Fate/Inferno Order   作:ハイカラ 一方通行

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テスト勉強ダルーい


第一特異点 邪竜百年戦争 オルレアン
竜の大地


side日番谷

 

俺は今、沖田に稽古をつけてもらっている。

 

いるのだが…

 

「マスターが縮地を使えるなんて聞いてませんよ!?」

 

「いや、だからこれは縮地じゃなくて瞬歩っていう縮地とは違う技なんだって!」

 

「そうだったのですか…ですが、私と似たようなことを出来るのならば全力で戦っても問題ありませんね?」

 

「問題大有りだ!お前の宝具は刀とか関係なしに使えるだろ!あんなもん俺に使われたら俺がトマトになるわ!!」

 

「何言ってるんですかマスター!そこは気合いで乗り切りましょ――コフッ!?」

 

と、こんな感じでぐだくだしているせいで全く稽古にならない。

 

そもそも沖田が速すぎてまともに打ち合うことすらも困難なのだ。 瞬歩もどき使っても追い付けないとか…ドンダケー!

 

つーか沖田さん病弱スキル発揮しすぎじゃない?この3日間で3回血を吐いたよ?

 

「す、すいませんマスター。私はどうやらここまでのようです。」

 

「何言ってんだお前?稽古はここまでにして部屋に戻るぞ。ブーティカが飯を作ってくれてる。」

 

「もうちょっと私のジョークに乗ってくれてもいいじゃないですかぁ~うわーん!」

 

「はいはい、あざといあざとい。」

 

沖田はブーティカと違ってすごくあざとい。

 

けど無駄に顔が整っているせいか、全然嫌悪感が沸かないのだ。

 

…やっぱりかわいいって正義なんだネ!!

 

 

 

「おーい、戻ったぞ~。」

 

「沖田さん只今戻りました~!」

 

部屋に戻ると、キッチンから良い臭いが漂ってきた。

 

「おかえりなさい。朝食できてるよ。すぐに食べる?」

 

「ああ、いただこうかな。」

 

俺がそう言うとブーティカは、料理を皿に盛り付けてくれた。

 

「はい、どうぞ。」

 

「おお…すごいな。」

 

今日の朝食は和食のようだ。

味噌汁、さばの味噌煮、ご飯、玉子焼きとは…ここ数日でも思っていた事だが、ブーティカはやっぱり料理のバリエーションがかなり豊富だな。

「んじゃ、いただくか。いただきまーす。」

 

そう言って俺はさばの味噌煮を口に入れた。

 

これは…!?うまい!!ボキャが貧しすぎてうまく言い表せないが、さばが口のなかでゆっくりほどけていく感じ…かな?

 

「どう?美味しい?」

 

「ああ、すごくうまいぞ。流石だな。」

 

「ふふっ、ありがとうマスター。」

 

ああ…癒される…。

 

ブーティカがこの時代に生まれていたら絶対に良い奥さんになれただろうに。

 

まあ俺は女性と付き合ったことすらないから良い奥さんの基準が分かんないけどな…あれ?なんか目から汗が…

 

 

 

絶品の朝食を食べ終わってお茶を啜っていると、ブーティカが連絡事項を伝えてきた。

 

「マスター。朝食を食べ終わったらすぐに管制室に来てくれってロマンが言ってたよ?なんでも特異点に行く前のブリーフィングがあるからとか。」

 

「そうか、いよいよ始まるのか…ブラックな仕事が。」

 

「あ、あはは…と、とにかく!特異点の攻略頑張ろうね2人とも。」

 

「ああ…」

 

「ええ、勿論ですとも!腕がなりますよ~。」

 

沖田。お前は病弱スキルをなんとかしてくれ。

 

「電気とかも全部消したな。よし、行くぞ。」

 

電気などの確認をした後、俺がそう言うと沖田達は霊体化し、それを見た俺は管制室へと足を動かし始めた。

 

 

 

俺が管制室についた頃にはもうみんなが揃っていた。

 

「もう!遅いわよ重國!」

 

「悪い悪い。沖田に稽古をつけてもらってたからさっきブーティカに連絡事項を聞いたばっかなんだ。」

 

「なんでさっきなのよ!?」

 

「まあまあ、いいじゃないですか所長。重國君もサーヴァント達と親交を深められたみたいですし。」

 

「…そうね…。」

 

なんであいつちょっと機嫌悪そうなの?俺遅れる以外になんかしたかな?

