双つのラピス   作:ホタテの貝柱

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第十一話 二人で地獄落ちも悪くない

「よォ、」

 

 

バイト先に現れた珍客に思わず目を疑う。真っ青な髪を後ろ手に一房結わえ、耳元には特徴的な銀の耳飾りがキラリと揺れる。

 

 

 

ランサーはぼくを認め、知り合いに気安く挨拶するように手を上げた。

ランサー、シロを一度殺した男。キャスターは一度会っているようだが、ぼくは完全に初対面だ。

シロのこともあり、ぶっちゃけあんまりいい印象は無い。

 

 

「いらっしゃいませ。」

 

 

 

普段の営業スマイルでその場を取り繕う。何しに来たんだろう、今すぐぼくを殺しに来た訳ではなさそうだけど。

 

 

キャスターがぼくのフリをしてランサーと会ったとき、ランサーはぼくにも一度殺意を向けた。

 

 

あれは歴戦をくぐり抜けて来た生粋の戦士だ。オマケに古代魔術の心得もあるようだから、気を付けるに越した事はない。キャスターはぼくにそう忠告した。

 

 

「へぇ、司祭服も似合ってたがその仕事服も中々悪くないな。似合ってるぜ?」

 

 

 

ニヤリと笑う、ランサーのぼくを見る目に何と無く…セクハラめいたものを感じるのは気のせいか。何と無く居た堪れない。って言うかこの人、何でぼくのバイト先知ってるんだ。

 

 

「お友達かい?リヒト君。」

 

 

 

バーのマスターがランサーをぼくの友達かい?なんて聞いてくるから、いいえ初対面ですと言いたかったがそういう訳にもいかない。

 

 

「ギルさんの知り合いなんです。ギルさんに聞いて、店来てくれたみたいで。」

 

 

 

王様ごめん、ちょっと名前借りるよ。

 

 

「なんだそうだったのかい。いらっしゃいませ、どうぞこちらへ。」

 

 

 

王様はこの店ではギルさんの呼び名で通ってる。流石に人前で王様とは呼べないからね。ランサーはカウンターで構わないと言い、カウンター席に座る。

 

 

「…これ、マスターからの奢り。というか、君お金持ってるの?」

 

「足りなかったら金ピカにツケといてくれ。此処の常連なんだろ?あいつ。」

 

「あーもう!足りなかったらぼくが立て替えるから、王様にツケはやめてくれる?」

 

 

 

マスターからの奢りでナッツとビールを出す。お金は持ってるのかと聞けば、足りなければ王様にツケでなんてとんでも無いこと言い出すし。

 

 

「何しに来たの?ぼく、君に此処で働いてるって言った覚え無いけど。それともキレイから何か用事でも頼まれた?」

 

「金ピカの部屋掃除してた時に此処の領収書が何枚も出て来た。随分熱心に通ってるから、余程キレイなねーちゃんでもいるのかと思って来てみたらお前さんかよ。」

 

「………ここ、女の子をそういう意味で働かせてないから。趣向が違うし、店変えたら?」

 

 

 

ランサーは出されたビールをグイグイ飲みながらさも残念そうに言うから腹立たしい。完全に私用で来たらしい。

 

 

「そう警戒すんなって。なんかお前、初対面の時と2日くらい前に会った時と随分印象違くねえか?前はもっと気さくな感じしたけどな。」

 

 

 

2日くらい前?それは知らない。あ、でもキャスターが数日前に夜遅く何処かへ出かけて行ったのを思い出す。アーチャーが止めようとしたら逃げられたと報告しに来たのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「すまない、家主のビールを一本、先輩が失敬してしまった。」

 

「キャスターにお酒飲ませたの!?あいつ、お酒飲むと潰れるまで飲み出すから…それにキャスターの奴…藤村先生のストックしてたやつ飲んじゃったのか。バレないといいけど。で、キャスターは何処行ったの?」

 

「止めようと思った時には逃げられた。探しに行こうか?」

 

 

アーチャー自分の失態だと、ぼくに申し訳無さそうに謝って来た。こういう所、律儀だよね君。

 

 

 

「いや、いいよ。朝には戻って来ると思うし。人様には迷惑かけないと思うから、ほっといて大丈夫。」

 

「しかし、一回飲みだすと潰れるまで飲もうとするんだろ?それはよくない。」

 

「君は心配性だな。キャスターなら大丈夫だよ。」

 

 

一応、保護者がいるし。あれを保護者と言っていいのか怪しいけど、キャスターが無茶をするのは王様の前だけだ。多分、王様の所へ飲み直しに行ったに違いない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なぁ、いつぞやの夕飯のお詫びになんか他に美味いもん奢ってくれねえの?お前が言ったんだろ。あとビールおかわり。二杯目以降の酒代は自分で払うからよ。小腹減ってるんだ。」

