢えることも、渇くこともなく……太陽も、どのような暑さも、彼らをおそうことはない。 」

 

「…リヒト?」

 

 

すると急に、リヒトが年不相応な難しい言葉を使いながら何かをそらんじ始めた。リヒトは慣れた様子で小さな指先で十字を切る。

 

 

 

「命の水の泉へみちびき、神が彼らの目から涙をことごとくぬぐわれるからである…Amen」

 

 

リヒトがふっと目を閉じ、何かに祈る様な仕草をした。見ていて何だか、不思議な気分になる。

 

 

 

「少しは気休めになったかな?キレイがね、たまにお葬式でこのフレーズ使ってるから。」

 

「キレイ?」

 

「ぼくの父さん。」

 

 

どういう訳か、俺は世話になる筈だった教会の子供とこうして仲良くなった。初めて会ったのは病室で、中々目を覚まさない俺を…リヒトは父親である神父に連れられ、病室を訪れる度に気にしてくれていたらしい。

 

 

 

「父さんって、呼ばないのか?」

 

「たまに呼ぶよ?本当に、たまにだけど。」

 

「……お前も変わってるよな。」

 

「姉さんにも言われる。あんたみたいなの、ヘンジンって言うのよって。」

 

 

リヒトには大層気の強そうな姉もいるらしい。あと時折、リヒトの口から王様なる人物の名前も出て来てこいつの家庭環境、一体どうなってるんだといつも思う。

 

 

 

「リヒト、帰るか。」

 

「まだ居たいなら、ぼくもいるよ。」

 

「いい…今日は帰る。ほら、手。」

 

 

自然と手を差し伸べれば、リヒトはほわりと柔らかい笑みを浮かべて俺の手を取ってくれる。何だか気恥ずかしくて、目線を逸らしてしまう。

 

 

 

「やっぱり、シロは優しいなぁ。」

 

 

別に、俺は優しくも何ともない。繋いだ手を、きゅっと握り締める。リヒトの手はあったかいから好きだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

枕にしては肌に触れてる様な柔らかさがあるなと思ったら、リヒトに膝枕されて一晩中、手を握って貰っていたとは…しかも、恋人繋ぎで。

 

 

日に日に、色んな意味で寝起きの状態が悪化してる。

 

 

 

布団に寝かされていた俺の体には毛布が掛けられ、リヒトは俺を片足で膝枕し、立て膝に頭を預けるかたちでうつらうつらと船を漕いでいた。

 

 

見れば、其処はいつもセイバーが寝ている部屋で…リヒトは俺の代わりにセイバーの様子をずっ見ていてくれたらしい。見れば、眠るセイバーの額には冷えピタが貼られている。

 

 

 

「……ったく、そういうのは俺の役目だってのに。」

 

 

リヒトを起こさぬ様、身を起こして小声で一人ごちる。昔はおんなじ位の手の大きさだったのに…今はリヒトの方が手も大きい。まるで、俺の手なんか小さい子供の手だ。

 

 

 

この手は本来、俺なんかじゃない誰かの手を取るべきだと思う。けれど、その手を離すのがどうにも名残惜しいから困る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…出かけるのか?」

 

 

玄関先、相も変わらず呑気そうなキャスターに声をかけられる。

 

 

「別にいいだろ、俺が何処に行こうと勝手だ。」

 

 

今はどうにも、こんな気持ちで家に居たくなかった。

 

 

「たまに、君の行動は軽率過ぎる時がある。セイバーがあんな状態で、マスターである君が一人外へ行こうとするのはよくないぞ。……悪いフンババに攫われても、本官は知らないからな。」

 

 

余計なお世話だ。すぐに戻ると投げやりな返事をし、キャスターがまだ何か言ってた気がするけど無視してぴしゃりと引き戸を閉めた。

 

 

 

 

 

 

 

「セイバーが消えたら、またリヒトに余計な事されても困るし…シロウをマスターにいつまでもさせて置けないわ。お姉ちゃん(わたし)の邪魔をする悪い(リヒト)にはお仕置きなんだから。」