 

「これなら安心してブリーフィングを始められそうだね。まずは君達にやってもらうことから簡単に説明し直そうかな。1つ目、特異点の調査及び修正。人類史におけるターニングポイントの調査し修正すること。これはこるからの作戦の大原則だ。2つ目は『聖杯』の調査だ。まだ推測の域を出ないけど、恐らく特異点の発生には何かしらの形で聖杯が関わっている。聖杯でもないと時間旅行とか歴史改変とか不可能だからね。ホントに。だから聖杯を回収または破壊しないといけない。以上の2つがこの作戦の主目的だ。…ここまではいいかい?」

 

「はい。よく分かりました。」

 

「こっちも大丈夫だ。続けてくれ。」

 

「うん、よろしい。あとは任務のほかにもう1つやってほしいことがあるんだけど、こっちは大したことじゃない。レイシフトをしてその時代に跳んだ後のことなんだけど、霊脈を探しだして召喚サークルを設置してほしちんだ。冬木でもやっただろう?通信だけならまだしも、補給物資とかを転送する際には召喚サークルがないと物をそっちに送れないからね。前と同じように、マシュの盾をセットすればそれが触媒となって召喚サークルが起動するから、そうすれば君達もサーヴァントを召喚することができる。恐らく召喚されるのは、何かしらその時代に縁のある英霊にだろう。そうやって戦力を強化していくわけだ。分かったかな?」

 

「ああ。向こうにレイシフトしたら、最初に霊脈を探してそこで召喚サークルを確立すればいいんだろ?」

 

「そうだ。立香ちゃんもOKかい?」

 

「大丈夫です。」

 

「うんうん。物分かりがいいと教えがいがあるなぁ!」

 

「おい、お調子者。いつまで私を待たせておく気だ?」

 

「おっと失礼。紹介するよ立香ちゃん。彼…あれ?彼女…違うな…あれ?何て言えばいいんだ!?」

 

何やってんだロマンは…

 

「そいつはレオナルド・ダ・ヴィンチだ。」

 

「え?でもその人って男の人じゃあ…」

 

「ああ、合ってるぞ立香。正確には()()()()だがな。そうだろ?ダヴィンチちゃん?」

 

「ふっふっふ…その通り!私がカルデアに召喚され英霊に第3号の天才発明家!レオナルド・ダ・ヴィンチさ!気軽にダヴィンチちゃんと呼ぶように。こんなに綺麗なお姉さんは滅多にいないだろう?」

 

「え…?お姉さん?」

 

「騙されるな立香。そいつは自分の描いたモナリザが好きすぎて、自分自身をモナリザに改造しちまうクレイジーサイコホモだ。まともにとりあってると胃に穴が空くぞ。」

 

「ひどい言われようだが、男か女かってそんなに重要かい?実は男だったとか女だったとか、最初に言い出したのはいったいどこの誰なんだろうね、まったく。私が美を追求し、理想の美を体現したのが今の私だっただけのことだろう?つまりこれは当然の帰結───というわけだ。」

 

「どこが当然の帰結なんだよ!?お前のその持論せいでどれだけの職員の胃が犠牲になったと思ってんだ!?」

 

「うん、僕も一応学者の端くれなんだけど、彼女の持論はさっぱりできなくてね。モナリザか好きだからって自分自身がモナリザになろうなんていう変態は彼女だけだろうね。」

 

「フフフ…それはどうだろうねロマニ。文明も円熟すればなんでもありさ。そのうち美少女になりたい!だなんていう願望は案外ノーマルなものになるかもしれないよ?」

 

うん、前世はまさしくそういう時代でした!!

 

「そうかもしれないが、お前はいったいいつの英霊だ?」

 

「天才に時代は関係ないのだよ重國君。君もよく覚えておくといいよ立香ちゃん。これから出てくるであろう芸術家サーヴァントは誰もが例外なく私と同じようにとんでもない偏執者だろう!」

 

「うわぁ…マジか~。でもなんかそんな感じがしてきたぞ!?」

 

「知りたくはなかった事実ですが、忠告は感謝します、ダヴィンチちゃん。」

 

「うんうん、やっぱりマシュは物分かりがいいね!じゃあ私の紹介は終わり。じゃね~。」

 

「本当に自己紹介だけして行っちゃったな彼女。…話の腰が折られてしまったけど本題に戻ろう。休む暇もなくて申し訳ないけど、さっそくレイシフトの準備をするが、いいかい?」

 

「…仕方ないですね。」

 

俺も問題ないと首を縦に振る。

 