 

 

キャスターの奴、何勝手にランサーと約束取り付けてるんだ…!このランサーも中々イイ性格をしている。まぁでも、キレイ手製のトラウマ級麻婆豆腐を僕の代わりに食べてくれたのだし貸し借りを作るのはあまり好きじゃ無い。

 

 

 

「…サンドイッチ位しか出せないけどいい?」

 

「おぅ。」

 

 

ああもう、キャスターの奴。今度から軽はずみにこういうことは言わせないようにしないと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺の顔を見たとき、神父の息子はあからさまに一瞬眉を顰めた。なんでお前が来たんだと言わんばかりに。

 

 

金ピカの汚部屋を嫌々掃除してたとき、部屋は散々な散らかりようなのにとある店の領収書だけはきっちり取ってあったので妙だなと思ったのだ。店は所謂、夜の大人の店というやつだろう。

 

 

 

金ピカのお眼鏡に叶う美人でもいるのかとふと興味本位で来てみれば、神父の息子がいたから驚いた。美人さんは美人さんでも、そういうことかよ。

 

 

神父服も似合っていたが、この店の仕事服も神父の息子にはよく似合っていた。美人さんって奴は基本、なんでも似合う。母親似なのか、神父の息子は全くと言っていいほど男臭い神父とは似ても似つかない顔立ちをしている。

 

 

 

よくない、悪い虫も当然寄って来るだろうから、金ピカも気が気じゃ無いんだろう。

 

 

「なんかお前、初対面の時と2日くらい前に会った時と随分印象違くねえか?」

 

「そう?そんなことないよ。」

 

 

 

店のマスターからの奢りだと神父の息子がビールとナッツを出してくれた。正直な印象の違いを指摘すると、神父の息子はあっさり否定したがやたら俺に対する扱いがツンケンしてて警戒も混じってるから妙な気がした。まるで、初対面の相手に対する態度だ。

 

 

金ピカがこいつのことを弟だと言っていたのも当然気になる。齢は悠に数千歳を超えてるとかとんでも無いこと言ってたが、こいつを見てると未成年らしくあどけない所もある。

 

 

数千歳とか言ったら、不老不死の魔術師か魔法使いレベルだぞ。そんな奴がこんな所で働いてるかよ。

 

 

 

前の晩、俺が見たのは本当にこいつか?

 

 

『リヒトとこいつは同じだが、違うぞ。』

 

 

 

金ピカの言っていた、同じだが違うという妙な言葉。

 

 

「ランサー?出来たけど。」

 

 

 

ぼうっと考え事をしていた俺の目の前に美味そうなローストサンドの載った皿が置かれる。食べてみれば、美味い…大して期待してなかったが、料理出来んのかよこいつ。

 

 

「あとこれ、王様に渡して。中に君の食べてるやつと同じの入ってるから。途中で絶対食べないでね。」

 

「…俺は犬かよ。他人のまで食わねえっつの。」

 

 

 

神父の息子から金ピカに渡せと、紙袋を渡された。中を見れば、テイクアウト用のローストサンドが入ってる。神父の息子に途中で食べるなよと釘を刺され、俺は犬かよ。

 

 

「金ピカの奴、俺が飯当番のときは文句言って俺が作った飯殆ど残しやがるから気に入らねえ。」

 

「あー王様は偏食だからね。今は君とキレイでローテーション回してるの?大変そう。」

 

 

 

神父の息子は俺に対して、あからさまな憐れみの目を向ける。聞けば、神父の息子がいた時は食事は殆ど神父の息子が作っていたらしい。

 

 

「お前、ほんと何で出て行ったんだよ…今のうちの食事、マジで悲惨だぞ?戻って来いって。」

 

「いやあ、キレイに戻って来なくていいって言われてるし。」

 

「聞いたぞ。女の家に転がり込んで、よろしくやってるんだって?金ピカがむくれてたぞ。」

 

「な、違ッ…!」

 

 

 

途端、神父の息子が動揺する。聖職者の息子が何やってんだよ。

 

 

「やることやってんだろ?何をそんな動揺するんだよ。」

 

「…姉さんとはそんなんじゃない。怒るよ?」

 

 

 

この時、初めて神父の息子の表情が物騒なものに変わる。瑠璃色の瞳が一際鋭利な鋭さを帯び、声に怒気がこもるのを隠そうともしない。

 

 

「姉さん?」

 

「君も会ったことあるだろ?アーチャーのマスターだ。彼女とは君の言う様な不埒な関係になった覚えは無い。」

 

「悪かったって、んな怒るなよ。」

 

 

 

不本意にも神父の息子を怒らせてしまった。こいつ、兄貴とはあんなに距離感おかしいのにあの嬢ちゃんに対しては潔癖過ぎる。変な奴。

 

 