 

 

朝早い公園にて、彼女と出逢ってしまったことを後悔しても今更遅い。

 

 

「あのキャスターさえ居なければ、もっと早く会いに行けたのに。」

 

 

 

妙な事に、イリヤはキャスターのことを、少し苦手にしている様な口ぶりだった。

 

 

「昨日、私もあのビルに居たのよ?シロウがライダーのマスターを逃しちゃって、折角私が代わりに殺してあげようと思ったら…リヒトが邪魔なんかするから。」

 

 

 

リヒトから、そんな話は聞いてない。一体、昨日の夜にイリヤとリヒトにどんなやり取りがあったのか。

 

 

「昨日はちょっと油断して、キャスターにバーサーカーを一回殺されちゃったけど…次は容赦しないんだから。私がお兄ちゃんを攫ったって知ったら、リヒト怒るかしら?もしかしたら、お城まで来ちゃうかな。」

 

 

 

自分の軽率さがリヒトの身も危うくさせている。そんな絶望感が自身を襲う。イリヤの目的の中には、リヒトも確実に含まれている。

 

 

「あんなキャスターなんか…私のバーサーカーが本気になれば、怖くないわ。 」

 

 

 

そう言って、無邪気に笑うイリヤに恐ろしさを感じてぞっとした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「本ッ当!君って奴は…呆れてモノも言えないよ!!」

 

 

情け無く両手を椅子の後ろ手に縛られ、何か行動制限のある魔術がかかっているのか満足に動けない俺を目の前にして、キャスターがひどく苛だたし気に、わざとらしく大きな溜息を吐いた。

 

 

 

キャスターは何故か、リヒトのフリをしていつもの司祭服の様な黒服に青いストールの様なものをつけてる。

 

 

「Testa di cazzo!これじゃあ、大っきなシロの方が君を殺したくなるのも分かるよ。君、馬鹿なの?自分がどういう行動すればどんな結果になるか、考えられない程オツム弱いの?」

 

 

 

キャスターが慎二を前にした時のリヒトの様な怖い顔で、余り意味の宜しくなさそうなスラングらしい言葉を口にして、毒を吐きまくる様は凡そらしくない。時折、リヒトの口からイタリア語らしい単語が出て来るけど、キャスターも喋れるのか。

 

 

今、俺は何処とも分からない子供部屋の様な場所にいる。気付けば、目の前の子供サイズのベッドにどっかりとキャスターがふてぶてしい不機嫌な態度で腰を下ろしていたのだ。

 

 

 

「リヒト…じゃなかった、キャスター悪かった…ところで、今何時だ…?」

 

 

「もう真夜中だよ!君がぼさあっと…呑気に意識を失ってる間にね!」

 

 

あからさまに舌打ちしながら、キャスターが俺の背後にあった窓のカーテンを開け放つ。外は暗闇に包まれていた。

 

 

「もうそんなに時間が…せ、セイバー達は…?」

 

「君が拉致されたことに気が付いて、セイバーが姉さんに頼み込んで救出に同行して貰ってるんじゃないの?君の所為で、どれだけ人に迷惑掛けてるか自覚あるわけ?」

 

 

 

不意に胸倉を掴まれ、激しい怒気のこもった目線で睨め付けられて心臓が縮こまる思いがした。キャスターが本気で怒ってる。キャスターも怒るのか、いや怒って当然のことを俺はしでかしたのだ。

 

 

「僕はあの子の様に優しくないからね。君がしでかした事は一人の勝手な単独行動の所為で、一部隊が全滅し兼ねない愚行だ。一人で死ぬのは勝手だけど、他人を巻き添えにするなよ。いっそ、此処で僕が君を殺してやりたい位だ!」

 

 

 

普段のキャスターなら決して、人に対する殺意を軽々しく口にしない。しかし、本気で怒ったキャスターは俺に対して明確な殺意を抱いてる。

 

 

