明日からまた月曜ですね……
カルデアライフは軽くさわりだけですまない……
続きは次回の閑話でやりますが、それはリクエストの分に含まないから安心してください。
――それは、ずっと燻っている不安。彼女の一番になったのだという実感はあれど、永遠に消えることのない影のような恐怖。ふと目を離した隙に離れてしまうのではないかという妄想を加速させる唯一の人。いや、厳密には人ではなく英霊という存在なのだが。
「……で、ぶっちゃけセイバーのことはどう考えているんでしょうかね、愛歌さんや」
「ああ、セイバーね……ほとんどのわたしが恋をする、あの輝く人……」
晴れて沙条愛歌の『特別』になれたとはいえ、後々になってセイバーと出会って恋に落ちて……なんて、そんなことだってあり得るんじゃないかと怯えていたのである。基本的に俺は、怖がりで悲観的なのだ。しかしいつまでもそんなままでいられない、ということで思い切って愛歌に聞いてみることにしたのだ。
もしこれでセイバーの――アーサー・ペンドラゴンのことを好きだとか言われてしまった日には落ち込む。そんでもって泣く。
「そう落ち込まないで。わたしにとっての初恋の人は――他でもない、あなたなのよ?」
「……そうだといいんだが。それはそれとして今一度聞くが、結局セイバーのことはどう思ってるんだ?正直に、ちゃんと答えてほしい」
「ん、ふぅ……そうね……」
膝に乗せた愛歌の小さな身体を、後ろから抱きしめて撫でる。最近はこれくらいの接触にも動じなくなってきた。顔が真っ赤になるのは許してほしい。血が上りやすいのだ。
「まず、容姿なのだけれど……正直、セイバーの方が好み……かもしれないわ」
「ぐふっ……」
ああ。知っていたさ。俺はイケメンというほどじゃない。前世と比較すればよくなっている気がするけど、それでもあの騎士王に敵うはずもない。
髪を弄びながら先を促す。もうちょっと伸ばしてポニーテールとか、似合うかもしれない。
「んー、考えさせて欲しいな。それから……あれ?それくらいしか考えるところがないかもしれないわ」
「いやいやいや、もっとあるんじゃないですかね。性格がどうとか、もっとこう、色んなところあるでしょうよ」
突然の天然発言に驚きつつ、愛歌の手を握る。すべすべしてて小さく、ひんやりしてて気持ちいい。
「難しいわ……だって、わたしが直接会ったことのない、ただ並行世界の記憶を見ただけなのだけれど、優しい人なのは分かったの。でも、わたしを全部受け入れてくれなかったし、それに――それに、最後は裏切られてしまうの」
「あぁ……そういや」
そうでしたね。
彼は結局、綾香の方を選ぶのだ。裏切られてしまうか、出会わないかという世界が大半だったであろう。いや、いくつかはセイバーと結ばれる世界というのもあったのかもしれないが、そんな並行世界を見てまったく悲しまずにいるはずがないのだ。
――強力な力を持っていても、愛情が振り切れていても、世界を犠牲にすることを厭わなくても、その心はただの女の子なのだから。
思わず、ぎゅうと抱きしめる。
「そう考えたら、いつも傍にいてくれて、わたしだけを愛して、全部受け入れて、抱きしめてくれて――裏切らない。そんなあなたを好きにならないはずがないでしょう?」
「何度か泣かせてしまったけどな……」
「それは別だけどね」
……よし。
「今度、どこか出掛けようか。そうだな……東北、は……ちょっとやめて、南の沖縄とか行ってみよう」
「へ?……その、それはすごく嬉しいのだけれど、今どうやって……?」
「内緒。思考を読ませないように日々努力してきたのだよ」
「むぅ……」
とりあえず。この可愛らしい幼馴染様との楽しい思い出でも作っていこう。セイバーの入る余地のないくらいに、深く、多く。
それが重なればきっと、いつかセイバーの影に怯えることもなくなるだろうから。
この幼馴染様が悲しまないように、これからもずっと――
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
――何を間違えばこうなるのだろうと思ったことはあるだろうか。俺はある。めちゃくちゃある。それはもう、毎日思うくらいにある。
人生というのは不思議なもので、愛歌に告白を
人理焼却というもののせいで世界が滅んでしまったために、それを救おうとする組織、カルデア。そこに残された唯一のマスター、藤丸立香によって喚びだされた。
「――サーヴァント、セーバー。召喚に応じ参上した。ああ、俺の方は役に立たないからそのつもりでいてくれ。なにせ、正真正銘一般人だったのだからな」
「……ええと、セーバー、ですか?セイバーじゃなく?それに……一般人?あ、と、すみません!俺は藤丸立香っていいます!」
「ああいいよ別に。俺自身は尊敬されるような輩じゃない。あと、セイバーじゃなくて、セーバーね。ここ間違えないように。……まあ、説明するよりも見せたほうが早いかな……」
「あれ……召喚していないはずなのに勝手に召喚が……!?」
普通の少年のようなマスターでよかった。これがもっと傲慢な感じのやつだと愛歌虐殺ウィップが速攻で血を吸うことになっていた。まあ、そうさせないための俺なのだが。
「――サーヴァント、ビースト。セーバーを追って参上したわ。……ええ、彼のためならなんだってするわ」
「……と、まあ喚ばれてもないのに勝手について来ちゃったわけだが、こいつが俺の嫁で、俺が座に登録された理由的なあれね」
「ええと、とりあえずその、真名は……?」
「俺は……他にいないだろうしセーバーでもエキストラさんでもなんでもいいよ。こっちは愛歌。沙条愛歌ね。ところでここ男のアーサー王とかいたりする?」
その問いに藤丸君は首を傾げながらも頷いた。そっか、いるのか……そうか。
複雑な気持ちはあれど、この時期には乗り超えたものなので動揺は一瞬だ。
「まあいいか。とりあえず――これからよろしく、マスターくん」
「はい!よろしくお願いします!セーバーさん、沙条さん!」
「ええ、彼が――セーバーがいるなら力を貸すわ。それ以外は興味ないけれど、気が向いたら……このマナカ虐殺ウィップで蹴散らすわ」
そう言うと、愛歌は名状しがたい触手のようなものを出す。藤丸くんは露骨に顔を引き攣らせた。周りの人たちもちょっと引いた。
それからこいつをどうにかしてくれという目でこちらを見てきた。
そういう感じでいくつか不安こそあるものの、カルデアでの生活にはすぐに慣れることが出来そうだ――
AD.1993 根源暴走都市AOMORI
それは、修正しなくとも人理には影響しないはずの特異点。通称、亜種特異点と呼ばれるものだった。
それでも見過ごすわけにはいかない、とカルデアのマスターである藤丸立香は頼れるサーヴァントたちと共にレイシフトを行った。
その先に待ち受けていたのは、穴という穴から砂糖(上白糖)をこぼし続ける、ゾンビとなった住人たちの変わり果てた姿だった……!
混乱と恐怖に襲われるカルデア一行の前に現れたのは白く染まった狂気の街にそぐわない
、常識と良識を兼ね備えた青年。彼は自らをエキストラと名乗り、カルデア一行を導く。
紆余曲折を経て、彼らは青年がセーバーのサーヴァントであることを知り、この特異点発生の原因でもあることを知る。
そして迎えた最終決戦。痴情のもつれ的なアレでビースト化してしまった沙条愛歌はセーバーのキスの一撃であっけなく陥落。
特異点は修正され、世界は平和となるのであった……
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