Fate/Inferno Order 作:ハイカラ 一方通行
side日番谷
なんとかセイバーを倒して一件落着…のはすだったのだが、なぜか俺は立香に怒られている。
「どうして無傷なのにすぐこっちに戻ってこなかったの!?こっちはすごく心配したんだよ!?」
と、このようにオルガマリー顔負けの剣幕で怒ってくる。
しかも怒っている姿が結構可愛いためこっちもなかなか言い返せない。…おのれ、卑怯な!
「いや、だから、ほら、あれだよ、俺だって決して無傷って訳じゃなかったんだって。「ホントにぃ~?」いや、本当だって!マジマジ超マジ!セイバーの宝具をくらった直後は死にかけの状態だったんだよ!」
「ならどうして今無傷なの?」
「そいつは俺も気になるな。お前さんがあのセイバーの宝具をくらったってことは腕の1、2本は確実になくなってたはずだ。だが、お前さんは今無傷。一体何をしたんだ?」
「うーん、まあそうだな、お前らなら教えてもいいだろう。」
俺は残っていた仙豆の入った袋をポケットから出した。
「これは仙豆っていってな。これを1つ食べれば死んでいない限りどんな怪我でも治せる。だが、それだけじゃない。これ1粒で普通の人間なら10日間ほどは何も食べなくても生きられるし、たとえ魔力が枯渇していたとしてもこれさえ食べれば失った魔力をすべて回復させることができる。もちろんこの豆は俺のオリジナルでな。俺以外には作り出すことはできないんだ。だからこんな便利なもの作り出せるなんて事が魔術師共にバレたら…」
≪確実に狙われて、残りの生涯のすべてを魔術師達からの逃亡に使うことになるだろうね。≫
「そういうことだ。だから誰にも話してなかったんだ。」
「あの、重國さん…もしかしなくてもレイシフト直前に私に食べさせてくれた豆ってその仙豆ですよね?」
「そうだぞ?あのときは切羽詰まってたから半ばヤケクソだったけどな。」
「そうだったのですか…」
「てことは、それを食べて体の傷を治して戻ってきたってこと?」
「そういうこと。だから俺は悪くない。絶対に悪くない。」
「はっすげえな。お前さんが俺達の時代に生まれていたら間違いなく英雄になれてただろうに。もったいねーな。」
「はっ!英雄になるなんて俺はごめんだね。英雄になるなんて最後は裏切りで死にたいですって自分から言ってるようなもんじゃねーか。」
「それは間違っちゃあいねえがな…て、おお!?ここで強制帰還かよ!?くそっ!あとは任せたぞお前ら!あともし次があるんならランサーのクラスで喚んでくれ!」
そう言ってクー・フーリンは消滅していった。
「セイバーとキャスターが消滅したということはわたし達の勝ちということでしょうか?」
≪そうだね。お疲れ様と言いたいところだけど、帰るまでが遠足ならぬ帰るまでが人理修復だ。もうすぐ特異点の崩壊が始まる。すぐにレイシフトの準備にかかるよ。≫
「そうね、早くしなさいロマニ。もうクタクタよ…」
え?こいつ何言ってんの?
「お前は最初っから最後まで何もしてねぇだろオルガマリー。離れた場所でビクビク震えてただけじゃねーか。」
「な、私だって何かしたかったけど英霊同士の戦いに介入なんてできるわけないじゃない!」
「はいはいそーですか。相変わらず頭ん中はハッ◯ーセットですね~。」
「ふ、2人とも落ち着いて…ドクターも作業に集中できないから。」
「とりあえず聖杯を回収しましょう。確かあそこらへんに…な!?」
あ、あいつは…!
「君達がここまでやるとはね。私の計画の予想範囲外にして私の許容範囲外だったよ。48人目のマスター。君をなんの見込みもない子供だからと見逃してしまった私の失敗だ。」
「レフ教授!?」
≪レフだって!?レフ教授がそこにいるのか!?≫
「やあ、ロマニ。私はすぐに管制室に来てくれと言ったはずなんだが私の指示を聞かなかったのか。まったく――どいつもこいつも統率のとれていないグズばかりで反吐がでる。」
「やぁっと本性を現しやがったか変態紳士が。出会ったときからどうも胡散臭さを感じていたが、まさかこれほどとは俺も予想していなかったぞ。」
「君が1番予想外だったよ重國君。まさかあれほどの力を持っていたとは。そういえば君だけはまったく私に心を開いてくれなかったな。だからといって害は無いと放置しておいたのが間違いだったか。」
「そいつは残念だったな。俺はお前の誤算が嬉しくて仕方がないが「レフ!生きていたのね!」なっ!?」
オルガマリー…こいつまさか!?
