双つのラピス   作:ホタテの貝柱

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第十五話 とある朝の話

「最後に縋った神が君とはおかしな話だね。僕にとっての身近な神様は君か、王様くらいしかいなかったから。」

 

 

これは誰の夢だ?先輩に縋り、静かに落涙する彼は終ぞオレの前で泣いたことがあったか。

 

 

 

「がむしゃらに人の為に生きて、人の為に全て犠牲にして、死んでも報われないなんて、そんなひどい話ある?」

 

「……彼は悔やんでいたか?それは君の独りよがりかもしれないぞ。」

 

 

せめて、彼が幸せな末路を迎えてくれればあとは未練など無かった。置いて逝くことを、どうか許してくれと最期の最期に懺悔したのに。

 

 

 

「構わない、お願いだ。僕を助けてくれ。」

 

「アラヤの様な真似はしたくなかったんだがな。いいのか?この軸に在る君の存在は消えるかもしれないんだぞ。」

 

「少なくとも、他の僕はこんなことにはならないよ。それに、後悔ならしない。元々僕等は一つじゃないか。」

 

 

それもそうだな、そう言って微笑った先輩は慈愛を湛えた聖者の様であり、死に行く愚者を嗤う死神の様にも見えた。

 

 

 

「義父の恩赦すら蔑ろにするか。我ながら、つくづく君は親不孝で人間的だな。悦べ、死にたがりの不心得者。君の願いはようやく叶うんだ。」

 

 

涙まじりに力無く笑う顔はもう何もかも、棄てるつもりの顔だ。嗚呼、オレが君をそうさせたのか。

 

 

 

「彼はきっと、君を忘れているぞ?記憶を保った兄上とは違って、彼は普通の人の子だ。」

 

「忘れられるのはもう慣れっこだ。いっそ、また初めましてから始めるさ。」

 

 

先輩は自らに縋る彼の背に、ゆっくりと腕を回す。こっちに来てはいけないと言っても、彼は構わずまたオレなんかを追ってこちら側に来るのだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

前髪を誰かに弄られてる気配がする。柔らかい指先が額の上を徒らに往復しては、くしゃりと前髪を掻き混ぜられるの無意味な繰り返し。しかし、決して嫌な感触ではない。意識はまだ緩やかな微睡みの中にいたいと、覚醒をやんわり拒否している。

 

 

「アーチャー、起きているのだろう?」

 

「先輩、オレの髪は…おもちゃじゃないぞ。」

 

 

 

本来の目的さえ、この人の所為で大分遠のいてしまった。恐らく、彼はオレにあいつを殺させはしないだろう。何と無くではあるが、この人はきっとオレの正体を知ってる。

 

 

オレも何となく、この人いや、この男の正体を思い出しつつある。オレに会いに来たと、生前は東の果てまで追いかけてくるような男だった。まさか、地獄の底まで共に落ちてこようとは思わなかったが。

 

 

 

「それは済まなかったな、貴殿の髪が柔らかいからつい堪能してしまったよ。」

 

「魔力焼けした髪をいじって、何が楽しいのだね?あぁ、すっかり髪が乱れてしまった。」

 

手櫛で髪を適当に整えて横目で先輩をちらりと見る。冬木の聖杯戦争に召喚され、オレがマスターよりも先に出逢った奇妙なサーヴァントが彼だった。

 

 

 

マスターとそっくり同じ顔を持ち、名乗る名前が無いからとクラス名のキャスターを仮初めの名とする古の守護者。紛らわしいから、先輩と呼び始めたらこれが意外と定着してしまった。

 

「おはよう、アーチャー。」

 

 

 

不意打ちの穏やかな微笑は目の毒だ。柔らかく笑いかけられ、無意識に赤くなる頰が恨めしい。図らずもこの男によって植えつけられたその感情は、サーヴァントとしても守護者としても、不要なものだ。

 

 

昨日、見事に嵌められて私はこの男にこの身を差し出す羽目になった。神が供物を人へ要求する様に、この男は勝手にオレをアラヤとの交渉材料に使い、あっさりと許可されて恐らくは聖杯戦争が終わればなんらかのかたちで現世に留まっていた彼も座には還るだろう。

 

 