「ランサー、直にぼくも上がるからそれ持って早く帰ったら?今日は来てくれてありがとう。」

 

 

 

まだ怒ってるっぽかったが、神父の息子は律儀に俺に対して礼など言って自分も直ぐに上がるから早く帰れと言う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「付いて来なくていいよ。」

 

 

バイト上がり、何故かランサーはぼくを送ると言い出して結局今に至る。どうやって撒こう。

 

 

 

「遠慮すんなって。」

 

 

仕方なく、騒がしい繁華街をランサーと抜ける。途中、キャッチの顔見知りの方々に捕まり、適当に世間話しながらあしらう。

 

 

 

「リヒト君、今日は随分とイケメンなお兄さん連れてるね。いつもの外国人さんは一緒じゃないの?浮気は怒られるよ。」

 

「この人、あの人の知り合いだよ。今日はたまたま。」

 

「二件目ならうちどう?リヒト君の知り合いなら安くしとくけど。」

 

「えー今日はやめとく。」

 

 

この辺り一帯で、王様はちょっとした有名人だ。派手だし、あの容姿だから一際目立つ。

 

 

 

「お前、こんなゴミゴミした所よく歩けるな。俺ならちょっと苦手だ。」

 

「この辺り、ぼったくりのキャッチもいるから気を付けてね。捕まったら財布スッカラカンにされるよ。」

 

「こっわ。」

 

 

ランサーが途端、顔を真っ青にさせる。ランサーみたいなのは格好のカモだ。途中、ランサーがぼったくり店にうっかり捕まって身ぐるみ剥がされてポイされても面倒だし、繁華街を抜けるところまでは同行しよう。それに、さっきから誰かに付けられてる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こんな時間に夜襲かい?マキリ。」

 

 

わざと人気の無い大通りに出て、後ろを振り返る。そこに、ライダーのサーヴァントを連れたマキリが嫌な笑みを浮かべながら現れる。

 

 

 

「やぁ、コトミネ。奇遇だね。」

 

「おい、リヒト…あいつ、ライダーのマスターだろ。」

 

 

ランサーがぼくに耳打ちする。あぁ、ぼくを付けていたのはマキリだったのか。マキリはぼくと一緒にいたランサーを指差して

 

 

 

「やっぱり、お前もマスターだったんじゃないか。そいつ、ランサーだろ?ライダーも一回、そいつと戦ったことがあるんだ。」

 

「偵察の一環でよ、サーヴァント一体ずつと交戦して自ら撤退しろって嫌な令呪かけられたんだよ。だから、あのライダーは知ってる。」

 

 

 

ランサーがぼくに言う。面倒な奴にランサーと一緒にいるのを見られちゃったかも。

 

 

「マキリ、言っとくけどぼくはマスターじゃないよ。ほら、両手ともぼくに令呪なんて宿っちゃいない。さっきからこのランサーがぼくに付き纏って来て、迷惑してるんだ。」

 

「なっ…リヒト、お前それはひどくねぇか!?お前がこいつに付けられてたから付いて来てやったんだろ!?」

 

「え?そうだったの?」

 

「お前なぁ…で、結局あいつは何しに来たんだよ。」

 

「気に入らないことがあったから、ぼくに大人気なく八つ当たりに来たんだろ。」

 

 

 

マキリにわざわざ両手を見せて、令呪が無いことを証明するも、マキリは全然信じてくれない。むしろ目に見えて態度が悪化してる。

 

 

「何見え透いた嘘吐いてんだよ!お前なら令呪くらい隠して誤魔化せるだろ?衛宮と違って、僕は騙されないからな!!」

 

「何でわざわざ、令呪を隠す必要があるんだよ…マキリさぁ、そんな七面倒なことぼくがやると思うのかい?」

 

 

 

そもそも聖杯戦争を管理する側がサーヴァントと契約なんかしたらルール違反だ。まぁ、キレイのサーヴァント契約を見逃してる時点でぼくも同罪なんだけどね。

 

 

「うるさい!ライダー!!さっさとこいつをへぶぅっ!?「バカマキリ、一回頭冷やせ。」

 

 

 

マキリがライダーに指示を出す直前、一気にマキリとの間合いを詰めて、マキリの腹部にグーパン一発。思いの外、マキリの口からマヌケな声が出た。

 

 

そのまま、マキリはどさりと地面に崩れ落ちて動かなくなる。弱い、弱過ぎる…ライダーも何で止めないんだ。こうも簡単に倒れてくれるとは思わなかった。倒れたマキリを無言で見つめるライダーに恐る恐る、声をかける。

 

 

 

「あの、ライダー?君、マキリのサーヴァントなんだ…よね?」

 

「…えぇ、一応。しかし、私が止めるよりもあなたの一撃が早かっただけです。」

 

 

