Fate/Inferno Order 作:ハイカラ 一方通行
side日番谷
強敵との戦いもちろん終わり、「疲れたなぁ…」と思いながら自分が作り上げた氷柱を眺めていると、横から聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「重國さん!これは重國さんがやったんですか!?」
「ん?あぁ、まぁそうだけど。それがどうかしたのかマシュ?それとその格好はなんだ?俺はお前をそんな風に育てた覚えはないぞ!」
声の聞こえたほうに顔を向ければ、見たことのない青い髪をした男と立香、オルガマリー、そして破廉恥な格好をしたマシュがいた。
「いえ、私はまだまだ未熟者だと思っただけです!あと、これは決して狙ってこの格好にしたわけではありません。本当です!…神に誓って本当です!」
「お、おう。な、なんかそこまで拒絶する理由があるみたいだな。」
「おう!坊主!お前すげぇなあ!俺も槍があればあんたと手合わせしたんだがな!」
…なんか物騒な事を言っている奴がいるな。
「いや、たとえ槍を持っていたとしても、なんか危険な香りがするからお前とは手合わせはしないけどな…ところで、誰ですか?」
「俺はクー・フーリンだ!今回はキャスターのクラスで現界した。まぁ、よろしくな!」
「なんかよく分からんが味方みたいだな…俺は日番谷重國。好きに呼んでくれ。とりあえず、よろしくなクー・フーリン。」
「おう!ところd「ちょっとあなた!さっきのはなに!?説明して頂戴!」…」
「なんだ、オルガマリーか。あの爆発に巻き込まれても生きてるなんてゴキブリよりもしぶといんじゃないか?」
「なんですって!?私は所長よ!?もっと私に敬意をはらいなさい!」
「人の家に押し掛けてきて、こっちの言い分も聞きもせずにいきなり拘束して拉致したやつにどう敬意をはらえと?弱虫ちゃんのくせよくそんなことが言えるな。」
≪ははは…やっぱり重國君は所長とレフ教授には辛辣なんだね…≫
「当たり前だ。こいつにきつく当たる理由はさっき言った通りだし、レフの野郎はずっと胡散臭い笑みばっか浮かべてやがって気持ち悪いからな。」
「ちょっと!レフをバカにするのは許さないわよ!」
「ハイハイ、いつでもレフばっかだなお前は。いっそ結婚したらどうだ?」
「なんですって!?」
「ま、まあまあ…2人とも落ち着いて」
「立香も無事だったのか。よかったよかった。」
オルガマリーから「ちょっと!」という抗議の声が聞こえるが無視だ。
あの癇癪さえ起こらなければかわいい奴なんだけどな…
「はい、重國さんも無事でよかったです。それとさっきの奴は私も気になるんですけど教えてもらってもいいですか?」
「ああ。分かったがその前に立香。俺に敬語は使わなくていいぞ。めんどくさいだろ?」
「え、でも…」
「俺はそういうのは特に気にしないからいいんだよ。」
「えっと、分かりま…分かった。」
立香が俺への敬語をとったところで、俺は立香たちに俺が起こしたことと、氷輪丸の能力の説明をした。
≪刀一本でそんなことができるなんて…いや、神代なら考えられないこともないけど。神秘の薄れた現代でそんな刀を持っていたら余裕で封印の対象になるぞ!?≫
「だろうな。だから今まで隠して生きてきたんだ。」
「そんな程度の話じゃないだろうよ。兄ちゃんのその刀は下手をすれば英霊の宝具をも上回る逸品だぞ?」
え?そうなの!?この刀ってこの世界でもそんなにすごい物なのか…。さすが氷雪系最強!後ろに(笑)なんてもう2度とつけられません!
「あいつがあんなにすごい奴だったなんて…。私なんかより圧倒的に強いじゃない…。こんなときにレフが居てくれたら…。あぁ、やっぱり私の味方はレフだけなんだわ!戻ってキテヨ、レフ…。」
おいおい…レフの奴はオルガマリーをどれだけ自分に依存させてたんだ?
何かあったら「レフ助けて!」って依存しすぎだろ!