 

推測するに、ある程度の勝手が許される位にはアラヤと彼の間には相互関係が出来上がっているらしい。

 

 

『アラヤから座に戻る条件に、お前が末端の英霊を欲しがる酔狂な物好きでよかったと言われてしまったよ。ひどい話だろ?』

 

『アラヤからも貴方は相当な物好きに見えたんだろ。だから、何故オレなんだ…』

 

『ずっと会いたかった。』

 

 

不意に耳元で囁かれた切実さの込められた言葉に、ひどく心を揺さぶられた。切なげに細められた金色の瞳が一瞬だけ瑠璃色に瞬いた。

 

 

 

『こちらへ喚び出される以前より、座にて君の気配は薄っすらと把握していた。多少の無理をすれば、会いに行くことも出来たろうけど…君は僕をすっかり忘れているだろうし。突然知らない奴から会いに来たと言われても怖いだろう?僕は君に、拒絶されたくない。』

 

 

英霊が怖いなどで思うものか。しかし、この男はオレに拒絶されることを何より恐れていたらしい。たわけ、拒絶などするものか。

 

 

 

いつもはズカズカと人のパーソナルスペースへ平気で踏み込んでくる癖に、変なところで臆病なんだ。

 

 

『ならば何故、あのとき初対面のフリをした?』

 

『ごめんね、僕が白々しい性格で。まぁそれよりも…まさか君が屋根から落ちて来るとは思わなくて。』

 

 

 

クスクスと可笑しそうに笑う、先輩の額を軽く小突く。まったくこの男は。どうにもオレは、彼を随分と待たせてしまったらしい。自覚が無いだけに、大変申し訳無かった。

 

 

「アーチャー?」

 

 

 

気がつくと、きょとんした顔で先輩がオレを見ていた。口調と共に、瞳の色は元に戻っている。その顔は何処と無く幼さがあり、あの子と被る。

 

 

「なんでも…ない。」

 

「そうか、またいつもの偏頭痛かと思ったが大丈夫か?熱は無さそうだな。」

 

「サーヴァントが熱など出すものか。」

 

 

 

ひたりと、不意に額を付き合わされた。どうしてこういうことを…この男は無意識にやってるのか、わざとやってるのか。

 

 

「アーチャー、なんだか急に額が熱くなったぞ。」

 

「…誰の所為だ。」

 

 

 

見つめ合うこと数分、どちらとも無く互いの口唇を重ね合うこと数秒。今日は気分がいいから、朝の洗濯位はしてやろうと先輩が言う。まだ誰も起きていないのか、朝焼けの屋敷の中はとても静かで心地がよい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ハタハタと、白いシーツが風にはためく。メイガスが洗濯物を物干し竿にかけている姿は物珍しかった。早朝、喉が渇いて井戸まで水を汲みに行ったところにメイガスと出くわしたのだ。

 

 

「どうしたセイバー?そんなに本官が洗濯物を干す姿が珍しいか。」

 

「いえ…メイガスが家事をしているのが新鮮で。」

 

 

 

近くにアーチャーがいるからか、メイガスは私をセイバーと呼ぶ。アーチャーはメイガスの近くで、慣れた様子で洗濯物を干していく。この二人の組み合わせもなんだか不思議だ。

 

 

「セイバー、君は彼をメイガスと呼んでいるのか?」

 

 

 

この屋敷に凛が来た折、アーチャーとは簡単な自己紹介は済ませていた。

 

 

「彼は名前が無いと聞いたので、私はそう呼んでいます。性格はこんなですが、彼程の魔術師であれば賢者(メイガス)と呼んでも差し支えは無いかと。」

 

「…セイバー?それは少々聞き捨てならないぞ。」

 

 

 

メイガスは昔、私の祖国にて相談役をしていた宮廷魔術師を彷彿とさせるような性格をしているため善人とは言い難い。そんな私の考えを察したのか、メイガスは小さく溜息を吐く。

 

 

「本官があの魔術師に似ていると?勘弁して欲しいな、本官はあそこまで脳内花畑に成り下がった覚えは無いぞ。」

 

「多少、マシな程度でしょう。そう言えば、あなたはあれと顔見知りでしたね。」

 

 

 