何故だろう、ライダー自身にはぼくに対する戦意が無い。そう言えば、キャスターをマキリ宅に行かせた時もキャスターが何もしないことを悟ると、ライダーの方はずっとキャスターに対して無反応だったらしい。キャスターがつまらなそうに語ってた。

 

 

 

「おい、テメエのマスターがこんな状態なのに無反応かよ。」

 

 

ランサーがぼくに続き、ライダーに声をかけるもライダーは倒れたまま動かないマキリを見下ろすばかりで反応が薄い。

 

 

 

「私に指示を出すマスターがこんな状態では戦えません。貴方に戦意があるなら別ですが、どうしますか?」

 

「ランサー、今の彼女に戦意は無いから引き上げよう。ライダー、君のマスターの記憶を少しいじるけど構わないかい?」

 

「…わざわざ私に、許可を取るまでも無いかと。私はあなたがそこのランサーのマスターだと、誰かに話すこともありませんから。」

 

 

何て言うか、マキリに対してのライダーの忠実度はゼロに近い。ライダーが…ぼくのことを誰かに話すことも無いと言うところを察するにだ。キャスター談によると、マキリはライダーを従わせるのに相当苦労したとか。

 

 

 

なら、ライダーが内心マキリのことを快く思っていないのかもしれない。とりあえず、マキリの記憶だけちょっといじっておく。マキリの頭に手を置いて、催眠術をかけるのと同じ感じで伸びてるマキリに言い聞かせる様に詠唱する。

 

 

「肯定ってことで、いい?なら勝手にさせて貰うよ。マキリ、君は僕に会ったところまでは覚えてるけど、ランサーの姿は見てないし、ぼくに返り討ちにされましたってことで。ハイ!改ざん完了。」

 

 

 

マキリの記憶いじりが完了すると、ライダーがしぶしぶ仕方なくといった様子でマキリを軽々と肩に担ぎ上げた。

 

 

「…慎二は連れて帰ります。これでも私のマスターですから。リヒト、あなたそっくりのサーヴァントによろしくお伝えください。」

 

 

 

ん?このライダー、何でぼくの名前知ってるんだ??マキリはぼくをコトミネと呼ぶし、一体どうして…?

 

 

ライダーはマキリを担いで、夜の暗がりへと身を紛れ込ませた。まぁいっか、ぼくも帰ろう。

 

 

 

「おい…ライダーの言ってた、お前そっくりのサーヴァントってどういうことだ?」

 

 

……あ、ランサーのことをすっかり忘れてた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺と同じ半神様が何で、高校生のフリなんかしてるんだよ。お前、神父の本当の息子じゃないだろ?神父の奴、俺や金ピカだけでなくお前とも契約してたなんてな。」

 

 

真夜中の人気が全くない、大通りに面した壁際へとランサーに追い詰められ、なんて答えればよいか困ってしまう。

 

 

 

「道理で変だと思ったんだ。金ピカはお前のこと、弟だとか訳わかんねえこと言い出すし。」

 

「……王様から何処まで聞いたの?」

 

「何処までっつーか…お前を金ピカが川で拾って、太陽神に血を分けて貰ってお前を自分の弟にしたってところまでは聞いた。」

 

 

……キャスターの出自、あの王様殆どランサーに喋っちゃったのか。ランサーの言う通り、キャスターは王様に川辺で拾われ、そのまま王様の義弟になった。血縁が無いままだと周りがうるさいからと、王様が太陽神の血をキャスターへ分け与えたとはぼくも聞いてる。

 

 

 

当人のキャスター曰く、彼はとある一組の夫婦の未子として生まれた。彼が生まれて間もなく、天上神が彼の父親に未子を天の楔に捧げよとの神託をし、父親は神に言われるがまま棗椰子で丈夫に編んだ籠へ生まれたてのキャスターを入れ、彼の母が泣く泣く幼い彼を川に流したと。

 

 

キャスターの実父は昔、天上神に夫婦共々、命を救われて以来、天上神には頭が上がらなかったとか。

 

 

 

ぼくが幼い頃、キャスターが寝物語に自分の出自をぼくに聞かせてくれたからよく覚えてる。

 

 

「しかし、妙なんだよなあ…俺は既に、全てのサーヴァントと戦いを終えてる。お前、あの金ピカと同じく前の聖杯戦争の生き残りか?金ピカ同様、受肉してるみてぇだが。」

 

 

 

ランサーがぼくの顎を掴み、しげしげとぼくの顔を覗き込む。ランサーはぼくがキレイの契約してる三体目のサーヴァントであると勘違いしてるようだ。

 

 

「クラスは何だ?魔術を使うところからして、キャスターか?クラス最弱と言われるキャスターがよく、前の聖杯戦争を生き残れたな。」

 

 

 