「今回は君達用のコフィンもちゃんと用意してある。レイシフトは安全、かつ迅速に行えるはずだ。それで特異点のことなんだけど、今回はどれも揺らぎが大きかった7つの特異点の中で、できるだけ小さな揺らぎの時代を選んだ。向こうに行ってしまえば僕達は連絡をすることしかできないからね。さっき言ったことをちゃんとするんだよ?」

 

「分かりました。」

 

「了解。」

 

「では──健闘を祈るよ。いってらっしゃい。立香ちゃん、重國君。」

 

≪アンサモンプログラム スタート。量子変換を開始します。レイシフト開始まで3 2 1…全工程 クリア。グランドオーダーの実証を開始します。≫

 

そのアナウンスとともに俺の意識は途絶えた。

 

 

 

気がつくと俺は草原の上に立っていた。

 

「なんの問題もなくレイシフト出来たみたいだな───ってあれ!?立香達は!?」

 

もしかして俺とは違う場所にレイシフトしてしまったのだろうか?

 

え~またボッチじゃないですか、ヤダー。

 

 

けど一緒にレイシフトしたはずなのにこんなことが起こるなんて──

 

「まるで何かが俺と立香達を引き剥がそうとしているみたいだな。」

 

『そんなことってありえるんですかねぇ?』

 

『ありえると思うよ。けど、もしそうならマスターは…』

 

「大方、俺の能力が希少もしくは危険だから抑止力はほかっておけないってだけだろ。心配すんな。もしも抑止力が俺を本格的に排除しにきたなら、そん時はそん時でなんとかするさ。」

 

…なんて言ってるが、以前小耳にはさんだ情報にあった月の王とかが出てきたら勝てる気がしない。サーヴァントの力を計算に入れたとしても五分五分だろう。それなら───

 

そんな風にして思考の海に沈んでいると、急に沖田とブーティカが実体化した。

 

「どうした?」

 

「マスター。前方から大量の何かが来るよ。」

 

「距離は?」

 

「ここから10キロぐらい先かな?すごいスピードでまっすぐこっちに向かってる。こっちに着くまであと1分ぐらいかな?1体1体は大したことないけど、感じられる魔力の数は200を越えてる。…どうしよっか?」

 

「ちなみに逃げてもマスターと一緒だとあのスピードなら追い付かれますね。」

 

「悪かったね、遅くて。…迎撃するしかなくね?」

 

10キロを1分って瞬歩使っても無理じゃん…

 

「マスター!来ます!」

 

「うわぁ…何あれ…」

 

すごーい!黒い塊が移動してるぞ~!

 

「あれ…ワイバーンだよね?いける?」

 

「「もちろん。」」

 

「そうか、じゃあ俺がワイバーン落とすから落ちたワイバーンの処理を頼むぞ。」

 

「「了解(です)!マスター!」」

 

あれほどの大群なら氷輪丸を使うよりもう1本を使った方が効率がいいな。

 

え?流刃若火?あれはこんなところで使うような代物じゃあない。それに使えば今よりも抑止力に狙われる可能性があるからな。

 

「よし、俺も行くか。」

 

俺は刀を具現化させ、俺が前世で個人的に好きだった斬魂刀の解号を、一言一言噛み締めるように口に出す。

 

「面を上げろ…侘助(わびすけ)!」

 

これが、相性さえ良ければ絶対に負けることはない(と、作者は思っている)斬魂刀だ!

 

刮目してみよ!この美しいフォルム!そして切った相手の重さを倍にするという鬼畜能力!これこそこういう複数人での殲滅戦でのサポートに最も長けた斬魂刀ではなかろうか!?いや、そうに違いない!

 

「か、変わった形の刀ですねマスター…」

 

「それ刀の刃が逆なんじゃない?」

 

「いーや、これでいいんだよ。この至高の芸術が分からんお前らにはこの刀の素晴らしさをたっぷりと見せてやる!」

 

これは空飛んでる奴なんかには特に有効だ。

 

故にあいつらは侘助にとって最高の餌!

 

「縛道の六十三、鎖条鎖縛!」

 

あとは侘助に鎖条鎖縛を巻いてシックスナインの斬魂刀の様なことが出来るようにすれば完璧だ。

 

よっし!!