何故か、メイガスはあの男と顔見知りのようであれと自分を一緒にしないでくれと眉をひそめた。脳内花畑…あながち間違ってはいない。あれもれっきとした魔術師の筈なのだけれど。

 

 

「セイバー、何もそこまで先輩に辛辣になることはないだろ。」

 

 

見兼ねたアーチャーが洗濯物を干し終え、私とメイガスの間に割って入る。

 

 

「気にするな、アーチャーよ。本官とセイバーは以前からこんな感じだぞ?本官がセイバーの知ってる魔術師に多少、似ているからさ。あれとセイバーの関係は正に微妙な関係なんだよ。」

 

「私の知らない話をされても困る。」

 

 

 

むすっとアーチャーが拗ねたような表情を僅かに見せる。いつもは彼に冷たい印象を受けるのだけれど、メイガスの前では彼の表情はいつもより豊かだ。

 

 

メイガスの言う通り、私とメイガスは前からこんな感じだし、アーチャーが見兼ねて割って入る程でもない。

 

 

 

「そういう貴方こそアーチャー、メイガスと一緒にいるのは珍しいですね。」

 

「た、たまたまだ!」

 

 

あからさまにメイガスと距離を取るアーチャーは熱でもあるのか頰が赤い。何故だか分からないけれど、メイガスの前では彼の印象が随分と違う。

 

 

 

「アーチャー、熱でもあるのですか?やはりまだ体が本調子では…」

 

「体はもう大丈夫だ問題無い!私は先に戻っているぞ!」

 

 

 

そう言うと、アーチャーはさっさと洗濯かごを手に母屋へとずんずん足を進めていき、行ってしまう。後には、私とメイガスだけが残された。

 

 

「メイガス、アーチャーはどうしたのですか?」

 

「見目麗しい貴殿を前にして、照れ臭かったんだろう?あれは美人に滅法弱い。」

 

 

 

たまにメイガスは軽薄な言動をする。以前、戦いの場で私に求婚してきた場違いなサーヴァントがいたけれどあれよりは多少マシだ。

 

 

「貴方はまたそうやって…容姿など、私にとってはあまり関係無い。しかし随分と、アーチャーと仲が良いのですね?少し意外です。」

 

「イナンナの娘が彼を召喚して以来の仲だ。」

 

 

 

イナンナの娘とは凛のことだ。彼の言い回しは少し変わってる。すると、メイガスがフッと笑った。

 

 

「メイガス?」

 

「そうだな、貴殿の言う通り昔馴染みの様に馬が合うから不思議だ。」

 

 

 

メイガスはたまに、何を考えているのか分からない。そもそも、生前のメイガスは人寄りと言うよりは神寄りの生を送っていた為なのか何処か浮世離れしていて、掴み所が無いのだ。

 

 

「しかしアーチャーは真に手際が良いな、洗濯が直ぐ終わってしまった。」

 

 

 

ぴしっと真っ直ぐ整えられ、干された洗濯物たちを見てメイガスは素直に感心しているらしい。この者自体はとても人間臭いのだけれど。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「半身ならまだ帰って来ていないぞ?」

 

リヒトが帰ってきていないかと、あいつの使ってる客間に向かうと、リヒトの部屋の前で部屋着姿のいけ好かない使い魔が戻らぬ主人の留守を告げてきた。

 

 

 

「リヒトが帰って来るまで、あんたはリヒトのフリをする訳?」

 

「そういうことだな?姉さん。」

 

 

わざとらしく、リヒトの口調を真似して使い魔が姉さんと呼ぶものだから面白くない。

 

 

 

「…先輩、あまり凛をからかうな。」

 

「アーチャー?」

 

 

霊体化していたアーチャーが私と使い魔の間に割って入り、使い魔を諌める。先輩って何よ?あんた達、話したことあったっけ?普段、リヒトの使い魔が何をしているかなんて知らない。けど、こいつには自我があるようで昨晩は呑気にお茶なんて飲んでた。

 

 

 

「貴殿のマスターは本官が弟のフリをするのはお気に召さないらしいぞ?アーチャー。」

 

「貴方も人が悪いな。」

 

 