それ、キャスターが聞いたら怒るんじゃなくて笑いそうだ。クラス最弱のキャスターでもあのキャスターなら多分、聖杯戦争に参加してたら聖杯獲得直前まで行けたかもしれない。絶対、ロクなことを願わなそうだけど。

 

 

「益々妙だな、お前。半神様が高校生のフリしながら、聖杯戦争の監督役補佐なんぞやって…何が目的だ?」

 

「……目的も何も、ぼくは早くこの血生臭い儀式を終わらせたいだけだ。終わった後は好きにしろってキレイから言われてる。」

 

「血生臭いか、サーヴァントが平和主義者にでもなったつもりかよ?」

 

「君のような生粋の戦士にとってはなまぬるい言葉だろうね。」

 

「そもそも、俺は強者との戦いを望んで召喚に応じたからな。」

 

 

 

うわぁこの人、本物の戦士様だ。何処の戦神の息子だろう。ランサーは自らを半神と言っていたから、何処ぞの名のある大英雄には違いない。

 

 

「リヒトって名前は仮初めの名だろう。お前、本当の名前はなんだ?同じマスターと契約したよしみだ。俺の真名も教えてやる。我が名はクーフーリン。ケルトの偉大なる太陽神、ルーの息子だ。」

 

 

 

クーフーリン…あー聞いたことはある。ケルトと言えば、アイルランドか。一度、王様を伴いキレイの仕事でその国に行ったことがあるけど、料理がジャガイモばかりで飽きると王様が文句を言ってた。

 

 

「俺が名乗ったんだ、当然お前も名乗るよな?」

 

「申し訳ないのですが、青のランサー殿?本官に名乗る名前はございませんので、仮初めではありますが、キャスターとお呼びください。あと、早く半身をお離しくださいませ。」

 

 

 

その時の、ランサーの顔の面白いことといったら。ランサーは途端にぼくを離し、後ろへと飛び退いた。

 

 

「な、何で!何で同じ顔が二つ!?お前ら、ドッペルゲンガーかよ!!?」

 

「貴殿はライダーより面白い反応をしますね。あと、本官があの神父と契約だなんておぞましい勘違いはよしてください。」

 

 

 

キャスターは心底嫌そうな顔をして、ランサーの誤解を取り除く。キャスターはキレイをひどく嫌っており、最近は滅多にキレイの前にも姿を現さない。

 

 

「じゃあ、ライダーの言ってたサーヴァントって…」

 

「本官のことです。」

 

ランサーは益々、意味が分からないといった顔だ。彼はひどく混乱している。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

突然、神父の息子が二人に分裂した。分裂したもう一人は俺の驚いた反応を見て、やたら愉しそうにクスクス笑い出す。その笑い方が何となく、あの金ピカに似てやがるから腹立つ。

 

 

あぁ、初対面の時と数日前に会ったのはこいつだと確信した。しかし、何もかもこいつらは瓜二つなのだ。多少の内面の違いはあれど、あれは間違い無く元は一つだったものだ。

 

 

 

「…その笑い方、金ピカを思い出すからやめろ。腹が立つ。」

 

「これは失礼。笑い方だけは兄上と似てるとよく言われるんですよ。他は全然似てないんですが。」

 

 

まだ可笑しそうに口元を歪め、偽キャスターは言う。腹の立つ笑い方以外は全く、あの金ピカと似ても似つかない。

 

 

 

「金ピカの言ってた、お前さんが神父の息子と同じだが違うって意味がやっとわかったぜ。魂まで全くの同一存在とはな。あと、その加護と呪いのプラマイゼロは何だ。」

 

 

偽キャスターとリヒトを見ていて、妙なことに気が付いた。こいつら、手厚い加護と強力な呪いが同時に掛けられてやがる。リヒトには加護が、偽キャスターには呪いが。

 

 

 

「流石、半神殿。見れば立ち所にそんなことまで分かるんですね。」

 

 

偽キャスターは素直に感心した様子だ。こいつ、生前に何をやらかした?こいつにかけられた呪いは、人が人にかけたような生ぬるい呪いの類ではない。所謂、神罰の類だ。

 

 

 

「昔の若気の至りで犯した罰です。もう大分、呪いも弱まってはいるんですけどね。」

 

「キャスター、ランサーにそんなことまで喋っていいの?」

 

 

怪訝な顔をして、神父の息子が偽キャスターと俺の前に割って入る。

 

 

 

「隠し立てしたところで無駄ですからね。青のランサー殿、半身に施された加護は本官を罰するのに唯一、反対した方より頂いた恩赦です。」

 

 

手厚い加護を施したそいつに、偽キャスターは余程大事にされていたらしい。

 

 

 

「本官には名乗る名前が無いと言ったでしょう?この呪いにより我が名は剥奪され、存在すら無き者同然にされた。名無しの英霊もどきだ。貴方のように由緒正しい半神の身ではありませんが、元はその端くれでしたよ。短い間ではありますが半身共々、以後よろしく。」

