この煩わしい脳内選択肢に喜びを!   作:ローリング・ビートル

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第3話

 

「ちっくしょ~~~~!!!!」

 俺はダクネスの前で腕立て伏せをしながら、怒りの雄叫びをあげた。

「カ、カズマ!?一体どうしたというのだ?訓練か?よ、よし、私も付き合おう!」

 何でそうなるんだよ!

 隣で腕立て伏せを始めたダクネスに心の中でツッコミながら、俺は脳内選択肢を心から憎んだ。

 

「はあ……はあ……終わった……」

「どうしたカズマ。お前の根性はそんなものか?私はまだまだいけるぞ」

「こっちはお前みたいに脳みそまで筋肉でできていないんだよ」

 顔を紅く火照らせて嬉しそうなダクネスに言い返して、何とか起き上がる。明日は筋肉痛になりそうだ。

「なあ、どうなってんだよコレ。今からドッキドキな選択肢ばかり出てくるんじゃないのかよ」

「な、何故でしょう……?」

「ほら、アレよ!普段から自堕落な生活をしているカズマさんを運動させようとしてくれたのよ。親切じゃない!」

 気まずそうに小首を傾げるウィズと、他人事だと思って適当なことをいうアクア。

「いや、待てそこの駄女神。お前に自堕落なんて言われる筋合いはこれっぽっちもないぞ。自分の普段の生活を思い出してみろ」

「あー駄女神って言った!」

「落ち着け、二人共。正直言って、どちらもかなり自堕落な生活を送っているぞ?」

「ふ、二人共、落ち着いてください!」

 

「はあ、しばらくはこのままか……」

 バニルとの商談の中止をウィズに伝えてもらうことにして、一人で帰り道をとぼとぼと歩く。周りに誰かいると、脳内選択肢に巻き込まれそうな気がしたから……ということにしておく。実際、肩透かしを喰らうのがしんどい。

 アクアの呪い解除を試しても効果がなかったので、しばらくはこのままで過ごすしかない。最初は脳内選択肢にかこつけて、何でもできると思い、テンションが上がっていたが、何が起こるかわからない以上、楽しんでばかりもいられない。

 まあ、これを理由にしばらくは部屋に引き籠もっておくか。めぐみんも理由があるなら許してくれるだろう。

 そうと決まれば、さっさと帰ろう!部屋に籠もっていれば、多分安心!なんて思ったその瞬間……

 

『歩いてギルドまで行く』

『走ってギルドまで行く』

 

「…………」

 オイ、コラ。

 こんなの選択肢じゃねえよ!

 

 結局、歩いてギルドまで行くことにした。

 いつもよりゆっくり歩いたのは、せめてもの抵抗だ。

「あら、カズマさん。こんにちは」

 いつもの受付のお姉さん・ルナが、笑顔で挨拶をしてく。も、もしかしてここでおいしい選択肢が……

「どうかしましたか?」

「いえ、何でもありません!いつでも大丈夫です!」

「は、はい?」

 おっといけない!口から本音が出てきてきてしまった。自重せねば。

「…………」

「あ、あの……」

 ひたすらエロい脳内選択肢がくるよう、祈りながらじっと目を見つめる。さあ、来い!

「…………」

「……カズマさん?」

 何も起こらない。

「だああ!!」

「きゃっ!」

 崩れ落ちる俺に、お姉さんは驚いていた。

「何でだよ……ここでフラグが立つはずだろ……」

「あの、本当に大丈夫ですか?」

「よお!何やってんだカズマ?また何か面白いことでもあったのか?」

「ああ、いや、何でも……」

 

『アクセルの中心でダストとキスをする』

『ギルドの中心でダストに愛を叫ぶ』

 

 ふざけんなーーーーーっ!!!!!





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