「今までは多少の君の無茶には目を瞑って来たけど、今回の一件で君を本気で嫌いになりそうだよ。何でそんな顔するのさ?大好きな昔馴染と同じ顔した僕に嫌いって言われたことがそんなにショック?」

 

 

 

俺を精神的に散々痛め付け、キャスターはとても楽しそうに嗜虐の笑みを浮かべる様は悪魔の様だった。嫌いだと言われ、ずどんと胸に容赦無く銃弾を撃ち込まれた様な衝撃があった。そんなこと、お前の口から言わないで欲しい。

 

 

「安心しなよ、僕は君の昔馴染じゃない。直にセイバー達が来る。その前にイリヤ姉さんが来ちゃうけど、何言われても絶対頷いちゃダメだよ?それだけ守れば、後はどうにでもなる。分かった?勝手が過ぎるペコレッラ。」

 

 

 

散々俺に怒りまくったキャスターだけど、助言めいた言葉をくれる所はやっぱりいつものキャスターだった。

 

 

「泣かないでよ?小ちゃなシロ。大っきなシロと同じ顔で泣かれると、罪悪感あるからやめて。」

 

「ちっちゃいってなんだよ…!気にしてるんだからな…アーチャーと俺は似てないって言ってるだろ!!」

 

 

 

目尻にうっすら溜まったそれを拭う様な手つきは、人を散々痛め付けたひどい言葉とは裏腹に、妙に優しいから腹が立った。

 

 

「いいや、君らは僕から見たらそっくりだ。軽率に無茶する所は本当、相変わらずなんだから…」

 

 

 

小ちゃなシロが俺で、大っきなシロがアーチャーの事らしいのは分かったけど俺らは絶対に似てない!!

 

 

「君が中々目を覚まさないから、長居し過ぎちゃった。生憎、僕は君を助けに来た訳じゃないんだ。まだ色々やる事があるから、じゃあね?あー…くれぐれも僕のこと、誰にも話したら駄目だよ。イリヤ姉さんにかけられた眼術は解いてあげるから、彼女が部屋に来てから部屋を出るまでにはすっかり解けてるよ。」

 

 

 

そう言って、キャスターはリヒトの様に、俺の瞼に軽いキスを落とす。本当に何なんだよ、こいつ…俺のこと嫌いだとか言いながらこんな事して。

 

 

そしてキャスターは普通に部屋の扉を開け、部屋を出て行った。あいも変わらず、俺は椅子に手を後ろ手に縛られたまま、一人残されてしまう。

 

 

 

しかし、なんだかキャスターの様子が変だった。キャスターの奴、イリヤの事をイリヤ姉さんなんて妙な呼び方はしてなかった筈だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

小ちゃなシロと別れ、城の間取りをぼんやり思い出しながら内装の凝った廊下をカツカツ歩く。小ちゃなシロの軽率さには本気で頭にキた。

 

 

セイバーをほったらかし、のこのこと一人で外を出歩くなど自殺行為だ。案の定、イリヤ姉さんに見付かって囚われの身だ。小ちゃなシロを殴らなかっただけ、自分を褒めたい。

 

 

 

『……君がその気なら、本官は何もしないぞ。』

 

 

キャスターはいつもの放任主義よろしく僕に全部を丸投げしてきた。キャスターもまぁそれなりに、自分のルールで動いてるから今回の一件はどうするつもりだったのか。

 

 

 

何かの間違いで、大っきなシロが消滅しようものなら目には目を歯には歯をとかいう自国の言葉の様に、キャスターならイリヤ姉さんをバーサーカーごと殺しかねないから僕が来たんだ。

 

 

かと言って、あの子に来させたら最悪王様が出しゃばる可能性もあるから非常に困る。キャスターも表向きの性格はあんなだけど、王様と同じく中身は取り扱いを間違えれば厄介だ。

 

 

 

「にしても城の間取り、全然変わってないな…」

 

 

たまに来てたから懐かしい。キャスターはあの子とイリヤ姉さんの接触を極力避けていた。イリヤ姉さんから何度か、あの子にコンタクトを取ろうとしていたみたいだけど。イリヤ姉さん、それに気付いたのかキャスターのことは嫌ってるみたいだし。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なぁんだ、リヒトは来てないんだ。つまんないの。」