 

「…ぼくはあんまりよろしくしたくない。」

 

「あの子のこと、余程根に持ってますね。しかし、あれは青のランサー殿も本意でやったことではないでしょう?恨むなら神父を恨みなさい。」

 

 

偽キャスターは俺に手を差し伸べたが、神父の息子はあからさまに眉をひそめた。偽キャスターの言うあの子とは、何時ぞやの夜に俺が心臓を刺し貫いたあいつを言ってるらしい。

 

 

 

呪われた名無しの偽キャスターと、そいつに顔がそっくりな強い加護を持ちながらも信仰心を欠いた神父の息子。妙な奴らに関わっちまったと思ったが、既に遅い。仕方なく、偽キャスターの手を取った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

衛宮邸へ帰宅する頃には日付が変わりかけていた。なんか今日は濃い一日だった気がする。脱いだ靴を揃えて、一先ず居間にそっと向かう。

 

 

居間の電気を点けると、炊き込みご飯をおにぎりにした物が四つ、お皿に載ってラップがかけられていた。傍らにメモ書きをあり、シロの字でリヒトへと書かれていた。

 

 

 

ラップを取り、おにぎりに一つ口に含めば優しい味がする。シロも料理上手だよね。しみじみと味を噛みしめていると、横から物欲しげな視線を感じる。

 

 

「……欲しいの?」

 

「欲しいな。」

 

 

 

キャスターが横から、物欲しげな視線を隠そうとしないでぼくを見る。見た目によらず、キャスターは食い意地が張ってる。

 

 

ぼくの魔力だけで事足りるし、キャスター自身も魔力生成が出来るから食事は必要としないのに。サーヴァントが食べたものって何処に行くんだといつも不思議だ。

 

 

 

「ほんとに君ってやつは…二つは君にあげるよ。」

 

 

二つ分、皿にかけてあったラップで包んでやりキャスターに分けてやる。

 

 

 

「ありがとう半身。恩に着るよ。」

 

 

そのまま霊体化して、キャスターは何処かへ行ってしまう。恐らくはアーチャーの所か。あの二人、夜遅くまでいつもなんか喋ってる。

 

 

 

最近、アーチャーはもっぱら、夜は見張りで衛宮邸の屋根の上にいるからキャスターも夜はそこにいる。くれぐれも、聖杯戦争絡みのことは絶対軽はずみに口にするなとは言ってあるけど。キャスターとしてはぼくや王様以外に話し相手が出来たから嬉しいのだと思う。

 

 

さて、ぼくも早くお風呂頂いて寝よう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やぁ、アーチャー。今戻った。」

 

 

後ろを振り返れば、先輩がおにぎりを一つ頬張っていた。立ち食いとは行儀が悪いぞと注意し、隣に先輩を座らせる。そろそろ、私の隣が先輩の定位置になりつつあるから困った。

 

 

 

「…今日も冷えるな。実体化するとサーヴァントでも寒い。」

 

 

先輩はわざとやっているのか、無意識にやっているのか知らないが、さも当然の様に私へピッタリと密着して来る。最近、やたら先輩のボディタッチが増えた気がするのは気のせいだと思いたい。

 

 

 

先輩はいつだったか、私を気に入っていると自分から言っていたがどうにも最近、その気に入っているが別のベクトルに向けられてる気がしてならないのだ。私がジッと見ていたことに気付いたらしい先輩が顔を上げる。

 

 

「君も食べるか?あの子が半身に作ったものを分けて貰った。」

 

「いや、私は結構…むぐっ!」

 

 

 

先輩はもう一つのおにぎりを半分に割るなり、私がいらないと言ったにも関わらず私の口に無理やりおにぎりを押し込んできた。

 

 

「….む、味付けが薄い!たけのこのあく抜きが全然足りん!!」

 

 

 

食べてみたらなんだこれは!!炊き込みご飯だが、醤油の割合に対してみりんの割合が少な過ぎるし、たけのこのあく抜きが足りてない!!

 

 

「……そうか?本官は好きな味付けだがな。」

 

「あなたが良くても、オレがよくない!オレならもっと美味く…あ、いや、コホン!失礼した。」

 

 

 

ハッと我に返り、咳払いをしたがわざとらしくなってしまった。先輩がクスクス笑い出したから居た堪れない。

 

 

「アーチャー、貴殿は本当に愉快だな。そうかそうか、貴殿ならもっと美味く作れるか。なら本官に美味い味噌汁を毎日作って欲しいところだ。」

 

「……先輩、その言葉の意味をわかって言っているのか?」

 

「あぁ、この国でいうところの娶りたい相手に対して使う言葉だと。本で見た。」

 

 

 