私を庇い立てする様に、アーチャーが私を自らの後ろに隠した。それを使い魔が愉しそうに覗き込む。

 

 

 

「頼り甲斐のあるサーヴァントが居て良かったな?」

 

 

それは紛う事なき皮肉の言葉だ。本当にこの使い魔は口が減らない。顔は一緒なのに、リヒトとは似ても似つかないから腹が立つ。

 

 

 

「あんたとアーチャー、話したことあるのね。知らなかったわ。」

 

「アーチャーは毎夜、本官の語らいに嫌な顔一つせず付き合ってくれているよ。彼自身も一人で夜の見張りをするのは退屈だからな。」

 

 

その時、私は見てしまった。リヒトの使い魔がさり気なくアーチャーの肩を掴み、自分の方へ引き寄せるなり、一瞬私に挑発的な視線を向けたのを。

 

 

 

「おい先輩、凛の前でなにを…!」

 

「君によくして貰ってると、彼女に伝えたかっただけだが?他意はないよ。」

 

 

そう言って、リヒトの使い魔はパッとアーチャーから手を離し、先程とは打って変わり愉しげな目線をアーチャーに向けた。アーチャーはちょっと肩を触られた位で、珍しく動揺してる。

 

 

 

その後、リヒトの使い魔は何事も無かったようにリヒトの部屋へと戻っていく。

 

 

「……良かったわね、アーチャー?仲良くしてくれるお友達が出来て。」

 

「な、何の話だね…?」

 

「もしかして、此処に来る前からあんたが夜な夜な話してたのってリヒトじゃなくてアイツ?声も一緒だから気付かなかったわ。」

 

 

 

時折、アーチャーはリヒトと夜な夜な話してたのは覚えてる。けど、あれがもしリヒトじゃなくてアイツなら?友達と言うには、変な感じもするけど。

 

 

「黙っているようで、悪かった…その通りだ。」

 

「それに、随分な気に入られようじゃない。今さっき、あいつに牽制されたんだけど?」

 

「彼が君に?」

 

 

 

アーチャーがそんな筈は無いと言いたげに目を見開く。何故だか知らないけど、私はあのいけ好かない使い魔に牽制されたようだった。あの使い魔、随分とアーチャーにご執心らしい。

 

 

私の知らないところで、あの使い魔とアーチャーは随分と仲良くなった様で…面白くない。何故だか知らないけど、物凄く面白くなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アーチャーとキャスターのこと?仲良いよねーあの二人。アーチャーが召喚されて2日後には二人して仲良く台所に立ってたよ。」

 

 

受話器の向こうから、呑気にあの二人仲良いよねなどと語る弟の声。どうにも腹が立ち、気が付けばリヒトの持ってる携帯の番号に電話をかけていた。

 

 

 

「今日はセイバーが朝から二人して、仲良さそうに洗濯物干してたの見たって言ってたわよ。っていうか、あいつのことキャスターなんて呼んでるの?」

 

「珍しい、キャスターが自分から家事やってくれるなんて。あーうん、名前が無いと不便だからさ。聖杯戦争のクラスに肖って、キャスターってぼくは呼んでる。」

 

 

あいつ、キャスターという紛らわしい名前らしい。さっき、セイバーが朝から洗った洗濯物を干してるアーチャーとキャスターを見たと言っていた。

 

 

 

「自分の使い魔の躾位、きちんとしておきなさいよ!あいつ、何故だか知らないけどアーチャーのことやたら気に入ってるみたいで私、牽制されたんだからね!?」

 

「えー無理。キャスターも姉さん相手に牽制なんて、怖いもの知らずだなあ。よっぽどアーチャーのこと気に入ったんだね。キャスターと姉さんが険悪な時、変にアーチャーが姉さんの肩入れでもしたんじゃない?キャスターがヤキモチ焼いたんだよ。」

 

 

あながち間違いではないから、そんなこと無いでしょと否定出来なかった。ただの使い魔がヤキモチ?