 

 

脱出を図ろうとしたその瞬間、バーサーカーと共に現れたイリヤスフィールは私達の中にリヒトがいない事に気がつき、いかにも残念そうだ。

 

 

 

「優しいリヒトの事だから、シロウが私に捕まったって知ったら飛んで来ると思ったのに。昨日の今日で私、怒ってるのよ?リヒトが余計なことするから。」

 

「…昨日、あいつが何やったって言うのよ。」

 

「私が殺そうとしてたライダーのマスターを、リヒトが何処かにやっちゃったの。その後、あのキャスターをバーサーカーに無理やりクラスを変えさせて…聖杯の縛りが無いって、あんな無茶なことも出来るのね。」

 

 

サーヴァントのクラスを変えさせた?一体、イリヤスフィールが何を言っているのか分からなかった。けど、リヒトが彼女と昨晩交戦したのは間違い無いらしい。

 

 

 

「リン、どうしてリヒトを連れて来なかったの?リヒトならバーサーカー相手でも、あなたたちが万が一にも逃げ切るだけの時間稼ぎは出来たかもしれないのに。あの子なら自分から、その役割を買って出た筈よ。」

 

 

何で私が大事な弟を、敵に差し出す様な真似しなくちゃいけないのよ。士郎がいなくなったと知って、リヒトは開口一番に自分も行くと言い出した。けれど、それを珍しくあのいけ好かないキャスターが止めたのだ。

 

 

 

『凛、白雪の姫の目的には半身も含まれてる。聖杯戦争が始まる少し前から、半身はどういう訳か知らないが、白雪の姫に付け狙われていた。接触を避けるのに、本官も苦労していたんだ。』

 

 

そんな話、私は知らない。リヒトも知らなかったらしく、その時初めて聞いたという顔をしていた。

 

 

 

『でも、キャスター!今はそんなこと…』

 

『半身、本来であれば我らは中立的立場の筈だろう?依怙贔屓はよくないぞ。それに、今回の一件はシロの完全な過失じゃないか。自業自得だ。』

 

 

キャスターは今回の件に対し、自分は一切関知しないとやけにらしくない態度だった。リヒトもキャスターにそう言われ、苦々しい表情を浮かべて黙り込んでしまう。

 

 

 

『セイバー、貴殿も異存は無いだろう?』

 

『はい…リヒト、今回の一件は私たちの問題です。貴方がわざわざ踏み込むべき理由はありません。イリヤスフィールの目的に貴方も含まれてると言うのなら、尚更です。』

 

 

珍しく、キャスターとセイバーの意見が一致した。それで士郎の家の留守はリヒトとキャスターに任せ、私とアーチャーがセイバーに同行して今に至る。

 

 

 

「アーチャー…時間稼ぎ頼める?キャスターには、私から言っとくわ。」

 

 

結局、私は自分のサーヴァントを犠牲にするより他無かった。今の内から、あのいけ好かないキャスターに対する謝罪の言葉を考えてる自分が馬鹿みたい。アーチャーは無言で頷いた。それが一番正しい選択だと言いたげに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何れ、こうなる事は分かっていた。何を今更。

 

 

凛は今頃、私の事を先輩に謝る算段でも考えてるに違い無かった。まったく、らしくない。

 

 

 

『アーチャー、すまない。』

 

 

行く間際、先輩がそんなことを言ってきた。

 

 

 

『何故、貴方が謝る?オレのマスターは案外、困っている人を放って置けないお人好しだからな。貴方としても、リヒトを危険に晒す訳にもいかな…』

 

『……必ず戻れ。本官はそれしか言わない。』

 

 

オレの言葉は途中、先輩の強引な口付けに遮られた。全く、本当に無茶苦茶な人だ。そして彼は…出て来なかった。無理にでも、別れの挨拶位はしておいた方がよかったか。いや、それは無粋だと思いしなかった。