あれは完全にヤンデレの領域に踏み込んでる気がするんだが…目のハイライトも消えてるし。
「何言ってんだお前は?今この場での最高責任者はお前なんだからしっかりしてくれよ。」
恐らくレフの奴はあの爆発に巻き込まれて死んだのだろう。
じゃなかったらいくらレフに依存しきっている状態のオルガマリーでもこうはならないはずだ。
「重國さんの言う通りです所長。今わたし達がするべき事は死んでしまった方々への弔いではなく、この特異点を探索し、狂ってしまった歴史を修正することのはずです!」
「坊主!と盾の嬢ちゃんの言う通りだ。あんたがしっかりしねーと指示が行き渡らないだろ?」
俺たちがそういうとハッとした表情になり、すぐに顔を引き締めた。
「ぐっ…え、ええそうですね。私としたことが取り乱してしまいました。重國も見つけたことですし、本格的にこの特異点の攻略を始めましょう。さっそくですが、クー・フーリン。あなたの知っている敵の情報をすべて教えたもらえるかしら?」
「ああ、だが俺達のしていた聖杯戦争はいつのまにか全く別のものに置き換わっていたからな。何故そうなったかの経緯は全く分からねえが、街は一夜で炎に覆われ、人間はいなくなり、残ったのは俺達サーヴァントだけだった。真っ先に暴れだしたのはセイバーの奴でよ。奴さん、水を得た魚のように暴れだしてな。あいつの手によって5人ものサーヴァントが倒されちまった。」
「そのセイバーに倒されたサーヴァントっていうのがさっき俺が戦っていた奴みたいな奴のことだな?」
「ああ。セイバーに倒されたサーヴァントは真っ黒い泥に汚染されて、ボウフラみてーにウジャウジャ湧いて出やがった怪物どもと一緒に何かを探し始めたんだ。んで、面倒な事にその探し物には俺も含まれていてな。」
「だろうな。お前を倒さない限り…」
「この聖杯戦争は終わらない。そういうことだよね、クー・フーリン?」
≪ということは、残ったサーヴァントはあなたとセイバーだけ。ならあなたがセイバーを倒せば…≫
「この聖杯戦争は終わるってわけだ。終わってもこの状況がもとに戻るかは分からねえがな。」
「じゃあ、そのセイバーを倒せばいいんじゃ…?」
「それが俺1人でできねえから、あんたたちを頼ったんだよ。セイバーの宝具はアホみてえに強力でな。ランサーの状態で現界した俺でも、食らえばひとたまりもないだろーよ。」
おいおい、それってまさか…
「じゃあもしかして俺がさっき見かけた巨大な斬撃痕はセイバーの宝具ってことか!?あれほどの広範囲にわたって地面を抉るなんて、どんな威力の宝具だあれは!?」
「おーそうだ。それがセイバーが放った宝具の痕だ。」
「それほどまでの強力な宝具…ですか。それはどういう?」
「王を選定する剣のふた振り目。おまえさんたちの時代において最も有名な聖剣。名を、『
アーサー王の聖剣…とんでもない威力だな…相対したらすぐに卍解することも視野に入れておかなければならないだろう。
そう思いながらふと、上を見上げるとそこには大量の魔力を集中させた矢をつがえて俺達に向かって構えている黒い靄のかかった男が立っていた。
「!?縛道の八十一!断空!」
ほとんど反射で縛道を発動させて、みんなを自分の周りに引き寄せた。
「ちょっ!?」
「キャッ!?」
「うおっ!?」
「重國さん!?」
ドオォォォン!
「ひいぃ…」
オルガマリーのやつビビりすぎだろ…
しっかし…
「また断空にヒビを入れられるとはな…誰かは知らないが、随分とせっかちなんだな。」
「フンッ!私の矢を簡単に防御しておいてよくそんなことが言えるな、貴様は。」
「言ってるそばから信奉者の登場か。相変わらず聖剣使いを守ってんのか、テメエは。」
「…ふん。信奉者になった覚えはこれっぽっちもないがね。なに、つまらん来客を追い返す程度のことはさせてもらうさ。」
「追いかけっこはやめにして、そろそろ決着をつけようじゃねーかアーチャー。いつまでも戦局の動かないゲームは退屈だろ?ああ、テメエはそういうネチネチしたのが好きそうだから、そうは思わねえか。」
「その口ぶりでは事のあらましは理解済みのようだな。大局を知りながらも自信の欲望に従って行動する…魔術師になってもその性根は変わらんと見える。私も人の事は言えないが、その腐った性根をこの剣で叩き直してやろう。」
「ホントにテメエには言われたくないことじゃねーか!おい!嬢ちゃん、坊主!構えな!共同戦線といこうや!」
ったく…
「勝手にお前1人で事を進めてんじゃねぇ。まあ、このままじゃ先に進めねえから一緒に戦うけどな。」
「先輩!指示を!マシュ・キリエライト出ます!」
「任せて、マシュ!」
「前衛は任せろ!霜天に坐せ!氷輪丸!」
俺は刀から氷のドラゴンを出現させ、アーチャーに向かって放つ。
「単純な攻めだな。この程度で私がやられるとでも?」
「んなこたあもちろん思ってねえよ。クー・フーリン!」
「任せなぁ!アンサズ!」
「なっ!?くっ!」
氷と炎がアーチャーを挟み撃ちにして激しい爆発をおこす。
「やった!!」
立香!それはフラグだぞ!?
「そんなわけがないだろう!
「マシュ!防いで!」
「了解です!ッグウゥ!」
アーチャーの矢をなんとか防いだマシュを一瞥し、俺はアーチャーに接近し刀を振るう。
「フッ!」
ギィン!ガキィン!
そのまま何回も打ち合うが、守りが固い…だが、多対一なら、チームワークさえしっかりしていればまず負けることはない!