この人は一体何の本を読んだんだ。そういえばたまに、先輩は私の隣で本を読んでいることがある。中身が見えないようにカバーをいつもかけているので、何を読んでいるのかは知らなかったが。

 

 

「先輩、昨日の夜から貴方はおかしいぞ。一体どうしたと言うんだ?」

 

「別に、貴殿と初めて会った時から何もおかしい事はないさ。」

 

 

 

そうだった…先輩がおかしいのは今に始まった事ではなかった。あの魔力供給の一件といい、昨日のことといい、やはりこの人は何かがズレてる。

 

 

「ただ…そろそろ、時間がな。」

 

「……時間とは?」

 

 

 

ふと、先輩が妙なことを言い出す。しばしの沈黙の後、先輩が徐ろに口を開いた。

 

 

「最近、アラヤがそろそろ戻れと口煩くてなあ。」

 

 

 

そこで何故、アラヤが出て来る。というより、あいつは口煩いものなのか?あれは人類総意の意識的集合体であって、一守護者に口煩くするような自我があるのかすら私には分からない。

 

 

「あんまりにも口煩いから、条件を突き付けたら割とあっさり許可されてしまったよ。」

 

「何を条件として提示したんだ…?」

 

 

 

先輩がアラヤに提示した条件というのに、またしても嫌な予感がした。絶対、ロクな条件でないことには違いない。

 

 

「ん?君を貰い受けることが出来るなら、戻らなくはないぞと言ったら…守護者一人分で済むなら好きにしろと言われた。」

 

「貴方は馬鹿か!!?それも大馬鹿だ!!」

 

 

 

思わず、大きな声が出た。先輩がびっくりした様子で大きく目を見開くが、構うものか。この男はとんだ阿呆だ。

 

 

「急に大きな声を出すなよ、アーチャー。驚いてしまったじゃないか。」

 

「戻れと言われて、私を条件として提示する奴がどこにいる!!アラヤも何をあっさり許可してるんだ!私の意思は無視か!!?」

 

「本官も貴殿も、既にアラヤの中へ組み込まれているからな。自分の管轄内であればアラヤも守護者同士で何をしようが、割と構わないらしい。喜べ、アーチャー。上司からのゴーサインは出たぞ。」

 

 

 

私の与り知らないところで成立してしまったらしい取引に物凄く腹が立った。先輩も何が喜べだ!このたわけ!!

 

 

「リヒトはどうなる!?貴方はあの子を一人にするつもりか!」

 

 

 

口をついて出た言葉は意外にも、あの子の名前だった。この人はリヒトの数少ない理解者だ。この人がいなくなったら、あの子はどうなるんだ。

 

 

「なんだ、半身のことか。今のあの子なら別に、本官がいなくなっても大丈夫さ。貴殿は自分の身よりも他人の心配か。本当に相変わらず優しいなぁ、貴殿は。」

 

 

 

まただ、先輩の顔がよく似た誰かの面影と重なる。ひどく頭が痛い。思わず、こめかみを抑える。

 

 

「…アーチャー、大丈夫か?」

 

 

 

先輩が心配そうに私を覗き込む。一時の症状だ。じきに収まるだろう。先輩といる時が、特にこの症状がよく起きる。

 

 

「ッ……問題無い、たまに起きる記憶障害の後遺症だ。」

 

「そうだった、君は一部の記憶が欠落してるんだったな。まぁ、あまり興奮し過ぎるな。君に黙ってアラヤと取引したのは謝ろう。だがな、何れにせよ本官も遅かれ早かれ戻らねばならないんだ。ずっと、あの子の傍にはいてやれない。分かってくれ。」

 

 

 

謝って済む問題か。しかし、先輩とて何れは座に帰らなくてはならないらしい。それは仕方のないことだと思ってる。

 

 

「聖杯戦争が終われば、私も座に帰る!しかしだな!?君は「…アーチャー、一つ確認したいのだが。」

 

 

 

突然、先輩が私の言葉を制した。何だと強い口調で返せば、先輩は思いの外、真面目な顔つきでまたしても爆弾を落としてくれる。

 

 

「半身のことが無ければ、本官が貰い受けても構わないのか?貴殿のことを。」

 

「あぁ、そうだな!貴方が居なくとも、あの子が大丈夫だと言うなら私の身一つ好きにしろ!!」

 

「なら今聞いてくればいい。ちょうど寝支度の最中でまだ起きてるだろう。」

 

「そんなに言うなら、聞いてきてやる!其処で待ってろ!!」

 

 

 

売り言葉に買い言葉で、そのままリヒトの元へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「え?何急に…まぁ、キャスターがいなくなったらいなくなったで受け入れるよ。」

 

 

歯を磨いていたらしい最中のリヒトからの返答はあっさりしたものだった。

 

 

 

「先輩は君の片割れのようなものなんだろう?それがいなくなってもいいのか。」

 

