二周年+はやて誕生日回です。
短いけど許して。
歌えや騒げ。何事も。
今日は無礼講、哀などいらぬ。
祝え、祝えや祝わにゃ損々。
配点(誕生日)
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――六月四日:月村邸/庭
「「「
「わー……! みんな、ありがとうなー……」
六月四日。
それは我らがオカン役、八神はやての誕生日だ。
去年は誕生日プレゼントでまさか家族が増えることになろうとは想像もしなかっただろうに。
そんなこんなで俺たち地球魔導師組やアースラ組、そこそこ事情を知っている輩ですずかの家の庭で騒いでいるという訳だ。
まぁ、その中にはこんな奴らもいるわけで――
「……シュテルよ。何故我らはここにいる」
「ご招待されたからかと。レヴィも既に行く気満々でしたし」
「シュテるん王様ユーリ! これすっごくおいしいよッ!?」
「わー……甘くておいしいですー」
ちょこっちメタいが、まぁマテリアルズだ。身内で伝わる『
詳しくは、その内に。
「へいよーぐっつすっす。食ってるかね」
「
両手に料理を持ってって渡したのに溜息つかれた。訴訟。
「しかしすごい量ですね……これは全部?」
「五分の一の洋食は俺担当。後は士郎さんとか桃子さんとか小学生組とか」
なるほろ……とエビフライを摘みながら視線の先は食べ歩くレヴィとユーリの姿。
幸せそうで何より。
「しかし、今日は子鴉の誕生日であろう。貴様は傍にいなくていいのか?」
「結婚挨拶じゃあるまいし。今から足に慣れとかんとなー、って離されちまったぜ」
今はどこぞの一方さんみたいな補助杖で動き回っている。
べ、別に寂しくなんかねーし? 優しい目で見んなし。
「やはり、此度は披露宴とかの間違いではないのか? ん?」
「まぁ、周囲からすれば『まだしてなかったのか』とか『もうなってるんじゃなかったの?』とか……もうその域ですよね」
「やかましっ! くそうっ、くそうっ!」
なんではやての誕生日でこんな羞恥心を味あわにゃならんのじゃ。
あー、ほれほれ。レヴィたちが呼んでるぞ。
「くくっ……うぬをイジる機会はそうそうないからな」
「おにょれ、おにょれぇ……!」
「ではまた後ほど。王、行きましょう」
「くくく……ではな、獅子よ。早々に赤みを引かせておくがよい」
尾に引く忍び笑いをそのままに王様たちは去って行った。くそう、いじめっ子特化のはやてみたいなところは相変わらず苦手だぜ。
「……王?」
「――いや、今不快な思考が」
「その割には顔が赤く……ああ」
「なっとらん。なっとらんし、何を納得した!」
「いえ、何も。――ふふ」
「よっすギャグ担当」
「初期構想を言うなファウストォォォ!」
「その名で呼ぶなっつってんだろがい」
やってきました黒円卓組。開幕ブリッツがやかましかとです。
GOD事件の後、嫌に豪華な手紙が届きました……何故か少し湿ってたような気が。
その中には俺たちの二つ名と言う名の嫌がらせ(魔名、というらしい)が。
俺が『
い ら ね ぇ よ !
はやてのも来てたのだが見る寸前で奪われ見れなかった。一体どうしたんだろうか。
「……あれ、
「……姐さんの文鳥呼びはアンタらだけっスよ。学級新聞の締め切りヤバいから遅れてくるって言ってたっス」
「さよけ。……ってか前々から思ってたけど何で体育会口調?」
「大隊長ではないとはいえ、アンタは尊敬する人の一人っス。先代五位も、姐さんも……そしてアンタも、俺の尊敬する一人なんスよ」
……真っ直ぐに見られると、こう……ハズいな、おい。
じっくり話して分かったがコイツ、すずかやカガミ同様……俺が苦手なタイプだわ。まっすぐに、真摯に、素直に、目を通わせて心にまで語り掛けてくるようなヤツ。
苦手、っつっても……気恥ずかしいとかそんな感じの。
「敬語は苦手なんで、これが自分の精一杯っス!」
「――お前、犬っぽいとか言われない?」
「……? あ、はい。兄貴と姉貴に『お前は母親そっくりの犬属性だな』って」
「ござる付けたら犬臭い忍者って呼んでパシらせるんだけどなー……」
「き、金髪巨乳の性癖はないっスよ!?」
知るかね。さーさ、退避退避……あーくっそはずかし。
「な、なんだったんスか。急に」
「ナイスですよ人型静電気」
「姐さん! ……って何が?」
「
「……なんか聞こえちゃいけない副音声ががががが」
「よっ」
「よー」