カァン!キィン!ズガアァン!ギギギ…
何回もの打ち合いを重ねたあとなんとか俺はアーチャーの剣を押さえ込みそしてクー・フーリンに向かって叫んだ。
「俺ごとやれ!クー・フーリン!」
「いい度胸だ坊主!くらいなぁ!」
「な、バカな!?ぐああぁ!」
クー・フーリンの炎が俺とアーチャーを包み込む瞬間、俺は自分の回りに氷の壁を張り炎を防いだ。
アーチャーは炎に飲まれ地面に落下した。恐らくだがまだ煙の中にいるだろう。
「自身を陽動に使うたぁなかなかいい作戦を考えるじゃねーか!」
そこまでいい作戦ではないと思うが…
「あの場ではあれが俺の中での最適解だったんだよ。けど、あんだけやってもあいつまだ死んでないみたいだぜ?」
俺の言った通り、煙が晴れるとそこには体の半分が焦げているアーチャーがいた。
「い、今のはさすがの私も肝を冷やしたぞ…なかなかにえげつないことをしてくれる…!」
こんだけやってもお前が死なないことに俺はビックリしたよ(´-ω-`;)ゞ…
「テメエホントにしぶてえな…前世はゴキブリかなんかじゃねーのか?」
「それには心の底から同意するが…まあ、いいだろ。どのみちあんたはここまでだからなアーチャー。」
「なに?どういうことだ?」
「こういうことさ!縛道の六十一!六杖光牢!」
俺がそう唱えると、アーチャーの胴に六つの帯状の光が囲うように突き刺さりアーチャーの動きを封じた。
「これは!?体全体が動けない…だと!?胴だけじゃなく体全体を縛っているのか!?」
「説明ありがとう。仕上げだ、やれ!マシュ!」
「了解!マシュ・キリエライト行きます!」
「ま、待ちたまえ!それはさすがに不味い!」
「ハッハハハハハハ!もう遅えよ!じゃあな変態紳士!」
「私は変態紳士でh(ゴガアアァァン!)グホアアァァ!」
マシュが思いっきり脳天に盾を振り下ろすと、アーチャーからは先ほどまで紳士的な喋り方をしていた男とは思えないほどの奇声をあげた。
「な、なんで、さ…」
そう言って、目から涙を流しながらアーチャーは消滅してしまった。
…………うん。
「なんかかわいそうだったな(´・д・`)。」
「あんたがやらせたんでしょ!!」
「わたしはスッキリしました!先程のがいいストレス解消になったのだと思います!」
「今のやつはさすがの俺でも同情するぜ…しっかしさっきのばくどう?ってやつはすげーな!あの野郎の動きを完璧に止めちまいやがった!あの野郎の矢を防いだ壁といいとんでもねえ威力だな。」
「他にも色々あるが…さっき使った2つは比較的汎用性も威力も高いやつだからよく使うんだ。」
オサレな詠唱はさすがに恥ずかしいから唱えないけども。
「まさか英霊をも拘束することができるなんて…」
「期待通りの戦力で安心したぜ。これならセイバーの奴をなんとか倒せるかも知れねえな!」
「けど、聖剣ぶっぱされたら俺がある程度はバックアップするとはいえ、守りの基本はマシュだからな。頼むぞ。」
「はい!任せてください!頑張りましょうね、先輩!…先輩?どうかしたんですか?」
なにやら立香の様子がおかしい。
顔色があまり良くないし立っているのがやっとのようだ。
「ドクター、立香のバイタルチェックはちゃんとしているの?顔色が通常よりも良くないわよ。」
≪え!?あ…うん。これはちょっとまずいね。いきなりのサーヴァントとの契約だったからなぁ。使われていなかった魔術回路がフル稼働して脳に負担がかかっている。ここらへんで少し休憩を挟んだほうがいいかもしれない。≫
「わたしもティータイムには賛成です。」
「お?決戦前の腹ごしらえかい?じゃあ俺はイノシシでも狩ってきますかね。」
「そんなものこんなところにいないわよ。そもそも肉はやめて肉は。どうせなら果物にしなさい。」
「おっドライフルーツか。オルガマリーにしては気のきいたものを持ってるんだな。少し見直したぞ。」
「相変わらず一言多いわね…。それにドライフルーツを私が持っていたのは頭痛には柑橘系が効くからよ。それに――」
「…なんですか所長?」
「こ、ここまでのあなたの働きは及第点です。三流の魔術師にしてはよくやってくれています。」
えっ?あのオルガマリーが人を誉めただと!?明日は槍が降るな!(錯乱)
≪所長が立香ちゃんを認めるとは…けど何がなんでも重國君のことは認めないんですね…≫
「当たり前よ!こんな口の悪いやつ、死んでも認めたくないわ!」
ひどい言われようだな。俺もその分言ってるが…
「とりあえず、あと30分程ここで休憩していきましょう。」
まぁ、今回の事で多少は評価を改める必要がありそうだな…
sideout
評価感想よろしくお願いします