 

 

 

凛達が城を出たのを確認し、臨戦態勢に入る。目前のイリヤはオレ一人に何が出来るのかと嘲笑う様に笑みを深めた。

 

 

「アーチャーたった一人で、何が出来るって言うの?」

 

 

 

目標は六つ。それだけ削れれば上出来だろう。聞けば、先輩が一つ分削ったという話だ。

 

 

『いっそ、あれを真っ先に標的として狙った方が早かったが…』

 

 

 

オレにそんなこと出来る訳が無いと知っておきながら、先輩はわざとあんな事を言ったのだから忌々しい。また、彼を置いて先に逝くことになるとは皮肉な話だ。

 

 

「別に、あれを倒してしまっても構わんのだろう?って…君、本当にキザだよね。」

 

「なっ…!?」

 

「勝手に消えるとか、絶対に許さないから。また僕を置いてく気だったでしょう?」

 

 

 

代行者がよく使う、黒鍵の様な形をした柄の先が霞みの様に揺らめく妙な刃先を持つ武器を手に彼が現れた時は面食らった。

 

 

「リヒト…?」

 

「やっほーイリヤ姉さん。久しぶり?会えて嬉しいよ。」

 

 

 

場違いにも、彼はイリヤをイリヤ姉さんなどと呼び、ひらひらと手を振る始末である。そう言えば、彼はイリヤをそう呼んでいたか。当のイリヤは突然現れた彼を見るなり、首を横に二、三度振った。

 

 

「違う、リヒトだけどリヒトじゃない…あなた、誰?」

 

「…やっぱり、イリヤ姉さんすごいね。僕はイリヤ姉さんの知ってるリヒトじゃないけど、元はリヒトだった誰かさんだよ。」

 

 

 

あながち、その比喩は間違っていない。彼は元々、コトミネリヒトだった今は名前も無い誰かだ。イリヤは何かを察した様子で、瞳を大きく見開いた。

 

 

「嘘、そんなことって…あのキャスター…!!あなたをそんな風にさせたのは、あのキャスターでしょ!?」

 

「どうしてイリヤ姉さんが怒るのさ?むしろ、僕はキャスターに感謝さえしてるよ。」

 

 

 

そもそも、彼が先輩と分離して単独行動が出来るなんて知らなかった。先輩と同化して、彼もまた英霊に近しい存在へと変化していたなんて。

 

 

「…ところで君、クラスは何だ?」

 

「僕もてっきりキャスターかなーと思ったんだけど、実は…バーサーカーみたいなんだよね。」

 

 

 

実に彼らしいクラスだと思った。彼の場合、キャスターの枠組みには収まりきれない凶悪さだ。いっそ、バーサーカーが相応しい。

 

 

バーサーカーの中には、狂化により理性を失った者以外に在り方が狂気染みていて一見、見た目は理性的な振る舞いをする者もいると聞く。彼もまた、その一例だろう。

 

 

 

「イリヤ姉さん、僕も貴女とは戦いたくないんだけど…今回に限っては致し方無いんだよね。」

 

 

イリヤが静かに、息を呑むのが分かった。

 

 

 

「…バーサーカー、相手が誰だろうとあなた以外のサーヴァントはみんな敵よ。」

 

 

彼と肩を並べるのは、ひどく久しくも懐かしい感じがした。




バーサーカー戦によりアーチャー消滅→強制BAD
オリ主がアインツベルン城へ→UBWギルガメッシュVSバーサーカー戦同様の末路

悪いフンババ=ヘラクレス

以下、オリ主②の別人格設定

真名:???
クラス:バーサーカー

某赤い弓兵の生前と同軸の誰かだった存在。
とある目的により、オリ主②を通じて抑止力と接触。
オリ主②と同化するかたちで、半英霊化。

生前は元軍人であり元神父という特殊な経歴。
若干人格が壊れ気味、怒りが一定量に達すると
かなり宜しくない意味のイタリア語スラングを飛ばしながら
毒を吐きまくる。





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