はやてのところに無事帰還。他の連中も何だかんだ楽しんでいるので何よりだったが、何でみんなして俺をイジるのか。これがわからない。
「色々もみくちゃにされたようやな」
「いやせおらー」
「わー」
棒読み気味に、ぽふり、と飛び込んだ先ははやての膝の上。
かれこれ結構久々のはやて枕である。
「……くそう」
「……みんな憶えてるんよ。“あの日”の事」
“あの日”……それは、俺が休学する前の、はやての誕生日。
誕生日目前で死したはやての両親もいない、沈んだ空気の八神家での誕生日。
最悪も最悪。嬉しいはずの誕生日が、何よりもうっとおしく感じたあの日。
プレゼントを渡しに来ていたなのは達の気遣う様な目線、はやての無理した笑顔に俺はブチ切れて……自分の顔を、思いっきり殴ったんだったか。
『な、何してんのひなッ!』
予想以上に威力の高かった自分の拳は、誰かの意思さえも乗っかっていたような重さを感じた。
ぐわんと揺れる頭と視界で、言ったんだっけか。
『改めて、俺は、今日からお前の……家族、だ……ッ!』
憎く思った。
許せなかった。
諦めてしまっていた。
はやてやなのは達を、こんな顔にしてしまった自分が。
休学届を出し、士郎さんたちに謝り、二人の眠る墓前で頭を下げた。
壊れることを、望んではいないかもしれない。共に地獄に落ちる様な、沼から引き上げるどころか現状維持しかできなかった俺を恨むだろう。
ただ傍で支える事しかできなかった俺を、情けないと言うだろう。
その後だったか。アリサが思いっきり俺を殴ったのは。
それもビンタじゃなくてグーパン……拳ときたもんだ。参るよね。
後ろに並ぶすずかやなのは、聖刃や八留夫など、顔馴染たちも、苦しいような、怒っているような形相で俺を見ていた。
そして言った。
『少しは、
ぽろっぽろ零れるアリサの大粒の涙に、重ねて俺は馬鹿だと思った。
こいつらは、ずっと待っていたんだ。俺が頼ってくれることを。ずっと、ずっと。
それを裏切ったのは誰でもない……俺自身だったのだ。
マジ大泣きしたのは、それが初めてだったか。
俺はずっと誤って、謝ってばっかで……『大丈夫、皆がいる。独りじゃない』って声と共に、誰かに抱きしめられたんだっけか。
その話をすると、全員露骨に話を逸らすんだよな。何でじゃろ?
……まぁ、とりあえず。根っこの方は頭が上がらないわけで。
「二年で私らの世界は変わった。魔法に関わって、家族が増えて……友達も増えた」
「激動過ぎるわ。映画に出来んじゃね」
「セイバくん曰く、管理局で作った劇中劇設定であったらしいなー」
「マジかよ」
こうして他愛のない話をする。
目の前には笑顔で話すはやてと、そのバックには舞い散る桜の樹。良い画じゃないか。カメラが無いのが悔やまれ……
「(レオ、これ撮れない?)」
【(愚問。既に保存済みです)】
「(流石)」
【(無論。私にも需要がありますので)】
需要あるんだ……
「うぉい天野ォォッ! お前何したァッ!?」
「実験中の薬品をうっかり……てへぺろ!」
「パスタが生きてるように動いてるお!?」
「うにゃああああ!」
「な、なのはあああ!?」
「ぬおおお!?」
「ざ、ザフィーラがパスタ触手プレイに!?」
「早くこれ止めろォォォッ! 褐色犬耳大男のパスタ触手プレイとか誰得だァァァッ!!」
「こ、これはナイススクープ! おや、なのはちゃんの下着はし――あっ」
「あ、姐さんがミートソースに呑み込まれたァァァッ!?」
「シュテるんシュテるん! カレーパスタもありだねッ!」
「レ、レヴィ……何故裸なんだ貴様ァァァッ!」
「ああ、これがショッギョムッギョ……」
「ああー……!」
「シュテル!? ユゥゥゥリィィィィ!!!」
何やら奥の方で尋常ではない騒ぎが起きている。
もうちょっとはやての膝堪能したかったなー……
「……ふふ、いつでもしたげるよ」
「ふむ。なるなる……んじゃ――」
――まだまだ、頑張りましょうかね。
・時期
大体A's本編の翌年。
大晦日周辺でBOA、冬の終わり辺りにGODとなって今に至る(予定)
・魔名
(呪いとかその辺は)ないです。
かれこれもう二年になるこの小説。
まだ二期終わんねーのか。あくしろよ、と幻聴が聞こえてきます。
とりあえず三期終了までは時間が掛かろうとも、ちゃんと終わらせようと考えております。
それではこの辺で。
最終決戦、強大な力を以ってしても尚強力なナハトヴァールに対しどう戦うのか。
お楽しみください。