 

 

 

「あんた、ただの使い魔に感情まで持たせたの?どういう仕組みしてんのよ。あんたの高性能過ぎる使い魔。」

 

「知らないよ、キャスターってば何かに執着心見せるようなタイプじゃなかったからぼくも驚いてる。」

 

 

リヒトが嘘を言っているようにも思えない。アーチャーもあながち満更ではなさそうだから、余計私も面白くないのだ。

 

 

 

「で!あんたはいつ帰って来るのよ?まさか今日、学校サボるつもり?」

 

「仮眠取ったら帰るつもりだったんだけどさ、気が変わった。今日一日、キレイに嫌がらせしてくる。学校には欠席の連絡入れとくから。」

 

「そんなことしなくていいから、早く帰って来なさいよ!」

 

「ごめん、姉さん。夕方位には帰るから。あと、キャスターに寝たふりしとけって言っといて。桜が起こしに来ると思うから。」

 

 

そして、電話が切れた。バカリヒト、私が早く帰れって言ってるんだから早く帰って来いっての!

 

 

 

「ならば本官は半身の言う通り、寝たふりをしておこう。彼女の最近の楽しみを奪うのは可哀想だからな。」

 

「いつからそこに居たのよアンタ!?」

 

 

気配も無く、キャスターが私の後ろに立っていた。アンタさっき、リヒトの部屋に行ったんじゃないの?

 

 

 

「ずっといたぞ?朝から君の愚痴を聞かされる半身が哀れでならないよ。」

 

 

ふっとキャスターが金色の目を細め、いかにも哀れみのこもった声で言うものだから本当に腹が立つ。

 

 

 

「アンタねぇ…!リヒトの奴、今日学校休むなんて言い出したのよ?キレイに嫌がらせするとか訳の分からないこと言って!」

 

「そっとしておけ。もしかしたら最後になるかもしれないからな、今日は気の済むまで半身の好きなようにさせておけばいい。」

 

 

キャスターの言う、最後になるかもしれないという言葉が引っかかる。どういう意味よと聞き返せば、キャスターは淡々とした様子で

 

 

 

「言葉の侭だ。前の聖杯戦争の折、半身は身近な誰かの死を何度か目の当たりにして来たからな。今度こそは自分かもしれないとも言っていた。」

 

 

「あんたそれ!リヒトが今回の聖杯戦争で死ぬって言いたい訳!?」

 

 

 

あるまじきその言葉に、気が付けばキャスターの着ている服の胸ぐらの裾を掴んでいた。私よりも先に死ぬなと、リヒトには何度も言ってきたつもりだ。

 

 

「……なにも、半身が死ぬとは言ってないだろ?もしかしたらそれは君かもしれないし、あの神父かもしれない。死は平等に誰にでも訪れる。さて、次は誰になることやら…それが君や、あの子でないことを祈るばかりだ。」

 

「私だって今回の聖杯戦争で簡単に死ぬつもりはないし、衛宮君だって死なせるつもりは無いわよ!」

 

 

 

無性にキャスターの言い方にムカついた。私だって、易々と死ぬつもりは全く無いし衛宮君をむざむざと死なせる気も毛頭無い。すると、キャスターは急に強い眼差しを私に向けてきた。

 

 

「言ったな?ならば何が何でも生き残れ。もし本官がいなくなったら、半身を任せられるのは君かあの子か君の妹位しか心当たりが無くてなぁ。」

 

「あんたに任せられなくとも、リヒトのことは私が面倒見るわ!」

 

 

 

自分でもとんでも無いことを言ってるつもりはあったし、勢いに任せて言ってしまった感が否めない。

 

 

「その言葉、努々忘れるなよ。あの子か半身か、どちらか決めろとは言わないからもう少し素直になった方がいいぞ君は。」

 

「アーチャーと全く同じこと言わないでくれる?本当ッ、腹の立つ使い魔ね!」

 

 

キャスターが妙なことを口走っていた気がするけど、聞かなかったことにする。まさか、アーチャーと全く同じことを言われるとは思わなかったし、きっと動揺してたのだ。

 

 

「…全く、どうしてこうも君はイシュタルに似ているんだろうな?まさか本当にイシュタルの転生体ではあるまいな。やめてくれよ、それだけは。」

 

 

 

半ば独り言の様にブツブツとキャスターは呟く。イシュタルとか、転生体とか何のことよ?本当に意味の分かんない使い魔ね。

 

 

 




いつもフレンド枠でマなんとかさんにはお世話になってます。

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