「良かった、あなたがいればカルデアを守れるわ!いつだって私を助けてくれたあなたなら何か素晴らしい案があるんでしょ!?」
「オルガか…君は2番目に予想外だった。ちゃんと君の足元に爆弾を設置したはずなのにまさか生きているなんて――いや、生きているという言い方は間違っているな。君の肉体はとうの昔に
「え、嘘でしょ?そ、そうよね冗談なのよねレフ!?」
「冗談な訳がないだろう。君はカルデアには戻れない。なぜならカルデアに戻った時点で、君の意識は消滅するんだから。」
「そ、そんな…カルデアに戻れないなんて…」
「そうだとも。だがそれでは君があまりにも哀れだ。だから生涯をカルデアに捧げた君のために、せめて今のカルデアがどうなっているかを見せてあげよう。」
そう言うとレフは空間に手をかざして、カルデアとの空間を繋いだ。
「そんな…!?カルデアスが真っ赤に…嘘でしょ!?これは虚像よねレフ!?」
「まったく、この期に及んでまだそんな事を言っているなんて…本当に君はムカつくな。まあいい。それもこれで終わりだ。さあ、よく見たまえアニムスフィアの末裔。これがお前達の愚行の末路だ。」
レフがオルガマリーに手をかざすとオルガマリーの体がカルデアスに向かって吸い込まれ始めた。
「いや、いやよ!まだ何も褒めてもらってないのに!誰にも認めてもらってないのに!お願い!誰か助けて!!」
……クソが。こんなときだけ、こんなときだけ…
「助け求めてんじゃねーぞオルガマリィ!縛道の六十三!鎖条鎖縛!」
俺は胸くそ悪い思いで手から光の鎖を出しオルガマリーの腰に巻きつけてオルガマリーを引き止めた。
「し、重國…な、なんで助けたの?あなたは私が嫌いなはずなのに…」
「確かにお前のことは嫌いだが、そんな理由で今見捨てたら後で後悔するだろーが。」
「そんな理由で――「それに…」?」
「お前を助ける方法が無いわけではないからな。おい、ロマン!そこに1人だけ残してあとの残り全員で今すぐにオルガマリーの体を探してこい!それさえあればなんとかなる!」
≪なんかよく分かんないけど分かった!ダヴィンチちゃんにここに残ってもらって他の全員で探しにいくよ!≫
ロマンからの通信が切れると俺はレフに向き直る。
「スタッフ達が戻ってくるまで暇なんでな。それまでの間、お前で時間を潰すとするか。霜天に坐せ!氷輪丸!」
「マシュお願い!」
「了解ですマスター。マシュ・キリエライト出ます!」
「やれやれ。本当に虫酸が走る。貴様らごときが私に勝てるとでも?」
「勝てるさ。たとえお前がどんな存在でも、
「!?え、ええ。カルデアの所長として命令します。罪人であるレフ・ライノールをここで始末しなさい!」
やっといい顔になったな…ちょっと恥ずかしいが頑張った甲斐があったか。
「貴様ら…!!」
「つーわけで、てめえを殺すぜレフ。覚悟しな!氷輪丸!」
氷輪丸から氷の竜を出現させレフに向かって放つ。
「くっ!こんなもの!」
「フッ…こっちばっかでいいのか?バカが。」
「ハアァ!」
「なっ!?ぐぁ!?」
マシュの攻撃で動いた所には罠がある。
「しばらく凍ってろ。六衣氷結陣。」
ビシイィ!
氷の柱がレフを閉じ込め凍りつかせる。
「あっけなかったな…ん?≪見つかったぞ重國君!ってもう特異点の崩壊が始まってるじゃないか!?早くレイシフトさせないと!!≫そうか、これでなんとかなるな。」
「ど、どうするのよ。」
「お前のを助けるには今の残留思念の状態のお前をを時間ごと凍結させるしかない。」
「そ、それって――「時間がない。すぐに。やるぞ。なに、少しの我慢だ。」…分かったわよ。」
「いくぞ!卍解!大紅蓮氷輪丸!からの~縛道の七十三!倒山晶!」
俺は倒山晶を圧縮しマリーの残留思念を限界まで小さくして閉じ込めた。
「時流概念凍結!」
そして倒山晶の中のマリーも含めて時間の流れを凍結させた。
「こっちは準備OKだロマン!」
≪こっちもOKだよ重國君!「待てぇ!貴様ら!」レフ!?≫
「黙ってろ!千年氷牢!」
グシャア!
「ぎゃああぁぁ!」
弱っ!?骸骨よりも弱いんじゃねーかあれ?
「とにかく早くしろ!」
≪わ、分かった!レイシフト開始!≫
ロマンがそういうと俺達の意識は闇に消えた。
sideout
sideレフ
私は閉じ込められた氷からなんとか脱出した。
「くそ!!なめやがってえぇぇぇ!!あの程度でこの私がやられ訳がないだろう!日番谷重國!絶対に許さんぞぉ!」
魔神柱である私がここまでコケにされたのは初めてだ!
この借りは次会ったときに必ず返すぞ!日番谷重國!
sideout
side日番谷
目を開けるとそこは見知らぬ天井――ではなく、自分の部屋の、天井だった。
「起きたかい?よく頑張ってくれたね。」
「それもそうだが、今はマリーの奴が先だ。あいつの体は今どこにある?」
「それなら医務室の冷凍カプセルに保管してあるけど…って重國君!?」
「それさえ分かれば十分だ!あとはこっちでやる!」
俺は急いで医務室に行き、冷凍カプセルを開け無惨な姿になってしまっているマリーを見る。
「…損傷が激しいが、これならなんとかなりそうだ。」
俺は自分の懐からマリーを閉じ込め圧縮した倒山晶を取り出し、もう片方の手でポーションを作り出す。
「あとは、ポーションをこいつの体にぶっかけてっと。」
ポーションがかかったマリーの体はみるみるうちにもとの体へと戻っていく。
「時間凍結を解除して…体に入れてと、よし…これで終わりだな。あとはこいつが目覚めるかどうかだが…」
「ん…ここは?」
どうやら大丈夫そうだな…
「よう、おはようさんマリー。」
「重國!?ということは戻ってこれたのね私!」
相変わらずうるさいやつだ。
…けどまあ、今回は仕方がない…のか?
「所長!ちゃんと戻ってこれたんですね!?よかったー所長チキンだからあれだけ醜態さらしたら戻ってこないかと思った~。」
それを言ってくれるなよロマン…
「とりあえず、一先ずこの件は一件落着だな。」
「そうだね。今度こそ本当にお疲れ様。」
「ああ。」
本当に色々あったが、こうして俺達の初めての人理修復は幕を閉じた。
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「時流概念凍結」
時間という概念を凍結させる技。凍結させられたものの時間は止まる。
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