 

「いっくぜぇぇぇ!!」

 

俺は大きく跳躍し、魔力で空中の空間を固定して足場を作り奴等のところに突っ込んでいく。

 

「落ちろやぁ!」

 

「グアアアアアァァ!?」

 

奴等のところにたどり着いた俺は鎖条鎖縛が巻きついた侘助を振り下ろす。

 

すると自分の2倍になった自分の重みに耐えられなくなったワイバーンは地面へと落下していき、地面で待機していた沖田が切り裂いて仕留めた。

 

「一気に決めるぞぉぉ!嵐獅子舞踏(らんじしぶとう)!」

 

魔術で肉体強化を施し、超高速で鎖条鎖縛を持った手を振り回すと、同じく超高速で動く侘助に当たったワイバーン達は、次々に地面へと向かって落ちていく。

 

「マスターなんか異常にテンション高くありません?そしてホントにどんどん落ちてくるんでけど!?」

 

「ダヴィンチちゃんに言った言葉がブーメランに近いものだってことに気がついてないよね…私、こういうのあんまり得意じゃないんだけどなぁ…」

 

下からなんか聞こえてくるが無視だ。

 

俺は今、全能感にも似た何かを感じているのだから…

 

ああ!これが、空飛ぶ天使さん(笑)を地面に張りつけにした究極の斬魂刀の力!

 

吉良さえもう少し強ければ確実に破面相手でも無双できたであろうに!

 

「これでラスト!」

 

最後の1匹を地面に落とし、ブーティカが片付けたのを見届けた後、俺は地面に降りた。

 

楽しい時間は本当にあっという間に終わってしまうな…

 

それが私は悲しい…ポロロン

 

「ハァ…ハァ…み、見たか?ブーティカに沖田。切った相手や物の重さを倍にする能力。1度切れば倍になり、もう1度切ればさらにそのまた倍に、という感じで重さがどんどん倍になっていく、これが侘助の力だ。便利だろ?」

 

「うわ~鬼畜ですねそれ…初見だったら確実に死亡コースじゃないですか。」

 

「なるほどね~。相手が重さに耐えかねて、自然と頭が相手に謝るように下がるから侘助なんだ。」

 

「ああ!これこそ最高の芸術だと思うんだ!」

 

「なんでいきなりのドS発言!?…ま、まあとにかくお疲れ様、マスター。少し休もうか。丁度そこら中に調理できそうな素材がごろごろと転がってることだし、何か作ろうか?」

 

「沖田さんは焼き肉というものが食べたいです!肉なんて生前はほとんど口にできませんでしたから!」

 

「そう…マスターもそれでいい?」

 

「ハァ…ハァ…ああ、任せるよ。」

 

「分かった。じゃあちょっと休んでてね?」

 

「りょーかい…」

 

マジで疲れた…侘助を使える喜びではっちゃけすぎてしまったな…

 

次からは気をつけよう。

 

「マスター!」

 

岩に座って息を整えていると、沖田がいきなり俺に飛び込んできた。

 

ヤダ!?表現がなんか卑猥!!

 

「うわっ!?どうしたんだ?」

 

「もっと自分の体を大事になさってください。私、これでも心配してるんですよ?」

 

近い、近いよ沖田!

 

つーかヤバイヤバイヤバイ…美少女っていい匂いがデフォなのん?

 

そして上目遣いは理性飛びそうだからヤメテェ!

 

「わ、分かった!次から気を付けるから離れてくれ!」

 

マズイ!顔に熱が集まって…

 

「クスッ、マスターって意外とウブなんですね。顔赤いですよ?」

 

「!?…知ってるよ…てか分かってんなら胸部装甲を押し付けるのをやめてくれ…」

 

沖田さんって意外とでかいんですね!!何処がとは言いませんけども!何処がとは言いませんけども!!

 

「嫌です。ブーティカさんの料理ができるまで離しませんよ…どこかに行ってしまったら困るので。」

 

「疲れてるからどこにも行かねーよ…」

 

「そういうことじゃないんです。私やブーティカさんにとってあなたは大切な存在なんです。だからこそ失いたくないんです。生前に色々な物を失った身としては…」

 

「!?…悪かったよ。あ、ありがとな説教してくれてよ…」

 

「まったく、マスターは素直じゃないですね…」

 

あー、熱い。心臓に悪い。今も心臓が和太鼓叩いてるみたいにドドドドドドって鳴ってるし…あれ?俺大丈夫かな?生きてるよね?大丈夫だよね?

 

 

結局この羞恥プレイはブーティカが焼けた肉を持ってくるまで続いてしまった。

 

今後はこのようなことにならないように、出来るだけ鬼道もどきでの後方支援に徹しようと思いましたマル

 

 

sideout

 

 

 

 




《嵐獅子舞踏》
刀に鎖条鎖縛を巻きつけて振り回す作者が即興で考えた技。

評価感想よろしくお願いします。

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