「そうなんだけどさ。キャスターとぼくが一緒にいること自体、奇跡みたいなもんだし。いついなくなっても覚悟はしてる。」

 

 

もう流石に大丈夫だよ、ぼくも。と、リヒトが笑って言うものだから寂しくないのかとらしくなく食い下がってしまう。

 

 

 

「どうしたの?アーチャー急に来て、キャスターがいなくなっても大丈夫なのかってさ。寂しいかもしれないけど、姉さんや桜や…今はシロもいるし。藤村先生も居てくれたら賑やかだし。」

 

 

あぁ、私は勘違いをしていたらしい。そう語るリヒトの顔は何処と無く、大人びていた。いつも、彼は存外子供っぽいから私が一方的に心配していただけだったようだ。

 

 

 

「…ならいいんだ。変なことを聞いて済まなかった。おやすみ。」

 

「うん、おやすみなさい。あとアーチャー、口元にごはん粒付いてるよ。シロの炊き込みご飯、美味しかった?」

 

「…醤油とみりんの割合の目誤りと、たけのこのあく抜きの甘さで及第点だ。」

 

「流石、家事の鬼は手厳しいね。なんかアーチャー、お姑さんみたい。」

 

「家事の鬼と言うな、我ながら不本意極まりない。」

 

 

….…さて、冷静になってみて非常に困ったことになった。先ほど、自分の言った言葉を忘れるほど私も馬鹿ではないからどうしたものか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「半身はなんと言ってた?」

 

「…貴方が居なくなっても、覚悟はしてあると言われてしまった。」

 

「そら見たことか。貴殿は半身の元に行く前、本官に何と言ったかな?」

 

 

意地の悪い顔でわざとらしく先輩が聞いてくるものだから、私にはもう逃げ場が無い。困った、非常に、困った。

 

 

 

「…ッ!この身一つ好きにしろと、言った。」

 

「本当に良いのか?アーチャー。貴殿の同意無くしては意味が無い。断るなら今だぞ。」

 

 

幾ら鈍い私でも分かる。昨晩のたった三割の本気が七割増した。もう、冗談所の話でない。

 

 

 

「い、いつからだ…私に執着などしなくとも、貴方なら幾らでも…」

 

 

今晩は一段と冷えるが、私の心臓は早鐘を打ち、頰は熱過ぎるくらいだ。らしくない。

 

 

 

「いつからと言えばよいのか、ふむ…この場合、出会ったときからと言った方がよいか?本官はすっかり、貴殿に胃袋を掴まれてしまってるからなあ。」

 

 

人が動揺していると言うのに、この先輩はこの期に及んでそんなことを言い出すから全く腹立たしい。

 

 

 

「食い物目当てで私を貰い受けると言ったのか!!ならばこの話は無…「こら。そう子供っぽく拗ねるな、アーチャーよ。」

 

 

むにっと、先輩に両頬を掴まれる。いつの間にやら苦手では無くなった、神秘めいた色を持つ瞳がすぐ間近にある。今は別の意味で目を逸らしたいが、逸らせない。私の両頬を掴む先輩の手はすっかり冷え切っていたが、私の両頬は未だに熱い。

 

 

 

「君がすぐそうやって、拗ねる顔は相変わらず子供っぽいね。しかし、その子供っぽさがたまに、たまらなく愛しいから困る。君が自分から救いを求めないなら、もう勝手に僕が貰い受けるよ。これで君が救われるかは分からないけど、永遠に一人よりは遥かにマシだろ?」

 

 

あの頭痛はもう、気にならなくなっていた。しかしやはり、私は彼を知ってる筈なのにまだ思い出せない。

 

 

 

「……先輩、貴方は誰だ?私は貴方をずっと前から知ってる筈なのに、まだ思い出せないんだ。」

 

「ほんと…君は何度、僕を忘れれば気が済むのかな?姉さんのことは翌日に思い出したのにさぁ。君は罪作りな男だよね、××。」

 

 

先輩が私の名前を呼ぶ声だけが何故か、聞き取れない。どうやら、私は何度も先輩のことを忘れているらしい。なに、また思い出せばいいことだ。焦ることはない。私たちには時間など有り余るくらいだ。

 

 

 

「…ところでアーチャーよ、本官はまだ貴殿から返事を聞いていないのだが?」

 

 

先輩の口調が元に戻る。そういえば動揺しきっていて、すっかり返事を忘れていた。

 

 

 

「どうやら、私も最初から貴方のことはあながち…嫌いではなかったらしい。」

 

「そうか、なら安心した。」

 

 

精一杯の皮肉で返せば、先輩は満足そうに微笑んだ。

 

 

 

 

 




オリ主②は元神官ということもあり、啓示スキルが振り切ってるのとアラヤとは長過ぎる付き合い故に会話をするように意思疎通が取れるという裏設定。

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